最強の魔法使い(自称)が暴れるそうです。RE: 作:マスターチュロス
雄英高校に合格した次の日の夜、オールマイトから連絡を受けた緑谷と魔理沙は、多古場海浜公園に集まっていた。
「改めて、合格おめでとう! 緑谷少年!!」
「おめでと!」
「ありがとうございます!!!」
二人から万雷の拍手を受け、深々とお辞儀をする緑谷。
「で、私は?」
「魔理沙くんもおめでとう!! まさかあんなことになるとは予想外だったが、ナイスファイトだ!」
「YEAH」
(師匠、何したんだろう……)
オールマイトにグッドサインを返す魔理沙を、緑谷は傍目に見ながら考えていた。
「ちなみに言っておくが、学校側に君との接点は話してなかったぞ」
「え?」
緑谷は目を見開いてぼんやりとしていると、オールマイトが話をつづけた。
「君、そういうのズルだとかで気にするタイプだろう? 私は審査やってないよ」
「お、お気づかいありがとうございます!」
オールマイトのさり気ない心遣いに感謝し、緑谷は大げさに頭を下げた。
「そ、それにしてもオールマイトが雄英の先生だなんて驚きました! だからこっちへ来ていたんですね!」
「学校側から発表されるまで他言無用だったからね。後継を探していたおりに、雄英側からたまたまご依頼があったのさ」
後継、そして雄英高校と繋がり、緑谷はハッと気づいた。
(…! そうか、本当は生徒の中から選ぶ予定だったんだ……!)
(個性溢れる、実力者たちから……!)
その事実に気づいた瞬間、本当に自分がワンフォーオールの後継者で良かったのかと不安に感じ始めた。
もし、無個性で非力な自分ではなく、圧倒的な力や才能に溢れた人が受け継いでいたら……と。
俯きそうになる中、読心能力ですべてを理解した魔理沙がそっと緑谷の肩に手を乗せ、何も考えてなさそうな表情で話しかけた。
「でも良かったじゃない、緑谷くん。もう十分ワンフォーオールは扱えているし」
「そ、それはオールマイトや師匠が熱心に教えてくださったおかげで……」
「正直、驚き過ぎて顎が外れそうになったよ! まさか1年足らずでここまでワンフォーオールを扱えるなんてさ!」
二人から励まされ、認められた緑谷は嬉しさが心がいっぱいになった。だがそれと同時に責任感も込みあがってきた。
「常識をブチ壊すほどの力と精神力、goodness!」
オールマイトは嬉しさのあまり、マッスルフォームになりながら緑谷にグッドサインを送った。
しかし、突然現れた身長220cmの筋骨隆々男が目立たないはずもなく……
「…! アレ、オールマイトじゃね!?」
「オールマイト〜!!」
あっさりとバレた。
「あっ…! 走るぞ! 少年少女たち!!」
「ハイ!!」
「はい?」
オールマイトが先頭切って海岸沿いに走り出し、緑谷はオールマイトの背中を追いかける。初めは並走する事すらままならなかったが、今では体力がついたおかげでかなり余裕がある。まさしく成長の証である。
一方、魔理沙は突然走り出した二人を呆然と眺めていた。だがおいていかれるのも癪なので、魔理沙はクラウチングスタートの状態から一気に砂を蹴り飛ばし、両腕を前で組みながら十傑集走りで二人を追いかけた。
■
一通り走った後、コンビニでオールマイトからアイスを奢られ、三人はコンビニの前で談笑しながら夜を過ごした。
「それじゃ僕はこれで。お疲れ様でした!」
「あぁ、お疲れ。また明日、学校でな」
「おやすみ、緑谷くん」
「はい! おやすみなさい!」
元気に手を振りながら去っていく緑谷くんを微笑ましく見守りながら、魔理沙は手を振り返した。
「じゃ、私も帰r」
「ちょぉ──ッと待ったァァ!」
魔理沙が指パッチンワープをする瞬間、オールマイトに肩を掴まれてしまった。
「オールマイト?」
「魔理沙くん、君に一つ
想像以上に必死なオールマイトを見て、魔理沙はとりあえず耳を傾けることにした。
「君、
「……」
オールフォーワン、その言葉が脳裏に浮かんできた瞬間、魔理沙の毛が一瞬だけ逆立った。
オールフォーワン、それは僕のヒーローアカデミアのラスボスにして邪悪なヴィランの王。かつて、結依魔理沙がカメリア刑務所に収容されていた際にも登場し、父の首の骨を折られた挙句、遺体を持ち去られてしまった。が、魔理沙が禁断の"時間遡行"を使ったことによって無かったことになり、逆にオールフォーワンを追い詰めたが、最終的に逃げられてしまった。
暇な時にちょくちょくオールフォーワンの気を探知して襲撃しに行っているが、あるのは下っ端のヴィランと脳無とかいう化け物の作りかけだけ。肝心のオールフォーワンと殼木兄弟、そして新型Noumuに関するものは何一つとして見つからない。
絶対ラスボス補正だ。ラスボス倒したらエンディング迎えるから、時が来るまでオールフォーワンが倒されないよう世界が守っているとしか思えない。なのでヤツはそ幻ブしてラスボス補正をひっぺがし、この手で直接ぶちのめす必要がある。
「あるよ」
魔理沙の意味深な表情が、オールマイトに突き刺さる。
「……やはりか。君が10年前にオールフォーワンと接触し対峙していたことは知っていたが、こうして本人の口から聞けるとは……」
「一応、私の存在はこの世界のトップシークレットだからね。一挙手一投足が情報の規制対象……のはずだったけど、情報漏洩しまくったし未だに私を消したがる勢力がいるし、上といろいろ相談して信頼のできる人物にのみ規制緩和する方針になったの。オールマイトもそれで知ったんじゃない?」
「いや、5年前にオールフォーワンと対峙した際、オールフォーワンから聞いたよ。愚痴でだけどね」
「何て言ってた?」
「『あの怪物さえいなければ、僕の
オールマイトは、オールフォーワンに風穴を開けられた部分(完治済み)を擦りながら、当時のことを思い出した。
「アイツは、常に君のことを恐れていた。君がいつ助太刀に来るか警戒し続けた結果、私に隙を突かれ、再起不能レベルの重症を負った。私もそれなりにダメージを負ったが、ヤツに比べればだいぶマシだ」
「活動時間にも制限があったが、君のおかげで治った。改めて、礼をしたい」
オールマイトは魔理沙に深々と礼をした。
「……気にしなくていいよ。うん。マジで。うん。捕まる」
魔理沙は雄英合格後に気づいた。いくらベホマズンが使えようがザオリク使えようが、日本じゃ医師免許をもたない人間による医療行為は犯罪である。たとえ完璧に骨折を治せる力があったとしてもアウトである。もうブラックジャックになるしかない。
「善処しよう」
「ホントに善処してね? じゃないと私、オールマイトの心臓に
スッ、と小指を立てながらこちらを凝視してくる魔理沙を恐れ、オールマイトは半歩ほど後ろに下がった。
「分かったからそんな怖い顔しないで! おじさん泣くよ!」
両手を突き出して縮こまるオールマイトを見て魔理沙は堪えつつも、そのシュールな面白さに耐えきれず吹き出してしまった。やはりオールマイトは可愛い。
その後二人はオールフォーワンのことについて情報交換した後に帰宅した。
(この世界は私が来てからずっと道を踏み外している)
(……いつか、取り返しのつかない過ちを犯すのだろうか)
(いや、そうならないようにするのが私の役目だ)
(私の存在意義だ)
次回、『雄英高校入学編』