最強の魔法使い(自称)が暴れるそうです。RE:   作:マスターチュロス

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EX2:耳郎響香の憂鬱

 

 

【自室】

 

 とある日の金曜の夜、耳郎は布団の中でスマホを弄っていた。特にやることもなく、やりたいことも無かったため、ただ無心にYouTubeとTwitterの画面を行き来しながら通知の有無を確認していた。

 

(……)

 

 虚しさに耐えきれず、耳郎はスマホから手を離した。かと言って他にやりたいことが出来たわけでもなく、ただ布団の中でジッとするしか無かった。

 

「学校……行きたくないなぁ……」

 

 ふと、頭に浮かんだ言葉を口にした。退屈によって生まれたストレスが言葉として吐き出され、自然と心が緩んでいく。

 

「あんまり自分が……クラスに馴染めていないような気がして、ちょっと辛い」

 

「……頑張って、雄英高校に合格できたのに……」

 

 抱えていた悩みが次々と吐き出され、少しずつ気持ちが整理されていく。

 

(何で……ウチはこんなにウジウジしてるんだろう? もっと、自分らしくあるべきなのに……)

 

 耳郎は過去の自分と比較し、今のこの状態が異常であることに気づいた。人間関係での悩みなど今まで一度も抱えたことがなかったが、何故高校生になって悩んでしまうのか。耳郎自身も不思議に感じていた。

 

 おそらく、昔と比べて今の状況は明確に違う何かが存在している。今までになかった、大きな要因。それがここまで自身の環境を変化させたのだろう。

 

 では、何が原因か。その答えとして真っ先に頭に浮かんだのは、一人のクラスメイトであった。

 

(……結依、魔理沙か)

 

 彼女の姿を思い浮かべた瞬間、頭がやけに重く感じ始めた。やはり彼女の存在が重すぎたか。

 

(皆は親しそうに話しているけど、やっぱウチは……苦手だなぁ)

 

(あの何考えてるか分からない顔に、デタラメな個性。本人も自由人っぽいから、何しでかすか分かんないし……)

 

 考えれば考えるほど、結依魔理沙の存在は自分にとって異質過ぎた。入学前からTwitterでちょくちょく噂にはなっていたが、まさか本当にいるとは思わなかったし、あんなに怖い見た目だと思わなかった。

 

 彼女が言った、『魔法』を使う個性。アレは本当に凄かった。もう羨ましいだとか、妬ましいだとか、そういう感情の次元に立たせてくれないほどに圧倒的で、"格"が違った。だというのに彼女は偉ぶったり、相手にマウントを取るようなことを一切しない。とてもあの爆豪とかいう人の幼なじみとは思えないくらいにしっかりしていた。

 

 だが、個性の扱いに関してはあまりにもフリーダム過ぎる。個性把握テストの時も、戦闘訓練の時も、やってることすべてが常識の範囲外過ぎて理解できない。飛び火したら人が死にかねないようなことも平気でやるもんだから、もう怖くて仕方がない。

 

(だから、ウチは彼女と相容れない。次元が違うから……)

 

 耳郎はそれで自身を納得させようとした。が、モヤモヤが取りきれない。

 

(……違う、それだけじゃ解決しない。相容れない人間なんて中学生の時から居たし、無視すればそれで良かった……)

 

(……ウチが、本当に気にしていたのは……)

 

 耳郎は深く自分と見つめ合った。本当に気にしていること、それは結依魔理沙にまつわる事で間違いない。だがそれだけでは話は終わらない。

 

 ならば、向ける視線を一旦彼女から別のものに変える必要がある。彼女ではないが、彼女に関わること。それは人か、物か、事象か。冷静に考えてみる。何が原因で何が辛いのか。

 

(……!)

 

 耳郎は気づいた。自分が今まで気にしていたことは価値観、常識、次元……そしてそれを共有する味方であることに。

 

(ウチはまだいないのに、彼女(魔理沙)の周りには、いる。あんなに人と違って、誰とも分かり合えないような見た目と個性をもってるのに……)

 

(まるでウチが少数派みたいで、誰にも理解されないみたいで、そんなアウェーな場所(教室)で常に彼女の存在を意識させられるのが、辛かった……)

 

(……ウチも、皆みたいに気にせず接することが出来れば、自分らしく振る舞えたかな)

 

(……こんな風に悩んでるの、ウチだけなんかな……)

 

 

 

「はァ……」

 

 

「そんなに悩んでいるなら手伝おうか?」

 

「……は?」

 

 突然、窓の外から聞き覚えのある声が聞こえた。耳郎は布団を蹴り飛ばし窓の方に目を向けると、そこには某スパイダーな男のごとく糸を使い、上下逆さまに現れた結依魔理沙の姿があった。

 

「……イッ! 嫌ァァァアアアアアアアアアアアア!!!!!!」

 

 あまりの奇抜過ぎる登場に耳郎は腰を抜かし、プルプルと震えながら魔理沙の方に指を指した。

 

「……その悲鳴は事件性ありすぎるから抑えてほしい」

 

 魔理沙はヤレヤレとでも言わんばかりの表情で耳郎に訴えかけた。

 

 なお、叫ばれることは予測していたため、既に簡易結界で真空の壁を形成し、外部の人間に伝わらないよう対処していた。

 

「いいやいやいやいや何してんのアンタ!? てか落ちないのそれ!?」

 

「たまたま空飛んでたら呼ばれた気がしたから来た。あとこれスパイダーマンの糸だから切れないし落ちない」

 

「……そうなの?」

 

