最強の魔法使い(自称)が暴れるそうです。RE: 作:マスターチュロス
金髪脳筋おじさん登場です。
ヘドロ事件 前編(10話)
私の名前は結依魔理沙、15歳。好きな食べ物は個性をふんだんに詰め込んだ髪の毛。好きな能力は時間停止、
魔女革命、NOUMU襲撃事件からもう10年、なにもなかったわけではない。個性の過剰使用による障害、"個性過敏症候群"に二度も罹患し、過去にタイムスリップして神にバラバラにされたり全身に包帯を巻くなどの奇行にも走った。引越し先の学校でオカルト研究会に入会し、怪奇事件を通して妖怪に出会ったりもした。アレ以来一度も妖怪と会ってないが。
あと遂に二度目の個性過敏症候群が完治し、再発防止のために"個性過敏症候群"を"
なおメンバーたちからは、『ケヒヒ……! 真なる闇が解放されたか……ッ!!』『スマートな割に異質感ハンパない』とそこそこ好評であった。
緑谷くんや爆豪とはお引越し以降、一度も会っていない。が、定期的に千里眼と未来予測で常に二人の未来をチェックしているため、二人の成長具合とその軌跡は把握出来ている。私狙いの襲撃者が二人を狙うような事案も起きなかったため、概ね原作通りの流れに沿って時間が経過していた。強いて言うなら、爆豪が私に対してあまりに対抗心を燃やしているため原作以上に鍛えていることと、緑谷くんも私や爆豪が目指している最高峰のヒーロー養成高校である"雄英高校"合格に向けて、個性の研究や毎日のジョギング、筋トレを行っていることだ。相当気合いが入っている。
雄英高校で思い出したが、私もそろそろ高校受験の準備をしなくてはならない。一応能力理解のために幼少期から勉強はちょくちょくやっているものの、英語や社会、国語あたりは微塵もやってないのでどうなるか分からん。
まぁ、その気になれば半永久的に時を止めて勉強出来るが、同じ受験生や緑谷くんに3割ほど申しわけないので、本当に時間が足りない時以外は周りと同じ条件で勉強することにした。が、気分次第で変わりそうではある。
なお現在、私は自室から緑谷くんの今日の行く末を千里眼×未来予測×大賢者補正でリアルタイム観察している。だが今日は平日なので私も学校に通わなければならないため、思考加速を通常の1000倍に加速し、未来予測の映像にも倍速かけて対応することにした。これなら登校前に緑谷くんの1週間分の時間を把握することが出来る。
なぜそこまでして緑谷くんの生活を覗き見しようとしているのか。それはシンプルに今日がアニメ第一話冒頭の、緑谷くんが学校に登校してヴィランに遭遇する日だからである。この日は緑谷くんがNo.1ヒーローと運命的な出会いを果たす大事な日、この日にトラブルが起きると今後の緑谷くんの未来に支障をきたす。特に私関係でトラブルで緑谷くんに怪我させるわけにはいかない。
(ケツイだけに、自分のケツはいつでも拭けるようにな)
クソ寒親父ギャグをベットの上でかましながら、魔理沙は緑谷出久の未来を見始めた。
■
【4月某日、午後2時頃】
4月、春真っ盛りの中、緑谷出久は浮かない顔のまま下校していた。学校での出来事がずっと心に引っかかっており、ため息が止まらなかった。
中学3年生を迎えたことで、担任の先生から進路希望の紙を渡された。自分含め、クラスメイトはみんなヒーロー科を志望し和気あいあいとしていたが、かっちゃんは違った。
「俺はなァ、お前らみたいなただのヒーロー科で満足するモブ共とは違う」
「俺は国内最高峰のヒーロー養成高校、"雄英高校"に入学する……ッ!!」
クラスメイトの前で高らかと宣言したかっちゃん。その態度の悪さにクラスメイトから批判を受けるものの、校内トップクラスの成績と最強クラスの個性によって形作られた自信で圧倒し、先生やクラスメイトを黙らせてしまう。
