最強の魔法使い(自称)が暴れるそうです。RE:   作:マスターチュロス

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【あらすじ】

帰宅直前、普通科の人達がA組教室前に屯する珍事件が発生。そして普通科、"心操人使(しんそうひとし)"からの宣戦布告。

波乱を呼ぶ中、爆豪はただ一人にのみに眼圧を飛ばし、帰宅。爆豪との因縁を再認識した魔理沙は、特に悩むことなく帰ろうとしていた。






第一種目『???』(27話)

 

 

 

「待てや!!!」

 

 魔理沙が廊下を出た瞬間、誰かが肩を掴んだ。

 

「誰?」

 

「俺はB組の鉄哲徹鐵!! お前、A組の結依魔理沙だな!!!」

 

「はい」

 

 見るからに豪傑な男、鉄哲徹鐵が話しかけてきた。

 

「ある男から聞いたんだが、お前がヴィラン全部吹っ飛ばしたってのはホントか!!?」

 

「……」

 

 鉄哲の問いに押し黙る魔理沙。事実なのは確かだが、公のニュースでは"プロヒーロー"がヴィランを鎮圧したことになっている。私の名前は一度も出ていない。

 

 情報漏れを悟った魔理沙は鉄哲の心を瞬時に読み、記憶を探る。

 

「警戒するな、魔理沙」

 

 聞き覚えのある声が鉄哲の背後から聞こえ、魔理沙は目を細めた。

 

「ケヒヒ……! よっ!」

 

「会長!!!」

 

 魔理沙の目がキラキラと輝く。

 

「え、知り合い?」

 

「うん、同中(おなちゅう)

 

 魔理沙は会長とグータッチと握手を交わす。

 

 一通り交流を終えた後に、会長が口を開いた。

 

「ケヒヒ……! 俺は黒色支配(くろいろしはい)。魔理沙とは中学校からの友達で、"‪✝︎黒の……」

 

 魔理沙は一瞬で黒色の背後に回り、腕と肩を封じながら口を塞ぐ。

 

「モガッ……! 何……!?」

 

「これ以上喋ったら、()()

 

 魔理沙はそのまま黒色を抑えながら歩き、その場から立ち去った。

 

「何だったんだ、今の……」

 

「黒……?」

 

 魔理沙の不自然な行動にA組のみならずB組も困惑し、その場に立ち尽くした。

 

 

 

 

 ■

 

 

 

 

 雄英高校体育祭まで残り二週間、魔理沙は普段の授業に加えて体育祭の準備の手伝い、公安委員会としての仕事、そして緑谷くんとの特訓の手伝いとは別に爆豪とも特訓し、さらにA組の調査という激務をこなしていた。

 

 体育祭については相澤先生から連絡があり、私に関する正式なルールが決まった。

 

 詳細な内容は当日語られるので置いておくが、かなり私に配慮されたルールだった。流石に時間空間因果律関係の力はほぼ禁止されたが、それでも"手数の多さ"という強みを封じるルールは無く、依然として私の強さは相対的に変化していない。

 

 本当にそれでいいのかと、心配になって確認しに行ったが、相澤先生曰く「別にいい」とのこと。

 

 結依魔理沙の強みを、"エンターテインメント"として昇華するのが雄英教師陣の方針らしい。

 

 確かにあのルールは、ギャンブル要素もあってか、エンターテインメント性を上手く引き出している。観客もさぞウケるだろう。

 

 だが、私をエンターテインメント枠に仕立てあげて何の意味があるのか。いや、シンプルに体育祭を盛り上げるためだと思うが、その期待には答えられない。

 

 何故なら結依魔理沙は全世界にとって禁忌(タブー)的存在だからである。

 

 既にA組や教師陣に強さが知れ渡っており、ほぼ死に設定と化しているように見えるが、あくまで私に対する皆のイメージは、"めっちゃ強い人"である。

 

 実際は3秒で宇宙を滅ぼせるヒト型知的生命体であり、たまたま人に対して友好だったため、世界レベルで秘匿されその存在が必要以上に知られないよう管理されている。

 

 そのため、体育祭で自身の能力に制限をかけられるのは魔理沙的にも都合が良かったのだが、実際はそこそこで、場合によってはヤバい能力の使用も許可される。

 

「ま、使わなきゃいいか」

 

 あくまで使用権はこちらにあるので、自分の正体に関してはバレずに済むだろう。

 体育祭当日のアナウンスでも、私の個性が『魔法』であることと、その圧倒的な応用性を理由に一部制限を設けることを事前に伝えるらしいので、不必要に不安を煽ることは無い。

