最強の魔法使い(自称)が暴れるそうです。RE:   作:マスターチュロス

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五章EX3:会議

 

 

 

 薄暗い会議室の中央に、円形のテーブルが据えられていた。

 

 窓はなく、天井から垂れ下がる照明だけが無機質な光を落としている。

 

 テーブルを囲むのは、この社会の裏側で暗躍する者たち。それぞれが互いの存在を警戒しながら、静かに席に着いていた。

 

 部屋の奥、背もたれの高い椅子にゆったりと腰掛けている男が、両手を広げて場の空気を破る。

 

「やぁやぁ、みな集まってくれてありがとう」

 

 誰もすぐには返事をしない。ただ、各々がその男を見据え、あるいは値踏みするように視線を巡らせる。

 

「……」

 

 最初に口を開いたのは、対面に座る男だった。鋭い眼光の奥に、好奇心と警戒が入り混じっている。

 

「まさかこんな"大物"からお呼び出しが来るとは思わなかったよ」

 

「……」

 

 部屋の空気がわずかに張り詰める。それを気にした様子もなく、男は楽しげに笑った。

 

「改めて自己紹介をしよう。僕はオールフォーワン」

 

「事実上ヴィラン連合のトップで、死柄木弔のスポンサーだ」

 

 その言葉に、何人かがわずかに眉を動かした。名は知っていても、こうして直接顔を合わせるのは初めての者も多い。

 

 オールフォーワンは軽く顎を動かし、部屋の隅へと視線を向ける。

 

「そしてそこにいるナインとウォルフラムは私の知り合いでね。とても戦力になるから来てもらったんだ。彼らもよろしくしてくれ」

 

 壁際に立つ二人の男は、言葉を発することなくその場に佇んでいた。一人は無機質な眼差しで会議を眺め、もう一人は腕を組んだまま、まるで興味がないとでも言うように黙り込んでいる。

 

 オールフォーワンは視線を巡らせ、次の人物へと向き直る。

 

「さて、次はキミだ。治崎くん」

 

 その名を呼ばれた男は、ゆっくりと顔を上げた。白いマスク越しの視線が、冷たく部屋を切り裂く。

 

「……死穢八斎會、現若頭の治崎だ。ここじゃ"オーバーホール"の名で通してるから、そちらの名で呼ぶのが筋だろう」

 

 静まり返った会議室の中で、別の男が落ち着いた声で続いた。

 スーツ姿の男──その背筋は真っ直ぐで、まるで演説でも始めるかのような威厳を纏っている。

 

「私は、"デトラネット社"代表取締役社長兼"異能解放戦線"のリーダー、四ツ橋力也だ。私もこちらの世界では"リ・デストロ"の名で通しているから、よろしく頼むよ」

 

 その言葉を受け、最後の男が簡潔に名乗る。椅子に深く腰掛けたまま、表情一つ変えない。

 

「私は人類救済を目標に掲げる機密組織"ヒューマライズ"の長、フレクト・ターン。以上」

 

 互いに異なる思想を持つ者たちが、同じテーブルを囲んでいる。普通ならば決して同席しない顔ぶれだった。

 

 犯罪組織、思想組織、テロリスト。

 

 それぞれが異なる形で世界に牙を向けている存在だ。その全員を一堂に集めたという事実だけでも、この会合がただの会議ではないことは明白だった。

 

 オールフォーワンは満足そうに指を鳴らした。

 

「全員揃ったね。では、時間ももったいないし本題に入るよ」

 

 軽く前に身を乗り出し、声の調子をわずかに落とす。

 

「キミたち、魔女狩りに興味無いかい?」

 

 部屋の空気がさらに重く沈む。

 

「フレクト、キミら海外組織は知らないかもしれないが、今日本には厄介な魔女がいてね」

 

「魔女の排除は、我々(日本のヴィラン)にとって悲願なんだ」

 

「……その名は?」

 

 

 

「"結依魔理沙"」

 

「僕以上の個性保持者で、歳は16歳。今は、雄英高校に通っている」

 

