最強の魔法使い(自称)が暴れるそうです。RE:   作:マスターチュロス

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悔いはない




イカれた個性(1話)

 

 

 

 オムツが蒸れる今日この頃、私、結依楓真もとい『結依魔理沙(けつい まりさ)』は赤ん坊用ベットでゴロゴロしていた。どうやら上手く転生できたようである。

 

「だぁ」

 

 今のところこれしか喋れない。当然だ、まだ生まれたてホヤホヤの赤ちゃんでなおかつ、言葉など教えられていないのだ。 知ってるけど。

 

 そういえば個性は何だろうか。あの時ごちゃごちゃしていて何も覚えていないが、おそらく私にも何かしらの力が備わっているはず。

 そういうことで試しに手を前に突き出してみたが、ここで結依魔理沙はあることに気づいた。

 

 

 ───── どうやるの? ─────

 

 

 プ〇フェッショナル仕事の流儀のテロップが脳裏に浮かび、結依魔理沙は頭を抱えてしまう。この世界において"個性"というのは身体機能の一部であり、走ったり、ジャンプしたりするのと同じように使えるはずなのだがイマイチよくわからない。こういう時は大抵イメージが大事だろうから、今度は動かすイメージを持ちながら哺乳瓶に向かって念を送り続けた。が、何も起こらない。

 

 おそらく自分はまだ個性に目覚めていない。が、この世界では4歳になるまでには必ず個性が発現するようになるのでまだ大丈夫だ。早ければ明日にでも目覚めるはず。

 

 それはともかく、私、結依魔理沙は今重大な問題に直面していた。それはオムツの交換、赤ちゃんである私は勝手にう〇こを漏らし、汚ない尻を母にみせなければならないのだが、これが死ぬほど恥ずかしい。無駄に意識があるせいで妙に屈辱的だ。これが後半年から数年ほど続くと思うと、なかなかキツイものがある。

 

 

 

 はやく大人になりたい。

 

 

 

 

 

 ■

 

 

 

 

 

 

 あれから4年……特に何もなかった。しいて言うならば父親が転職したので、母がその祝いとして家族旅行を提案したのだが、私は赤ちゃんなので旅行当日の日は保護施設に預けられてしまった。

 最近は旅行関係なく保護施設に預けられることが多く、よく精密検査やら健康チェックを受けることが多くなった。理由は分からない。

 

 そんなこんなで私はこの4年間全く知らない人間に身の回りの世話をされてきたのだが、私が3歳になったあたりから周りの視線がおかしいことに気づいた。

 なんというか、()()()()()()()のだ。施設の人間もそうだし、私と同じくらいの年齢の子には顔を見ただけで泣かれてしまう。さらには自分より3歳ほど上の子たちに「気味が悪い」と言われ、容赦なく殴られたこともあった。色々と少し傷ついたが、いつか絶対しばくと心に誓い、拳を下ろした。

 

 何はともあれ、お待ちかねの個性把握タイムだ。結局4年もかかってしまったが、その分楽しみで仕方ない。施設にいたときはずっと自分の個性について考えていたし、延々と個性に目覚めた時のシチュエーションを妄想することで正気を保っていた。それが生きる時だ。

 

「はァッ!」

 

 個性が使えるようになったとき、結依魔理沙は感覚で理解した。あの時感じた感覚を再現できるよう、全身に力を込め、何かが起こって欲しいと強く念じた。しかし、特に体が変化したわけでもなく、足が速くなったとかそういう感覚もない。これは騙されたか、それとも地味すぎて気づかないのか。それすらも分からず周りを見渡すと、何故か職員たちが微動だにせず静止していた。それだけでなく、空気の流れや水の動きまで停止し、世界から色と音がかき消されてしまう。

 

 

 ──── 時間停止 ────

 

 

 止まった時の世界は光すら微動だにしない。人間のもつ五感は時の中では機能せず、何も見えない、聞こえない、匂いすらない。ただ、自分だけは、この世界で、現実世界と変わらず動けるのがわかる。

 

 力を抜くと世界はいつも通り動き出した。つまり私の個性は『時間停止(タイムストップ)』かも知れない。

 どう足掻いても強い力を手にした結依魔理沙の頬が少し緩んでしまう。これなら施設内で私を虐めた馬時加々良(♀)にちょっとした仕返しが出来るかもしれない。そう喜んだ矢先にさらなる事件が発生した。

