最強の魔法使い(自称)が暴れるそうです。RE:   作:マスターチュロス

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【あらすじ】

屋内戦闘訓練にて緑谷出久と爆豪勝己が戦った結果、爆豪の暴走によって訓練場がボロボロに壊れ、止めに入った魔理沙が空中で爆散したが、何やかんや無事に訓練が終了した。




第五章:USJ襲撃事件編
いいゾ頑張れ飯田きゅん(21話)


 

 

 

 

 とある日の朝、魔理沙はいつも通り瞬間移動で校門前に着いたものの、やけに騒がしかった。

 

「すみませーん! 教師オールマイトについてどう思っているか聞かせくださーい!」

 

「?」

 

 カメラを構えた大人たちが登校中の生徒に声をかけ、何やら根掘り葉掘り話を聞き出そうとしていた。

 

 どうやら最近教師になったオールマイトのことについて色々話が聞きたいらしい。雄英からの許可は一切取れていないがこんな特ダネをテレビ局が逃すワケもなく、間接的に生徒から聞き出すつもりのようだ。う〜ん、カスメディア。

 

「逃げよ」

 

 魔理沙は校門周辺にたむろするマスメディアの人達をガン無視し、校舎の壁に手を触れた。

 

 雄英高校は"雄英バリア"と呼ばれる強固なセキュリティシステムによって守られているが、こんなもの魔理沙にとって在って無いようなものである。普段は学生証をもって登校しているが、やろうと思えば直接雄英バリアのシステムに干渉して勝手に自分のIDだけ認証させるなど造作もないこと。遠隔操作は流石に練習不足で出来ないが、システムの一部に直接触れられるのであれば問題ない。

 

「あの、もしかして雄英高校の生徒ですか?」

 

「……はい?」

 

 システム侵入中に突然声をかけられた魔理沙。横をむくと、そこには先程まで校門前にいたはずのメディア関係者の女がいた。

 

「その制服にその顔、……もしかしてSNSで噂の結依魔理沙さんだったりします!?」

 

 雄英の生徒どころか名前まで特定してきた女に魔理沙は驚いた。

 

「人違いです」

 

「いや、我々が極秘に集めた資料と情報が一致しています。間違いありません」

 

 何だその資料は。後でブッ潰してやる。

 

「魔理沙さん、まさかこのタイミングでお会い出来るとは思いませんでしたが、いくつか質問させていただいてもよろしいですか?」

 

「やだ」

 

「オールマイトが雄英の教師を務めましたが、オールマイトは普段どういった授業をしていらっしゃいますか?」

 

「直接聞け」

 

「オールマイトが教師を務めるにあたって何か印象が変わったりしましたか?」

 

「知らない」

 

「結依魔理沙さんは雄英高校の選抜試験で類まれなる成績を残したそうですが、具体的にはどう突破しましたか?」

 

(何だコイツ全然動じねェ!!)

 

 魔理沙の塩対応にものともしない記者。その後もしつこく取材をせまり、痺れを切らした魔理沙は記者に提案した

 

「……分かった、質問にゃ2個まで答える。答えたら私は行く。OK?」

 

「分かりました! では先ほど述べた3つの質問のうち、1つ目と3つ目について答えてください!」

 

 清々しいほどの切り替えの速さに魔理沙は頭を抱えそうになったが、気を取り直して真面目に答える。

 

「……はい一つ目、今のところオールマイトはヒーロー科の専門科目である実技演習しか担当してない。No.1ヒーローから直接戦い方を教えてもらえるだけで十分価値はあるけど」

 

「三つ目、私は最強なので演習開始から数分で全戦闘ロボを叩き潰し、超大型ロボを他の受験生と一緒に討伐しました。概ね噂と変わらん」

 

「何せ私の個性は『魔法』だからね、大概のことは何でもできる」

 

「こんな風に」

 

 やっと雄英バリアの認証システムへの操作を完了した魔理沙は、某サイヤ人と同様のポーズを取りながら瞬間移動した。

 

「へ、……消えた!?」

 

 突然目の前から居なくなってしまい、メディアの人は困惑の表情を浮かべていた。

 