 その名前が発せられた瞬間、空気が一段と重くなった。

 

 ここにいる者たちの多くが、その名をどこかで耳にしていたからだ。

 

「僕は昔、彼女と顔を合わせたことがあってね。ちょっかいかけて以降、目の敵にされているんだ。おかげで僕は表を歩けない」

 

 オールフォーワンの言葉は冗談めいていたが、その裏にある事実は決して軽いものではない。

 

「そいつはヒーローなのか?」

 

「あぁ、しかも公安の犬だ。躾はなってないがね」

 

 軽く肩をすくめながら答えるその様子は、どこか愉快そうですらあった。

 

「君も手を焼いているのだろう? オーバーホール」

 

 しばしの沈黙の後、オーバーホールが吐き捨てるように口を開いた。

 

「……雇ってた売人(プッシャー)も取引先の小売業者(バイヤー)も、何人かソイツにやられてる」

 

「不愉快だな」

 

 その言葉には、明確な敵意が込められていた。

 組織の利益を損なわれた以上、彼にとって結依魔理沙は排除すべき対象だった。

 

 対するリ・デストロは腕を組み、冷静に状況を見極めている。

 

「私は特に関わりはないが、彼女の存在は今後の計画の大きな障害になりそうだ。だが、わざわざ手を組む必要があるかね?」

 

 その言葉に、オールフォーワンは愉快そうに笑った。

 

「彼女の異常さが伝わっていないようだね、 リ・デストロ」

 

 彼は指を鳴らす。すると部屋の壁面に埋め込まれたスクリーンが起動し、映像が映し出された。

 

「まずはこれを見て話し合おうじゃないか」

 

 ポチッとボタンを押し、動画が再生される。映像にはこれまでのNOUMUとの激闘やUSJ襲撃時の戦闘が映し出されている。

 

 常軌を逸した力。この場にいる者はみな選りすぐりの実力者だが、それらを束ねてもなお勝算が見いだせないほどの圧倒的な力。正しく"災害"と呼ぶべき存在に、フレクトとリ・デストロは絶句した。

 

 映像終了後、フレクトがボソリと呟く。

 

「……最悪だな」

 

 別の声が続く。

 

「キミらも大概だが彼女はそれ以上に災厄だな」

 

 オールフォーワンは楽しそうに肩をすくめる。

 

「ボクらヴィラン連合は彼女に関する情報や研究データをいくつも保有している。他にも"脳無"や"個性移植"に関するデータも豊富だ。協力してくれるのであれば、これらの一部を共有してもいい」

 

 リ・デストロはわずかに目を細めた。

 

「随分と、思い切った選択だな」

 

 オールフォーワンの声は、どこまでも軽い。

 

「ボクは彼女を潰すためなら一切躊躇わないよ?」

 

 だが次の瞬間、彼はわざとらしく指を立てた。

 

「……とは言ったものの、ボクばかり情報を流すのも些か不公平だな。キミ達からも何か、差し出してもらおうか」

 

 ゆっくりとオーバーホールへ視線を向ける。

 

「オーバーホール、キミの組織にはアレがあったね? 粗悪品でいい。一部こちらに流して貰えないか?」

 

 マスクの奥から、冷たい声が返る。

 

「……何に使う気だ」

 

 オールフォーワンは微笑む。

 

「彼女を殺すために決まってるだろう?」

 

「……」

 

「それとキミの組織の幹部を何人か、戦力として欲しい。彼女を殺すには人も物資も足りていないんだ」

 

 オーバーホールは椅子にもたれ、吐き捨てる。

 

「お前も連れてこなけりゃ釣り合いが取れねぇ」

 

 オールフォーワンは笑った。

 

「ボクは大事な教え子の弔と、優秀な黒霧、そして全ての脳無たちを戦力として差し出すよ。十分だろう?」

 

「……ハァ」

 

 そのやり取りを聞いていたリ・デストロが口を開く。

 

「私は全面的に協力させてもらうよ。ただし、彼女を確実に排除できる確証さえあればね」

 

 オールフォーワンは優雅に頷いた。

 

