最強の魔法使い(自称)が暴れるそうです。RE:   作:マスターチュロス

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【あらすじ】

初授業日から何日か経過したあと、1年A組のクラスメイト達は午後からヒーロー基礎学の授業を受けることになった。テーマは"戦闘訓練"。実際に起こり得るシチュエーション下での行動、対処方法について学び、試す授業となっている。

くじ引きによってヒーローチームとヴィランチームが決められ、最初の一組目が発表された。その内容は、轟焦凍&障子目蔵チームVS結依魔理沙。早くも一回戦目からトップ同士の争いとなり、轟と魔理沙は互いにバチバチと睨み合っていたのであった。





結依魔理沙VS轟焦凍 (19話)

 

 

「じゃあとっとと準備してくるから、いつでも好きなタイミングで入ってきていいよ」

 

 そう言い残し、その場から立ち去ろうとする魔理沙。

 

「待てよ」

 

 しかし轟がそれを阻止した。

 

「お前、随分と余裕があるな。俺らのこと眼中にねェのか?」

 

 轟の一言にピクッと反応した魔理沙は、半身だけ振り返る。

 

「……私はな、戦いが大好きなんだ。私の中にある無数の魔法を組み合わせ、無限の戦法を生み出し、駆使し、戦うのが大好きだ。あそこの二人よりも」

 

 魔理沙は緑谷と爆豪の二人を指さした後、再び話を続けた。

 

「だからね、こういった設定でなおかつ一部の魔法が制限された状態で屋内戦闘を行うというこの状況が、未知の領域が、楽しみで仕方ないのさ。何が使えてどういう組み合わせが最適解か、考えて施行したくて堪らない」

 

「まぁ要は楽しんでるだけだからあまり気にしなくていいよ」

 

 そう言って魔理沙は立ち去り、支給品を貰ってから建物内へと入っていった。

 

「……舐めてるな、アレ」

 

 轟はボソッと呟いた。

 

「完ッ全に舐められてんなァ、半分野郎ォ」

 

 そして便乗するように爆豪が轟の隣へ並んだ。

 

「轟くん、頑張って!!」

 

 さらに爆豪と両サイドで挟むような形で緑谷が隣にたち、キラキラとした表情で応援した。

 

(……? 何だ、コイツら)

 

 轟は友達でもパートナーでもない二人が並び立ったことに首を傾げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【モニタールーム】

 

 

 

 オールマイトと残ったクラスメイトはモニタールームへと移動した。

 

「なぁなぁ、この勝負どっちが勝つと思う?」

 

 金髪の少年、"上鳴電気かみなり でんき"が口を開いた。

 

「結依だろ。何かと凄いし」

 

 「戦い方しだいでは轟ちゃんにも勝ち目はあるはずよ」

 

 「それに禁止事項もあるんだぜ? 内容によっちゃ結依さんが相当不利な可能性も……」

 

「いや、仮に個性の使用を禁止したとしても師匠は絶対に負けないし、フィジカルの差が激しすぎて勝負になるかも分からない。逆に禁止事項が緩いと師匠は遊び半分で初見殺し技を連発してくるから、それに対応できないとキツいんじゃないかな」

 

「いやいやそんなわけ……」

 

 と、上鳴は否定しようとしたが、個性把握テストで彼女が見せた力について、本人に説明されるまで全く理解できなかったことを考えると、否定できなかった。

 

 そして個性無しでソフトボール投げ5000m。あの記録がもし本当であれば、魔理沙の身体スペックは既に増強系の個性をもつヒーローと同レベルかそれ以上であり、そこからさらに魔法でバフがかかるとするとプロヒーロー以上のスペックと伺える。そう考えると緑谷の意見にも納得がいく。

 

「だけど、なぁ……」

 

 上鳴は素直に認めることが出来ず、魔理沙のスペックを疑い続けた。

 

 彼の中の常識が"結依魔理沙"という存在を否定しているが、彼女は個性把握テストの時も、今回も、何食わぬ顔で存在し、当然のように偉業を成し遂げる。

 

 見て聞く限り、彼女は世界中の誰よりも強い。なのに、入試の話を聞くまで彼女に関するニュースは全くと言っていいほど無く、経歴に関しても自分たちと同じ一般選抜で入ってきたごく普通の高校生。なのに、あの力は何なのか。夢でも見ているのか。

 

 考えれば考えるほどバグとしか思えない存在に、上鳴の頭はショートした。

 

「……結局、魔理沙の禁止事項って何だ?」

 

 切島がそう言うと、クラスメイト全員の視線がオールマイトへと集まった。

 