「そーなの」

 

 そう言うと魔理沙は透過能力で窓を開けずに通過し、耳郎の部屋に侵入した。

 

「さて、話は聞かせてもらったよ。学校が居心地悪くて辛いって話……で、その原因に私が関係してるって話」

 

 すべてを見透かしているかのような発言に、耳郎の心臓がドクドクと反応する。

 

「……アンタ、もしかして聞いてた……? ……しかも、心の声……」

 

 耳郎は平静を装いながら質問した。

 

「聞いた。あ、心の声に関して普段はやかましいからOFFにしてる」

 

(ONとかOFFの調整効くんだ……)

 

 平然と心を読んだことを暴露されたが、それよりもオンオフが効くことに耳郎は驚いた。

 

「……で、まぁそれも踏まえて言わせてほしい。ごめん」

 

「え……、は? え?」

 

 突然の謝罪に頭が混乱した耳郎。

 

「私は昔から人の恨みを買いやすいタイプでさ、意図せずして相手を傷つけたり、怖がらせたりすることがよくあったんだ」

 

「まぁそのせいかは知らんけど、やれ海外の刑務所にぶち込まれるだの、気絶してる間に人体実験だの、大量のヴィランに狙われるだのだのなんだの、大概ろくな目にあわない」

 

(……何言ってるのかよく分からない)

 

「……今のは例外だけど、よくあるのは見た目かな。私の個性『魔法』だけど見た目は異形系だからね。よく外食しにいくとちょいちょい言われたりする」

 

「……そう、なんだ」

 

「それに友達だって、中学生になるまでは緑谷くんと爆豪以外誰もいなかったし、あの二人も幼稚園以来ずっと会ってなかった。しかも爆豪に関してはちっさい頃から当たり強いし……」

 

「まぁ、とにかく、怖がられるのは当然というか、そう思ってしまうのが自然な反応だから全然気にしなくていい。むしろ、今私がこんな自由に人と喋れてることが奇跡みたいなもんだ」

 

「……」

 

「だから、私は気にしてない。そして、耳郎ちゃんに気を使わせてしまったことを改めて謝罪する。ごめん」

 

 頭を下げる魔理沙に、耳郎は慌てながらも何とか魔理沙に頭を上げさせた。ここまで下手に出てくるとは思わず、恥ずかしさと申し訳なさが絶妙に入り交じって複雑な感情が生まれそうだ。

 

「……なんというか、アンタ、意外とそういうところ気にするタイプだったんだね」

 

「……? そう?」

 

「だってアンタ、強いじゃん。ウチにどう思われようが関係なくない?」

 

 耳郎の言葉に、魔理沙はふと思い耽る。

 

「そうだね。昔の私なら、微塵も気にしなかっただろうね」

 

「ただ……この学校は違う。私が初めて教室で自己紹介した時、みんなは私を怖がらずに話しかけてくれた。それが私にとって、それなりに嬉しい出来事だったんだ……」

 

「だから私もちゃんと、人と向き合って生きていくべきだ……って、最近思い始めた」

 

 魔理沙の告白を聞き、耳郎の目が徐々に丸くなっていった。

 

「まぁ、そういう理由(ワケ)で私は……来た。……これからたくさん、嫌でも関わってくるだろうし」

 

「……あ、私は全然嫌だとは思ってないけどね?」

 

 魔理沙は自身の言葉にフォローを入れたが、耳郎はそれどころではなかった。何せあの結依魔理沙(最強の魔法使い)が自分と似たような、人間らしい悩みを抱えていたのだから。

 

 それだけで、"仲間"だと思えたから。

 

「はァ……ウチはてっきり、アンタのことを史上最強の完璧超人だと思ってたんだけど……」

 

「アンタも……苦労してるんだね……」

 

 耳郎は優しく魔理沙の肩を2回叩いた。

 

「でもやっぱり、アンタは凄い。……ちゃんと自分なりに悩みと向き合っているし、最初の一歩も踏み出してる。ウチと大違い」

 

 耳郎の言葉に、魔理沙が反応した。

 

「……いや、同じだよ。私が一歩踏み出せているのは、いざと言う時に個性()で全部解決する気でいるからであって、純粋な勇気じゃない」

 

「もし私が耳郎ちゃんなら、同じ風に悩んでいたと思うよ」

 

「……」

 

 真っ先に否定された耳郎は一瞬、言葉を失ってしまった。いったいどういう人生を歩んできたらそんな言葉が吐けるのか、純粋に知りたくなってきた。

 

 とても同学年とは思えない。

 

「……アンタ、ホントに変わってるね」

 

「よく言われる」

 

 互いにニコッと笑った後に、二人は握手をした。まさかこんなに気持ちが似通っているとは思いもしなかった。こんなに、良い奴が近くにいたとは……

 

 なんとなく、彼女のことが理解出来た。

 

「んじゃ、これからもよろしくね耳郎ちゃん」

 

「また明日」

 

 握手していたのもつかの間、魔理沙はサクッと窓から帰ろうとした。

 

「……いやちょ!? ちょっと待って!!」

 

 耳郎が引き止めようとすると、魔理沙は素直に止まった。

 

「どうせウチ来たんだし、もう少しくつろいでいきなよ。 ……あんまり面白いものないけど……」

 

「……じゃあ、お言葉に甘えて」

 

 魔理沙はその場で胡座をかこうとしたが、耳郎から座布団を渡されてのでその上で正座した。

 

 

 その後、二人はたわいのない話をしながら過ごした。

 

 

 

 

 

 






第4章EX、完。

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