緑谷は極力目立たないようにしていたが、先生の一言で状況が一転した。
「そういや、緑谷も雄英志望だったな」
この一言でクラスメイト全員が緑谷の方に集中し、そしてクラスメイト全員に笑われてしまった。"無個性"であることを理由に、お前には無理だと決めつけられ、皆から嘲笑された。
必死に反論しようとした矢先にかっちゃんが僕の机を爆破し、僕を見下ろしながら一歩踏み出した。
「クソナード、テメェには無理だ」
「や……やってみなきゃ分かんないだろ!」
「少しは頭ン中冷やして考えろクソが。個性もねェ、筋肉もねェ、コミュ力もねェ、何にもねェテメェがヒーローになれるワケがねェ」
「それともアレか? 記念受験のつもりか? あァ!?」
爆豪の圧に屈しそうになるものの、緑谷は負けじと反抗した。
「こっ……これからもっと鍛えて、もっと強くなれば……!」
「ケッ! クソが!!」
爆豪は両手をポケットに突っ込みながら自分の席に戻り、周りのクラスメイトは緑谷を見ながらヒソヒソと話していた。
惨めだった。しかしこれが現実、変えようのない真実。
無個性で、誰よりも力が無く、人気も特に無い自分は、自分に出来る範囲で鍛えて、勉強して、この真実に抗わなければいけない。だがこの真実の壁は、自分が今まで培ってきた人生をすべてぶつけても壊せないほどに強いことを僕は知っている。
それでも夢は叶えられると信じて、今日この日までずっと頑張ってきた。現実は厳しいが、それでもヒーローになりたい。個性の無い僕でも、雄英高校に入ってたくさん経験を積めば、オールマイトみたいにカッコいいヒーローになれるかもしれない。
(かっちゃんも魔理沙さんも、雄英高校を目指してる。僕だって、負けてられないんだ!)
緑谷はグッと拳を固めつつ、上を向きながら帰り道のトンネルをくぐっていく。現実の厳しさに負けぬよう、オールマイトのように高らかと笑いながらトンネルを抜けようとしたその時、事件が発生した。
ジュルジュル、と液状の何かが流れる音が聞こえた緑谷は後ろを振り向いた。するとそこにはヘドロを纏った何かがマンホールから溢れ、徐々に人型へと変貌していく姿が見えた。
「ヴィラン!?」
身の危険を感じた緑谷は咄嗟に振り返って走り出したが、ヴィランは素早く緑谷を捕獲し、口に己の体をねじ込ませて失神させようとした。
「んグ!? おグぐぐングゴんググぐ!!!!」
「大丈夫ゥ、体を乗っ取るだけさァ! 落ち着いて?」
緑谷はヘドロ系のヴィランに上半身を拘束され、息が出来ないまま体を持ち上げられてしまった。
「苦しいのは約45秒ォ。さらに楽になるさァ」
緑谷は必死にもがき、肉体っぽい部分を掴もうとするが、上手く掴めなかった。
「掴めるわけ無いだろう? 流動的なんだから」
ヴィランはケタケタ笑う。
「助かるよォ、君は俺の"ヒーロー"だァ!」
ヴィランによる個性の暴力に抑え込まれ、徐々に意識が遠のいていく緑谷。このままヴィランに絞めつけられ、殺されることを予感した緑谷は心の底から必死に助けを求めた。
(そろそろだ、オールマイト。早く来て……!)
未来予測で緑谷の動向をチェックしていた魔理沙は、苦しんでいる緑谷くんの姿を見て耐えながら、オールマイトが登場することを祈っていた。
ここで来てくれないとオールマイトと接点が出来ない上に、このまま緑谷くんが失神させられてこの場から逃げられればだいぶ運命がねじ曲がってしまう。最悪来なかったら私が"
と、思っていたらいつの間にかヘドロのヴィランが何者かの攻撃を受け、緑谷くんの手から離れていた。考え事をして気づかなかったが、どうやらオールマイトが来てくれたようだ。
(ん?)
しかし緑谷くんを助けたのは金髪ムキムキのおじさんではなく、シルクハットにベージュのロングコートを来て銃を構えている謎のおじさんと黒スーツを着た3人のおじさんであった。
(誰!?)
