提督「艦娘からのアプローチが怖い」   作:かむかむレモン

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皆と共に

 

 

 

 

 

 

 

遂に来た。

 

小包で来たよ。

 

郵便屋さんが届けるようなノリで来たよ。もっと丁重に扱うべきものじゃないの?

 

 

まあいいわ。とりあえず開けてみる。何か新しい物を買った時のような、言い表せないワクワクがあった。

 

 

 

 

提督「これが...」スッ

 

指輪「オッス」

 

 

 

 

 

小箱の中には指輪が一つだけ。

 

普通は二人分あるものだが、カッコカリだから一人だけなのか。

 

 

 

箱の隅から小さな紙がはみ出ていた。指輪本体の値段らしい...

 

 

 

 

 

700円(ただし円相場は明治に準ずる)

 

 

 

 

 

...注釈がクッソ小さい字で書かれてた。

 

俺は明治の円相場を調べたら、1円でおよそ2万円の価値があったらしい。

 

 

 

...これ詐欺だろ。注釈通りに換算したら約1400万円だぞこれ。

 

まあ限界突破装置だから納得は出来なくないよ?むしろ一つ貰えるとか大盤振る舞いじゃん。

 

でも何故値段の書いた紙切れをわざとらしくはみ出させておく?まさかこれ買えってか?

 

 

 

 

...細かい事はいい。渡す相手は決めてある。

 

磯波からのアドバイス通りにして、もう呼び出してある。

 

 

 

 

 

 

 

吹雪「失礼します」ガチャ

 

提督「ああ。よく来てくれた」

 

吹雪「大事なお話と聞きましたが...」

 

 

 

 

 

 

そう、吹雪だ。

 

ここに着任する直前に、彼女を初期艦に選んだ。

 

俺を見限らず、ずっと陰ながら支えてくれていた。

 

勿論他の艦娘たちも同じだ。だが、吹雪が圧倒的に過ごした時間が長い。

 

今まで俺に着いてきてくれた、感謝を今伝えて、これを渡そう。

 

 

 

 

 

 

提督「...少し、昔の事を思い出してた。吹雪と俺が、ここに着任してから、今の今までを」

 

吹雪「懐かしいですね。まだ一年も経ってないですけど、賑やかになりましたね」

 

提督「ああ。以前は愛想笑いしかしてなかった俺が、今は普通に笑うことができてる」

 

吹雪「司令官に選ばれた理由を聞いた時は悲しかったですよ?」

 

提督「それについては本当に申し訳ない。だから、感謝してるんだ。愛想を尽かすことなく、ずっと居てくれた事を」

 

吹雪「愛想なんて尽かしませんよ。理由が理由ですし、何より、私たちへの待遇で酷い人だとは思えませんでしたから」

 

提督「...そうか。上手く隠せてなかったか」

 

吹雪「バレバレでしたよ」エヘヘ

 

提督「...はは、そうか」

 

 

 

 

 

 

上手く指輪を渡そうと思っていたが、いざ言おうとすると緊張するものだ。昔話に花を咲かせてる場合じゃないぞ俺。

 

 

 

 

 

 

提督「...今までありがとう。吹雪」

 

吹雪「ど、どうしたんですか?」

 

提督「俺には、感謝しかない。繰り返すようだが、ずっと見限らず、練度が限界になるまで、よく俺を支えてくれたね」

 

吹雪「...はい」

 

提督「だから、俺は君に、感謝と信頼のしるしに、これを贈りたい」スッ

 

吹雪「それは...」

 

提督「ケッコンカッコカリの指輪だ」

 

 

 

 

 

 

やばい。俺めちゃくちゃ緊張してる。自分の鼓動が聞こえる。でかいって。

 

 

吹雪も驚いてるのか、困惑してるのか、複雑な表情をしてる。

 

 

恐れるな俺。たとえ拒否されようが、気負う事は無い。俺はここまで成長できた。ここまで立ち直れたんだから。

 

 

 

 

 

 

吹雪「...私でいいんですか?」

 

提督「ああ」

 

吹雪「...受け取る前に、一ついいですか?」

 

提督「な、なんだ?」

 

吹雪「私以外の皆さんにも、指輪を渡してもらえますか?」

 

提督「...え?」

 

 

 

 

 

 

...え?ゑ?