 

 

 

 

 

 

【教室】

 

 

 面倒な記者を振り切った魔理沙はそのまま教室に直行した。教室には何人かのクラスメイトが先ほどの記者たちの話で盛り上がっていたが、そっちの話よりも気になることがある。

 

 魔理沙は爆豪の様子を見に来た。

 

「爆豪、あれから調子どう?」

 

「何もねェよ」

 

 素っ気なく返事する爆豪。先日は爆豪が真っ黒になって大騒ぎだったが、特に問題は無さそうだ。

 

「ならいいや。ちなみに変な薬物とか手ェ出してないよな?」

 

「出すわけねェだろクソが!!」

 

「うん、知ってた。心読んだし」

 

「じゃあ最初から聞くな!!!」

 

「もー、朝っぱらから頭に血が上っちゃ午後まで持たないでェ爆豪きゅん」

 

「さっさと去ねや!!」

 

 バチボコにキレられた魔理沙は呆れながら自分の席に戻って行った。

 

 体が黒っぽくなる現象で真っ先に思いついたのは個性因子誘発物質(イディオ・トリガー)だが、アレは皮膚ではなく舌が黒くなるヤツなのでおそらく違うし、そもそも爆豪は何も受け取ってない。

 

 正直よく分からないので、しばらく様子見しよう。

 

 

 

 しばらくすると、相澤先生が教室に入ってきた。

 

「さて、今日のホームルームの本題だ。今日はお前らに……」

 

 やけに言葉を溜める相澤先生に対し、息を飲むA組の生徒たち。授業初日に退学回避をかけた地獄のデスゲーム(個性把握テスト)をやらされたトラウマが、彼らの心を追い詰めていた。

 

「学級委員長を決めてもらう」

 

((なんか学校っぽいのきたぁ……!!))

 

 安心して胸を撫で下ろす生徒たち。デスゲームではないことに関して非常に喜ばしいが、それ以上に感情が湧きあがる。

 

「先生! 委員長! 俺、やります!!」

 

「私もやるやるー♪♪」

 

「オイラもやりたーい!!」

 

「俺にやらせろォォ!!!!!」

 

 ほぼ全員が一斉に挙手をし、やる気っぷりをアピールし始めた。

 

 ただの学級委員長であれば盛り上がらなかっただろうが、雄英高校ヒーロー科の学級委員長となれば話は変わる。ヒーローとって大切な他をまとめ上げる能力を養える上に、その肩書きを活用すれば大手のヒーロー事務所にスカウトしてもらえるかもしれない。そうなれば将来は安泰である。

 

「静粛に!!」

 

 盛り上がるクラスメイトたちに、飯田はピシャリと活を入れた。

 

「学級委員長というのは、他をまとめあげ、他から信頼を得て、自ら率先して行動しなければ成立しない役目。つまり、ただ自分がやりたいというだけじゃ務まらない仕事だ……!」

 

「したがって民主主義に則るならば! 真のリーダーは投票によって決めるべきだと思う!!!!」

 

 堂々と言葉を発する飯田。彼は他の生徒と違い、自らの気持ちを優先することなく、真にリーダーに相応しい人間を公平な手段で決めようとしたのだろう。その気高く美しい姿を見届けようと、クラスメイトのほとんどが飯田の方に振り向いた。

 

「「腕そびえ立ってんじゃねーか!!」」

 

 案の定、飯田の本心は言葉でなく体で示された。

 

「まだ数ヶ月も経ってないのに信頼もクソもないわ飯田ちゃん」

 

「そんなのみんな自分に入れるに決まってるだろ」

 

 蛙吹と切島に正論パンチを食らわされ、飯田は静かに歯を噛み締める。

 

「だからこそ! 複数票をとったものが学級委員長を務めるべきだ!」

 

 しかし、飯田の心は屈しなかった。

 

「よろしいでしょうか、先生ェ!!」

 

「時間内に終われば何でもいいよ」

 

 この言葉を最後に、相澤先生は寝袋で眠りについた。

 

(何だこの学校……)

 

 先生も生徒も自由すぎるこの学校に、魔理沙は呆れていた。

 

