たるむ。
提督(たった三文字の単語だが、俺にはこの短い単語が怖くて仕方ない)
提督(俺はまだたるんではいない。まだ、ね。間宮さんの料理が美味すぎてちょっと食べ過ぎなところがあり、気を抜くとすぐ太りそうなのだ)
提督(幸い、この鎮守府には見た目運動部の長良型がいる。俺は運動とコミュニケーションも兼ねて長良たちのトレーニングに参加しようと試みた)
長良「トレーニングですか!?喜んで!」
五十鈴「いいんじゃない?ま、途中で諦めたりしないでよね」
提督(あっさりOKを貰えたので、次から参加します。はい)
***
長良「司令官!おはようございます!」
提督「おはよう。もう準備出来てるのか?」
五十鈴「当たり前でしょ。どこかのお寝坊さんとは違うのよ」
提督「あはは...」
提督(五十鈴はこう言ってるが、今は総員起こしと同刻の午前五時だぞ)
提督(俺が起きたのは二十分前。朝が弱い俺にしちゃ頑張った方だ)
長良「それじゃ、軽くジョギングから行きますか!」
提督「どのぐらい走るんだ?」
長良「とりあえず三十分!」
五十鈴「ウォーミングアップよ」
長良「じゃあいきますよー!」
提督(ジョギングかぁ。それなら大丈夫かな...)
(三十分後)
提督(と思ってた時期が俺にもありました)
提督(ジョギングだから軽く走るものだと思ってたよ。最初の五分辺りまでは普通だったよ。そっから長良たちはいきなりペースアップしよった)
提督(俺がダッシュしてやっと追い付くぐらいのスピードだった。これウォーミングアップだよな?)
提督(でも、何とか着いていくことが出来た...)
五十鈴「なかなかやるじゃない。もっと早くバテると思ったわ」
提督「せ、せっかく参加させて貰ってるんだ...これしきでへばってては迷惑だろう...」ゼェゼェ
長良「司令官のペースで良かったのに...」
提督(長良はそう言ってくれてるが、何か遅れを出したく無かったんだ)
提督(鎮守府を担う者としてのプライドというかなんというか、とにかくついていかなければならないような気がしてたのだ)
提督(決して後ろ姿が眺められるからじゃないぞ。本当だぞ)
長良「じゃあ、次は腕立て伏せです」
提督「わ、わかった...」
五十鈴「キツかったらすぐやめるのよ」
提督「い、いや、俺は平気だ」
提督(五十鈴は俺が強がってると気付いてるようだ。まあ呼吸も整ってきていけるだろと思ってた)
提督(ちなみに腕立ては十分間で回数無制限だった。俺は五分でダウンしました。恥ずかしい)
長良「司令官、大丈夫?」
提督「ちょ、ちょっと疲れただけだ。問題ない」
五十鈴「無理するからよ。バカね」
提督「面目無い...」
提督(うーん、運動に関しちゃ少しは自信があったんだけどな。やはり艦娘とは比べ物にならないか)
提督(人間でも艦娘に着いていけるというところを見せたかったが、少し休む必要がありそうだ)
提督(長良たちは難なく腕立て伏せを終えた。俺は腕に力が入らなかった)
提督(てか楽々腕立てしてて純粋にすごいと思ったよ。健康的とは言え、俺よりも華奢な腕をしてるのに体力は遥かに上だ)
妖精「といいつつもながらさんのわきとふとももをみるていとくさんでした」
妖精「いすずさんのむねもみてました」
妖精「やっぱりおとこのこなんですね」
提督(うるさいよ君たち。そういう目で見てねぇから)
提督(毎度の如く茶々入れに来るけど、また甘味抜きにするぞ)
長良「早朝トレーニングはここまでです!お疲れ様!」
提督「あ、ああ。すまないな、付き合わせて貰って」
五十鈴「トレーニングの後はストレッチよ。筋肉痛になるでしょ」
長良「という訳で、下半身のストレッチですね」
提督(屈伸、伸脚、股割りの順にストレッチをした)
提督(当初の目的だった運動は達成したから、次はコミュニケーションだな)
提督「長良たちは、これを毎日やってるのか?」グググ
長良「そうですね!あ、でも大規模作戦前は抑えますね」グイ
提督「そうか...凄いな」
五十鈴「最初のジョギングは途中からいつものペースになっちゃったけど、着いてきた提督もなかなか凄いと思ったわ」
提督「やはりあれは普段通りだったんだな...」
五十鈴「というかどうしていきなり?」
提督「俺は身体がたるむのが怖くてな。執務ばかりで運動もあまりしていなかったし...」
長良「そういえば司令官って、提督になる前はスポーツしてたんですよね?」
提督「ああ。体力には多少自信があったんだが...まあ、こんなものだ」
長良「そんなことはありませんよー。あ、次開脚です」
提督(柔軟体操も真面目にやるのは久しぶりだ。前よりか固くなってしまったが、それでもまだ脚が開く)
長良「わぁ!提督って柔らかいんですね!」
五十鈴「あんたは固いものね」
長良「五十鈴も人のこと言えないでしょー?」
提督「んぐぐ...」
長良「まだいけそうですねー。ちょっと押してみていいですか?」
提督「あ、ああ」
長良「よいしょ」
提督(長良が俺の背中をゆっくり押している。開脚しつつ上半身を床に付けるのは少し辛いが、出来なくはない)
提督(どうやら昔よりさほど固くなってはいないようだが...長良さん?何してるの?)