 

 

 

 

 

 

 

 

吹雪「...司令官から貰える事は嬉しいです。でも、私だけ貰ってはいずれ艦隊内に必ず不和が生まれると思います」

 

提督「う...」

 

吹雪「だから、出来るならば皆にも指輪を渡してほしいのです」

 

提督「そ、それって...重婚しろということか?」

 

吹雪「そうです。どうか...」フカブカ

 

提督「うぐ...」

 

 

 

 

 

じゅ、重婚してくれだと!?

 

吹雪の口からそんなこと聞くとは思わなかった。全くの予想外だって。

 

重婚って、殿様か石油王か?な、なんでだ!?

 

い、いやいや、俺は...

 

 

 

 

 

吹雪「司令官が一途なのはわかってます。だから、私の言ってることが不誠実に思われるでしょう」

 

提督「え?あ、ああ...」

 

吹雪「でも、私たちは不誠実なんて思ってません。だって、皆もジュウコンに賛成してるんですから」

 

提督「え!?」

 

 

吹雪「青葉さんから司令官の過去を聞くまではそんなこと思ってませんでした。でも、聞いた後に考えが変わったんです。誰か一人だけでは、本当に幸せにさせられないかもって」

 

吹雪「新しく来た三人も例外じゃないです。皆、司令官を幸せにしたいと言ってくれました。皆が、司令官と共に幸せになりたいんです」

 

吹雪「好きになった相手に尽くす。私も皆も司令官と同じです。ただ、司令官は数が多くなってしまいますけど...もしかして、司令官は他の子で嫌いな子がいましたか?」

 

提督「い、いや、そんなことは...」

 

吹雪「無理に答えなくていいんです。心の内に留めておいても...」

 

提督「そ、そんなことはない!俺は皆のことが...」

 

 

 

 

 

...あれ?声が...

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『何故声が出ないと思う?それは好きだと言いたくないからだ』

 

 

 

『何故だと思う?認めたくないからだ。自分が無意識のうちに一人以上の異性に好意を寄せてたなんてな』

 

 

 

『自分は一人しか好きになれない、愛せないという自身に溺れてただけだ。だからお前は今躊躇っている』

 

 

 

 

 

 

 

 

...そう。そうだよ。

 

俺は、皆に過去を話して、それでも以前よりも距離を縮めようと努力する彼女たちを見て、いつか好きになっていた。

 

駆逐艦だろうが、軽巡や重巡だろうが、空母や戦艦だろうが、誰であっても。

 

それに気付いてしまった俺は、無理やり自分に蓋をしたんだ。過去にあれだけ酷い目にあってる自分が、過去以上に浮かれている姿を恥じてしまったんだ。

 

結局は、自分から過去に縛られていたんだ。

 

悲劇の主人公のままでいようと甘んじてた。

 

 

 

 

 

 

 

 

『ようやく素直になったか。なら、やる事は一つだろう?』

 

 

 

『お前は皆の幸せを願っている。艦娘たちは皆指輪を欲しがっている』

 

 

 

『お互い幸せになる最高のルートがある訳だ。今のお前なら、選べるだろう?』

 

 

 

『だから、今目の前にいる子に、言うべき言葉はわかってるだろう?』

 

 

 

 

 

 

 

 

そうだな。だから、俺は...

 

 

 

 

 

 

提督「俺は、皆の事が好きだ」

 

吹雪「...!」

 

提督「すまない、漸く決心がついた。俺は皆に指輪を渡したい」

 

吹雪「...本気、ですか?」

 

提督「勿論だ。だから、皆を呼んでほしい」

 

吹雪「は、はい!」

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

集会場

 

 

 

 

 

 

 

提督「...皆、集まったな。じゃあ、話をしよう」

 

 

艦娘たち『』シ-ン

 

 

提督「つい先程、ケッコンカッコカリ用の指輪が一つ届いた。俺は吹雪と相談し、皆にも指輪を渡そうという結論に至った」

 

 

艦娘たち『!』ザワザワ

 

 

提督「ただ、これだけは言わせてほしい。やはり不誠実だと思ったり、納得が行かないと思われているかもしれない」

 

提督「それでも俺は、皆のことが好きだ。誰一人、蔑ろにするつもりは一切無い。俺は、好きになった相手に尽くすしか能が無いからだ」

 

提督「だから、本当は嫌だと思う娘は...」

 

 

 

