【真冬のプレゼント】
ギコギコ、ギコギコと、鋸の音が響きます。
鋸を持つのは紅魔が館のメイド長。その歯の切るは、近場に植わる常緑樹。
一体何をしているのか。私は数瞬、頭に疑問符を浮かべましたが、しかしすぐに理由を察するところとなりました。
時は12月末。その日はクリスマスイブが前日。つまりその木は、クリスマスツリーとなる木であったのでした。
「なるほど、紅魔館はクリスマスを祝うんですね」
「いきなり現れて一番に言うことがそれか? もっと他に言うことがあるだろうに」
レミリアさんは、私の言葉にため息混じりにそう返しました。
「まあいい、お前がそういうやつなのは前からだ。それで、どうした古明地の。何か私に訊きたいことでもあるのか?」
「レミリアさんっていつからサトリ妖怪になったんですか?」
「お前が丁寧語のときは、決まって用事がある時だからな」
「よく見てらっしゃる」
流石は一城の主、という風格ですよね。好き勝手生きてる私としては、流石としか言いようがありません。
「それで? まさかそれを訊きに来たわけじゃあないだろうに」
「はい。それでなんですけど、クリスマスってことはプレゼントの送り合いとかもするんですよね?」
「……それで?」
私の言葉に、レミリアさんの顔が一瞬歪んだ気がしたんですけど、……気のせいですよね。きっとそうです。
「フランちゃんって、どういうプレゼントを喜ぶんでしょうか」
「自分で考えろ」
しまったと私は口を抑えました。さっきのはどうやら気のせいではなかったようです。
これは、レミリアさんのこの顔は。
「用はそれだけか? ならほら帰った帰った」
面倒くさいと思っている時の顔でした。
・ ・ ・
「とまあ、そんなことがあったのよ」
「……あっそう」
「うわフランちゃん冷たい」
と言われても、私にどうしろというのだ。私は呆れてため息をついた。そもそもクリスマスはプレゼントを送りあう祭ではないのだが。……まあ、これはこいしに言ってもどうしようもないか。
「それで?」
「それでって?」
「プレゼント、あるんでしょ?」
私の言葉に、あーそうだったとこいしは巾着袋から小さな箱を取り出した。
「はいこれ」
「ありがと」
お礼を言いながら箱を受け取る。
実際、プレゼントを貰うこと自体は嬉しいのである。なにせ、こんな機会はなかなかないのだから。
とはいえ。
「なにこれ」
貰ったものに良さがあれば、だが。
箱の中身は、真赤の蝙蝠の、なんというか、ださいバッジであった。
「なにって、バッジよ?」
それは分かる。
「どうしてこんなださいバッジなのかって訊いてるの」
「あ、良かった。やっぱりださいでしょこれ」
意味が分からないとばかりに首を振ると、まあまあと言いながらこいしはもう一つ箱を取り出し、中身を見せてきた。
七色のクリスタルが星形に並んでいるバッジだった。
「後でレミリアさんに、これをプレゼントするの。いいでしょ」
なるほどと私は納得した。つまりこれは、お姉様のモチーフバッジか。
そうしてもう一度手元のバッジをよく見れば、なるほどなかなか愛嬌がある。
なにごとも愛着、と言ったところか。
「……よく見てるわね」
「照れるー」
「ありがと、嬉しいわ」
「どういたしまして」
お礼を言って、私はバッジを帽子に付けてみた。
「……似合わないね」
「知ってた」
目を閉じた方が見えるものも、きっとあるのでしょうね。