最強の魔法使い(自称)が暴れるそうです。RE: 作:マスターチュロス
【あらすじ】
結依魔理沙13歳、✝︎黒の境界✝︎という名のオカルト研究会に所属し、仲間入りを果たした。
【黒の境界のメンバー】
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【速報です。本日午前4時27分、住■大■神社にて火災が発生しました。この火災により■■県●●市在住の××さんが重度の火傷を負い、他数名の住職者が軽傷を負いました。原因は未だ不明で、現在も調査が行われています……】
【速報です。本日午前7時31分、愛■神社で保管されていた御神体が何者かによって破壊されました。第一発見者である愛■神社の神主曰く、"ある日突然、何の前触れもなく御神体が砕けた"とのことで、現在も調査が行われています……】
【速報です。本日午前8時3分、○○県××市在住の■■■■(7)さんの遺体が発見されました。発見時、遺体は何者かの手によってバラバラにされた状態で発見されました。犯人は未だ特定に至らず、現在も調査中で……】
■
【結依魔理沙が中学校に入学してから半年後……】
「ふぅ……」
授業終わりの放課後、魔理沙はオカルト研究会に顔を出すため、部室に向かっていた。
ついさっき、昼休み中に襲ってきた犯罪組織の下っ端達をニ撃必殺で叩きのめし、警察に引き渡した直後であるため、魔理沙は少し返り血を浴びていた。
しかし、指パッチンひとつで返り血が蒸発し、ありとあらゆる汚れが綺麗さっぱり消滅した。
(先週発売された新作ホラーゲーム、皆買ったかな?)
魔理沙は皆とゲームすることだけを考え、1階の玄関から部室までの廊下を歩いていた。
オカルト研究会に入会して以降、放課後は毎日部室に寄るようになった魔理沙。初めは"黒の境界"がどういった組織で、どのような活動を行っているかみっちり頭に叩き込まれた。
会長曰く、「"黒の境界"は、いずれ来る
さらに会長曰く、「"黒の境界"の役割は天地開闢の王の降臨阻止だけに留まらず、光と闇の均衡を保ち、世界のバランスが崩れないようにすることも重要だ」と言っていた。
さらに会長曰く、「
意味不明な言葉の羅列に耐えきれなくなった魔理沙はとっさに会長の解説を遮った。
「……そこら辺は大体理解したから、"オカルト研究会"としてはどういう活動してるのか教えてくれ」
「ケヒヒ……、基本的には"怪奇現象"や"都市伝説"、科学では到底説明できないものについて調査したり、議論している」
「例えばそうだな……、少し前に世界各地で出没した謎の"魔女たち"の話とかな」
「…………」
「ま、最近は魔女も怪奇現象も鳴りを潜めてたから、特にこれといった活動はしていないな。今はもっぱらあの部屋でゲームざんまいだ」
「……何のゲームやってんのさ」
「スマ○ラ」
「よし、私もやる。誰が一番ス○ブラ最強か決着つけようぜ、負けたヤツは激辛ペ○ング一気食いな」
「ケヒヒ……乗った!」
……といった調子で、ここ半年間はゲームかペヤ○グの二択しかなく、それらしい活動はあまりしていなかった。
しかし、今日は違った。
「おはござ」
魔理沙が適当に挨拶しながら部室の扉を開けると、4人が珍しく机を囲んで真剣に何かを話し合っていた。
「ケヒヒ……! よく来たな魔理沙、お前もこっちに来るといい」
ヤケにテンションの高い会長が嬉々として魔理沙に話しかけた。
「久しぶりの、"怪奇現象"だ!」
怪奇現象、そのワードを聞いた瞬間、魔理沙の関心度合いが急上昇した。
「今どき遺体をバラバラにするなんて時代遅れだよね〜証拠バラまいてるようなもんじゃん!」
「でっ、出、ど、でもっ! まだ、はっ、は! はんにゅんつかもってない!」
「普通に殺人事件では?」
「……つまり?」
話の糸口が掴めなかった魔理沙。しかし、黒色が今朝のニュースについて軽く説明してくれた。
「つまり各神社で色んな怪奇現象が一斉に起きたり、バラバラの遺体が見つかるという事件が短時間で複数件報告されたと……」
「ケヒヒ……このままでは光と闇の均衡が崩れ、世界が闇に飲まれてしまう。早急に原因を解明せねば」
「……闇に飲まれた方が会長的には都合良くないの? 全世界が真っ黒になるんだろう?」
「……分かってないな魔理沙、光あるところに闇があり、闇があるところに光がある。同様に白と黒も対を為すことでバランスが保たれるものであり、それを自らの都合に合わせて捻じ曲げるなど言語道断だ」
「そう、……か? そうかも……?」ソ"ーカ"モ"ナ"ァ"!
