最強の魔法使い(自称)が暴れるそうです。RE:   作:マスターチュロス

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【あらすじ】

おつかいを頼まれ、サクッと能力で済ませた後の帰り道に、魔理沙は奇妙な人間に出会った。その者は白髪で黄金の瞳をもち、白い軍服を来た幼い子だった。

しかしその子の正体は自己進化型人工知能『NOUMU』コード000。つまり高性能アンドロイドである。『NOUMU』という言葉から察するにヴィラン連合の仲間であることはお察しで、魔理沙の広範囲爆裂攻撃に耐えたことからも、明らかに対策してきていることが分かる。

目的は"結依魔理沙の捕獲"。果たして魔理沙は彼女の猛攻に耐えられるのか。





ヴィジョーカーvs結依魔理沙(8話)

 

 

 

「想定の数値を遥かに上回っています。対策レベルの大幅な修正、および最大警戒レベルでの対処が推奨されます」

 

 ヴィジョーカーを一機失ったコード000は再び装備を換装し、一本のスナイパーライフルと扇子のようなものを取り出した。

 

「ヴィジョーカーじゃない?」

 

 先程まで余裕の態度を取っていた魔理沙だが、また見覚えがあるようでない武器が登場し首を傾げた。

 

(随分とサイバーテック風味のデザインだな。アレもヴィジョーカーと同じ兵器なのか……?)

 

 ただのスナイパーライフルと扇子でないことは分かっているが、記憶が欠落しているため思い出せない。

 

「ミッション追加。目標対象を無力化する、または損傷率70%を超えるまで、戦闘を続行します」

 

 そう言うとコード000はスナイパーライフルを構え、結依魔理沙に照準を合わせた。正直普通のスナイパーライフルなら素手で弾丸を止められるし、ここまで距離が近いなら接近して殴ることも、逃げに徹することも出来る。

 

(ここは"一方通行(アクセラレータ)"で様子見だな)

 

 ベクトル反射能力を起動し、半無敵化した結依魔理沙。鍛える前は脳への負荷が大きすぎて微塵も使えなかったが、20年以上の時間停止によって能力が体に馴染み、ある程度扱えるように成長した。

 ベクトル反射は文字通り"ベクトル(力の方向)"を反射させることで、威力関係なく跳ね返す。魔法だろうが物理攻撃だろうが関係なく、"ベクトル"という概念を共有してるものに対しては何であろうと反射出来るのだ。

 

目標(ターゲット)固定(ロック)

 

射撃(ファイア)」パァン!! 

 

 わざわざ宣言してから撃つとは律儀だが、弾丸を射出している以上ベクトルが絡む。なのでどんな絡繰があろうと一方通行(アクセラレータ)を貫通することは出来ない。

 

「あ?」

 

 しかし、結果は魔理沙の予測通りにはならなかった。

 

「当たった?」

 

 パァン!! パァン!! パァン!! パァン!! 

 

 銃弾が一方通行(アクセラレータ)を無視して魔理沙の体を貫き、体に5つの風穴が空いた。

 自身の傷を認識した瞬間、激痛が脳に向かって走りかけたため、魔理沙は咄嗟に痛覚をシャットダウンした。

 しかし骨、筋肉、臓器を丸ごと削り取られため、立てなくなった魔理沙は大量の血液を流して地面に倒れた。

 

(……反射が効かない?)

 

 溢れ出た血液を操作し、何とかして体内に留めようとする魔理沙。そして再生能力をフルに発動し、細胞を増殖させることで元の姿に戻った。

 

 パァン!! 

 

 また、撃たれることを未来予測で察した魔理沙は弾丸が発射される前に瞬間移動で回避したが、当たってないはずなのに何故かまた風穴を開けられている。弾丸の軌道も見えなかった。スナイパーライフルの弾などせいぜい秒速600〜1000mで、動体視力も運動神経も化け物級に優れた私なら見てから避けることも出来るはず。

 

 なのに撃たれた。反射も貫通した。反射に関しては能力を無効化する弾だとしたら分かるが、弾速が変わるわけではないのでどちらにしろ避けられる。

 

(避ける前に、()()()()……?)

 

 避ける前……いや、一方通行(アクセラレータ)を発動する前に弾丸を撃てば確かに私に当たる。しかし、私が一方通行(アクセラレータ)を発動した時、アイツは銃を構えていない。つまりあの瞬間は撃っていない。

 

 だとすると、アイツは"何"を撃ったのか。

 

(ははーん? なるほどね?)