 

 なんてくだらないことを思っていたらあっという間に投票開示の時間になってしまった。黒板に名前と正の字が書かれていき、誰に何票入ったか開示されていく。その結果……

 

【投票結果】

 

 1位:緑谷出久(2票)

 

 1位:八百万百(2票)

 

 1位:結依魔理沙(2票)

 

 4位:爆豪勝己(1票)

 

 4位:轟焦凍(1票)

 

 ……

 

 

「「1位が3人!?!?」」

 

「デクとボサボサ野郎に入れたヤツは誰だ!!!」

 

「……まぁ、お前に入れるよりかは分かるけど」

 

「何だこの醤油!! 殺すぞ!!」

 

 一部殺意が湧く中、飯田の心は沈んでいた。

 

「ぜっ、0票……。こんな……、こんなことが……」

 

「自分に入れなかったんですの……?」

 

「何やってんだ……飯田……」

 

 品行方正な性格がアダになり、飯田は学級委員長になるチャンスを逃してしまった。

 

 一方、魔理沙は呆然と黒板を見つめていた。

 

(……緑谷きゅんと耳郎ちゃん、私に入れたのか。……はぁ)

 

 読心能力をもつ彼女にとってプライバシーもクソもなく、あらゆる情報が筒抜けになる。だが、それを使って冷やかしたり脅すような妖怪(さとり)じみた行為をしないのが唯一の救いである。

 

「で、1位が3人も出ちゃったが、どうするんだ?」

 

「そりゃ、決選投票で誰が一番か決めるべきじゃない?」

 

 クラスの目線が、緑谷、八百万、魔理沙に集中した。

 

「あースマンが私パス」

 

「師匠?」

 

 突然の告発に緑谷は首を傾げた。

 

「私あんまり人を引っ張る才能無いから。あとの二人に任せる」

 

「良いんですの?」

 

「そんな……僕はてっきり師匠が学級委員長として皆を導くつもりかと……」

 

「おい、投票者バレたぞ」

 

 サラッと投票先を開示した緑谷にツッコミが入る。なお本人は全く意図していなかったもよう。

 

 また協議の結果、魔理沙の告発は受理された。

 

「そんで、緑谷はどうすんだ? その感じだとお前も学級委員長になるつもりは無かったんだろ?」

 

 切島が緑谷に聞いた。

 

「僕は副委員長として師匠を支えていこうと思ってたけど、師匠が任せると言った以上、最後まで戦うよ」

 

「コイツ師匠好きすぎるだろ……」

 

 師匠のためならばどんな役職を任されても遂行しようとするその意思に、半ば狂気すら感じてしまう切島。なお本人は全く気にしていない様子。

 

 こうして決選投票を経た結果、八百万が学級委員長、緑谷が副学級委員長となった。

 

 

 

 

 

 

【昼休み】

 

 ルールルッ♪ ルルル♪ ルールルッ♪ ルルル♪ ルー↓ ルー→ ルー↓ ルー↑ ルルッ↑ ルー↓ ♪ 

 

「こんばんわ。あなたの親愛なる隣人、カイ原田です」

 

「本日のお客様は個性"ダークシャドウ"でお馴染みの常闇踏陰(とこやみふみかげ)くんです」

 

「俺に何の用だ……」

 

 聞き覚えのあるBGMを流しながら教室でお茶を入れる魔理沙。そして、その隣に座る常闇。

 

「いやぁこの時間暇だから、時間潰すついでに少しお話がしたくてね」

 

「機嫌良さそうだな」

 

「私は常に機嫌いいぞ。オールフォーワンが絡まない限り」

 

「オール……? ……よく分からないが本題は何だ……」

 

 魔理沙の言葉一つ一つに引っかかる点があるが、いちいち気にしたところでキリがない。なので、常闇は早めに話の核心に触れることにした。

 

「今からめちゃくちゃ当たり障りのない話するけど、良いか?」

 

「……聞いてやる」

 

 冷静に返答する常闇。一見、クールな喋り方だが、本人は異性との会話経験が無いためかなりガチガチである。なんなら魔理沙が異形個性寄りの見た目のおかげで、口数が少なくなる程度で済んでいる。