「安心したまえリ・デストロ。協力者が増えれば増えるほど取れる選択肢が増える。君に損はさせないさ」

 

 するとフレクトが静かに口を開いた。

 

「オールフォーワン。彼女が君以上の多重能力者なら、我がヒューマライズの個性因子誘発爆弾はどうだ? 彼女には相当効きそうだが?」

 

 しかしその提案は、あっさりと否定される。

 

「残念ながらフレクト、彼女にその手の類いは効かなくなってしまったんだ。つい最近の出来事だがね」

 

 一拍置き、彼は言う。

 

「彼女はイレイザーヘッドの個性"抹消"を手に入れた」

 

 場の空気が凍りつく。

 

「もはや彼女に"個性"は通用しない」

 

 オールフォーワンは淡々と説明を続ける。

 

「ただし、"抹消"は複数同時に働くことはない。彼女が目玉をポコポコ生やせばその限りでは無いが、機能性や彼女の性格を踏まえてせいぜい抹消できるのは4、5人」

 

 テーブルの上に指をトントンと打ち付けながら言う。

 

「それ以上の数に囲まれた場合、彼女は別の攻撃手段に切り替えるだろう」

 

 オーバーホールが低く問う。

 

「……何故そこまでヤツを知っている、オールフォーワン」

 

 男は肩をすくめる。

 

「彼女とは直接戦っている上に、脳無を介した戦闘データもある。解析自体は彼女の特異性故にかなり時間がかかっているがね」

 

「が、彼女の()()は分かった」

 

 全員の視線が彼に集まる。

 

「彼女は僕と一部の脳無以外に対しては、かなり力を抑えている」

 

 リ・デストロが眉をひそめる。

 

「……? それは朗報なのか?」

 

 オールフォーワンは笑みを深めた。

 

「朗報だとも。彼女は自分の立場故に手加減せざるを得ない、つまり()()()()ということさ」

 

 するとフレクトが思案するように言った。

 

「なら、その隙をついて監禁するのはどうだ? いや、彼女を()()するというのは?」

 

 しかしオールフォーワンは首を振る。

 

「……僕もその線は一度考えたんだがね、現状この世界に彼女を封印できる個性を持った人間はいないんだ」

 

 淡々と現実を告げる。

 

「動きを抑えるにも彼女の素の力はオールマイト並。毒物にも完全耐性があって、電撃や凍結も通じない」

 

 そして意味ありげに言う。

 

「これは彼女が僕の研究施設に監禁されてた時の実験データなんだが、これ以上の情報開示はやめておくよ。有料なんでね」

 

 誰かが皮肉を口にする。

 

「……欲しければ傘下に入れと」

 

 しかしオールフォーワンはすぐに訂正した。

 

()()だよ。僕はそういったヒエラルキー関係のトラブルが嫌いなんだ」

 

 軽く手を広げる。

 

「仲良くしようじゃないか、お互いにね」

 

 やがて、契約は成立した。

 

 オールフォーワンは満足そうに頷く。

 

「これで僕たちは晴れて同盟になったわけだ。めでたいもんだね」

 軽く顎を撫でながら言う。

 

「どうせなら名前でも付けようじゃないか。何がいい?」

 

 オーバーホールは興味なさげに吐き捨てる。

 

「……好きにしろ」

 

 フレクトも同意する。

 

「私も名称に拘りは無い」

 

 オールフォーワンは楽しそうに笑う。

 

「キミはどうだい? リ・デストロ」

 

 リ・デストロはしばらく沈黙し、やがて静かに口を開いた。

 

「……そうだな。我々は彼女という異常な存在を排除すべく結成した新組織」

 

 言葉を選ぶように続ける。

 

「彼女の存在はヴィランのみならず、人類そのものに終末をもたらすであろう。我々は彼女の脅威を打ち払い、彼女なき正しい世界の上に立つ」

 

 そして結論を告げた。

 

「そんな意味を込めて、"終末解放戦線"で、どうだろう?」

 

 オールフォーワンは愉快そうに頷いた。

 

「いいね、それでいこう」

 

