最強の魔法使い(自称)が暴れるそうです。RE: 作:マスターチュロス
【あらすじ】
ヴィラン連合と繋がっていたカメリア刑務所を脱獄し、世界中を引っ搔き回した結依魔理沙。彼女の理想の人生の歩む上で、自分が"世界を滅ぼしかねない存在"だということと、"刑務所の脱獄囚"という経歴が非常に邪魔だったため、先進国を中心に"結依魔理沙の処遇に関する国際条約"を制定。そしてなんやかんやヒーロー公安委員会に所属することになった(本人の希望)。
そして刑務所脱走から1年が経過した。
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おこちゃま戦争(5話)
刑務所脱走から1年、体感では20年以上経過したが本当に大変だった。情報規制のおかげでマスメディアに私たちの情報が流れることは無かったが、脱走事件については大々的に放送されてしまった。社会への不安を煽るキッカケになってしまうかと思いきや、アメリカのヒーローたちが脱走した犯罪者を捕まえたというニュースが次々と流れたことで逆に大盛り上がりし、ヒーロー業界へ注目度は大幅に上昇した。
なお、実際に脱走者を捕まえたのは私で、捕まった脱走者は全員もれなく終身刑(と見せかけたの死刑)となり、色々と思うところはあった。捕まえた脱走者の中には知り合いもいたが、お互いに殴りあったことで決着をつけた。思い残すことは、無い。
これで全てが丸く収まったかと思いきやそうでも無く、今でも反社会組織や条約未締結国からの刺客に襲われることがある。あの条約はあくまで国家における結依魔理沙への対応を改めるものであり、そういった人にとっては全く関係の無い話なので襲われるのも仕方ない。
とはいえ住所もバレてるので近いうちに引越ししたいが、移住費やら何やらお金が足りないので後1〜2年はここに滞在しなければならない。しかし何もしなければ襲われるだけなので、魔理沙は常時気を張ることで敵の位置を常に把握するようにした。半径1kmが効果範囲内なので、見つけ次第早急に始末する。警察並に人間シバいてる気がする。
さて、そんないざこざは置いといて最近新しい趣味を見つけた。あ、髪の毛ソムリエは今でも続けている。個性は多いに越したことはないし、 新たな戦闘技法の開拓に髪の毛ソムリエはかかせない。隙あらば髪の毛は捕食するつもりだ。
……話が少しそれたが、趣味というのはそう、
私は俗に言う異形個性持ちであるため、初対面の人に会うとだいたい怯えられたり、見下されることが多々ある。この地域はまだマシな方だが、場所によってはかなり酷い扱いを受けることもあるらしいので、この行動は異形個性の地位向上に繋がるかもしれない。
今は自分のためだが、いつか人のためになる……ということで私は今ゴミを拾っているのである。
「ん」
魔理沙は黒紫に染まった右腕で周囲一帯を薙ぎ払うと、黒いモヤに包まれたゴミたちは一瞬にして別世界へと隔離された。
ユニークスキル『
「魔理沙ちゃんは今日もえらいね〜〜」
「助かるよぉ〜〜」
「キラッ☆ミ」
異形魔理沙が絶対にやらないような笑顔と片目ピースを、おじいちゃんおばあちゃんにサービスする結依魔理沙。
日本はまさに大高齢化社会、どこもかしこもおじいちゃんおばあちゃんだらけ。すなわち、おじいちゃんおばあちゃんの心を制した者こそが日本を征するのだ。クックックックッ……
なんてくだらないことを考えながらゴミ拾いを続けていると、遠くに奇妙な子どもを見つけた。子どもにしてはファッションがやけに派手だったのでつい目で追ってしまったが、よくよく見ると誰かに似ている。
「あれは…………?」
なんか金髪に少し紫がかったような頭髪に、青い瞳、そして貴族のような雰囲気がでてる彼は…………?
「まさか、メルスィーの人!?」
「メルスィー? 誰かが僕の輝きに見惚れたかい?」
何故ここにいるのか、何故この街で平然と歩いているのか、まさかこのタイミングで主要人物の一人に出会うとは思わなかった。転生してからかなりの時間が経過しているため名前が出てこないが、確か青山……くん、だ。
全然思い出せないのでタグを確認した。彼の名前は
だがしかし、私という
私はせめてものの謝罪として、青山くんの個性『ネビルレーザー』を受け取ることにした。せめて個性だけでも活躍させてあげたいが、使う機会は来るのだろうか。
「どこにいるのだい、マドモアゼル? 僕が君をロマンスに連れてってあげるよ☆」
ブワッ!!
