最強の魔法使い(自称)が暴れるそうです。RE:   作:マスターチュロス

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【あらすじ】

前世は発狂して死んでしまった2次元オタクの結依魔理沙。しかし神の力によってヒロアカ世界に転生し、0から人生をやり直すことに。
そんな結依魔理沙も遂に4歳を迎えた。この世界では多くの人間が4歳までに"個性"という名の超能力に目覚める。感覚的に個性を使えると察した結依魔理沙は家のリビングで試しに個性を使ってみた結果、想像以上に危険な個性が発現してしまう。

その個性は、異形魔理沙と呼ばれる最強の魔法使いと同じ力。すなわち『食べた相手の能力を死ぬまでパクる能力』である。
それだけならまだマシだが、結依魔理沙は何故か異形魔理沙が作中で見せたザ・ワールドすらも行使出来てしまった。

つまり私は異形魔理沙の"全て"を引き継いでしまった。





甘くてクリーミー(2話)

 

 

 こっちはサクサクの食感に柔らかいクリームの舌触り、そしてほのかに香るフルーティーな匂いがする。

 

 こちらのものは硬すぎて噛みちぎれないが、噛めば噛むほど味が出て美味しい。まるで豚ホルモンのようだ。

 

 これは、⋯⋯⋯洗剤だな。二度と食べたくない

 

「うん、髪の毛がうめぇ!!!!!」

 

 現在、結依魔理沙は幼稚園内で人の髪の毛をムシャムシャと食べながら、壁に向かって親指を立てていた。先程の発言も含め、五代〇介もビックリするほどの奇行にドン引きするかもしれないがこれにはワケがある。

 そのワケというのはすなわち、個性獲得の為だ。体の一部さえ食べてしまえば何でも簡単に個性を獲得できるため、私は同年代の4歳児の髪の毛を片っ端から貪り食らっている。ただ堂々とやると周りから変な目で見られるので、やる時は必ず時間を停止させているが。

 

 そんな事しなくても異形魔理沙が溜め込んだ色んな能力で十分⋯⋯と言われれば確かにその通りで、正直半分くらいは趣味でやっている。が、もう半分はちゃんとした別の理由が存在する。

 

 個性に目覚めて以来、日を経つにつれて私の身体機能は指数関数的に増加し、遠くの音や匂いも感知できるようになってきた。幽霊のような存在も見え始め、最初は恐怖のあまり家の壁を吹き飛ばしたこともあったが、3ヶ月経過した頃には慣れていた。

 そんなある日、私はあることに気づいた。()()()()()()()()。いったいいつから監視しているのか分からなかったが、何はともあれ自宅警備員として家の治安を守る必要がある。そう思って勢いよく玄関のドアを開き、犯人の姿を探そうとしたのだが、死角から誰かが私の腕を抑えながら何かを突き刺し、さらに全身真っ黒の防護服を着た女性がいきなり腹パンしてきたことで私はあえなく撃沈。目が覚めたら自分のベットにいた。

 

 意味がわからなかった。あの人達がいったい何なのかも分からないし、仮にもし犯罪者だったとしても誘拐せずに放置したのがおかしい。

 そのことを両親に告発したが、「寝ぼけてたんでしょう?」で何事も無かったかのように流され、警察に被害届を出すこともなかった。いくら私が4歳だからってこれはねぇよぉ! って、あの日は一日中布団に包まれながら叫んだ。

 何でこんなことになっているのか、その原因について考えてみた結果、だんだん私の身の回りにおける不自然な点に私は気づいた。まずやたらと強いウチの家のセキュリティに職業不定の父親、そして旅行の際には必ず預けられる施設に、ちょくちょく耳にするネイティブな英会話。そして家の周りを常に監視している複数の人間、⋯⋯⋯どう考えても私を守っているとしか思えなかった。しかもただ守るだけじゃない、私の自発的な行動を妨げることなく私の身の回りを警護しているのだ。

 

 何でそんなことをするのか、結依魔理沙は何となく察していた。こんなに守るのは別に私が4歳のか弱い少女だからというわけでは無い。私の"個性"が国家転覆を引き起こせるほどに危険だから、厳重に管理しているのだけだ。