霞『いるわけないでしょ!このクズ!』

 

 

 

提督「はっ!?」

 

霞「あんたの性格なんか把握してんだから、尽くされたい艦娘しか居ないんだから!」

 

妙高「ずっと、ずっと待っていました。提督に好きと言われる時を」

 

飛鷹「遅かっただなんて言わないわ。むしろ、よく言ってくれたわ」

 

長門「ああ、久々に胸と目頭が熱くなってきた!」

 

酒匂「ぴゃあ~!司令大好き!」

 

提督「み、みんな...」ウルッ

 

 

 

 

 

 

...皆が、拒絶どころか歓迎してくれている。

 

昔の俺なら、こんな状況を拒絶していただろう。

 

でも、今はとにかく嬉しいんだ。

 

やっと、彼女たちと想いが繋がって、嬉しいんだ。

 

 

 

 

 

吹雪「司令官」

 

提督「な、なんだ」ウルウル

 

吹雪「さっきまでの司令官だったら、感謝の意で指輪を渡そうとしてましたよね?」

 

提督「...そうかもしれない」

 

吹雪「それじゃ嫌です。カッコカリとあっても、気持ちまで仮のままは嫌です。だから...」

 

 

 

 

吹雪「もう一度、私にケッコンカッコカリを申し込んで下さい」

 

 

 

 

 

...そうだったな。感謝の意だけでは彼女たちは納得しないもんな。

 

今なら言える。ありのままに...!

 

 

 

 

 

提督「吹雪、ずっと支えてくれてありがとう。愛している」

 

吹雪「...は、はい」ウルッ

 

提督「俺とケッコンしてくれないか」

 

吹雪「...喜んで!」ポロポロ

 

提督「じゃあ、手を出してくれ」

 

 

 

 

 

吹雪は左手を前に出した。細くて、綺麗な女の子の手だ。

 

俺は優しく手を取り、薬指に指輪を嵌めた。

 

一瞬、指輪がキラリと光ると、真上からひらひらと桜の花びらが舞い落ちてきた。

 

 

 

 

 

 

妖精「おめでとー」パラパラ

 

妖精「ていとくさん、ありがとー」パラパラ

 

妖精「やっとしあわせになれましたね」パラパラ

 

妖精「わたしたちもしあわせなきぶんです」パラパラ

 

 

 

 

 

ああそうだった。君たちの担当それだったな。

 

 

 

そう。お前たちがあの時、俺の身体の上で遊んでなかったら...俺が気付いてなかったら、今こうして、想いを告げることはできなかっただろう。

 

茶々入れてきたり、変なことしてきたりと腹立たしくもあったが、今は君らにも感謝しかない。

 

 

 

 

 

 

提督「...ありがとう。俺を選んでくれて。俺を彼女たちに引き合わせてくれて」ナデナデ

 

妖精「ふぁぁ...とてもやさしいあたたかさ」トロ-ン

 

妖精「ありがとうていとくさん。しあわせです」トロ-ン

 

妖精「やはりていとくさんのあたたかさはやみつきになります」トロ-ン

 

妖精「わたしたちもだいすきですよ」トロ-ン

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

吹雪「...私も、愛してます!司令官!」ガバッ

 

提督「...!?」

 

 

 

 

 

 

吹雪は妖精を撫で終えた俺に抱き着き、顔を俺に寄せた。

 

首に腕が回り、唇に柔らかいものが触れた。

 

 

一瞬理解できなかったが、理解した途端、自然と涙が零れていた。

 

 

 

 

やっと、感じ取れた。

 

人に好かれているという気持ち、愛されているという気持ちを。

 

言葉にしなくても、吹雪の気持ちが伝わってきた。

 

胸の中から何かが溢れてくる感覚と、じんわりと身体中に甘い痺れが伝わった。

 

 

 

小さな嗚咽を漏らしながらも、ずっと離そうとしない吹雪が、とても愛おしく感じた。

 

俺は自然に抱き締め返していた。もう涙は止まらない。

 

これが本当に、愛されるということなのか。

 

 

 

 

とても、良いものだな...