いまいち理解しきれなかったが、取り敢えず納得することにした。
「で、調査しに行くの? 会長」
「ケヒヒ……当然! さっそく今から出かけに行くぞ!! ……と言いたいところだが、事件直後だし警察やヒーローに迷惑をかけるわけにはいかない。今週土曜の明朝6時に決行しよう」
「さっ、賛成です!」
「俺はパス、そんな朝早く起きれんから」
「僕は行きます」
「俺も」
続々と調査メンバーが決まっていく中、魔理沙は神妙な表情で今回の怪事件について考えていた。が、何も知らないので考察要素が何も無かった。
「魔理沙は?」
会長に声をかけられた。当然答えはYESだ。
「もちろん行く。何ならその怪奇現象を解決してもいい」
魔理沙は自信ありげに答えた。
「ケヒヒ……! やる気があるのはいい事だ」
「みっ、みんなで! かっ、かか解決!!」
「面白くなってきた……!」
久しぶりの活動にワクワクしてきた調査メンバーたち。最近○ヤングばかり食べていたので周囲からは"陰キャペヤン○部"と揶揄されたり、"金食い虫"と生徒会から嫌味混じりに言われてきたが、今日は違う。オカルト研究会として真っ当に活動していることをアピール出来る最高のチャンスである。
「では黒の境界初の活動といこうか……!」
全員、気合いを入れてロッカーの扉を開け、ノリと勢いに身を任せて外に飛び出した。
しかし決行は今週の土曜日である。
「「……」」
全員、静かに元の場所に戻ると、ペ○ングを食べながらスマ○ラをやり始めた。
■
【決行日当日】
【住■大■神社跡地】
ついに土曜日を迎え、予定通り朝6時に現地集合した。なお魔理沙は朝5時50分に目を覚まし、時間停止で文字通り時間稼ぎをしつつ準備を整え、瞬間移動で到着した。
堕天は眠くてパスし、会長と傷精とコモリは電車に乗って到着。最後に平太がバスで到着し、全員揃った。
「ケヒヒ……! ついに来たぞ事件現場ァ!!」
「でもふっ、封鎖されてます!」
「ですよね」
当然のごとく事件現場は黄色いテープで封鎖され、一般人が立ち入れないようにしている。
しかし物理的障害はそれしかなく、注意書きはあれどあまり拘束力はなく、周りに人はいない。
「最悪バレても
魔理沙が初めに黄色いテープを乗り越え、事件現場へと向かっていく。
それに対し調査メンバーのみんなも魔理沙の後ろについて行き、奥の方へと進んで行った。
「魔理沙ってそんなにコミュ力高いの?」
「いや、高くない。けど言い負かすことは出来る」
「へぇ〜」
魔理沙はアメリカでの出来事を思い出しながら、前に進んだ。
「やっぱり人はいないな」
「流石に朝6時から事故現場の見張りをするほど暇じゃ無いのでしょう。住職さんはおそらく、別のところに住んでいるかと」
常に周囲を警戒しながら歩いているが、全く人がいないため順調に進んでいる。事故現場といえど朝まで警備する必要が無いのか、それともあらかた調べ終えた後でもぬけの殻なのか……どちらにしろオカルト研としては中で霊的現象にでも遭いさえすれば満足なので、物的証拠があろうとなかろうとあまり関係ない。
そこそこ歩いた後に、魔理沙は遠目に何かを見つけると、全員茂みに隠れるよう指示を出した。
すると、ちょうど向かいから見張り用の自立稼働型ロボットが向かって来ており、間一髪見つからずに済んだ。
「そういうことか」
「あっ、おぶっ! あぶなかった……です!」