 

 仕組みを理解した魔理沙は連続で瞬間移動しながら右腕に魔力を溜め、その最中に未来予測を行った。コード000が銃を構えていない、ほんの少し先の未来を。

 

 するとそこには、瞬間移動を繰り返しているにも関わらず右手を撃ち抜かれた魔理沙の姿があった。しかし、コード000は銃を構えておらず、弾丸の軌道も見えない。"弾丸に当たった"という結果だけが残っている。

 

(あのスナイパーライフル、()()()()()()()弾丸を撃ってくるタイプだ!!)

 

 厄介すぎる能力が判明し、頭を抱える魔理沙。そういえばこいドキの月の兵器にそういう物があったのうっかり忘れていた。つまり扇子の方も月の兵器確定で、アレはおそらく綿月豊姫が持っていた、『物質を素粒子レベルに分解する』扇子なのだろう。

 

 スナイパーライフルの方は確か近い過去に向けて放つ弾であり、遠い過去に向けて撃つことは出来なかったはずだ。なら対策はいくらでも思いつく。1番楽なのは因果律操作だが、ここはもっと派手にいってみよう。

 

「メイド・イン・ヘブン!」

 

 魔理沙の背後に1つ目の白いケンタウロスのような見た目をしたスタンドが現れると、時計の針の回転がドンドン加速していき、結界内の時間が先へ先へと進む。

 

 メイド・イン・ヘブンは生き物を除くすべての時間を飛躍的に加速させる能力をもつ。すなわち、怪我をして血を流しても時が加速しているためすぐに乾き、ボールを投げれば目に見えない速度で飛んでいき、漫画を描こうとしてもインクが秒で乾くため描けない。

 

 つまりメイド・イン・ヘブンをくらった相手は"世界から置いていかれる"。が、メイド・イン・ヘブンをもつ私だけは世界の加速に適応することが出来る。

 

 あのスナイパーライフルは近過去に向けて撃つが、メイド・イン・ヘブンが発動した時点で一方通行(アクセラレータ)が発動する前の時間軸は既に"遠い過去"となり、もう狙うことは出来ない。後はメイド・イン・ヘブンを維持したまま一方通行(アクセラレータ)を発動させれば、あのスナイパーライフルは産廃と化す。

 

「……! 局所的な時間の加速を検知。目標(ターゲット)、消失」

 

「私に手を出したこと、あの世で悔い改めろ」

 

 コード000はスナイパーライフルから"ヴィジョーカー"に換装したが、時間加速に適応した魔理沙は爆発する1000本のナイフを生成し、一斉に射出しつつ背後に回り込む。

 しかし、コード000はナイフに見向きもせず、背後に回り込んだ私に合わせてヴィジョーカーを展開し、100mクラスの金色の拳を魔理沙に目掛けて放つ。

 

(アレ……適応してる?)

 

 本来なら反応出来るはずが無いのだが、何故かコード000は私の動きを読んで攻撃を撃ってきた。機械の予測機能か何かだろうか。よく分からないが適応してるというならばさらにこちらが速く動けばいいというもの。

 

光化静翔(テーマソング)

 

 魔理沙の全身が輝き出し、世界の加速に加えてさらに自分自身が光速に達し、物理法則を完全に無視した異次元の動きでヴィジョーカーの拳を粉々に粉砕した。

 

 あまりに速すぎる動きに、コード000は未だ破壊されたことに気づいていない。その隙に魔理沙はコード000が認識出来ない速度で拳を10000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000001回叩き込み、跡形もなく叩き潰した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 コード000は、消滅した。

 

「やっべ、やり過ぎた……」

 

 アンドロイドと言えど"消滅"はマズイ気がしたので、魔理沙は大嘘憑き(オールフィクション)で因果律にに干渉し、"殴ったこと"を"無かったことにした"。

 

「……!?」

 

 現世に戻ってきたコード000は自身の状態を再認知し、そして意味不明な現象を起こした魔理沙に目を向ける。

 

 コード000は、理解できなかった。どんなに修正して最適な行動を行っても、かの存在はそれ以上の理不尽で押し潰してくる。そして存在するしない権利すら、かの存在が握っている。

 

「…………」

 

 その時、アンドロイドは初めて、"絶望"を味わった。初めての感情だった。人の形をした機械はここで初めて人になった。しかしそれは喜ばしいことではなかった。

 