 もし私がヴィランに攫われたり、別の国に拉致監禁されて兵器として利用されたら、世界のパワーバランスが一気に傾き、最悪の場合戦争を引き起こすかもしれない。

 本来なら私は、国家直属の機関にでも預けられて全身拘束されても文句は言えない身分なのだが、どういうわけか私は今も自由行動が認められている。その理由について考えるのは無粋なのかもしれないが、これは多分両親のおかげだ。どういう取引があったのかは知らないが、両親は私に居場所と、一人の子どもとして普通に生きる道を陰ながら守ってくれた。

 そう思うと胸がキュッとつまって、嬉しさと申し訳なさが同時にやってくる。両親は基本的に忙しくて私に構う暇が全くなかったので、てっきり愛想尽かされたかと思っていたが、そうじゃなかった。なんならむしろ私は愛されていた。

 その日から私は両親に、何か恩返しをしたいと思うようになった。少しでも感謝を伝える方法は無いか考えたが、せいぜい父の日と母の日にプレゼントを渡すくらいしか思いつかなかった。まあ、両親は喜んでくれたからそれで良かったけど。

 

 話が少しそれてしまったので本題に戻すが、自分の立場を知った今、とにかく私は強くなる必要がある。警備が厳重とはいえ、私の力を狙ってヴィランたちや他国の犯罪組織がいつ襲ってくるか分からない以上、最低でも自分の身を守れる程度には個性を使いこなす必要がある。

 したがって私は今、自分の個性についてより深く理解するための自主的な特訓と、新たな個性獲得による自身の強化を同時並行で行っている。同級生には申し訳ないが私の身の安全のためだ。髪の毛は頂いていくぞ。

 

「今日獲得した個性は全部で8個か。もう少し欲しいな」

 

 結依魔理沙が手に入れた個性は鉄塊、衝撃波、指が伸びる、ゴム、マーメイド、炸裂、睡眠念波、爆破の7つだが、どれも元から持っていた能力と被っているため、いい成果とは言えない。しかし、同級生の個性について詳しく知れると思えば悪くないだろう。あ、でも炸裂は嬉しい。

 

 個人的にレアだと思ったのは爆破。この個性の持ち主は隣のクラスの爆豪勝己という少年で、彼については前世の知識として知っていた。

 彼は僕のヒーローアカデミアにおいて主人公、緑谷出久のライバル的ポジションであり、この頃はよく主人公のことを除け者にしたがる節があった。機会があれば仲良くなりたいが、今はまだ止めておこう。

 

「せんせぇ、鉄丸くんがはっきょつしてたおれてるー」

 

 なんか聞こえた。

 

「いたい! いたい! いたぃいぃいい!! 頭がもげるぅぅううううう!!!」

 

 そこには頭を抱えて苦しそうに転げ回っている鉄丸くんがいた。

 

「大丈夫鉄丸くん!? 直ぐに救急車を呼んで!!」

 

 先生の指示によって救急車に運ばれた鉄丸くん。その様子を教室の窓から覗いていた私は、何とも申し訳ない気持ちでいっぱいになった。

 仕方がなかった、彼の髪の毛は鉄のように硬かったので無理矢理引っ張ったら、まさか頭皮ごと髪の毛がめくれると思わなかった。一応覚えたての魔法で頭皮と髪の毛をザオリクしたおかげで出血せずに済んだが、彼はおそらく40代をこえたあたりから禿げるかもしれない。

 その時は、素直に謝ろう。と、出てもいない涙を拭いながら、結依魔理沙は幼稚園の活動に戻る。次はお絵描きの時間、ヘブンズ・ドアーの練習に丁度いいかもしれない。

 

 なお鉄丸くんは翌日、何事もなかったかのごとく元気にやってきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ■

 

 

 

 カラスが鳴く夕刻の時、魔理沙は帰りのバスの中で夕飯について考えていた。

 

「冷蔵庫⋯⋯確か昨日の栗ご飯の余りと、一昨日のチャーハンの余りと、一昨日の昼の余りのカレーが残っていたよな。全部消化するか」

 