 椅子からゆっくり立ち上がる。

 

「ではそろそろお開きにしようか。続きはまた後日」

 

 薄暗い会議室の照明の下、新たな敵対組織が静かに誕生した。

 

 

 

 ■

 

 

 

 一方その頃、雄英高校にて。

 

 USJでの訓練から数日後、相澤先生は魔理沙を職員室に呼び出した。

 

 先日のヴィラン襲撃事件の後処理はまだ完全には終わっておらず、職員室の空気はどこか張り詰めている。

 

 教員たちはそれぞれの机で書類を整理したり、電話対応をしたりと忙しそうにしていたが、その中心にいる担任教師──相澤消太の周囲だけは妙に静かだった。

 

 職員室の扉が開き、軽い足取りの声が響く。

 

「失礼しまーす」

 

「……来たな魔理沙。こっちだ」

 

 相澤は自分の席に座ったまま、顎で椅子を示した。

 机の上には体育祭に関する資料がいくつも広げられている。

 

 魔理沙はそれをちらりと見ながら、椅子に腰掛けた。

 

「さっそくだが本題に入らせてもらう」

 

 相澤は目元を軽くこすり、机の上の書類を一枚めくる。

 

 教師として何度も問題児と向き合ってきた男だが、目の前の生徒はその中でも飛び抜けて扱いづらい部類だった。

 

「お前、雄英体育祭は知ってるか?」

 

「……5月あたりにやるそこそこビッグなイベントですよね」

 

「あぁ、日本中の人らが注目する国内有数のビッグイベント。お前らヒーロー科の人間が現プロヒーローにアピールする最大の機会だ」

 

 相澤の説明は淡々としているが、その重要性は言葉の端々から伝わってくる。

 

「ほぇ〜」

 

 だが魔理沙の反応は、あまりにも気の抜けたものだった。

 それを見て、相澤は小さくため息をつく。

 

「……お前、このままだと体育祭()()になるぞ」

 

「ほぇ〜……ん? はァ"あ!?」

 

 数秒遅れて、言葉の意味を理解したらしい。

 

「何でですか!?!」

 

 椅子から半分立ち上がる勢いで食ってかかる魔理沙に、相澤は冷静な視線を向けた。

 

「このご時世でこんな事言いたくないが、お前の個性は強過ぎる」

 

「……そこを、どうにか……」

 

 魔理沙は若干しょんぼりした様子で視線を逸らす。

 

()()()()の二の舞いにするわけにはいかん」

 

 相澤の言葉に、魔理沙は黙り込んだ。

 あの試験の惨状は、教師陣の間でも半ば伝説のように語られている。

 

「……スゥー」

 

 深く息を吸い込む。

 

「……大人しく観客席で見てます」

 

「待て、そこまで言ってない」

 

 机を指で軽く叩きながら、相澤は言葉を続けた。

 

「魔理沙、お前を体育祭に出すにはいくつか()()がある」

 

「条件?」

 

 魔理沙は眉を上げる。

 

「そうだ。条件は3つ。1つ、体育祭ではお前の個性に制限をかける。普段ほど自由に使う事は出来ない。2つ、お前には我々教員が可能な限り考えた最大級の壁を用意する。傍から見れば理不尽かもしれないがお前からすれば大したモンじゃない。乗り越えて見せろ」

 

 職員室の片隅で、別の教師がこちらをちらりと見た。

 魔理沙に関する話題は、教員の間でもよく耳にするからだ。

 

「そして3つ、文句を言うな。あと人に迷惑をかけるな」

 

 魔理沙は数秒沈黙したあと、指を一本立てる。

 

「今条件4つ言いませんでした?」

 

 相澤は全く表情を変えずに言い切る。

 

「以上、これらの条件を飲むなら体育祭への参加を許可する」

 

「スルーされた……」

 

 魔理沙は小さく肩を落とした。

 

 しばらく考え込むように黙っていた魔理沙は、ふいに自分の手元に視線を落とす。

 

 魔理沙は少し考えると、唐突に自身の爪で指の腹に切り傷を付けた。

 