 

「私はね、個性の関係上、これから先に起こる未来が分かるんだけどさ。()()()()()()()()から先が一切見えないんだ」

 

「……は、未来が見える……?」

 

 いきなりぶっ込まれた人外情報に常闇の頭が真っ白になった。

 

「そのラインってのが、()()()()()だ。そこから先は全くといっていいほど見えない。理由は知らんけど」

 

 魔理沙は呆れながらも話を続けた。

 

「そしてもう二つ、気になる点がある。一つ目はこのクラス」

 

「私って警戒心バリ高いから、初対面の人には必ず読心能力使うんだけど、このクラスメイトに対しては一度もやってない。()()()やる気が起きない」

 

 堂々と"やる気が起きない"と宣う魔理沙に、常闇の目が徐々に細くなっていく。

 

「正確には、"クラスメイト全員同時に読心能力をかけていない"。タイマンなら何人か既に見ているし、今現在進行形でお前の心を読んでいる」

 

「……ッキサマ!」

 

「いや、別に人のプライバシーを覗き見たいとかそんなんじゃないの。私が知りたいのは、"私が感知できていない存在による干渉があるかどうか"だ。ちなみに常闇くんは白、干渉されてないよ」

 

 魔理沙の真剣な表情に押され、常闇は唾を飲み込む。

 

「……なぜ、そんなことを調べる」

 

「……そりゃもちろん、()()だからさ」

 

「大概のことは何でも解決出来るこの魔理沙さんが、こんな些細な問題に手こずってる時点で、ろくな案件じゃない」

 

 魔理沙は一旦息を置いてから、話を続けた。

 

「仮に、もし、この私に意図的に"気を起こさせない"存在がいたとしたら……」

 

「このクラスには、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()ということになる」

 

 普段の様子からは考えられないほどに真剣な魔理沙。彼女が言った、"魔理沙と同程度の存在"が、"正体を隠して潜んでいる"ことの意味を考えた瞬間、常闇の背筋に冷たい何かが這い上がるのを感じた。

 

「……他に身の潔白が証明されているのは誰だ」

 

「緑谷くんと爆豪、あと耳郎ちゃん」

 

「そうか……」

 

 常闇は少し安堵した。

 

「……確認だが、この話は本当なんだな?」

 

「本当だが身も蓋もない話だから適当に流していいよ」

 

 あっさりとした解答に常闇は少し困惑した。結局本気なのか、それともおちゃらけているだけなのか、全く真意が読めない。

 

 だが、常闇は信じることにした。あの時初めて彼女が見せた真剣な表情が、常闇の心に突き刺さったから。

 

「俺に手伝えることはあるか?」

 

 常闇からの申し出に魔理沙は応えた。

 

「無い。……けど、これ渡しとく」

 

「? 防犯ブザー?」

 

 常闇は魔理沙から安物の防犯ブザーを受け取った。カラーリングからして、よく小学生が身につけているものと同じもののように見える。

 

「百均で買ったヤツ。だがちょっとだけ細工してて、これを鳴らすと私の脳内に直接座標が送られる」

 

「もし、良からぬ敵が現れたらすぐにでも鳴らすこと。別に今回の件に限らず、ヴィランにでも何にでも襲われたら鳴らしてくれ。私が駆けつける」

 

「……分かった」

 

 常闇は素直に受け取った。

 

 そして常闇はふと思った。ヴィランに襲われた時に同級生に助けを求めるのは、緊急時の対応として正しくないのではないか、と。

 

 だが魔理沙は瞬間移動が使えるので、そこは気にしなくていいのかもしれない。そう思った常闇であった。

 

「最後にひとつ、いいことを教えてあげる」

 

「何だ急に」

 

「これから一分後にマスコミが雄英バリアを突破してくるから、警報鳴ると思うけど気をつけて」

 

「……予言のつもりか?」

 

「そう。正確には未来予測だけど」

 

(それ(プラス)、前世の知識)

 

「さっきの話に関しては何度も言うけど、()()()()()()()。だが、頭の片隅には残してほしい」

 

