最強の魔法使い(自称)が暴れるそうです。RE:   作:マスターチュロス

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【あらすじ(五章EX)】

ヴィラン連合USJ襲撃事件が終結し、改めて訓練を行ったA組。途中、オールマイト+結依魔理沙の悪ノリによるドッキリ(ハプニング)があったものの、A組は無事元凶2名の捕縛に成功。事なきを得たのだった。

数日後、結依魔理沙は担任である相澤先生と密約を交わす。それは、雄英体育祭における結依魔理沙の参加権に関するものだった。






第六章:異形×異形×体育祭×ヒーロー殺し=?
宣戦布告 (26話)


 

 

[a.m. 8:10 ]

 

 

【雄英高校1年A組教室内】

 

 

 あれから数日が経って初の授業日。久しぶりに魔理沙は徒歩(時速120km)で登校し、教室に着いた。

 

 ここ最近は事情聴取や事件の後処理etc.に駆り出され、おじさんの相手ばかりして飽き飽きしていた。が、そんな生活も終わり。

 

 今日からはいつも通りヒーロー科1年A組の生徒として青春を謳歌するのだ。

 

「突然だが……雄英体育祭が迫っている!」

 

「「うぉぉおおおおおおおおおおおおおお!!!!!」」

 

 青春MAXなイベントの到来に、ほとんどのクラスメイトが絶叫した。

 

 この超人社会において雄英体育祭は超屈指、国内最大級のビッグイベント。かつてのスポーツの聖典、"オリンピック"が個性の登場によって廃れ、その後釜を謀らずとも担うことになったこの体育祭。

 

 一般市民のみならず著名人、プロヒーローも観戦するため、ここで戦績を残すと後々インターンやサイドキック候補生としてスカウトされやすくなる。

 

 そのため、雄英体育祭はヒーロー科にとって"特に"外せないイベントなのだ。

 

 切島くんらも「クソ学校っぽいの来たァァ!」と元気よく叫んでおり、魔理沙は仏のような笑みで彼らを見守った。

 

「ヴィランに侵入されたばっかなのに大丈夫なんですか……?」

 

 耳郎の真っ当な意見に、仏のような笑みを向ける魔理沙。

 

 世の中にはヴィラン連合のみならず、悪事を働いて名声を上げようとする人間が大勢存在する。

 

 そんな人間にとって雄英体育祭は絶好の機会。ましてや、つい最近敷地内にヴィランに侵入されているという事実。雄英のセキュリティは黒霧のようなワープ持ちや死柄木のような貫通即死持ちでない限り、そう易々と突破できないが、試そうとする輩は出てくるかもしれない。

 

 相澤が口を開く。

 

「逆に開催することで雄英の危機管理体制が磐石だと示す…って考えらしい。警備は例年の5倍に強化するそうだ」

 

「さらに今年は魔理沙にも協力して貰っている」

 

「カンドロイド呼び出したら思いのほかウケたので採用されました」

 

「だそうだ」

 

((何一つ理解できない……ッ!!))

 

 ほとんどのクラスメイトが困惑する中、常闇はキラキラと目を輝かせていた。

 

「雄英(ウチ)の体育祭は、ヒーローを志す者にとって最大のチ(・)ャ(・)ン(・)ス(・)。ヴィランごときで中止していい催しじゃねぇ」

 

「その気があるなら準備は怠るな!!」

 

「「はい!!」」

 

 相澤先生に喝を入れられたA組。何はともあれ、今年も雄英体育祭は開催決定。めでたしめでたし。

 

 魔理沙は両腕を組み、実写版キングダムの王騎将軍のごとくクラスを見守った。

 

 

 ■

 

 

【昼休み】

 

 昼食の時間。魔理沙はおにぎりを片手に、廊下で透明化+浮遊状態で漂っていた。

 

 緑谷くんを飯に誘おうとしたが、オールマイトに先に取られたので敢え無く断念。耳郎ちゃんも副委員長と食べに行ったので、特にアテもなく校内をフラつくことにした。

 