「ウワッ☆」
魔理沙の超高速移動によって発生した突風が青山の優雅な髪の毛を吹き飛ばし、舞い上がった髪の毛から1本だけ引き抜くと、魔理沙はそのまま遠くへ走り去っていく。
さようなら、青山くん。いつかまたどこかで会おう。
「……またねッ☆」
こうして、青山と一期一会の出会いを果たした魔理沙は、両親から頼まれたおつかいを果たすべく最寄りのスーパーへと向かっていった。
■
一旦家に帰ってお昼を済ませた後、私は散歩に出かけた。
散歩の途中、私はさっそく手に入れたネビルレーザーの使い道について考えていたが、やはり奇襲用として使うのが1番な気がする。常識的にへそを警戒する人間などいるわけがないから、意外と敵に刺さるかもしれない。
魔理沙は何気なく近くの公園を横切ると、見るからに修羅場な光景が見えた。
一人の子どもに対して3人がかりで相手する子どもたち。そしてその間に割り込んで両手を広げる一人の子ども。遠目からだとじゃれ合いにしか見えないが、怯えた声と微かな涙の匂いから考えて修羅場としか思えない。
しかし大量出血だとか全身打撲とかそういうレベルの怪我があるわけではなく、あくまで一般レベルの喧嘩に留まってる以上、無闇に手を出すのは良くないと察した。
「ひどいよかっちゃん……。ないてるだろ……? こっ、これいじょーは……、ぼくがゆるしゃないぞ!」
しかし、よくよく見るとどこか見覚えのある特徴をしている。緑色と金髪、ソバカスとツリ目、どこかで見たような気がした。
関わってはいけないと思いつつも、草陰から4人のやり取りを覗く魔理沙。何か重要な場面を見ているような、運命的な何かを感じたためもう少し様子を見ることにした。
「無個性のくせに……、ヒーロー気取りかァ
"デク"という単語にさらに引っかかる魔理沙。絶対聞いたことある名前だったので必死に能力で情報ソースを探す。
"地球の本棚"にアクセスした魔理沙はキーワードを元に検索を行う。すると、1冊の本が魔理沙の脳内に現れた。その表紙には『緑谷出久』と書かれており、最初の数ページだけ読んで彼の素性の概要を把握した。その結果、今自分と彼が直面しているものについて理解した。
──── ここ原作第1話!? ─────
またしても奇跡的な場面に遭遇した魔理沙。因縁の始まり、緑谷出久と爆豪勝己の関係が描写された最初の場面。その瞬間に魔理沙は立ち会ったのだ。
嬉しさのあまり物音を立てそうになったが、精神安定スキルの強制執行により魔理沙は冷静さを取り戻した。
(でもここで私が介入したら確実に原作ブチ壊れる……ッ!!)
僅かな理性が私にブレーキをかける。だがよくよく考えて欲しい。この世界、私がいる時点で既に原作は崩壊しているのである。つまり今更なのである。
(……じゃあ、ヨシッ!!)
理性の天秤が崩れた瞬間、魔理沙は勢いよく駆け出し、彼らの間に割って入った。
「誰だお前」
「かっちゃん! あいつ髪の毛食べる変なやつだよ! てっちゃんがいってた!」
隣の男の子がいきなり私の素性の一部を暴露し、まだ何も言っていないのに魔理沙は3人からドン引きされてしまった。事実だし何も言えないし冷や汗も止まらない。
「きみは……だれなの……?」
酷くか細い声が私の背後から聞こえる。こっそり背中に小さい目玉を生成して様子を見たが、緑谷くん自身には特に怪我は無さそうだ。
ただ緑谷くんが庇っている子はところどころ擦り傷が出来ているので、守ってあげるべきだ。
魔理沙は振り返らず、緑谷の問に応える。
「……私は、君たちを助けるヒーローさ」
魔理沙は責任を持ってヒーローを名乗り、彼らを守ることにした。
見捨てようとした自分がヒーローを名乗るのは烏滸がましいような気がしたが、前に出た以上逃げることは許されない。
「ヒーロー? ハッ! オンナのくせになにいってんだ。邪魔すンなら容赦しねぇぞ」
自分の力に余程自身があるのか、爆豪は全く臆することなく、手の平で小爆発を連続で起こしながら威嚇してくる。
「おめぇこそ生意気言ってっとおめぇのランゲルハンス島ピンポイントでブチ抜くかんなぁ?」
互いに脅し、睨み合い、火花を散らす二人。
