最強の魔法使い(自称)が暴れるそうです。RE:   作:マスターチュロス

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【あらすじ】

ついに僕のヒーローアカデミアのメインの舞台である雄英高校1年A組の教室に入室した結依魔理沙。前世の知識と相違ないクラスメイト達に安堵したり、久方ぶりの爆豪に脅されたり、クラスメイト達に詰め寄られたりしているうちに担任の相澤先生が登場。個性把握テスト"なるものを授業初日に行うことになり、クラスメイトたちは困惑していたが、爆豪と魔理沙はお互いに闘志を燃やしていた。

第一種目、第二種目ともに驚異的な記録を叩き出した魔理沙は、特に喜んだり嬉しがることもなく第三種目の会場へと向かった。





個性把握テストとかいう、学校内で腕相撲のチャンピオンを決める的なアレ 後編(17話)

 

 

 

 

────【第3種目:立ち幅跳び】────

 

 

 立ち幅跳びでは飛んだ後は何しても許されるが、飛ぶ動作をしなければ得点にならないらしい。つまり、ジャンプせずに瞬間移動するのはダメということだ。じゃあ、ジャンプしてから瞬間移動すればオーケーということだが、同じ手ばかり使うのも味気ないので別の手を使う。

 

 とりあえず私はジャンプした後、空中で座禅を組み、サイコパワーで空中浮遊する。その姿はさながら某宗教団体の教祖兼テロリ……ではなく、某格闘ゲームの修行僧のようである。ただ、某修行僧の方はヨガの力であるのに対し、こちらは完全に超能力。なのでどちらかと言うとダルシムより、某宗教団体の方が近いのかもしれない。

 

「超〜越〜人〜力〜車〜♪☆」

 

 聞いた人によっては笑うかブチ切れるであろう台詞を吐き、優雅に低空飛行する魔理沙。そんな中、相澤先生が魔理沙の肩を叩き、質問した。

 

「結依、その状態でどこまで飛んでいける?」

 

「どこまでもです」

 

「……わかった。もう降りろ」

 

 だいぶ呆れた様子の相澤先生。心做しか目が死んでいるように見える。

 

 だが、これは個性把握テスト。己の力の最大値を知るテストである。全力を出すことは事実上不可能だが、無数にある能力から最適な能力をピックアップし、それらを駆使して最高得点を叩き出すことは出来るし、そうすることでより能力に対する理解度が深まる。

 

 なので、止めるつもりはない。何故なら個性把握テストだから。あと爆豪にだけは絶対に負けたくない。

 

 

 

 記録は∞、とりあえずノルマ達成である。

 

 

 

 

────【第4種目:反復横跳び】────

 

 

 減速と加速をスムーズかつ素早く切り替えつつ、正確にラインを踏み、ひたすらサイドステップを繰り返すという短時間で異様に疲れる競技、反復横跳び。だが疲労に関しては無限の魔力で代替出来るため問題ない。が、真の問題は、反復横跳びに適した能力が未だ思いつかないことだ。

 

(個性無しならせいぜい2万回が限度……、得点に直すと8万点しか取れない……!)

 

(だが、私ならもっと極められるはずなんだ!!)

 

 真剣に考える魔理沙。仮に個性無しで反復横跳びを行った際、まず足の皮が真っ先に禿げることだろう。爆速でやればやるほど足腰や地面に対する負荷が高まり、ワンチャン地面に陥没するかもしれない。

 第二に空気抵抗。反復横跳びは速度0の状態からいかに短時間で最高速を叩き出すかの勝負であり、それを邪魔するのが空気抵抗である。こちらが速ければ速いほど空気抵抗は当然大きくなるため、ここをどう攻略するかが鍵となる。

 

(……いや摩擦! 摩擦じゃねーか!!!)

 

 気づいてしまった魔理沙。逆にボール投げの時は何故パッと思いついたのか問いただしたい。

 

 そう、ソフト&ウェットで自分の体から"摩擦"を奪えば、足の皮が禿げる心配も、空気抵抗に頭を悩ます必要も無いのだ。

 

(後は両壁を設置して結界で囲めば……!)