本当に知らない人が来て焦る中、おじさん達は小声で何かを話し始めた。
「緑谷出久……で、合ってるか?」
「はい。おそらく彼があの化け物の関係者かと」
「今すぐ拘束して運び出せ。失神してる今がチャンスだ」
明らかに私狙いの襲撃者が都合よく緑谷くんに接近し、誘拐しようとしている。最悪だ、予期していた事が当たってしまった。このままでは緑谷くんがオールマイトと出会うことなく誘拐され、ヘドロヴィランも逃してしまう。
「させない」
魔理沙は時間跳躍で8時間後まで飛び、失神している緑谷くんのすぐ目の前にワープした。
「……ッ!? お前はッ!」
「マズイ!! 今コイツと出くわす訳には……ッ!!」
「何がマズイって?」
魔理沙は指先から
「はァ……これだから不祥事は嫌いだ」
魔理沙は頭を掻きむしりつつ、襲ってしたおじさん達全員をスキマ経由で警察署に移送させた後、バラバラになったヘドロヴィランの様子を確認した。
「なるほど、電撃で無力化したのか」
「オ……かっ、……がガッ!」
おそらくあのおじさんが撃ち込んだ電撃弾をモロに食らったヴィランは全身が痺れてしまい、人型の維持はおろか逃走も出来ずにいた。
「ペットボトルにでも詰めとくか」
魔理沙はサイコキネシスですべてのヘドロパーツをペットボトルに詰め込み、キッチリ蓋をしておいた。
「これで良し」
「HAHAHAHAHAHAッ!!」
ズンッ、と地面が揺れ、背後から強い人間の気配を感じとった魔理沙は振り返った。そこには全身ムキムキ金髪ヘアーで快活に笑う最強のヒーローが、両手を腰に当てた立っていた。
「もう大丈夫! 何故って……?」
「私が来ッ…………アレぇ?」
No.1ヒーロー、"オールマイト"が満を持して登場したが、突如現れた謎の金髪黒顔少女の出現により事件は解決されていた。
「オールマイト」
ヴィラン入りのペットボトルを携え、トンネルから出た魔理沙。今までずっと薄暗い空間にいたため、突然の日差しに目を焼かれそうになるが能力で適応し、私はオールマイトの前に立った。
「初めまして。私の名前は"結依魔理沙"、ヒーロー公安委員会所属のヒーローです」
なるべく圧をかけないように調整するものの、今までの経験から強い人間に対して少し身構えてしまい、なかなか笑顔で会話できない。大丈夫だろうか。
「……君が、結依魔理沙か」
私を知っているのか、オールマイトはマジマジと私を見つめた。国内で自分の情報がどれほど広まっているのか分からなかったが、オールマイトは知らされていたのか。
なら私がどれほど危険でヤバくて手に負えない存在か理解しているだろう。場合によっては私を恐れて戦闘になるかもしれないから、一旦緑谷くんを別の場所に移動させて……
「HAHAHA! 噂以上に可愛い子だ! それにこの年で正式にヒーロー活動しているなんて驚きだよ! 凄いじゃないか!!」
「……はい?」
予想外の反応にポカンと口を開ける魔理沙。今まで一度も言われたことの無い言葉のオンパレードに脳がフリーズしてしまう。
「あれ、魔理沙くん? 大丈夫?」
「…………私が、可愛い? 凄い??」
周りの評価とオールマイトの評価のギャップに狂わされ、自分の中の常識がバグり始めた。が、精神安定スキルで強制的に冷静さを取り戻し、元の状態に復帰する。
「オールマイト、これ渡しとく」
魔理沙は持っていたヴィラン入りペットボトルをオールマイトに差し出した。
「追ってたんでしょ?」
「HAHAHA! よく知ってるね! ご協力感謝するよ!」
オールマイトは差し出されたペットボトルを受け取り、ポケットにしまい込んだ。
「ん? 魔理沙くん、あそこで倒れている少年は……?」
オールマイトはトンネルで仰向けに倒れている緑谷くんを見つけると、ダッシュで緑谷くんの元に駆け寄った。
「Hey! 大丈夫か少年! しっかりするんだ!!」
オールマイトが緑谷の左の頬をペチペチと叩き、目覚めさせようと試みる。
「うっ……! だ、誰……?」
「あ……良かったァ!!」
安心するもつかの間、突然のオールマイト登場に緑谷は驚き、立てないまま後ずさりしてしまった。
「おおっ、オールマイトォ!?!? 本物だァァァァァァァァァァァ!!!」
「私もいるよ」
「まままま魔理沙さんまで!?!?!?」
憧れの存在と幼少期以来会えていない久しい友人のダブルピックアップに脳の処理が追いつかず、頭の中が纏まらない緑谷。
「いやぁ悪かった! ヴィラン退治の途中で逃してしまって! 君を巻き込んでしまったようだ!」
「すぐさま駆けつけようとしたんだが、そこの魔理沙くんがヴィランをやっつけてくれてね! この通りヴィランを逮捕することが出来たんだ! ハーッハッハッハ!!」
「ほ、本当なんですか?」
「まぁ、本当だよ緑谷くん。
やや誤魔化しつつ伝えた魔理沙。すると緑谷くんは立ち上がり、頭を下げた。
「あっ、ありがとうございます……! また、助けて貰っちゃって……!」