 

 あくまで私は、めっちゃ強い人。

 

 "魔法"という、応用力無限だけど複数個性扱いにはならない、珍しい個性を持っためっちゃ強い人。

 

 決して、世界を滅ぼす可能性を秘めた怪物という認識を与えてはいけない。

 

 その部分さえ気をつけていればきっと問題ないだろう。

 

 

 

 体育祭はさておき、他にも問題がある。A組の中にスパイor超常的存在の干渉を受けた存在がいるかもしれない問題、について。

 

 この二週間の間に何人かと話し、飯田くん、上鳴くん、切島くん、蛙水さん、お茶子ちゃん、芦戸さんは確認が取れた。

 

 そこに爆豪、緑谷くん、常闇くん、耳郎ちゃん、障子くんを加えると、白確は全部で11人。

 

 まだ未確定の者が9人存在するが、体育祭開催までには間に合わなかった。体育祭が終わり次第、調査続行である。

 

 

 

 また爆豪の問題について。以前、爆豪は演習場での訓練にて暴走し、緑谷くんのワンフォーオール常時発動形態(フルカウル)40%(筋肉全開(マッスル)モード)を真正面から弾き飛ばすほどの爆発力を手にしたが、最後は盛大な大爆発を引き起こし、屋内演習場を粉々にするという伝説の事件があった。

 

 あの時は様子見で済ましたが、その後も演習にて爆豪の個性が時折暴発し、必要以上に火力が出るケースが頻発したのだ。

 

 リカバリーガールや様々な医療関係者に診察してもらったものの、原因特定には至らず、最終的に魔理沙が爆豪を診察することに。

 

 その結果、奇妙なものを発見した。

 

「何……コレ?」

 

 スキル『大賢者』による分析により、爆豪の個性因子の周辺に別の因子が円を描くように周っていた。

 また、その因子は、奇しくも魔理沙の体内にも存在するものだった。

 

 "異形因子"、と魔理沙が勝手に名付けたその因子は、大賢者曰く、その者の"感情"や"覚悟"といった心の大きな機敏に応じて、個性因子に過剰に働きかけるのだそう。

 

 ……俗に言う、"覚醒"である。そして魔理沙は、この覚醒について物凄く心当たりがある。

 

 それは、東方異形郷において一部のキャラクターのみが見せる形態。多くの艱難辛苦を乗り越えて覚醒し、本来のスペック以上の力を発揮する形態。

 

 その形態に、爆豪が至った。これはまさしく、奇跡。

 

 力の磨き方次第で、爆豪は緑谷以上のスペックを発揮することができる。そう確信した魔理沙はすぐに爆豪を訓練所に呼び出し、異形因子の力をコントロールする訓練を行った。

 

 強引に始めたことで最初はブチ切れていた爆豪だったが、魔理沙も爆豪も、"強さへの執念"という点に関して全く同量の熱を持っていたため、罵り合いながらも訓練は続行。

 

 時間停止による地獄の(終わってる)特訓により、爆豪は異形因子の力をコントロール出来るようになり、全力の緑谷に真っ向から抗えるほどの力を得た。

 

 敵である私に莫大な塩を送られ、爆豪は終始不服そうな様子だったが、魔理沙としては幼なじみが強くなり、緑谷くんとのパワーバランス的にも丁度よくなったため、満足していた。

 

 

 

 以上で、体育祭までに起きた出来事は粗方語り尽くした。だが最後に一つ、重大発表がある。

 

 私は、この雄英体育祭中にヒーロー殺しのステインを仕留めることにした。

 

 唐突だが理由はある。1つは、この体育祭期間中にステインが飯田くんのお兄さんであるインゲニウムを再起不能にすることが原作で分かっているからである。絶対にシバかなければならない。

 

 2つ目はステインの暴挙が後々ヴィラン連合の強化に貢献することが原作で確定しているからである。絶対にシバかなければならない。

 

 ただでさえヴィラン連合はNOUMUの件も相まってキナ臭いため、これ以上強化させるわけにはいかない。絶対にシバかなければならない。

 

 が、私は体育祭参加者。相澤先生との血の契約もあり、体育祭のルールを逸脱するような行為は……と思うかもしれないが、問題無い。

 事前に全能力を丸々コピーした分身体に向かわせるため、本体は問題なく体育祭に参加出来るのだ。絶対にs ((r

 

 

 それでは、Plus ultra! 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ■

 

 

 

 

 

【1年A組控え室】

 

 

「皆! 準備は出来ているか!? もうじき入場だ!!」

 