 昔から結依家は多忙な生活を送っており、父はおそらく政府関係者(なお本人はサラリーマンを自称)、母は教師をやっている。なので基本、家にいるのは魔理沙一人のみ。

 魔理沙は3歳の頃に自炊ができるようになったおかげで家にいる機会が少し増えたが、それまではだいたい施設に預けられていた。

 施設内は設備が充実していて食にも困らなかったが、いかんせん自分の顔のせいで職員や他の子に気味悪がられていた。イジメもあるにはあったが、私の場合は睨むだけで子供とは思えないほどの邪悪な顔が出来たので、近寄る人間はほとんどいなかった。まぁでも一部、睨みが効かないヤツにはちょくちょくボコられたこともあったが。

 過去について思いふけりながら、魔理沙は窓の外を見つめる。転生してからはや4年、

 

 思い耽るうちに到着し、家の前でバスが止まる。魔理沙がゆっくりバスの外に出ると、心地よい太陽の光が私の背中をそっと押してきた。

 

 耳を澄ますと、鳥のさえずりが遠くから聞こえてくる。まるで帰ってきたことを喜んでいるかのように。

 

「ただいま」

 

 魔理沙は花壇に植えた花に挨拶をする。夕日に照らされた花々は見事に咲き誇っていた。

 いつもと変わらない平凡な毎日、と思っていたが、今日は少し違った。

 

 

 

 

 

「誰か助けてぇぇええええええ!!!」

 

 

 

 

 

 遠くから、女性の悲鳴が聞こえた。距離は1000m以上4000m以下、血の匂いはしない。が、複数の人間が女の人を追いかけており、発砲音も頻繁に鳴り響いている。

 悲鳴を聞いてしまった以上、力あるものの責任として助けに行こうとした。だが急に頭が冴え始めたことにより、その足はピタリと止まってしまう。

 

(⋯⋯⋯私が出向かなくても、この街にはたくさんのヒーローがいる。私みたいな素人よりも遥かに人助けが得意な人達が、この世にはたくさんいる)

 

(それに私が変に介入して余計な怪我でもさせたら、責任を取るのは自分、いや両親が取る事になる)

 

(それどころか防護服を来た連中が私を危険因子と判断して、私を牢獄にぶち込むかもしれない。そうなったら誰が一番悲しむか、私は分かっているはずだ)

 

 結依魔理沙は強く手を握りしめた後、静かに玄関のドアを開ける。相変わらずウチの両親は仕事中で、家の中は静まり返っていた。

 せめて両親がいたら警察に連絡して⋯⋯、ん? いや待て。私が警察に連絡すれば良くね!? 私が警察に連絡すればいいじゃん!!! 私が警察に(((r

 私は急いで通学用バッグをソファーに向かってぶん投げ、棚の上に置いてある受話器を取ろうとした。しかし身長が足りず全く手が届かない。

 仕方なく結依魔理沙はサイコキネシスで受話器を取り寄せようとしたが、間の悪いことにちょうど電話機に着信が入る。誰だか分からないが今はそれどころじゃない!! 

 

『もしもし!!』

 

『結依魔理沙様』

 

『はい?!』

 

『魔理沙様がこれまで、ご自身のために研鑽を積み重ねてきたのは承知しています。ですので、どうかその力を貸していただけないでしょうか?』

 

『誰!?』

 

 初めて聞いた声だったのと、シンプルに焦ってしまったおかげで取り繕えず、どストレートに聞いてしまった。しかし相手は気にすることなく話を続ける。

 

『私は貴方様の身を守るボディガードです。ですがお父様の御意向により、魔理沙様には実戦経験を積んでもらいます』

 

『初耳なんだけど!!?』

 

『先程悲鳴が聞こえたと思いますが、これは貴方様専用の訓練です。本物ではございません』

 

『⋯⋯⋯そう、なの?』

 

『はい、ですので遠慮なく助けに行ってください。場所は多古場海浜公園ですので、なるべく早く来てくださいね。お待ちしております』

 

『それと個性の使用許可は出ていますので、お好きなように』

 

 ガチャッ、ツーッ、ツーッ

 

 通話は途切れてしまい、結依魔理沙は静かに受話器を元に戻す。

 ⋯⋯⋯なんなんだいったい。お父様の御意向とか言っていたが、何はともあれ多古場海浜公園に向かった方が良さそうだ。

 

 結依魔理沙は園児服を脱がずに玄関を飛び出し、多古場海浜公園に向かって走り出す。

 とはいえ、この足で3kmも走るなんてあまりにも酷すぎるので、仕方なく魔理沙は足に高速魔法(ピオリム)をかけ、モナドの力を解放する。すると魔理沙の体が一気に加速し、時速約60kmにまで到達した。