魔理沙は爆豪についてある程度知っているが、爆豪にとって魔理沙は未知の異物。正体不明の存在だが、そこらへんの
しかし爆豪以外の二人はノリノリで魔理沙をブッ潰すつもりでいた。
「こいつなまいきだ!! ぜったいヴぃらんだよヴぃらん! おれたちでヴぃらんをやっつけようぜ!」
「さんせー!!」
遂には私をヴィラン扱いし始め、二人は正義という名の暴力に身を任せる。
「んじゃしねぇえええええええ!!!」
向かってきた3人が奇声を発しながら突っ込んできた。爆豪と指伸びるやつは個性を頂いてるから、あの翼の子は後で髪の毛をいただこう。
というわけでまず、向かってきた爆豪くんの拳をかわし、他の2人をデコピンで吹っ飛ばした。デコピンついでに『一日中アイスクリーム頭痛を負う呪い』を二人にかけ、彼らを無力化する。
「あたまがア゙ア゙ア゙ア゙ア゙!!!」「ぐぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
「寝たら治るよ」
呪いの解除方法を教えている最中に爆豪が再び右手で殴りかかってきたが、それも難なく横に避けた。
「なにかわしてんだクソが!!」
当たらないせいか逆ギレする爆豪。今まで色んな組織に狙われてきた人間が今更子どもの拳ごときに当たるわけもなく、爆豪の攻撃は全てカラぶってしまう。
しかし爆豪は諦めない。何度も何度も魔理沙に立ち向かい、尊厳のかかった拳を何度も振り回す。これ以上避けるのもアレなので決着をつけさせてもらおう。
「そよかぜステップ」
一歩踏み出す度に風が舞い、さらにもう一歩踏み出すことでそよ風が吹き、そして私と爆豪がすれ違った瞬間、爆豪の真下から強烈なつむじ風が発生し、爆豪の体を遙か空の彼方まで吹っ飛ばした。
だがこれで終わりじゃない。せっかくだしここで使ってみるとしよう。
「ネビルレーザーァァァァァ!!!」
狙いを定めて放ったネビルレーザーは天高く舞い上がった爆豪の体に直撃し、さらに空高く舞い上がった。
「「かっ、かっちゃああああん!!」」
爆豪の取り巻きが頭痛に苦しみながら悲痛な叫びをあげる。
「どう、君たちも飛ぶ? 朝○龍もビックリするくらいの飛びっぷりを」
「うわぁああああ嫌だあああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!」
怯えた二人は全力で退却し、一目散に逃げていった。
とりあえず完全決着したので、私は『距離を操る程度の能力』で空中に舞い上がった爆豪を少し離れた地上に下ろした。言い負かすことは出来なかったが、ほぼ撃退したといってもいいでしょう。
「あ、あの……ありがとう!」
緑谷は緊張しながらも、満面の笑顔で感謝した。
「どういたしまして。じゃ」
「まっ、まって!」
ササッと帰ろうとした瞬間、急に呼び止められてしまい足を滑らせかけた。首が180度回るところだった。
「これ……」
緑谷は自身の髪の毛を一本引きちぎり、おずおずと差し出してきた。なぜ彼に私の趣味が共有されているのだろうか。教えた記憶微塵もないのだが。
まぁ、お礼なんだろうな。お礼、なんだけど、別に髪の毛が特別好きってわけじゃないんだよな。流石に人間の腕を食うのは気が引けたから髪の毛にしただけなんだよね。うん、まぁ、一応貰うけど。
「あ、ありがとう……?」
複雑な気持ちのままとりあえず受け取り、そのまま立ち去る魔理沙。味は……たぶん無いな。無いけど、一応貰ったものだし食べておくか。貰い物だし。
何も味がしなかった。
いろいろ紹介
暴食者:魔物の主『リムル・テンペスト』のユニークスキル。食べたものを隔離し解析することができる。転生したらスライムだった件。
青山優雅:タグでよく除外される子。キザで性格がもうネタ枠…だと思っていた時期が私にもありました。
ネビルレーザー:青山優雅の個性。へそからビームが出る。出しすぎるとお腹を痛めるらしいが魔理沙は痛めない。
そよかぜステップ:イナズマイレブンの松風天馬がつかうドリブル技。
『距離を操る程度の能力』:東方Project、『小野塚小町』の能力。その名の通り距離を操る。