 突然、生徒たちのキラキラとした瞳で見つめられたオールマイトはやや躊躇いつつも口を開く。

 

「……彼女、だいぶ特殊な経緯でここにいるからあまり言えないんだけど、禁止事項に関しては少し公開するよ」

 

 オールマイトは魔理沙に返却された紙切れを取り出し、広げた後に一部の単語を黒く塗りつぶしてから、皆に手渡した。

 

【禁止内容:以下の行為を禁ずる】

 

・瞬間移動、ワープ、■■■■、■■■■等の、物理法則を無視した瞬間的長距離移動を使うことを禁ずる。

 

・■■、■■、■■、■■、■■■への■■を禁ずる

 

・分身等による人数の増加を禁ずる

 

・核兵器に対する物理的接触、および核兵器の転移、縮小化、認識阻害を禁ずる

 

・ヒーロー側およびヴィラン側の勝利条件を有耶無耶にしかねない行為を禁ずる

 

・その他、人道に反する行為を禁ずる

 

 

「何じゃこりゃ」

 

「多いな……」

 

「普通の人なら禁止されないことまで書かれてる……」

 

「いやでもこんだけ禁止されてるなら轟勝てるんじゃね?」

 

 希望が見えてきた上鳴に対し、緑谷が口を開いた。

 

「師匠は個性禁止かつ両手使用禁止かつ屋内戦闘でイーブンです。この条件なら100%師匠勝ちます」

 

「怖ぇよ緑谷! さっきから!」

 

 淡々と言葉を返す緑谷にツッコミを入れる瀬呂。喋っている内容も、それをさも当然かのごとく受け入れている姿勢も、瀬呂には理解できなかった。

 

「あ! 魔理沙が何かしてる!!」

 

 芦戸の声をきっかけに、全員が魔理沙のモニターに注目した。

 

 魔理沙は核兵器(ハリボテ)が設置されてる部屋にたどり着き、ハリボテの核兵器をじっくりと見た後、両手のひらを合わせてから地面に手をついた。すると、ハリボテの周囲に太く幅間隔が狭い鉄格子が地面からニョキニョキと全方位囲み、巨大な檻を形成した。

 

「え、それズルくね?」

 

「無から鉄格子を組んで囲むとは……」

 

「理に叶ってはいますが……あの方、物質創造も得意でしたの……?」

 

「けどルールは……破ってないな」

 

「その辺は律儀なのね」

 

 皆がモニタールームで魔理沙の動向を見守る中、魔理沙は黙々と作業を進めていた。

 

 相手が何をしようが、どう足掻こうが、完璧に対応し確実に勝利する作戦。それを考えている時が人生で一番面白いのだ。

 

 

 

 

 

 

【ヒーローチーム】

 

 

 ブ──────!!! 

 

 訓練開始のブザーが鳴り響き、轟は障子に指示を出した

 

「障子、まずは3〜5階の様子を調べろ」

 

「わかった」

 

 障子は個性『複製腕』を発動させ、複製した腕を伸ばし、先端から目玉を生やすことで上階の様子を確認する。

 

「駄目だ。有刺鉄線のようなものが部屋中に隙間なく設置されている。それも2〜5階までビッシリと」

 

「……窓からの侵入は無理だな。なら……」

 

 轟はビルの入口に一歩足を踏み入れ、壁に手をあてる。

 

「……()()()()()()()

 

 轟が個性を発動した瞬間、周囲の気温が急速に低下し、壁や天井にいたるまで凍結し始めた。

 

 轟の個性、『半冷半燃』。右手で氷を操作し、左手で炎を操作する能力。出力規模は両親譲りで、ビル一棟を余裕で丸々氷漬けにするレベルの実力者。なお、左手炎は使わないもよう。

 

 轟は右手氷のみでこのビルを凍結させ、核兵器もヴィランも丸ごと無力化しようとした。この複雑に入り組んだ閉鎖空間において広範囲の凍結能力は非常に有用であり、情報に一切依存することなく制圧できるため、迅速かつ安全に対処することが出来る。相手がごく普通のヴィランであれば。

 

 だが、凍結開始直後、轟は右手に不可解な感触を感じた。轟が目線を向けると、右手首にムチのような太さの蔓が絡みついており、それに気づいた瞬間、轟の体が一瞬で持ち上がった。

 

(……天井からッ?!)