 瞬間移動さえ使えれば一瞬だったが、練習していないのでやめておく。使ったらたぶん壁にめり込む。

 

「着いた!」

 

 僅か数分で多古場海浜公園にたどり着いた結依魔理沙。その道中で白い装束を着た人と黒い防護服を来た人が道路の上でぶっ倒れているのを見かけたが、電話の内容的にこれはたぶん演技だ。訓練のくせに気合いの入りようが凄い。

 魔理沙は海浜公園内に素早く潜入した後、公園に打ち捨てられたゴミの裏に隠れながら犯人と女の人の様子を見守る。

 

「何故逃げるのです? 大人しく従っていれば神の恩寵を授かれたであろうに」

 

 白い装束を来た男性が杖の先端を女の人に向けて、ジワリジワリと近付く。おそらく悪質な宗教家と、そこから逃げてきた女性⋯⋯⋯という設定でやっているのだろうか。

 

「これ以上⋯⋯あなた達についていけない!」

 

 女性は涙を浮かべながら必死に後退するが、腰が抜けているのでその速さはカタツムリ並。逃げ切れるわけがなかった。

 

「⋯⋯⋯掟破りの背信者。貴様はあの方の偉大なる力を恐れ、敬わず、恩寵から逃げた。貴様は神の尊き心を穢したのだ」

 

 男が杖のスイッチを押すと、杖は簡易レーザー銃に変化した。アニメみたいな演出に結依魔理沙は心の中で感動したが、今はそれどころじゃない。

 

 これは訓練だ。私が変な組織に攫われないための訓練。それは分かっているのだが、訓練とはいえ何の前触れもなくいきなり模擬実戦をやらされると心の準備が追いつかない。そのせいで心臓の鼓動もだんだん早くなるし、息も少し上がってきた。どうやら自分はかなり緊張するタイプのようだ。

 しかし緊張しているにもかかわらず、結依魔理沙の脳みそは冷静に救出計画を立てていた。何で? もっと頭がグチャグチャになってもおかしくないのに、何故私は計画を立てられるんだ。

 二人の様子を見守りつつ、頭の中で最終的な動きの流れについてシュミレーションを行なう。と、その時、白装束の男が動き始めた。

 

「愚か者に死を」

 

 男はレーザー銃のトリガーに手をかけようとした瞬間、ここしかないと感じた結依魔理沙は物陰から素早く飛び出し、相手の手首に目掛けて弱い光弾をぶつけた。

 

「痛っ!」

 

 杖を落としたことを確認した結依魔理沙は踏み込むタイミングで足をバネ化し、高く跳躍。男は撃たれた方向を確認するが、そこにはもう誰もいない。

 

「誰だッ!!!」

 

 男は杖を拾い直して周囲を警戒するが、コンテナの裏にもゴミ山の頂上にも人影はなかった。

 だが足元を見てみると、男のすぐ近くに謎の丸い影が映っていた。その影はだんだんと大きくなり、人の形へ変化していく。

 

 

「ここだあああああああああああああああ!!!!」

 

 

 結依魔理沙は空中で何度も体を反転させながら、男の脳天にめがけてかかと落としを繰り出した。

 その威力は幼児の攻撃といえど凄まじく、男は勢いよく顔面を地面にぶつけて倒れてしまった。

 

 

 

 

 






※なう(2023/04/17)、大幅な話の変更と追加を行いました。


【個性説明】

個性『鉄塊』
→鉄を丸めて塊にできる。刀も曲げられる。

個性『衝撃波』
→手から高速で空気を打ち出し、相手にぶつける。

個性『指が伸びる』
→文字通り指が伸びる。寄〇獣。

個性『ゴム』
→全身ゴム人間になれる。海は泳げる。

個性『マーメイド』
→マーメイドっぽいことなら基本何でもできる。歌はもちろん、歌で相手を眠らせることが出来る。

個性『炸裂』
→触れたものを炸裂されることができる。

睡眠念波
→眠らせる波動を出す。ラリホーと被る

爆破
→爆豪勝己の個性。汗腺からニトログリセリンのようなものをだして爆発させる。


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