提督(長良さん?長良さん?押すなら手だけでいいよね?背中全体に身体を押し付けなくてよくね?)
提督(柔らかい)
提督「あ、あの、長良?」
長良「どうしましたー?」ニヤニヤ
提督「あ...(察し」
長良「司令官って結構いい筋肉してますねー。柔らかい筋肉って良いんですよー?」
提督「な、長良、そろそろ...」
長良「あ、すいません」パッ
提督(鋼鉄の意志でマイサンの覚醒を抑えた。更に自己嫌悪という追撃で萎えさせた)
提督(世の男たちはこれをラッキースケベを羨むだろうが、俺はそういう訳にはいかないのだ)
提督(憲兵END以前に、仮にも上司の俺が彼女たちの前で粗相を晒すわけにはいかない)
五十鈴「あまり人前でイチャつかないでくれる?撃ってほしいの?」イライラ
提督「...すまない」
長良「あれれー?五十鈴ったら妬いてるの?」
五十鈴「そんなんじゃないから!」
長良「それなら五十鈴もやってみなよー」グイグイ
提督「長良、あまり五十鈴をからかうのは...」
五十鈴「うぐ...何?五十鈴じゃ嫌なの?」
提督「い、いや、そういうことじゃなくて、無理にやらなくていいんだ」
五十鈴「む、無理じゃないわ!五十鈴を見くびらないで!」グイッ
五十鈴(もう!ほんとバカ真面目なとこは相変わらずね!)
提督(今度は五十鈴か...マイサンよ、起きたら去勢されると思えよ!)
提督Jr.「ウィッス」
提督(五十鈴も長良同様、背中に身体を押し付けてきた。くっそ柔らかい(小並感)。あとデカい)
提督(五十鈴の鼓動が背中越しに聞こえる。めちゃくちゃ早くて心配するレベルだ)
提督(ただのストレッチなのになぜこんなことに...)
提督「五十鈴、もういいよ」
五十鈴「わ、わかったわ」
提督「ふぅ...」
五十鈴「ど、どうだった?」
提督「え?」
五十鈴「あ...な、何でもないわ!」プイッ
提督(嘘です。本当は聞こえてました)
提督(五十鈴の反応からして、どうやら思わず口に出てしまったものと見える。曖昧な返答をして正解だったようだ)
提督(だってはっきり答えたらどっちかが不快な思いするの確定なんだよなぁ)
提督(五十鈴ってこういうこと言う子じゃなかったと思うんだけど、俺に限らず、皆も変わってるという事か)
提督(長良もグイグイ来たし、またアオハルを味わうところだった。こんな青春送れた奴は宝くじの一等よりも運がいいから決して忘れるなよ)
長良「司令官、私達も開脚するんで押してもらえません?」
提督「それは五十鈴にやってもらってくれ...」
提督「それじゃ、もうすぐ朝飯だ。シャワーを浴びておいで」
長良「司令官も一緒に浴びます?」
提督「...あまりからかわないでくれ」
長良「失礼しました!それじゃ!」
五十鈴「お疲れ様。また執務でね」
提督「ん?ああ...」
提督(...まだからかわれるのは苦手なようだ)
提督(あ、そういや今日は五十鈴が秘書艦だったな)
***
長良「ふー!気持ちいいー!」
五十鈴「...あんた、今日どうしたのよ」
長良「五十鈴もわかってんじゃない?」
五十鈴「...何が?」
長良「とぼけてもダメだよ。司令官が一緒だったからメニュー増やしても生き生きしてたでしょ」
五十鈴「...やっぱ、増やしてたのね」
長良「一応人だからすぐバテると思ってたけど、思ってたより頑張ってたからびっくりしたよー」
五十鈴「...そうね」
長良「介抱するつもりだったけど、司令官の頑張り見てたらそんな気も失せちゃった」
五十鈴「開脚のときのアレはなんなのよ」
長良「スキンシップだってー」
五十鈴「...あっそ」
長良「五十鈴ほどじゃないけど、長良の良さも知ってもらいたかったの。今思えば邪道だけど」
五十鈴「そうね。そんなことしなくても提督なら長良姉の良さはわかってる筈よ。それに、ああいう事すると提督もまた警戒するわよ」
長良「そうだよねぇ...朝ご飯食べた後に謝るね」
五十鈴(長良姉の言う通り、今日のトレーニングはとてもテンションが上がったわ)
五十鈴(提督に触れられただけで喜ぶなんてね。やっぱり、五十鈴も単純だったのね)
五十鈴(みんなから遅れは取りたくないんだもの...)
長良(最近お話もしてなかったから、ついつい調子乗っちゃった。確かにまずかったかな)
長良(でも、長良たちの良さ、軽巡の良さは忘れて欲しくなかった。それだけは譲れなかった)
長良(司令官なら、わかってくれるよね...?)
遅くなりました