 ボーッとしていると、悩みの種がまた浮かび上がってきた。ヴィラン連合、NOUMU、体育祭での警備の話。

 

 思い出す度にため息が出るが、今気にしているのはそれらでは無い。

 

 今一番気にしているのは……

 

(クラス全体に読心術まとめて使えない問題*1と、ここから先の未来読めない問題……)

 

(嫌な予感しかしないんだよなぁ……早くチェック済ませて気楽に行きたいんだけど……)

 

 魔理沙は顎に手を当て考える。理想として、体育祭終わる頃には全員のチェックを済ませておきたいが、間に合う気がしない。

 

 こういう場合、私は時間停止で解決するのだが今回はNGである。時間停止は心の機微すらも止めるため、停止中に心を覗くことは出来ない。

 

 やはり会話を通じて地道にチェックするしかない。

 

(とりあえずまだ直接喋ったことない人……)

 

(……お?)

 

 潜水艦のソナーのごとく周囲に波動を出していると、気になる反応が一つ。

 

 校舎外のベンチで黙々とご飯を食べるクラスメイト、障子目蔵の反応をキャッチした。

 

(一人だしちょうどいい)

 

 魔理沙は指鳴らしで校舎外に瞬間移動し、透明化を解除して空中から地上へダイナミックに着地した。

 

「みーっけ」

 

「うッ!? ……魔理沙か。よくこの場所が分かったな」

 

「まぁね。波動と千里眼のおかげ」

 

 魔理沙は軽く肩をすくめた。

 

「それで、俺に何の用だ?」

 

「いや、少しね。君のことを知りたいなと思って」

 

「……何か変なこと考えてないか?」

 

「いやいやいや考えてませんって! 本当だからマジで!」

 

 即答するも動揺が隠しきれず、若干の怪しさが残る。

 

 魔理沙は話題を逸らした。

 

「障子くんはいつもここで食ってるん?」

 

「……あぁ、人の多いところは落ち着かなくてな」

 

「分かる。食堂とか人多過ぎて全然使う気起きない」

 

 魔理沙は青草の上に座り、足を伸ばしながら話を続けた。

 

「……魔理沙は、飯はどうしてるんだ? 自分で作るのか?」

 

「作る時もあるし作らない時もある。何なら食べない日もある」

 

「それは……大丈夫か?」

 

「大丈夫大丈夫。そもそも私、魔力がエネルギー源だから食べる必要無いんよね。あくまで人間らしさを保つため」

 

「ね、便利でしょ?」

 

「……そうだな」

 

 軽活に話す魔理沙。便利なのは事実だが、食わずとも生きていけるというのは、生物として理(ことわり)から外れている。

 

 "人間らしさ"、その言葉が障子の心に引っかかった。

 

「魔理沙、少し聞いてもいいか?」

 

「なんじゃらほい」

 

「お前の言う、"人間らしさ"って何だ?」

 

「ヘビーなの来たねコレ」

 

 魔理沙はしばらく悩み、そして答えた。

 

「……誰かと一緒にいたいと思う気持ち……とか?」

 

 絞りに絞った答え。その真意に障子は踏み込む。

 

「理由を聞いてもいいか?」

 

 魔理沙は再び考え込むと、静かに口を開いた。

 

「……この世界さ、総人口の7割が個性持ちでしょ?」

 

「持ってる個性もみんなバラバラで、同じ人間なのにまるで別の生き物」

 

「そのせいで、お互いがお互いの一挙手一投足に過敏になる」

 

 魔理沙の視線が、遠くの空へと向く。

 

「でもね……ずっと過敏のままでいると、心が一人になる」

 

「相手と自分の違いに目を向けすぎて、まるで自分が世界の外側にいるように感じる」

 

「けど、私は世界の輪の中にいたい。外側なんてつまらない」

 

「だから私はご飯も食べるし睡眠もとる。学校も行く」

 

「恐れられようがなんだろうが、私は世界と繋がり続ける」

 