 

 魔理沙は自身の両側に反射板を設置し、周囲を結界で覆った。結界に関しては、私の反復横跳びで発生する衝撃波を防ぐために用意した。

 

 準備を整えた魔理沙はさっそく反復横跳びの計測を開始した。

 

「おおおおおおおおおおおおおおお!!!!!」

 

 魔理沙は2つの壁に対して交互に気弾を放つことで、一切速度を落とすことなく高速で反復横跳びを行う。ただし、両方の腕から気弾を放つと反射によって相殺してしまうため、片方の腕から放った気弾は後に消滅させつつ、もう片方の腕から次の気弾を発射させる。

 

 さらに最高速を極めるためにはギリギリまで気弾を消滅させず、反射板にぶつかる直前で気弾の消滅と放出を同時に行い、繰り返す。だいぶ高度なテクニックだが、より高得点を狙うならこのアクションをより早く行う必要がある。当然速度を上げれば切り替えのタイミングも難しくなり、さらにラインを踏む正確さも要求される。

 

(…………!!!!)

 

 現在、魔理沙はこの10秒間、反復横跳びを往復2万回行っており、結界内は砂埃と衝撃波で荒れ狂っていた。傍から見ると謎の砂の塊が球状に存在しているだけで、魔理沙の必死さが一切伝わらないが、そんな些細なことなどどうでも良く、ただただ得点を稼ぐべく反復横跳びを繰り返す。

 

(……待って)

 

(止まり方が分からないッ!)

 

 迫る20秒。得点を稼ぐことに注視し、一切止まることを考慮しなかったため、永遠に終わらない競技(エンドレス反復横跳び)が完成してしまう。ブレーキをかけようにも"摩擦"を失っているので素の力では絶対止まることは出来無い。

 

 時速28,800kmで往復し続ける我が肉体。今自分に出来る事を最大限考えた結果、ある結論に至った。

 

(時間停止後にソフト&ウェットで"速度"を奪い、"摩擦"を返却するしか無い……!!)

 

 やはりここでも頼れるは世界(ザ・ワールド)とソフト&ウェット。ピッタリ20秒で停止させた後に物理的概念の奪取と返却。これでブレーキ力を復活させた後に解除し、気合いで地球に居座る。

 

「ザッッッッワァァァァァルドォォォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!」

 

 

 過去一危機迫った表情でスタンド『世界(ザ・ワールド)』を展開し、時間を停止させた。

 

(……これでヨ)

 

 安心しきった瞬間、時速28,800kmで反射板に直撃する魔理沙。無意識に自身の体も時間停止によって止まるものと思っていたが、残念ながら自分の体は対象外。むしろそれが世界(ザ・ワールド)の強みである。

 

 また、時間停止中はどんな物体にどのような衝撃を与えようとも一切動かず、破壊されないため、魔理沙は意図せず速度を押し殺すことに成功した。あとは"摩擦"を返却するのみである。

 

(時間停止の性質、忘れてたァ……)

 

 我ながらだいぶ焦っていたが、何はともあれ結果オーライ。後は時間停止を解除し、堂々と立っていればいい。

 

(あ、砂嵐と衝撃波消さなきゃ)

 

 解除直前にギリギリ大事なことを思い出した魔理沙は、"大嘘吐き(オールフィクション)"でその2つを消滅。安全を確保した状態で魔理沙は落ち着いて時間を解除した。

 

 

「ぉ」

 

 喜びの声をあげようとした瞬間、反射板に蓄積されたエネルギーが倍の威力で弾き返され、魔理沙に直撃。呆気なく吹き飛んだ魔理沙は時速4万km以上の速度でもう片方の反射板に激突し、再び反射が発動。魔理沙の肉体は時速10万kmの速さで宙を飛び、結界に激突し、一瞬で貫いた。

 

「師匠!!?」

 

 残像すらも残さぬ速さで空を切り、星となった魔理沙。とても反復横跳びが引き起こしたものとは思えぬ事故っぷりに、緑谷はただ口を開くしかなかった。

 

 結果、"測定不能"。ただ途中経過の時点で全生徒の得点を遥かに上回っていたため、暫定一位である。

 

 

 

 

 なお、地球外に弾き出された魔理沙は自力で地上に帰還した。

 

 

 

 

────【第5種目:ボール投げ】────

 

 

 ボール投げは既にやったので緑谷くんの観察。なお、緑谷くんのこれまでの記録として、50m走は2.17秒、握力は最高214kg、立ち幅跳びは59.91m、反復横跳びは1232点である。

 

(……強くね?)