 

 ゴゴゴゴゴゴ スッ

 

 私の背後から奇妙な黄色い人影が現れ、こちらをじっと見つめている。私も振り返ってその体を見てみると、身長は成人男性並の大きさでガッチリとした肉体をしており、所々にハート型のなにかが手や頭にあり、顔はプロレスラーのマスクに似ている。

 試しに結依魔理沙はこの黄色い何かに触ってみたが、精神エネルギー体なので触っても体温は感じられず、若干ひんやりしてきる。

 

 これはアレだ。すっごく見覚えがある。

 

「『ザ・ワールド(スタンド)』だああああああああああ!!!!」

 

 ザ・ワールド、それはジョジョの奇妙な冒険第3部のラスボスであるDIOの幽波紋(スタンド)であり、時を止める能力と圧倒的なパワーによって主人公である承太郎たちを苦しめた最強のスタンドである。

 そのスタンドが出てきたということはつまり、私の個性は『ザ・ワールド』、もしくはDIOそのものになったということになる。

 

 

 ───────そういえば、生まれてから一度も自分の姿を見ていなかったような⋯⋯

 

 

「ッ! 鏡ッ!!」

 

 私は急いで、家の中にある鏡という鏡を探し回ったが、この家あろうことか鏡が見つからない。いったい両親は今までどうやって身嗜みを整えてきたのか問いただしたいところだが、居ないんじゃ仕方がない。自力で探し出すしかないだろう。

 洗面台や玄関、トイレの中も探してみたが見つからず、今度は母の部屋の中で探しまくった。タンスの中や本棚の上を漁っても見つからなかったが、母のバッグの中に手鏡が一つだけ入っており、魔理沙はすぐにその手鏡を開いた。

 

 そこに映っていたのは高身長のガタイのいい吸血鬼かと思いきや、背の小さな金髪の女の子だった。

 

 しかしその子の顔と瞳は人間とは思えないほどに真っ黒で、口を開くと想像以上に大きく、親と比較しても微塵も似てる要素のない正真正銘の怪物が、そこに映っていた。

 

 

 

 

 こんなやつ、見れば1発でわかる。

 

 

 

 

 私は東方異形郷の『異形魔理沙』になった。

 

 

 

 

 異形魔理沙、通称『マリッサ☆』は東方Projectの二次創作作品『東方異形郷 』のキャラクターだ。容姿は東方Projectに登場する『霧雨魔理沙』に似ているが、服や髪の毛がボサボサで、何より顔が黒い。第4の壁を突破したメタ発言が多く、嗜虐心旺盛の危険人物だが、褒めるとこは褒めるし、約束は破らない。日本語が下手くそでたまに何を言っているか分からないが、会話はできる。

 

 そんな彼女が有している能力、それは『食べた相手の体の一部を死ぬまでパクる』能力である。彼女はその力を用いてあらゆる平行世界を襲撃し、片っ端から能力をパクることで数え切れないほどの力を蓄積し、その力を用いてさらに別の平行世界を襲う⋯⋯を繰り返した結果、あらゆる世界のあらゆる力を持った化け物になってしまった。

 

 つまりさっき出た『ザ・ワールド』は、異形魔理沙の力の一部として発現しただけに過ぎない。

 

 これがいったいどういう意味を持つのか、それはつまりこの世界のパワーバランスの崩壊を意味していた。

 個性が絶対であるこの世界で、ブッチギリで最強の個性が出現したとなると、それを良しとしない連中や悪用しようとする輩が増えるのは明白。次の日には攫われて、一日中体を解剖されてもおかしくない。それほどまでに結依魔理沙という存在は、あまりにもバグっていた。

 

 

「よっしゃぁぁぁぁぁぁー!!!!!」

 

 

 しかし当の本人は、その事実を全く分かっていなかった! 

 

 

 

 

 

 

 

 

 








幻想郷:東方Projectの舞台。忘れられた妖怪や神様などが住む世界。「幻と実体の境界」と「博麗大結界」によって守られている。

空条承太郎:ジョジョの奇妙な冒険第3部主人公。第2部主人公 ジョセフの孫。スタンドはスタープラチナ。DIOが復活した影響でスタンドに目覚める。スタンド発現の悪影響で重体になった母 ホリィを救うために承太郎たちはDIOを倒す旅に出た。


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