事故現場に近づいてきたせいか、ちょくちょく見張り用のロボットや監視カメラが見え始め、割とザル警備でないことに気づいた調査メンバーたち。出ようにも出られず、どうにかして事故現場にたどり着こうと考えようとするものの、良い案が思い浮かばない。
「これじゃあ跡地に近づけんな……」
「魔理沙の
「流石に草真っ黒にしたらバレるよ」
「模様とか、黒色で道を描くのは?」
「無理。今の私じゃあ能……個性の範囲を絞れない」
「……そうか」
「けど方法はある」
「「え?」」
全員の目線が魔理沙に集中する。調査メンバー全員の個性を使ったとしても、バレずに突破することは出来ないこの状況で、魔理沙は告げる。
「全員目を瞑ってほしい」
魔理沙の言葉に半信半疑になりつつも、他に打つ手がないのでメンバーたちは全員目を瞑った。
何か秘策でもあるのか、それとも雰囲気出そうとしてそれっぽいセリフを言っているだけなのか。いったい何を考えているのか分からないまま、体感10秒経過したその時、魔理沙が全員の肩をトントンと叩いた。
「はい、到着」
「「……は!?」」
調査メンバーはいつの間にか、焼け落ちた神社の目の前にいた。
「マジで着いてる!!」
「どうやった?!?」
「魔理沙、お前ドラ○ンボールの住人か?! 絶対そうだろ!!」
「秘密」
状況的に魔理沙が個性で全員を瞬間移動させたようにしか見えない状況だが、それでは入会時に見せた"
頭がバクり始めるメンバーたち。しかし、それどころでは無いことに
「なぁ会長、魔理沙。着いたは良いけど、思っきしロボットに見られてないか?」
傷精が指さした先には、数台のロボットがこちらの様子をジッと伺っていた。
明らかにバレているが、警報も無く、動き出す様子もない。メンバーたちが不思議に思う中、再び魔理沙が口を開いた。
「あぁ、それも大丈夫」
「そのロボット、バグってこっちの姿見えてないから」
「……マジ?」
傷精がロボットの前で数回手を振ったが、全く反応がなかった。
「ホントだ……」
「けど1時間で元に戻るだろうから早めに済ませようか」
「お、おう……」
一応、他のロボットや監視カメラも確認しに行った傷精と他メンバーだが、おおよそすべてのロボットと監視カメラが何かしらの手によって機能を停止していたことが判明した。
どのロボットとカメラも火花が散っており、まるで強い電撃を食らったかのように見えた。
(なぁ、おかしくね?)
(全然分かりませんが魔理沙さんは明らかに変です)
(ちっ、チートゲーマーなんだぁッ!)
(黒くする個性とは……)
魔理沙の個性がますます怪しくなる中、魔理沙と会長の二人が焼け跡に近づいていたため、傷精たちも近くに駆け寄った。
「ここが現場だな」
「ケヒヒ……原因不明の出火で燃えたらしいが、現場に炎を使う個性はいなかったらしい」
「さらに言うと重度の火傷を負ったここの住職さんは皮膚ではなく内臓が焼けていたらしい……が、目撃者は全員目に見える形で燃えていたと」
「怪奇現象じゃん……」
会長の説明を聞き、ゾッとする魔理沙。サイコメトリーで焼け跡から過去の記憶を読み取ってみたものの、突発的に神社と人が燃えた映像しか映らない。
「で、ここからどうするの?」
「ケヒヒ! 当然この事件の正体、ひいては真犯人を特定するための証拠を集める」
「どうやって?」
「…………」
会長は一旦押し黙った後、笑を浮かべた。
「……仮に、この事件の犯人が人間では無い何かと仮定するなら、直接この場に呼び出して対話するしかない」
「会長……! まさか……ッ!」