 

 規格外な記録を連発する魔理沙を除いた場合、緑谷は全種目において2位であり、総合順位では爆豪を抑えてナンバー1。なかなかのぶっ壊れっぷりである。

 

 条件付き(個性使用禁止)であれば私とまともに組み手ができる時点でだいぶ強くなっているが、競技を通して数値化されるとその魔改造っぷりを再認識させられる。

 

「緑谷。次はお前の番だ」

 

 相澤先生の指示に従い、緑谷は所定の位置へと移動する。そして手渡されたボールを掴み、ワンフォーオールを一気に20%まで解放した。

 

 滾る力をコントロールし、緑谷は掴んだボールを真上に投げると、某念能力系冒険活劇ファンタジー作品の主人公のごとく拳に力を溜め、ワンフォーオールの出力を40%まで引き上げた。

 

「スマァアアアアアアアアアッシュ!!!!」

 

 解き放たれた拳はタイミング良くボールに直撃し、地平線の彼方へと吹き飛んでいく。

 

「1204.3メートル」

 

「「オオオオオオオオオオオオオ!!!!」」

 

 驚異的な大記録にクラスメイトは歓声を上げ、拍手喝采に包まれる。

 

 そんな中、たった一人だけ歓声を上げず、ズカズカと近づく者がいた。

 

「おい、デク」

 

 爆豪が険しい表情で緑谷を睨みつけ、怒気の含んだ声で圧をかける。秘密を知らない爆豪にとって、緑谷とは取るに足らないモブの一人。それがたった一年見ない間に化け物と化していた。

 

 (魔理沙)だけを見ていたが故に、爆豪は気づかなかった。背後から忍び寄る、緑谷の姿が。

 

 背後から緑谷が囁いてくる、「無個性の僕がたった一年でオマエを超えた」と。「次はオマエの番」だと。とぼけた(ツラ)で見下してくる緑谷の顔が思い浮かぶ。

 

 そして、その背後で嘲笑う金髪の魔女。二人揃って、俺を見下していた。

 

 (はらわた)が煮えくり返りそうだ。

 

「か、かっちゃん……!」

 

 もはや殺気に近い気迫っぷりにたじろぐ緑谷。だがそこに魔理沙が割って入った。

 

「はい、落ち着こうか爆豪きゅん。事情は後で私が教えてあげるから」

 

「どけやボサボサ野郎!! テメェに用はねェ!!!」

 

「……は、え? 用無いの? 一番疑われそうな立場なのに?」

 

「テメェが怪しいのはハナから分かってんだよ!!! だがそこじゃねェ!!!」

 

 声を荒らげる爆豪に対し魔理沙が抑える中、相澤先生が動いた。

 

「騒ぐなお前ら。合理性に欠ける」

 

 相澤先生の捕縛武器が魔理沙と爆豪の二人を捕らえ、まとめて動けないように縛った。

 

「はなせクソがあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」

 

「あ"────バカ!! 耳元で叫ぶな!!!」

 

 叫び散らかす爆豪に耳をやられ、自動的に"音を操る程度の能力"でノイズキャンセリングする魔理沙。

 

 しかし爆豪の怒りは止むことなく、個性を使って脱出を試みようとしたが、爆豪の個性は一切発動せず、何も起こらなかった。

 

 その様子を見ている内に、緑谷の脳内で"あるヒーロー"の姿が浮かび上がる。

 

「……まさか相澤先生の正体って、抹消ヒーロー『イレイザーヘッド』? 個性を消す個性の……!!」

 