 魔理沙はそう言うと席から立ち上がり、廊下の方へと向かった。

 

 予言からジャスト一分後に警報が鳴り響き、校内放送が流れ始めた。

 

『セキュリティが突破されました。生徒の皆さんは直ちに避難してください』

 

「そんじゃ」

 

 魔理沙は常闇に軽く手を振った後、教室のドアをピシャリと閉めた。それを見ていた常闇は、ただ呆然と彼女の言葉を脳内で反芻していた。

 

(……結依魔理沙)

 

(……良い)

 

 同じクラスメイトで、黒い魔女。力の底は計り知れない上に、深い事情を抱えて生きている。

 

 彼女の秘密を、自分だけが知っている。彼女の目的、行動の真意を知ったあの時、常闇は特別な何かを感じた。

 

(あの発言にあの見た目……彼女はやはり……)

 

(……()()()側の人間に違いない……!)

 

 常闇の厨二魂は既にフルスロットルであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「絶望のオーラ、レベルⅠ」

 

 魔理沙が一声発した瞬間、ごった返しになっていた生徒の波が一瞬で霧散し、魔理沙を除くすべての人間が壁に背を向けた。

 

「ハイ。窓の外見たら分かるけど、この警報はマスコミによるものですので落ち着いて行動しましょう」

 

((落ち着かねぇぇええぇえええぇえええええええ!!!!))

 

 廊下の中央にて淡々と話す結依魔理沙。彼女は彼女なりに暴走を止めようとしているが、他の生徒にとって彼女は警報以上の恐怖である。

 

 なお『絶望のオーラ』はレベルⅠで相手に恐怖を与え、レベルⅢで混乱状態に、レベルⅤで"即死"である。

 

(何!? あの人見ると震えが止まらないんだけど!?!)

 

(無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理!!!!)

 

(動いたら殺される動いたら殺される動いたら殺される動いたら殺される動いたら殺される動いたら殺される動いたら殺される動いたら殺される動いたら殺される動いたら殺される動いたら殺される動いたら殺される動いたら殺される動いたら殺される動いたら殺される動いたら殺される動い)

 

 まるで全員がライオンのいる檻に閉じ込められたかのごとく震え始め、漏らす人まで現れた。

 

 その様子を見た魔理沙は少し考え、にこやかに話し始めた。

 

「OK、私はここから離れる。けど、お前たちはちゃんと大人しく教室に戻ろうね」

 

「でなきゃ殺す(冗談)」

 

((冗談に聞こえねえええええええええええええ!!!!!))

 

 魔理沙の一挙手一投足に怯える生徒たち。逆らえば殺されても可笑しくない状況に屈した彼らは、急いで教室へと戻っていった。

 

 その隙に魔理沙は千里眼で校門周辺を観察し、怪しい人影が無いか確認した。

 

(……この流れだと確かあの辺に)

 

(……いた)

 

 怪しい人影を見つけた魔理沙は、強化ガラスの壁を小指一本で穴を開け、校舎の外を見渡した。

 

 魔理沙が見つけた怪しい人影は、壊れた雄英バリアから少し離れた木々のそばにいた。人影は二つ存在し、一つは全身に手のような何かを全身に掴ませ、貼り付けたかのような異質な男。もう一つは顔が不定形で身長の高い異形じみた男性。

 

 あの手人間の名は、死柄木弔(しがらき とむら)。彼はヴィラン連合の頂点たるオールフォーワンの手先であり、これから先何度もぶつかり合う敵である。

 

(嫌がらせしよ)

 

「フンッッ!!!!」

 

 魔理沙の踏み込みによって校舎全体にヒビが入り、周辺のガラス窓が一瞬で粉砕したが、能力で()()()()()()()された。

 

 校舎を粉砕する勢いで加速した魔理沙は死柄木との距離を一瞬で縮め、目前にまで迫る。

 

「……ッ?! とm」

 

 魔理沙の急接近に気づいた不定形の男、黒霧(くろぎり)は死柄木に注意しようとしたが間に合わず、魔理沙着陸の衝撃に吹き飛ばされてしまう。

 