傷精たちの目がキラリと変わった。
「ケヒヒ……この日のために用意して良かった……!」
自信満々に荷物を下ろし、バッグに手を入れ、そして会長は何かを取り出そうとした。まさか、アレを使うのだろうか。幽霊を呼び出す道具的なアレを……
この個性と科学に溢れた時代で、非科学的な存在と対話する装置など中々お目にかかれない。そもそもオカルト自体、個性誕生以来急激に人気が落ちたジャンルであり、ホラーを好む人間はいるもののオカルトを好む人間はほぼいない。
そんな廃れかけの業界において、オカルト雑誌等の情報源、専用の道具などといったものは非常に入手困難かつ貴重なものであり、おいそれと持ち出すことは出来ない代物。それを会長は、この日のためにわざわざ用意してくれたというのか。
全員の期待が会長のバッグに集中し、今か今かと登場を待ち望む。
「まっ、まさか悪魔召喚の儀しk」
「"コックリさん"……だッ!!」
会長が取り出したのは、通販で購入可能の"
「「は?」」
「もしかしてコックリさんを知らないのか?」
「いや知ってる」
突っ込むべき要素はそこではないと、会長を覗く全員が訂正した。
「なら分かるだろう? コックリさんに聞けばだいたい答えてくれる、我々のプライベートな情報から事件の真相に至るまで」
「……それ、ここで無くても聞けるんじゃ……」
「ケヒヒ……分かってないな。コックリさんは下級悪魔であらゆる場所にいる。学校内でやれば学校内に住むコックリさんが、事件現場でやれば事件現場の近くに住んでるコックリさんが来るに決まってる」
「……マジか」
それっぽい理由に納得した✝︎黒の教会✝︎一同は会長に駆け寄り、全員手を合わせた。
「作戦名は?」
「ケヒヒ……! "
「……もう、それでいいや!」
「では略して
妙にそれっぽい作戦名を企て、さっそく準備に取り掛かる黒の境界メンバーたち。必要なものは
時刻は明朝6時10分、涼しい風と程よい日差しの中、黒の境界メンバーは地面にボードを敷き、コックリさんを始めた。体勢的にも絵面的にも死ぬほどキツイ状況だが、事件の真相を知る為ならば、恥を忍んででも受け入れる。それが深淵の使徒である。
しかし、コックリさんをやる直前に魔理沙は感じ取った。人間でもロボットでもない異質な存在が、割とすぐ側にいることに。
魔理沙はトイレ行くから先やってて、と一言だけ残し、異質な気配を感じる森の方へと足を踏み入れた。そっちにトイレは無い……と言いかけたメンバーたちだったが、仮にも魔理沙は女の子、女の子のトイレ事情に詳しくない男達は注意しようにも出来ないジレンマに囚われ、止められなかった。
■
森を歩いた先に、部分的に木々が失われた領域にたどり着いた。木がないので当然そこには光が差し込むはずだが、全く明るくなかった。異様に暗い。
「そこにいるんだろ、
その言葉に反応した妖怪なるものが、魔理沙の方を向いた。
「見えているのか……? 」
「割とくっきり見える」
魔理沙は素直に答えた。一度この世界の神に出会っている以上そこまで驚きは無いが、妖怪を目にするのは初めてである。だからといって珍しいわけではなく、単に私があまり妖怪や幽霊を意識的に見ようとしていないことや、霊的スポットにあまり訪れないため、見る機会を失っていたのだろう。
魔理沙は目の前の妖怪をジッと見つめていると、妖怪の方も見つめ返した。その後眉にシワが寄り、目の前の存在の異常性に気づき始めた。
「待て……その気配、お前人間……か?