 イレイザーヘッド、という名が出たものの、クラスメイトの過半数が首を傾げた。それもそのはず『イレイザーヘッド』こと相澤先生は世間では"抹消系ヒーロー"として名が通っているものの、「仕事に差し支える」という理由でメディアへの露出を拒んでいるため、知名度が絶望的に低いのである。

 

 いわば"アングラ系ヒーロー"。だが、個性を消す個性『抹消』の有用性からか、業界内ではだいぶ有名なヒーローである。

 

「じゃ、続きやるぞ」

 

 しかし、正体が露呈したにもかかわらず、相澤先生は何気なく授業を再開した。

 

 

 

 

 ■

 

 

 

 こうして1年A組の生徒たちは、その後も順調に種目をこなしていった。

 

「これから8種目全てのトータルを表示する。1人ずつ順番に言っていくほど時間はないから、一括開示でいく」

 

 結果発表に対し固唾を飲んで待つ者、堂々としている者、未だに怒りで震えている者と、三者三様であった。

 

 そして開示された記録の結果、当然1位は私こと結依魔理沙。全種目において1位を獲得し、その化け物っぷりを発揮した。2位は緑谷出久、総合成績はA組の中でもトップクラスであり、その常識破りな力はオールマイトを彷彿とさせた。

 

 ちなみに最下位は峰田である。宣言通りであれば除籍処分は免れないが……

 

「ちなみに除籍は嘘な」

 

「「はぁあぁあぁあぁああぁあああ!?!」」

 

 サラッと前言撤回告した相澤先生に、A組のほとんどが驚きの声を上げた。

 

「あんなの嘘に決まってますわ」

 

 A組最高峰の才色兼備こと八百万百(やおよろずもも)が、呆れた様子で言葉をこぼす。

 

 第一、授業初日に退学処分を下す学校など常識的に考えてありえないワケで、あくまでクラス内の緊張感を高めるためのモノであることは目に見えて明らかだった。そのため、八百万は平静を保ったまま授業に取り組むことが出来た。

 

(……マジなんだよなぁ)

 

 なお、すべての真相を知る魔理沙は相澤先生をチラ見した後、遠い目をした。

 

 

 

 

 ■

 

 

 

 

 何とか無事? に授業を終え、後片付けをする最中、背後から相澤先生が肩を叩いた。

 

「結依、片付け終わったら職員室こい。話がある」

 

「あ、ハイ」

 

 脊髄反射で返事し、魔理沙は片付けを続行。収納場所さえ把握していればワンタッチでワープ可能なため、一瞬で片付けが完了した。

 

 そしてちょうど手ぶらになったタイミングで、爆豪が未だ険しい顔をしながら魔理沙に近づいてきた。

 

「おいボサボサ。分かってんだろうな?」

 

(……わぁ、来ちゃったぁ)

 

 目をこらさずとも"吐け"の二文字が顔に浮かび上がって見える。暴れない分まだマシだが。

 

(……言うべきか?)

 

 魔理沙は迷っていた。緑谷の個性について、喋っていいものか。

 

 緑谷くんもといオールマイトが自身の個性について公開していないのは、ひとえにOFA(ワンフォーオール)が譲渡する個性だからである。譲渡条件が"渡したいと心の底から思う"という非常に曖昧かつユルユルである以上、変に知れ渡ってしまうと悪人を引き寄せ、言葉巧みに騙されて"譲渡"しかねない。

 

 特に緑谷くんはまだ未成年である。大人の言葉には特に弱い。その上メディア等に知られれば、オールマイトの"継承者"として四六時中付け回され、オールフォーワンにも命を狙われてしまう。

 

 言わない方が良い。それに、私なら「個性上げちゃったよ〜ん」で無理矢理通すことが出来る。それほどまでに私の力は規格外だし、それを信じさせられる土台もおそらく出来ている。

 

「……屋上行こうか」

 

 魔理沙が指を鳴らすと、一瞬で雄英高校の屋上に爆豪ごと瞬間移動した。

 

「いや風強ッ!!」

 

 到着と同時に吹き荒れる暴風にボサボサの髪が煽られ、前が全く見えなくなる魔理沙。

 

「で?」

 

「いや、"で? "って言われても……ねぇ? ただ単にね、私が力を欲する緑谷くんにちょっと手を貸してあげただけの話であって、ねぇ?」

 