「で、まだやる?」

 

 魔理沙の問いかけに対し、コード000は一度状況を振り返った。

 

 現在の損傷率は0%。いつの間にか受けたダメージが回復しきっている。これなら戦闘を続行することは可能だが、人工知能を搭載したコード000の記憶領域に、コード000が結依魔理沙に消されたという事実が残っている。この情報がバグでないとするならば、今の機能で結依魔理沙を捕まえることはおろか、逆に破壊される危険性がある。いや、既に破壊されたのだ。これ以上の戦闘続行は危険と判断する。

 

「……ミッション失敗。撤退します」

 

「それはよかった」

 

 

 

 魔理沙は能力を全解除した後、時間停止でコード000の服の下に発信機を付けた。

 

「……不信な電波を感知。発信機であると予測」

 

「チッ、バレた」

 

 コード000は付けられた発信機を壊すと、即座に空中へ飛び上がり、その場から離脱した。

 

「まぁ、流石にあそこまでコテンパンにしたから、しばらく来ないでしょ……」

 

 魔理沙はホッと胸を撫で下ろすと、大人しくお家に帰ることにした。メイド・イン・ヘブンの影響は結界内だけに留めたため、元の現実世界だとせいぜい10分程度しか経過していない。とはいえ時刻は18時をとっくに過ぎているため、親が心配するだろう。海浜公園に寄る予定だったが、十分戦ったので今日は無し。帰って飯食って寝よう。

 

「あ……れ?」

 

 突然、視界がぐにゃりと歪み、バランス感覚を失った魔理沙は車道のど真ん中で倒れ込んだ。それに気づいた車の運転手が急ブレーキをかけ、どけるよう注意を促すも、魔理沙は反応すらままならなかった。

 

(こっちもこっちで……やり過ぎた!!)

 

 結界の維持、局所的な時間加速、ベクトル反射、光速移動、因果律操作、その他様々な能力を行使し過ぎた結果、結依魔理沙の体は限界を迎えてしまった。

 自分がまだ5歳児であることを考慮せず、余裕ぶって能力乱発したらこの様とは、我ながら情けない。周囲への被害は一切出てないことは我ながら素晴らしいが、もう少しコスパ良く敵を倒すべきかもしれない。

 

(あっ、ヤベ。血も出てきた……)

 

 轢かれていないというのに全身の穴という穴から血が溢れ出し、集まってきた人たちの悲鳴が響く。もしかしたら、思った以上に代償デカイかもしれない。頭痛も激しいし、血も出るし、口の中気持ち悪いし、本当にヤバい。今他の反社会組織とか条約未締結国からの刺客が来たとしても何も出来ない。人も集まってきたからドンドンリスクも増えるし、感知能力も今死んでるからどこから襲われるか分からないし、ヤバいし終わるしマズイしヤバいし終わるしマズイヤバいヤバいマズイヤバいマズイマズイヤバいマズイヤバいヤバいヤバい落ちる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ○月✕日、午後6時18分。結依魔理沙、気絶。

 

 

 






【色々紹介】

●自己進化型人工知能『NOUMU』

→新型の脳無。旧型より計算能力が非常に高くて強い。コードナンバーでわけられている。とある研究施設で得た貴重なデータを元に作られた(コード000を除く)。

一方通行(アクセラレータ)

→とあるシリーズに登場するキャラクターもとい能力の名称。触れたベクトルの向きを変換する能力。

●メイド・イン・ヘブン

→ジョジョの奇妙な冒険第6部に登場するラスボス、『エンリコ・プッチ』のスタンド。生物以外のすべての時間を加速させる能力をもつ。なお、魔理沙は結界内限定で発動していたが、もし外でメイド・イン・ヘブンすると時間の加速によってすべての生物が世界の終焉を見届け、新たな世界を迎えることになる(世界が一巡する)。

光化静翔(テーマソング)

→めだかボックスのキャラクター、『日之影空洞』の能力。光の速度で動くことができ、これによる身体的負荷は一切負わない。

大嘘憑き(オールフィクション)

→めだかボックスのキャラクター、球磨川禊の能力。因果律に干渉しあらゆる事象・現象・概念を無に帰す能力。一度無に帰したものを元に戻すことは基本的に出来ない(虚数大嘘憑き(ノンフィクション)を使えばいける)。


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