「知らんけど多分神に一度肉体バラされたからだと思う」
魔理沙はあの時の出来事を思い出した。バラバラにされてから150年以上眠り続けたが、その間私の肉体に信仰やら畏怖の念が集まっていたのかもしれない。ただし私はあくまで異形なので、畏怖、それもバラバラ状態の私を認識できる妖怪などの存在からしかおそらく信仰は得られない。
いやもっと遡れば、"魔女革命"を起こした時に"仮面の魔女"に対する信仰が巡り巡って私に来ているのだろうか。しかし"仮面の魔女"ムーヴも私の能力で自ら抑制したため、信仰が集まるわけがない。つまり分からない。
魔理沙が自分の状態について考えていると、妖怪がハッと何かに気づいた。
「……もしかしてつい最近まで我々に嫌というほど臭わせてきたあの悪質極まりない波動の正体はお前か? 」
「身に覚えが無いけど多分そう」
魔除け代わりに使われていたらしいので、彼らにとっては相当激臭だったのかもしれない。
「やはりか。お前のせいで我々は神への逆襲が出来ずイライラが募るばかりであったが、その神は死んだ。許す」
「死んだ!? ……神が?!?」
「10年以上前に各地の神社から神性が失われたのだ。人間はそれに気づかなかったが、我々妖怪には理解出来た。この地から神が消滅し、我々妖怪の時代が来たのだと……」
「だが我々妖怪を最後に阻んだのは、全国五箇所に配置された謎の遺体。その遺体は神性とはかけ離れた謎の力で我々妖怪の侵攻を退け、吐き気を催す邪臭で日本そのものを包み込んだ! おかげで我々はここ数十年、路地裏の隅っこで悶えるだけの羽虫に劣る生活を余儀なくされた!! 」
衝撃の事実に目を丸くする魔理沙。妖怪たちに対しては何の情もわかないが、それよりも神が死んだという事実が自分の中で納得出来るものだったことに、驚きを隠せない。
(神にバラされた後に復活した時、神はいなかった。その後、自分を依代に神々を降霊させる能力を使っても、この世界の神は呼び出せなかった)
(もし、本当に死んだのなら、全部納得出来る。けど神が死ぬ、って何? アレ死ぬのか? だとしたら私をこの世界に送り出してくれたあの神もいなくなったのか?)
次々と疑問が湧き上がり、混乱する中、目の前の妖怪は話を続けた。
「しかし、その異臭も終わった。これからは我々妖怪の時代だ。人間共を絶望させ、誰が真に支配者であるか知らしめてやる」
やけに自信満々に語る妖怪に、魔理沙は問いかけた。
「……神社燃やしたり、遺体をバラバラにしたのはお前か?」
「遺体は知らんが、あの寂れた神社を燃やしたのは俺だ。お前も燃やしてやろうか? 」
「……へぇ」
魔理沙は無詠唱で
「ぎゃあああああああああ!!!! 」
「何しやがる!!! 」
無詠唱かつ半端適当に放ったとはいえ、耐えられたことに驚く魔理沙。しかし表情には一切出ない。
「私の知ってる妖怪は七色の翼を携えた金髪幼女とか、2頭身サイズの1つ目親父とか、赤耳腹巻地縛霊のネコとか、その辺だ。お前みたいな"The悪"と仲良くするつもりはない」
「何言ってんだ……お前……」
「つまり、
「にぎゃあああああああああああああああああああああああ!!!! 」
低レベルのモンスターを軒並み排除する呪文でしばき倒す魔理沙。
「はァッ……! ハァ……ッ! ハハハはははハはハハハハハ!!!! 」
しかし、妖怪は耐えた。
「バカめ!! 俺を消したところで妖怪の進撃は止まらない!!! お前一人が立ち向かったところで無駄! 無意味! 無謀だ!! ハハハはハははハははははハはハハハハハ!!!! 」
「ホーリー」
「ぐぼぱァァァァァァァッッ!!!! 」
再び無詠唱で魔法を放つが、まだ耐える。
「いい加減にしろ!!! 殺すなら殺せ!!!! 」
「真綿で首を絞める程度の
「おま……ァァぁああア゙ア゙ア゙ア゙ア゙!!!! 」
じわじわとFF最強魔法が妖怪の首に染み込み、この世のものとは思えない地獄の叫びが響いた。
「くっ……クズだ! これほどまでにクズな人間は初めてだ!! 我々に対する畏怖とか敬意とかがまるで足りてない!!! 」
「意外と耐えるな」
「こっ、コイツ!! マジで目が終わってる!! どこぞのゲームのマッドサイエンティストよりも終わってる!!! 」
「もう直接斬った方が早いな」