 だいぶぼかしたが、嘘ではない。

 

「……デクに個性を与えたのか?」

 

 爆豪のストレートな問いに少し狼狽える魔理沙。やはり勘が良いので微塵もぼかしが通用しない。

 仕方がない。爆豪には申し訳ないが、緑谷くんとオールマイトの日常生活を守るためにも、私は嘘をつく。

 

「……そうだよ」

 

 魔理沙は堂々と、得意のポーカーフェイスを維持しながらそう言った。

 

「へぇ……」

 

 爆豪が少しニヤけた顔をしながらこちらに近づいてくる。その顔は過去においても前世においても一度も見たことがない、"何考えているか分からないけどロクなこと考えてない顔"であった。

 

「へぶっ!」

 

「……嘘つくなよ、魔理沙ァ」

 

 爆豪は魔理沙の両頬を右手の親指と人差し指で挟みながら言った。

 

「テメーが、デクに個性を渡すはずがねェ。根拠はねェが、俺の勘がそう言ってる」

 

はんはぁ(勘かぁ)

 

「だからテメーはさっさと本当のことを言え。アイツに個性与えたのは誰だ?」

 

「…………」

 

 嘘すらも秒で見抜かれ、押し黙る魔理沙。

 

「……テメェら、揃いも揃って俺をコケにしやがって、そんなに大事なモンか? あ"ァ"?」

 

 ドスの効いたセリフに対し、魔理沙は力ずくで爆豪の手を引き剥がし、ねじ切れない程度に捻りながら答えた。

 

「……少なくとも、お前のちっぽけな性格(プライド)よりも大事な生活(プライベート)だよ」

 

「あァ"?!!」

 

「それに私から言えることなんてせいぜい、"緑谷くんがああなった原因の一つとして私が関わっている"、というお前の考えを肯定するくらいだ。それ以上は教えられない」

 

「それでも知りたければ、力ずくでも何でもやってみな。喧嘩なら何時でも買ってやる」

 

 魔理沙の不敵な態度に気分を害した爆豪は、舌打ちをしながら腕を振り払い、終始ブチ切れつつも魔理沙の前から立ち去ろうとした。しかし、まだ言わなければならないことがあった魔理沙は爆豪を呼び止めた。

 

「待って爆豪」

 

「あ"ぁ"?」

 

「一つ言わせて欲しい」

 

「テメェのクだらねェ説教なンぞ聞きたくねェ」

 

「お前が聞く耳を持たずとも直接心に流すから安心しろ。じゃ、行くぞ」

 

 イヤそうな爆豪の表情を傍目に、魔理沙は問答無用で話を続けた。

 

((……なぁ、爆豪。別に緑谷くんに個性が芽生えようが、記録稼ごうが、お前がさらにその上をいけばいいじゃんか))

 

「……」

 

 爆豪の表情が一瞬で変化した。

 

((お前がプルスウルトラすれば、緑谷くんなんてすぐ越えられるさ。お前は個性強い上にセンスも抜群だし、頭も良いし勘もキレるから、もっと余裕もちな。お前なら絶対越えられる))

 

((それに、超えたい相手は緑谷くんだけじゃないだろう? こんなところでつまづいていいのか?))

 

「……」

 

 今度は爆豪の方が押し黙り、爆豪は改めて今の状況を見つめ直した。

 

 どんな経緯であれ、デクは雄英高校に入学し、力を手に入れ、総合記録では自分よりも高い成績を記録した。たとえそれがゲームのバクのような奇跡だとしても、その事実は変わらない。

 

 今のデクは、強い。憎い程に強い。()()()()()()()()()()()()()()が、前提の崩壊によって顔を出し、己に牙を向いているのがわかる。

 

 これがデクの可能性であるのならば、俺はそれよりもさらに上の可能性を掴む。ボサボサ野郎が何をしようが、絶対に超えられない才能の差を見せつけ、完膚なきまでに勝利する。

 

 これこそ、爆豪勝己の歩む道。ビクトリーロードである。

 

「……結依魔理沙」

 