 小さな血の粒が浮かび上がる。

 

「……どうした?」

 

 相澤が眉をひそめる。

 

「いや、条件飲むんで血の契約でも結ぼうかと」

 

「お前、そんな魔女っぽいこと出来たのか?」

 

 相澤は半ば呆れたように言った。

 

「そりゃ魔女ですから。ちなみに縛りを破った相手は()()()()

 

「だから人に迷惑をかけるな……!」

 

 相澤のツッコミは即座だった。

 

「冗談ですよ。本当は1週間下痢に悩まされる呪いがかけられます」

 

「……それは冗談か?」

 

「いや本気(マジ)です」

 

「お前……」

 

「罰ゲームあった方が面白いじゃないですか」

 

 魔理沙はケロッとしている。

 

「あとこの契約結ぶ場合、先生側にも同等の縛りが無いと成立しないので今から考えますね」

 

「ふざけんな」

 

 即答だった。

 

「一、体育祭において私を出禁にしないこと。二、体育祭における私の行動に文句を言わないこと。途中からルール追加してアレ禁止これ禁止言うのは無し。三、過度な制限は行わないこと」

 

「個性使用禁止は構いませんが体育祭期間中常に禁止ってのは無しで。見栄え悪いですし」

 

「また壁も最大級のヤツ用意していただいて構いませんが、強制敗北、強制退場させるようなヤツは無しでお願いします」

 

 相澤は数秒間黙って考え込む。

 

 机の上に肘をつき、指先でこめかみを軽く押さえる。

 目の前の生徒は、決して普通の問題児ではない。

 力も、発想も、行動力も、すべてが規格外だ。

 

 条件一と三は、普通だ。縛りというにはあまりに緩い。問題は条件二の、"体育祭における魔理沙の行動への文句禁止"。

 

 戦闘狂(バーサーカー)が透けて見えるが、雰囲気的に開催前に決められたルールには従う気らしい。事前に抜け道を塞いでおけば、彼女が問題を起こすことは無いだろう。

 

 いや、待て。

 

「魔理沙、俺が追加した2つ目の条件を変更する」

 

「な……何ですか?」

 

 魔理沙の眉がわずかに跳ねる。

 どうやら予想外だったらしい。

 

「条件2、"体育祭のルールを守ること"」

 

 短く、はっきりと言い切る。

 

「くっ……!」

 

 魔理沙は思わず小さく唸った。

 露骨に悔しそうな顔をしている。

 

 どうやら何かしら抜け道を考えていたらしい。

 

 あとは、体育祭当日までにルールを練り、抜け穴を防ぐだけである。

 

 相澤の頭の中では、既に教師陣との打ち合わせの段取りが組み立てられていた。

 

「後は問題ない」

 

「じゃあその変更後の条件で契約しますね」

 

 魔理沙は肩をすくめながら言う。

 不満そうではあるが、拒否する気はないらしい。

 

「楽しみですね、体育祭。破ったら1週間下痢の刑です」

 

 魔理沙は妙に楽しそうな顔をしている。

 

「……はァ」

 

 相澤は深いため息をついた。

 彼の教師人生の中でも、これほど厄介な生徒はそう多くない。

 

 いや、正確に言えば──

 ここまで強すぎる問題児は初めてだった。

 

「じゃ、お話はついたということで。失礼しまーす」

 

 魔理沙は椅子から立ち上がり、軽い足取りで職員室を後にする。

 扉が閉まると、職員室は再びいつもの忙しい空気へと戻った。

 

 遠くで教師同士の会話が聞こえ、コピー機が動く音が静かに響いている。

 

「……」

 

 相澤はしばらくその扉を見つめたまま黙り込んでいた。

 

 机の上には体育祭の資料。

 その中でも、問題児の名前が書かれたページだけが妙に重く感じられた。

 

「……厄介なことになったな」

 

 ぼそりと呟き、再び机の書類へと視線を落とした。

 

 

 

 






もしかしたらEX4が出来るかもしれないけど一旦、五章EX終了。

次回、体育祭編へ。
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