 魔理沙は一瞬で死柄木の首根っこを掴んだ後、そのままの勢いで地面に叩きつけた。

 

「私の名前は"結依魔理沙"。年齢16歳……」

 

「自宅は公開するとろくな事にならないから言わないが、結婚はしていない……」

 

「仕事は学生兼公安直属のヒーロー、帰宅時間は決めてない」

 

「タバコは吸わない。酒は一応未成年なので嗜ま「いつまでヒトの首絞めてんだ……ッ!!」あら?」

 

 某殺人鬼の口上パロディをする中、死柄木は魔理沙の右手首を強く掴んだ。五指すべてで掴まれた魔理沙の右手は死柄木の個性によってボロボロと崩れ、見事に崩壊した。

 

「……手首もげちゃった」

 

「ハハッ! ざまァみろクソが!!」

 

 失った手を見つめる魔理沙を見て、死柄木は愉快に感じた。気に食わないヤツが己の過ちを後悔する姿は死柄木にとって最高のエンターテインメントである。

 

「まぁ生えるけど」

 

「は?」

 

 にゅるんと復活した魔理沙の右手を見て、死柄木は驚きと同時に顔をしかめる。

 

「……何なんだよお前ッ……!!」

 

「私の名前は結依魔理沙、年齢16歳。もういい?」

 

「お前の名前とかどうでもいい!! 何で壊したはずの手が生えてきたのか説明しろ……!!」

 

「私の個性で"再生"した」

 

 その発言に死柄木は少したじろいだ。

 

「……ここにも"再生"持ちか。先生が聞いたらさぞ喜ぶンだろうが、そんなことはどうでもいい」

 

「お前、マジでムカつくからぶっ壊してやる。再生すら間に合わないほどの"崩壊"で、全身跡形もなく灰にしてやるよ!!!」

 

 躍起になった死柄木が襲いかかるも、魔理沙の素早い腹パンによって吹き飛んで行った。

 

「げェフッ!?」

 

「残念。遅い」

 

「テメェ……ッ!!」

 

 死柄木が再び立ち上がるも、黒霧が引き止めた。

 

「弔。ここは一旦引きましょう! あの者は危険です!!」

 

「ふざけんな……! まだオレはやり返していねェ……!!」

 

 ここまでコケにされたことで腸が煮えくり返る死柄木。その様子にピンと来た魔理沙は憎たらしいほどにウザイ笑顔をし始めた。

 

「テメェ……ッ!!!」

 

「帰りますって!!!!」

 

 煽って戦闘続行させる作戦も黒霧の介入によって阻止され、そのまま黒霧は個性で生み出したワープゲートを介して脱出し始めた。

 

「……」

 

 魔理沙はいつの間にか用意していた手榴弾のピンを口で引っこ抜いた。

 

「手土産だよん」

 

 そう言って魔理沙は閉じかけのワープゲートの隙間に豪速球で手榴弾を投函した。

 

「……これでアイツら(ヴィラン連合)の拠点の位置が割れたな。爆発するし」

 

「じゃ、帰ろ」

 

 魔理沙は大人しく教室の方へ戻っていった。

 

 そしてその数秒後、市の廃ビル内にて大規模な爆発が発生した。

 

 

 

 

 

 

 その後、教室に戻った魔理沙だったが、さっきと違う雰囲気に目を丸くした。どうやら恐怖に駆られた生徒たちを飯田くんがケアして回っていたらしく、その姿を見ていた緑谷くんと八百万さんが感銘を受けたらしい。そして3人で協議した結果、飯田くんが学級委員長に務め、八百万さんが副学級委員長になった。

 

(運命、収束するんだ……)

 

 原作を知っている魔理沙はこの結果に驚いた。だいたい自分が絡むと正規ルートから外れてしまい、よく分からないまま話が進むケースがあったが、今回は何やかんや正規ルートに戻れたようだ。

 

(……絶望のオーラはしばらく禁止にしよ)

 

 少しだけ反省する魔理沙。何事もトライアンドエラーである。

 

 

 こうして、気持ちを切り替えた魔理沙は午後の授業に取り組んだ。

 

 

 

 

 To be continued...

 

 





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