「前にも言ったが、俺は()()でテメーと、オールマイトを超える。当然、緑谷もだ」

 

「デカイ目標だねぇ」

 

「そしてここにいるヤツら全員を叩き潰し、俺は正真正銘最強のヒーローになる!!」

 

「うん、発想がもう完全に不良漫画の主人公」

 

「ウッせぇ! テメーは首洗って待ってろ!!」

 

 ガニ股で目を吊り上がらせながら去る爆豪。しかし、先程までの殺伐とした雰囲気とはうってかわり、いつもの爆豪がそこにいた。

 

「……フッ、立ち直って良かった」

 

 ボロボロの髪を靡かせながら、魔理沙は小声で呟いた。

 

 

 

 ◻️

 

 

 

───── 放課後 ─────

 

 

 爆豪による尋問も終わり、帰りのHR(ホームルーム)の時間も相澤先生が一言で済ませてしまったしまったため、一瞬で迎えた放課後。後は職員室にちょっと寄って帰るだけである。

 

「ねぇねぇ! 魔理ちゃんの個性って一体何?! 強くない?!」

 

 ピンク色の肌と黒い瞳が特徴的な女の子、"芦戸三奈"が躊躇いもなく話しかけてきた。……今更だがなぜこの子は私の顔を見て怖がらないのか。真の陽キャなのか。

 

「……それはn」

 

「だから! あんな凄いパワーなんだから強化系に決まってるだろ?!」

 

「いや、50メートル走をほぼ一瞬でゴールしていたから、ワープ系の個性に違いない」

 

「じゃあ立ち幅跳びの時に浮いていたのは?」

 

「「うぅ〜ん……」」

 

 教室の脇でクラスメイト達が私の個性の正体に関する議論が白熱しており、言葉が遮られてしまう。想像以上に盛り上がっているようだ。

 

 競技に合わせて色んな能力を使ってしまったばかりに、誰も私の個性の正体について気づいていない。まぁ、無理もないが。

 

 第一この世界において複数個性所持者などせいぜい2個が限界だが、私はその倍以上の個性をお披露目している。1つの個性を応用して使っているにしても力の方向性がバラバラすぎて全く統一性が無く、常識的に考えて私の個性を見破るのは難しい。

 

「フフン! それはですね! 師匠の個性はなんと"食べた相手のk」

 

「ハイ緑谷くんちょっとこっちこようか」

 

「モが!!」

 

 禁忌(緑谷)の登場に頭が一瞬真っ白になった魔理沙は、秒で冷静さを取り戻し、即座に背後から緑谷くんの口を抑え、教室の隅に連れ込んだ。

 

「緑谷くん、あの時はサラッと君に教えたけど、アレ世間的にタブーだから広めないでほしい」

 

「……あ、ハイ」

 

「それに緑谷くんは個性オタクだからギリ受け入れられるだろうけど、他人から見たら私の力はあまりにもデカすぎるんです。迂闊に喋ると警戒されちゃう」

 

「……師匠、もう散々個性把握テストで個性見せたから、今更隠しても意味ないんじゃないですか……?」

 

「……アレは、あのレベルの個性が私の力の"上限"だと思ってもらうためにやったの。というかアレくらいでいちいちビックリされても困る」

 

「いや……でも師匠の一番の問題点は、"食べた相手の個性をパクる個性"なのに、何故か個性の範疇を超えた力を異様にたくさん持っているところじゃないですか。"パクる個性"だけなら、別に公開してもいいんじゃないですか?」

 

 緑谷の曇りなき眼に、魔理沙は押し黙ってしまう。

 

 確かに、一番ヤバイのは一方通行(アクセラレータ)だの大嘘憑き(オールフィクション)だの、頭のおかしい能力を何個も抱えている点だが、他にも問題がある。

 

 緑谷くんは知らないが、"相手の個性を手に入れる"という点において、私の個性はオールフォーワンとほぼ同じである。一応A組ではなくB組の方に似た系統の個性を持つ人(物間寧人)がいるが、アレは制限時間が5分かつストックできる個性も限られているので、とてもじゃないがオールフォーワンとは似ても似つかぬ個性である。