 

 蔓の先を見上げると天井があり、明らかに貫通しているのが見えた。

 

 このままでは天井に頭を強く打ち付けられるか、蔓と同様にすり抜けてしまい、分断される。

 

 一刻足りとも許されぬ状況において、轟は咄嗟に蔓を凍結して脆くし、破壊を試みた。

 

 だが轟は蔓に触れることも、凍結させることも出来ず、そのまま天井をすり抜け一気に5階まで引き上げられてしまう。

 

「轟ッ?!」

 

 目の前にいたはずの轟が一瞬で消え、障子はすぐに小型通信機で状況確認を行った。

 

『大丈夫か?!』

 

「……あぁ、平気だ。だが5階まで引き上げられた」

 

『そこにヤツ(結依)はいるか?』

 

「……いる」

 

 目線の先にいたのは、白黒のドレス服を来た怪物。

 

「やぁ、轟くん。お は よ う」

 

 魔理沙は片手を上げ、挨拶をした。

 

 しかし轟から見て魔理沙の瞳はかっぴらいており、全く穏やかな雰囲気ではない。

 

「……有刺鉄線張ってたんじゃないのか」

 

「あぁ、それ()()。私がそう見えるように仕向けた」

 

 魔理沙がニコッと微笑む。

 

「本当は核兵器の幻覚でも見せてやろうと思ってたんだけど、たぶん審判オールマイト側がわけわかんなくなるだろうから止めた」

 

 両手を後ろに回しながら明透もなく話す魔理沙。手の内を明かすことに一切の躊躇はなく、滲み出る強者の自信はプレッシャーとして轟に襲いかかる。

 

「さて、轟くん。奇しくも私とタイマンする羽目になったが、勝てる見込みはあるのかな?」

 

「お前こそ、俺が相手になったことを後悔するんだな」

 

 魔理沙の挑発を冷静に受け流す。

 

(相手は一人、通信機は付けっぱなしにしてあるからこちらの状況は障子に伝わっている。あとは障子が核兵器に触れるまで俺がコイツを足止めすれば……)

 

 怪物を目の前にして思考する轟。しかし怪物は貼り付けたような笑顔を崩さぬままボソッと一言零した。

 

「ちなみにさっき引き上げる際に通信機は壊させてもらったから連絡できないよ」

 

「は?」

 

『惑わされるな! 轟!!』

 

 轟の意識が小型無線機に向いた瞬間、結依魔理沙はたった一歩で轟の目の前まで移動し、腹に一撃と額にデコピンを一発ずつ入れ、ついでに通信機も壊しながら轟の右腕を掴み、力技で反対方向に投げ飛ばした。

 

「ガはッ!!」

 

「ん〜〜嘘。だがこれで本当になったな」

 

 ニシニシと笑う魔理沙。それに対し轟は腹部の痛みと軽い脳震盪でうまく立てずにいた。

 

「……卑、怯なァ……ッ」

 

「卑怯? 残念これは()()()()()。人を欺き己の最大打点を叩き込むための技術」

 

「そもそもヴィラン相手に卑怯もクソもないだろう?」

 

 

「あぁ、そうそう一つ言い忘れてたんだけど……」

 

「君は私を足止めした気になっているが、残念ながら足止めになっていない可能性がある」

 

「……何、言ってんだ……」

 

「さっき君たちに見せた有刺鉄線が幻覚であったのと同じように、今ここにいる私が幻覚である可能性だって、あってもおかしくないだろう?」

 

「……」

 

「……だったら」

 

 轟は立ち上がりながら力を込め、掬い上げる様に右手を振り回す。すると氷が轟の動作に呼応するように次々と凝結し始め、地面から徐々に迫り上がりながら魔理沙に迫る。

 

 魔理沙はフッと笑顔を見せた瞬間、氷が魔理沙の体に直撃。全身が凍結するかと思いきや、まるで霧のように霧散して消えてしまった。

 

「……幻覚か」

 

 幻覚ならば実体が無いと思い、直接攻撃を行って明らかにした轟。魔理沙側からしたら悩めるだけ悩ませて隙を突く作戦だったのだろうが、こう何度も振り回されれば流石に対応出来る。

 

 轟はゆっくり立ち上がり、次の行動を考える。もし魔理沙が核兵器を守るために行動するならば、現状フリーな状態である障子を潰しに行くと考えられる。だが今度は幻覚から解放された自分がフリーになった。となると自分は障子の代わりに核兵器にタッチする必要がある。しかし障子と魔理沙の接触が早いと障子が真っ先にやられ、ターゲットが自分に移る。そして迷っているうちに自分も魔理沙にやられる。

 