 魔理沙は立ち上がり、ハッキリと言い切る。

 

「互いの違いに目を向けることなく、人の輪の中で生き続け、これからもその輪の中にいたいと思えたなら、それはまさしく人間らしさじゃないか?」

 

 太陽を背に言い切った魔理沙。熱くなったせいか、余韻で肩の力が抜けていく。

 

 普段のイメージとは異なる雰囲気に、障子は内心驚いていた。

 

「……意外と考えてるんだな」

 

「こう見えて私、結構センチメンタルなんだぜ」

 

「本当に意外だな」

 

 障子の零す笑みに、魔理沙はサムズアップで返す。

 

 障子は彼女の言葉を通して、理解した。

 

 魔女、最強、異形、無数の個性……彼女を表す言葉や要素はいくつもあるが、そのどれもが表面的で本質ではない。

 

 彼女はただのお調子者で、戦闘狂で、同じヒーローを志す人間。

 

「少し、昔の話をしてもいいか?」

 

「いいよ」

 

 魔理沙は軽く頷く。

 

 障子は一瞬だけ言葉を選び、そして口を開いた。

 

「……俺は、小さい頃から村中の人間から忌み嫌われていた」

 

「古い慣習でな。俺が誰かに触れただけで、血払いだと言って村中の人間に袋叩きにされた」

 

「……」

 

「自分の形を酷く呪ったよ。どうして皆と同じじゃないのか……って」

 

 障子は口元をマスクの上から指でなぞる。

 

「だけどある日、氾濫した川で溺れている女の子を見つけた」

 

「流れていく彼女の手に、俺の個性(複製腕)は届いた。あの時初めて、俺が俺であることに感謝した」

 

「いつしかそれが誇(・)り(・)になった。俺の手は、人の命を救える力があるんだって」

 

 障子の声は変わらず落ち着いていた。

 

 だが、その瞳には確かな熱がこもっている。

 

「俺は、ヒーローになって手を伸ばし続けたい。お前の言う、人の輪の中で」

 

 言い切った後、ふっと空気が軽くなる。

 

「……障子くん」

 

「なんだ?」

 

「お前いいヤツ過ぎる。心もつえーし」

 

「そうか?」

 

「なんでそこ疑問形なんだ……! 私がお前だったら秒で闇堕ちしてるわ!!」

 

「闇堕ち……?」

 

「……もしかして、"闇堕ち"をご存知でない……?」

 

 障子の素朴な疑問に、魔理沙は目を見開いた。このご時世、アニメ漫画に触れる機会は多々あるが、それでも作品のジャンル次第では全く大衆の目に映らないものもある。

 

これは教えねばならない。闇堕ちの文化を…

 

 

 

 その後、魔理沙は"闇堕ち"について暫く語っていたが、チャイムが鳴ったため二人は教室へと戻った。

 

 

 

 ■

 

 

 

【放課後】

 

 

 午後の授業も無事終わり、A組全員が帰宅の準備を済ませていたところ、珍事件が起きた。

 

 A組教室の前に異常に人集りが出来ていた。

 

「こんにちわ」

 

 魔理沙が挨拶すると、多くの人たちが魔理沙からサッと距離をあける。

 その反応はあまりにも露骨で、もはや習慣的な恐怖すら感じさせる。

 

「A組に何の用で?」

 

 ごく普通に言葉をかける魔理沙。しかし、彼女の風貌と人外全開オーラが、意図せず人を怯えさせる。

 

 多くの人が声を出せず震える中、一人、紫色の髪の毛の男子が魔理沙の前に現れる。

 

「宣戦布告しに来たんですよ」

 

「……へぇ?」

 

 大胆不敵な発言に魔理沙の左眉が動く。

 

「……失礼、自己紹介がまだだった。俺は"心操人使(しんそう ひとし)"、普通科の生徒だ」

 

 周囲がざわめく。名前を聞いて反応する者もいれば、ただその度胸に圧されている者もいる。

 