 

 一方、私の個性は世界中の個性の中で最もオールフォーワンの個性に近い。無限のストック、制限時間無し、個性の組み合わせ可能。実質オールフォーワンといっても過言では無い。

 

 それの何が問題なのか。……緑谷くんは知らないが、オールフォーワンは裏社会を牛耳っている悪の帝王。ソイツが変に暗躍したりコソコソ何かをやると、真っ先に疑われるのは私である。仮に堂々と暴れられたとしても、それを彷彿とさせる力を持つ私は当然として恐れられる。どちらにしろ非常によろしくない。

 

「言っても言わなくても同じなら、言わない方が良いの」

 

 適当な文言で緑谷くんをあしらい、教室の隅から戻ってきた魔理沙。ニヤニヤと笑うクラスメイトを無視しつつ、淡々と答えた。

 

「私の個性は"魔法"、魔……体力を消費して色んな魔法を発動出来る」

 

 魔法、と聞いてクラスメイトたちが驚きの声をあげる。

 

「……ってことはあの超パワーは?」

 

「強化魔法」

 

「では、50メートル走を一瞬でゴールしたのは?」

 

「転移魔法」

 

「浮いていたのは?」

 

「重力魔法」

 

「「すげ────ッ!!!」」

 

 素直に驚きの声をあげるクラスメイトたち。彼らから見て魔理沙の個性は、まさしく"汎用性の塊"であった。

 

「最強じゃん! 最強の魔法使いだ!!」

 

「両親も魔法使いなのか……?」

 

「いや違う。シンプルに私が突然変異なだけで両親はまともだよ」

 

「変異しすぎだろ……」

 

 峰田は個性把握テストでの出来事を思い出しながら、改めて魔理沙の個性にドン引きしていた。

 

「ちなみに魔法って他にも使えるの?」

 

「あぁ、属性魔法とか変身魔法とか、回復魔法とかも使える」

 

「え、怪我も直せるの? ヤバくね?」

 

「逆に弱点とか無いの?」

 

「昔は魔法使い過ぎて頭痛がしたり酷い吐き気を催したこともあったけど、今は無いかな。だいぶ体も鍛えたしね」

 

「いや強過ぎ……」

 

 力こぶを見せつける魔理沙に対し、耳郎含む一部の常識人は苦笑いしか出来なかった。それもそのはず、彼女らは見てしまった。布越しでも分かる魔理沙の上腕筋の力強さ、やけに広く感じる肩幅、座っていても感じ取れる体幹の良さ、膨れ上がった脹脛、まるで体から生命エネルギーが溢れだしているかのような力強さに、生物としての"格"の違いを思い知らされる。

 

(……いくらここが最高峰だからって、レベル高過ぎじゃない……?)

 

(大丈夫かなコレ、ウチ仲良く出来るかな……)

 

 だんだんと不安になってきた耳郎響香は、改めて魔理沙の顔を見た。が、一瞬で目を逸らした。

 

(やっぱ無理かも……)

 

 トップヒーロー以上の強さ、鬼のような個性の汎用性、圧倒的フィジカルの強さ、そして全く読めない顔の表情。それら全てを兼ね備えた人物が同じ教室に存在しているなど、あまりにも圧が強過ぎる。

 

 これで性格が終わっていたら息苦しすぎて自主退学も視野に入りかねないことを踏まえると、この人と関わりを持つことにやや抵抗を感じてしまう。

 

(……でも、ヒーロー目指す人がクラスメイトを避けるとか……無いよなぁ)

 

 目を瞑り、頭を抱える耳郎。やはり人付き合いは難しいものである。

 

 なお、読心能力でクラスメイト全員の心境を観察していた魔理沙は、一瞬だけ耳郎の方に振り向き、0.01秒だけニヤケ顔を公開した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 その後も話が進み、相澤先生から直接お叱りを受けるまで永遠に喋り続けていた。

 

 

 To be continued.

 

 






次回、『話が長くなりすぎて進まない件』。

なお、この17話の総文字数は9879文字である。

何ならカメリア刑務所編のどこかは総文字数が10000文字を突破している。

REは大変である。
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