 

 

 

 

 

 

吹雪「...ぷはっ」

 

提督「...吹雪」

 

吹雪「...あ、す、すいません!つい感極まって...」カオマッカ

 

提督「...とても嬉しくて、幸せだったよ」ギュッ

 

吹雪「あ...///」ポロポロ

 

 

 

 

 

睦月「ていとくー!睦月たちに指輪が来たら、ちゅーしてくださいね!」

 

提督「え、あ、ああ...」ビクッ

 

如月「あんなの見せつけられたら、フライングしたくなるわ...」ハァハァ

 

卯月「口から砂糖が止まらないぴょんんんんん!!!」ダバ-

 

弥生「見てるこっちも、幸せになりました...」ポッ

 

村雨「」カオマッカ

 

蒼龍「いいなー!」

 

飛龍「ちゃんとやってよねー!」

 

 

 

 

な、何だか凄く幸せ者だなと改めて思った。

 

でも、指輪の追加か...

 

 

 

 

 

提督「その、指輪なんだが、俺の貯金だけじゃ、その...」

 

時雨「あ、それなら心配しないで。僕たちはもう自分の指輪を申請してあるから」

 

提督「そ、そうか...ん?」

 

朝潮「明日には届くようです!楽しみで眠れるか不安です!」

 

提督「え?お金は?」

 

霰「霰たちも、ずっと貯金してた」

 

提督「そ、そうなの?」

 

 

 

 

 

マジで?給与はあるけど税金で抜かれるし、相当節約しないと無理だと思うんだけど。

 

 

 

てか指輪来るの早くね?いつ申請したの?

 

 

 

 

 

 

隼鷹「いやー酒を我慢した甲斐があったわ!」

 

明石「何なら指輪に名前でも掘りましょうか!」

 

青葉「いえいえ、その前に司令官の両親に連絡しないと!」

 

陸奥「あ、それは大事ね!お化粧品まだ切れてないか確かめないと」

 

 

 

 

 

 

...え?

 

両親だって?

 

 

 

 

 

 

長良「いやー、みんなで司令官の両親に会うんだね」

 

五十鈴「五十鈴の良さ、いっぱい知ってもらわないと!」

 

羽黒「ちゃ、ちゃんとお話できるようにならないと...!」

 

鈴谷「いやー緊張するねー」

 

 

 

 

 

提督「ちょ、ちょっと待ってくれ。親が何だって?」

 

青葉「あ、すいません司令官!実は秘書艦になる前日に、司令官の実家に向かってたんです!」

 

提督「な、何だと!?」

 

青葉「御両親は重婚にどう思うかは分かりませんが、恐らくOKだと思いますよ」

 

提督「('ω')」

 

 

 

 

 

 

 

な、なんて事だ、いつの間に外堀が...

 

 

 

 

 

 

間宮「きっと喜んでくれますよ!」

 

瑞鶴「安心して、提督さん。何があってもずっと一緒だから!」カオマッカ

 

提督「あ、あはは...」

 

磯波「提督、大丈夫だったでしょう?」ニコッ

 

提督「磯波...お前、昨日のはそういう意味で言ったのか...」

 

磯波「うふふ、私も大好きです」

 

吹雪「司令官、これからもっと賑やかになりますね!」

 

 

 

 

 

ちょっと待て!俺が知らない所でめちゃくちゃ話が進んでたってことだろ!?

 

まさか、全てこの時を見越して...ってことは、吹雪の提案も...?

 

 

 

 

提督「は、はは...」

 

吹雪「死が私たちを分かつまで、みんな傍にいますから」

 

提督「あ、ありがとう...」

 

 

 

 

 

それはいいんだ。俺も望んでたし。

 

 

 

でも、それでも...

 

 

 

 

 

如月「や、やっぱり待ちきれない!」ダッ

 

時雨「おっと、待った方がいいよ」

 

村雨「そ、そうよ!待った分だけキスした時に幸せになれるから!」ウズウズ

 

 

 

 

陸奥「まだ切れてなかったわ」

 

隼鷹「久々に商船時代のおめかしするかねぇ!」

 

飛鷹「私もそうするわ」

 

 

 

 

 

妙高「シンコンリョコウ...どこがいいでしょうか」

 

羽黒(ま、またハグしてもらえるなら...)ドキドキ

 

瑞鶴「ここ行ってみたいなー」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

提督「艦娘からのアプローチが怖い...」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

おわり!

 

 

 

 

 

 





ここまで読んで下さりありがとうございました。

番外編は転載せずほんへのみにします。
もしハーメルンにてオリジナルの作品を書くことがありましたら、その時はよろしくお願いします。


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