「ここにいる人達みんなそうなのか?」

 

 飯田の質問に心操が答える。

 

「そうだ。ヴィランの襲撃から生き残ったキミ達A組のツラを拝みにね」

 

 その言葉には皮肉も混じっていたが、完全な悪意ではない。

 むしろ、どこか試すような響きだった。

 

「で、宣戦布告とは?」

 

「……体(・)育(・)祭(・)、俺たち普通科も参加するんですよ」

 

 その一言で、空気が一段階引き締まる。A組の面々も、自然と意識を向けた。

 

「俺たち普通科や他の科には、ヒーロー科に入りたくて入れなかったヤツらが結構いるんでね」

 

「そんな俺らにも学校側はチャンスを残しているんですよ」

 

 淡々とした口調。だがその奥には、積み重ねた鬱屈と執念が滲んでいた。

 

「体育祭のリザルトによっちゃヒ(・)ー(・)ロ(・)ー(・)科(・)へ(・)の(・)編(・)入(・)を検討してくれるそうで」

 

「逆に成績が悪ければ、ヒーロー科から除籍されるケースも、ね」

 

 その言葉に、A組の何人かが表情を変える。

 

 “安全圏ではない”という事実が、静かに突きつけられる。

 

「とにかく、舐めてると足元掬われるってこと、忘れないでくださいね」

 

 言い切った後、心操はスタスタとその場から立ち去った。

 

「何だアイツ……!」

 

 言うだけ言って帰った心操に、峰田は憤りを感じた。

 

 峰田に限らずA組の何人かは心操の行動にヤキモキしていたが、一人珍しく俯瞰している男がいた。

 

 爆豪である。

 

「おい爆豪、お前珍しくキレなかったな。いつもならもっとこう……」

 

「黙れ切島」

 

 即キレる爆豪。しかしいつも通りのため、切島は一周まわって安心感を覚えた。

 

 爆豪が口を開く。

 

「あんな三下に用はねェ」

 

「三下呼びは止めないか爆豪くん!」

 

 止まらぬ暴言にストップをかける飯田委員長。しかし、爆豪は聞く耳を持たない。

 

 いつも通り、のはずが、緑谷は違和感を感じていた。いつも通りであれば、彼は廊下にたむろしている人全員に中指を立て、見境なく暴言を吐き敵を作っていただろう。

 

 しかし今回は静かだった。

 

 静かだが、それは単に丸くなったのではなく、湧き出るマグマに蓋をしてグツグツと煮え滾らせているような、そんな執念のような感情が言葉の節々に滲み出ていた。

 

「俺が潰してェのは……」

 

 爆豪の鋭い眼光が突き刺さる。

 

 いつもよりも激しい光が、瞳の奥に突き刺さる。

 

 眼光の圧が消えると、爆豪は無言でカバンを肩にひっかけ、そのまま教室を立ち去った。

 

「帰っちゃった……」

 

 爆豪の背を心配そうに見つめる緑谷。爆豪の目線は明確に彼(・)女(・)に(・)向けられており、クラス全体がザワつく。

 

「因縁の対決ってヤツか……」

 

「あんな爆豪くん、初めて見た……」

 

 お茶子は魔理沙の顔をチラ見した。

 

「? 何を期待してるか知らないけど、勝つのは私だよ?」

 

「……相変わらずね、魔理沙ちゃん」

 

「けど、爆豪くんも強いし……」

 

 お茶子が不安そうに見るも、魔理沙は澄ました顔で答える。

 

「これまでもこれからも、アイツにだけは負けんよ」

 

 そう言い切った後、魔理沙は帰る準備を済ませ、カバン片手に廊下を出たのであった。

 

*1:
21話参照






【紹介コーナー】

●カンドロイド
→仮面ライダーオーズに登場するサポートアイテム。動物モチーフの小型ロボット。カン(缶)とアンドロイドの造語の通り、カンモードとアンドロイドモード(動物の形になる、正確にはアニマルモード)がある。種類によって機能が異なる。

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