「まっ、待て! もう悪さしない!! 他の連中にもそう伝えておくから消すのだけは勘弁してくれ!! 頼む!!! 」
「エクス……」
英雄王の剣を天に掲げ、全エネルギーのうち0.000001%を剣に集中させる。すると、どこからともなく風が魔理沙と剣を取り巻き始め、力場は歪み、地が揺れ、聖なる光が剣に宿り始めた。
魔理沙は最初から決めていた。ヴィラン連合とか訳の分からん化け物に対しては絶対に容赦しないと。
一瞬の判断の迷いが、自分の仲間や家族を危機に晒してしまうことを、魔理沙はこの身をもって知っているから。
「カリバァァァァァァァァァァッッ!!!!!!」
カッ! と閃光が周囲を支配し、一瞬の衝撃が直線上に存在するすべての物体を爆風と共に根こそぎ破壊し尽くした。
もう煩わしい命乞いも聞こえない。文字通り妖怪は消し炭となった。
■
「ただいま〜」
元凶の一人を倒し、現場に戻ってきた魔理沙。元凶について会長や皆に話したいところだが、良い伝え方が思い浮かばない。
だが会長たちはそれどころでは無かった。
「マズイぞ魔理沙!! 助けてくれ!!!」
全身真っ黒な会長が顔面蒼白の状態で救援を要請していた。
「何?」
「コックリさんにな、"虎馬傷精に今後彼女が出来ますか? "って聞こうとしたら突然地面が揺れて十円玉から手を離してしまった!! このままではコックリさんの怒りを買ってしまう!!!」
「……あ〜」
魔理沙は察した。エクスカリバーの衝撃がここまで響いてしまい、コックリさんで一番やってはいけない禁忌を犯してしまったことを。
自分が犯人、とは言えないが可哀想なので、コックリさんを倒すべく再び剣を抜こうとした。が、コックリさんと思わしき霊を見た瞬間、そのあまりのか弱さに斬るのを躊躇ってしまう。
(……脅威、ではないか)
魔理沙にしか見えないが、彼らが呼び出したコックリさんは野山に生息するネズミの霊であり、10円玉を離したことに怒っているのか、ネズミが会長の真後ろで必死に威嚇していた。
多分、この霊は人畜無害だ。おそらく。
「自分で何とかしてください」
魔理沙は会長に背を向け、スタスタとその場から立ち去った。
「え? ちょ、待って! 待ってくれ魔理沙! 何か後ろからめっちゃ嫌な気配する!! めっちゃ嫌な気配するって!!!」
「チュャァァァァ!! 」
「おッ、おかっ! オカルトォ〜〜〜〜!!!!」
「"ハ○エネ〜〜⤴"みたいなノリで言うじゃん。80点」
「喋ってる場合じゃないって!! ヤバいって!!!」
見えない恐怖が魔理沙を除くメンバー全員に伝播し、後ろを振り向けないまま、メンバー同士肩を組んで恐怖を凌ぐ。
「チュッチュァァァァァァ!!! 」
「「ああああああア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙!!!!」」
魔理沙を除く全員が恐怖に駆られ、全速力で山を下った。途中で傷精に「早く瞬間移動してくれ!!」と背中越しに言われ、魔理沙は一瞬悩みかけたが、瞬間移動で即座に全員を駅前まで移動させた。
「はァ……ッ! ハぁっ……! アレ! 絶対、ヤバいヤツ!!」
「ケヒヒ……ッ! 元凶、……呼んじゃった……かもなァ!」
「おっ……おはっ、おはっ! お祓いしなきゃ!!!」
「いやそっち燃えた方の神社!! ダメ!!!」
「……きゅうぅ〜」
全員が満身創痍の中、魔理沙は静かに全員の背中を擦り、疲労回復の魔法をかけつつ労いの言葉をかけた。
「お疲れ様」
「「は?」」
「!?」
突然メンバーたちの目線が集中し、そしてメンバー全員がゾンビのごとく立ち上がった。
「ケヒヒ……! 魔理沙ァ、お前には言いたいことが山ほどあるぞぉ」
「俺もだァ」
「僕もですゥ」
「わっ、わてしも! ……です!」
深淵の使徒たちに詰め寄られる魔理沙。読心能力で彼らの言いたいことが何か嫌でも分かってしまう。
「とりあえず今日の朝食は魔理沙の奢りだな」
「oh……」
登ったり走ったりした影響で小腹を空かせた黒の境界一同。奢りの件は魔理沙も了承し、一同は近場のカフェに立ち寄ってサンドイッチを食べた後、全員電車で帰宅した。
第二章EX「中学生時代(後編)」
完。
次回、第三章「雄英高校受験編」。やっと本編合流。