 なら、障子と合流した方がいい。おそらく障子は個性を使って核兵器の大まかな位置を捉えているはず。その途中で魔理沙と戦闘になったなら、そこの階層に核兵器が存在するとみて良い。もし戦闘になっているならば加勢し、氷で魔理沙を抑えながらもう片方の腕で障子を氷で押し出す。具体的な場所は障子に聞くしかない。モタモタしていると障子がやられてしまう。

 

 まだ1分程度しか経過していないため、おそらく障子もまだ1階か2階にいるはず。そこに向かえば……

 

 と、その時、轟の背後から何者かが肩を数回叩いた。振り返るとそこには、右肩から腕の先端にかけて異様に膨れ上がった結依魔理沙がいた。

 

「不正解」

 

 その言葉と同時に放たれた右腕の一撃は、一瞬で轟の肉体を壁に打ち付け、衝撃に勝つ勢いで壁にめり込んだ。

 

「"密と粗を操る程度n……待って、違う」

 

「そう! 密と粗を操る程度の魔法death! 私は自分の肉体を分子レベルまで分裂し再構築できるンデェス!!」

 

「ふ、フフッ、幻覚みたいでしょ?」

 

 顔の傍にピースサインを置き、ウィンクしながらポーズを取る魔理沙。一瞬自身の能力を喋りかけたが、笑いながら誤魔化した。

 

「……じゃあ、はい。障子くん処す」

 

 魔理沙は異次元から"かんざし"を取り出し、床を一回突いた。すると、突いた場所を中心に正円の穴が開き、魔理沙はその穴を通って4階へ移動。障子くんの居場所は千里眼で特定しているため、魔理沙は最短距離で障子くんのいる場所へ向かう。

 

 一方、障子目蔵は轟との連絡が途絶えた瞬間から核兵器の捜索に全力を注いでいた。しかし、開始してから未だ5分も経過していない今、核兵器の場所を正確に絞り込むことはできていない。

 

(1階に核兵器はない。となると、2階か、それ以上の階か……)

 

(……! 何か、来る……ッ)

 

 障子が振り返った先には、正円状に開けられた穴と、その穴の向こうから飛んでくる謎の高速物体が存在し、障子は咄嗟に回避した。

 

「おみごと」

 

 背後からの声に障子は一瞬でその場から離れ、姿を捉える。

 

「結依……魔理沙……!」

 

「やぁ、障子くん。君の相棒は私の手で今もおねんね中だが、ついでに君も眠ってもらおうか」

 

 魔理沙が指を鳴らすと、虚空から杖に似た謎の道具が現れ、魔理沙の手に渡った。

 

牡羊座の皇帝(アリエス・ゾディアーツ)

 

 杖というにはあまりにも重厚感のある武器を軽々しく振り回し、障子に向けて素早い突きを放つ。

 

 障子はとっさに複製腕でガードしたが、杖に触れた瞬間、障子の腕は突然ダラリと脱力してしまった。

 

「この杖は生体エネルギーの操作に長けているんだ。だからこの杖に触れた相手は身体機能の一部が強制的にシャットダウン……つまり、眠らされちゃうのさ」

 

 魔理沙の説明にただただ驚きを隠せない障子。そんな代物がこの世に存在していることも、それを容易く取り寄せてきた魔理沙の魔法にも、その無法っぷりにただ驚くことしかできない。

 

 一つだけ言えることとして、その杖は個性『複製腕』への明確なメタとして用意されたモノであり、直接戦闘での勝ち目は全くと言っていいほど無い。ならば、少しでも勝ち目がありそうな手段を選ぶ。

 

 障子は近くに落ちていた謎の塊高速物体を持ち上げ、魔理沙に向けてブン投げつつ逃走を開始。

 

 しかし魔理沙は気兼ねなく飛んできた物体をデコピンで破壊し、背を向けて逃走する障子の姿を二つの黒い眼で捉える。

 

「あら、逃げちゃうか。なら、ド派手に爆睡しろ」

 

 

魔法三重最強化(トリプレット・マキシマイズマジック)

 

極大睡眠魔法(ラリホーマ)

 

 

 ビル全体を囲むほどの魔法陣が3つも出現し、淡い水色の輝きを放ちながら発動したラリホーマは、このビルに存在するすべての敵対者を安らかな世界に誘い、そして心地よい夢の世界へと送り込んだ。

 

「ハイ、私の勝ち』

 

『……zZZZZZ』

 

「審判まで寝ちゃったら終わらないでしょうがッ!!」

 

 その後、魔理沙は遠隔でオールマイトを叩き起し、無事ヴィランチームおよび魔理沙の完全勝利となった。

 

 

 

 

 To be continued..

 

 

 

 

 






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