「いいのいいの。大事な友達だもの」
魔理沙と緑谷がやり取りする中、オールマイトが首を傾げた。
「あれ、二人は知り合いなのかい?」
オールマイトが二人に聞くと、緑谷が答えた
「幼なじみなんです! 小学生の頃に魔理沙さんが引越しちゃって……それっきり会えていなかったんですけど……」
「これはすなわち、"運命の再開"……ッてことかい!? いやぁ青春してるねぇ!! おじさんトキめいちゃう!!」
オールマイトがキュンキュンするあまりに自分で口を抑える中、魔理沙は「何言ってんだこいつ」とでも言いたげな表情でオールマイトを見つめ、緑谷は"運命"という言葉に顔を赤らめ、恥ずかしがっていた。
「……ゴホン! では私はそろそろこの辺で!」
「あっ! サイン!! のっ、ノートに……ッ!」
オールマイトが立ち去るのを感じた緑谷は咄嗟に落としたノートを拾い上げ、空いているページにサインしてもらおうと開いたが、そこにはオールマイト直筆のサインが描かれていた。
「してあるぅぅぅぅぅぅ!!!!!」
欲しくても手に入らなかった激レアサインと、オールマイトのファンサービスを怠らない姿勢に感激した緑谷は過去最大級の涙を流し、感謝を述べた。
「あっ、あああありがとうございますぅぅぅ!!! 家宝に!!!! いえっ!! 家の宝にィィィィィ!!!」
「良かったね緑谷くん」
「魔理沙くんもいるかい?」
オールマイトがマジックペンのキャップを取り外した。
「いや、いいです」
「遠慮しなくて良……、マジか。私と会ってそんな表情をされたのは、ヒーローになって初めてだ……」
心底どうでも良さそうな表情をされてショックを受けるオールマイト。だが
「ではそろそろいかねば。液晶越しでまた会おう!」
「えっ、そんな……! もう……!!」
「プロは常に、敵か時間かの問題さ!」
オールマイトは脚に力を溜めるべく、屈伸運動で筋肉をほぐし始めた。このままではオールマイトが飛び去ってしまう、そう考えた瞬間、緑谷の胸の奥がキュッと痛んだ。
(待って……!)
(まだ……聞きたいことが……!)
「緑谷くん」
魔理沙は緑谷の肩を叩き、こしょこしょと内緒話をした。それを聞いた緑谷は覚悟を決め、オールマイトが飛び立つタイミングを伺った。
「それでは、今後とも……」
「応援ッ!! よろしくぅうううううううううううううううああッ!!!!」
オールマイトが大ジャンプする瞬間、緑谷はダッシュで後ろからしがみつき、オールマイトと共に大空へと飛びさっていった。
「おぉ、飛んだなぁ」
オールマイトの強靭的な跳躍力に拍手を送る魔理沙。このまま二人を見届けて帰っても良かったが、また私狙いの人間が襲ってきてもおかしくないため、とりあえずついていくことにした。
『距離を操る程度の能力』
魔理沙は指パッチンひとつで瞬間移動し、オールマイトの傍にワープした。
なお、オールマイトと緑谷は現在、空中で揉み合っていた。
「やぁ、元気?」
「魔理沙くん!? 君までついてきたのか!?」
「!? まっ、魔理沙さん!? それどうやって移動してるの!?」
オールマイトと緑谷が空中でくっついている中、魔理沙は横向きに寝っ転がりながら、
「これ? いやぁ動くのめんどくさいからオールマイトと私の"距離"を固定したの。だから私とオールマイトは運動具合に関わらず常に一定の距離を保ち続ける」
「えっ、そんなこと出来るの!?!?」
魔理沙の能力に驚くオールマイト。しかし
「ッゥ"ッ!! ごフッ……!」
オールマイトは口から少量の血を流しつつ、近くのビルの屋上に降り立った。
「ァッ……ァ"ァ"ァァッ」
か細い羽虫の鳴き声のような悲鳴を上げ、緑谷は屋上でへたり込んだ。しがみつくだけで精一杯だった。
「頑張ったね、緑谷くん」
魔理沙が倒れた緑谷の頭を撫でている中、オールマイトはそそくさと立ち去ろうとした。
「あっ、あのオールマイト、まって!」
「すまない、もう時間がないんだ」
「話を……ッ!!」
一瞬、出久の伸ばす腕が垂れた。自分の置かれた心境をどうしても変えたいという気持ちが先走り、ついここまでついてきてしまった緑谷。だが、ここまで来た以上引くわけにはいかない。
俯いていた緑谷は再び顔を上げ、オールマイトを見つめた。どうしても聞きたい、オールマイトにしか聞けない。そんな思いが溢れだしてくる。
何がなんでもこのチャンスを掴みたい。これを逃したら次は無いだろうと、そう感じ取った緑谷は決心し、一歩、踏み出した。
「個性が無くてもヒーローになれますか!?」
「個性が無くても……、あなたみたいになれますか!?」
聞きたくて聞きたくて仕方がなかった言葉、オールマイトにしか、答えられない質問。周りの人はみな否定したが、オールマイトならどう答えるだろうか、No.1ヒーローなら……どんな答えを出すのか。
誰もが認めるNo.1ヒーローが、もし、個性が無くても、ヒーローになれると言ってくれるのならば……それは……!
微かな希望に胸が膨らむ中、オールマイトは何も言わずに立ち尽くしていた。
その直後、オールマイトの体が爆発し、中からガリガリで幽霊のような風貌をしたおじさんが現れた。
「おおおぅおうおああああああああああああああああああああぁぁぁッ!?!?」
「来たか」
変わり果てたオールマイトに阿鼻叫喚の悲鳴をあげる緑谷。それに対し魔理沙は、まるで分かっていたかのようにありのまま受け止めた。
「おっ、オールマイトがぁぁぁぁああああ萎んでるぅうううううううううううううあ!!!」
「あれだよ、キングスライムが分裂してただのスライムになったみたいなもんでしょ? オールマイト」
「君は驚かないんだね……魔理沙くん」
あまりに態度が変わらない魔理沙に驚きを通り越してしまいそうなオールマイト。
「おおっ、オールマイトは恐れ知らずの笑顔でっ……たっ、……たくさんの人を……ッ!」
「恐れ知らずの笑顔……ね」
オールマイトは座り込み、柵に寄りかかりながら事の経緯を語った。
オールマイトは5年前の戦いで大怪我を負い、全盛期ほどの力は出せなくなっていた。一日の活動限界時間も約5時間に制限され、力を抜くとガリガリの姿、"トゥルーフォーム"に変化すること。"平和の象徴"としてこれらの情報は一切公表していないこと。
そして最後に、オールマイトは緑谷の質問に答えた。
それは緑谷にとって残酷な答えであった。
「……プロはいつだって命懸けさ。力が無くても成り立つとは、……とてもじゃないが、口にできないね」
期待とは真逆の言葉に、緑谷はショックを受けた。
「夢をみるのは悪いことじゃない。だが、相応の現実を見なければな、少年」
そう言い残すと、オールマイトは先に階段を降りてしまった。緑谷にはもう追いかけるほどの余力はなく、ただ呆然と立ち尽くしていた。
「緑谷くん……」
横でずっと話を聞いていた魔理沙は、ショックで動けない緑谷に声をかけた。
「……魔理沙さん」
「魔理沙さんは、…………無個性でも、ヒーローになれると思いますか……」
絶望しきった声で、緑谷は魔理沙に問いかけた。
「その答え、私から聞いていいの?」
魔理沙は答えた。
「私は緑谷くんが困ってるなら、手を差し伸べてあげられる。いくらでも優しい言葉をかけてあげるし、逆に厳しい事も言ってあげられる」
「けど私なんかの言葉で、緑谷くんは本当に満足するの? 本当に言ってほしい言葉は、納得出来る人に言われるべきじゃない?」
「…………」
「…………でもッ……!」
そう言いかけた瞬間、突如街の中央で爆発音が聞こえた。
「……ッ魔理沙さん! 街中で爆発が!」
「先に行きな、緑谷くん。私は後からついてくから」
「……でも魔理沙さんの方が、個性……たくさんあって、人を……」
「行け」
「はっ、ハイッ!!!」
魔理沙に圧をかけられた緑谷はダッシュで階段をかけおり、爆発音が聞こえた方角に向かって走り出した。
「頑張れ、緑谷くん」
魔理沙は屋上で寝っ転がりながら、緑谷を見送った。