 ついに迎えた体育祭当日。外は観客、マスコミ、ヒーローが溢れかえり、熱が中まで伝わってくる。

 

 流行る熱に浮かされ、ドクドクと波打つ心臓の音。扉の先に待つは、羨望と期待を乗せた大観衆の目。名を売り、誉れを得るには絶好の舞台である。

 

 その舞台の上に、最後まで残っていられるかは実力次第。運も技術も総動員した上で、死力を尽くしてこそ体育祭。これから待ち受ける苦難、激闘、そこから生まれる物語(ストーリー)に、人々は思い馳せる。

 

 そんな青春の舞台から限りなく縁遠い結依魔理沙の肩に、手が乗っかかる。

 

「結依……」

 

 背後から声をかけたのは、轟だった。

 

「なんだい轟焦凍くん?」

 

 普段と変わらぬ調子の魔理沙。その済ました態度は、紛れもなく強者の余裕だった。

 

「戦闘訓練では負けたが……次は絶対勝つ」

 

「私も、負けるつもりは毛頭ない。私が勝ってハッピーエンド(終わり)だ」

 

 ゴゴゴゴゴ……なんて擬音語が浮かび上がるほど睨みあった両者は、これ以上言葉を交わすことなく、互いに背を向ける。

 

 口で語る勝負ほど下らないものは無い。男は黙って拳を磨き、試合(殴り合い)で決着をつけるべきだ。私は女だが。

 

 魔理沙は軽く腕と肩のストレッチを行い、体の調子を整える。その最中、お茶子ちゃんがキラキラとした目で魔理沙を見ながら口を開く。

 

「因縁の対決……だね!!」

 

「……みんな好きだねぇ、因縁の対決」

 

 誰かに宣戦布告される度に因縁を吹っかけられるあまり、魔理沙の顔は某1000年生きたエルフの魔法使い並に、何とも言い難い表情をしていた。

 

「僕も負けませんよ、師匠!!」

 

「ッ!! 因縁……ッ!!?」

 

「因縁しか無いんだけどォ!!!」

 

 緑谷からの宣戦布告に、芦戸の因縁センサーが反応する。その様子を見て、魔理沙は半分ヤケクソになった。

 

 なお、二人以上に因縁の深い某爆殺王さんは、部屋の隅でジッと魔理沙を見つめ、機嫌の悪そうな雰囲気(オーラ)を全力で醸し出している。

 

「因縁だね……!!」

 

「もうええて」

 

 察しがいいのか、なおもネタを擦り続けるお茶子に魔理沙がチョップを入れる。

 

 入場の時はもう近い。魔理沙たちは支度を終えた後に退室し、委員長の指示のもと二列に整列する。

 

 雄英体育祭、開幕である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 [レディィスエェエエエンドジェントルメェェエエン!!!! いよいよ開催だァ雄英体育祭!! ]

 

 [青春真っ盛りなヒーローの金の卵!! 略して金タマたちの意地と意地がぶつかり合うこの大会!! 1年ステージ実況は俺、ヴォイスヒーロー『プレゼントマイク』がお送りするぜッ!! リスナー共! Are you ready!?!? ]

 

「「イエエエエエエエエエエエイ!!!!」」

 

 会場のレスポンスが一体となって響き渡り、興奮したプレゼントマイクが前のめりにマイクを取る。

 

 [OK!! 元気なお便りをありがとう!!! おっと? あと一人紹介していない人物がいたぜ! 実況と解説はセットで頼まくちゃなぁ!!! 解説役はこちらぁ!!! ]

 

 [……マイク、なぜ俺を呼んd]

 

 [解説の『イレイザーヘッド』だ! よろしく! ]

 

「「イエエエエエエエエエエエイイエイ」」

 

 そしてほぼ強制参加の我らが苦労人、相澤先生が解説役に就任し会場のボルテージがさらに上昇する。

 

 ……別に相澤先生でなくとも会場は盛り上がっただろう。ただでさえウチの担任は硬派で地味なので、おそらく観客の7割はウチの担任のことを知らない。

 

 それでも盛り上がってるのは、ノリである。

 

 [雄英体育祭!! ヒーローの卵たちが我こそはとシノギを削る年に一度の大バトル!! どうせてめーらアレだろこいつらだろ!!? ヴィランの襲撃を受けたにも拘わらず鋼の精神で乗り越えた奇跡の新星!!! ]

 

 [ヒーロー科!! 1年!! A組だろぉおおぉおお!!? ]

 

 ワアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!! 

 

 大歓声とともに入場を果たす我ら1年A組。視界の端から端まで人が埋めつくし、入場のファンファーレが鳴り響く。

 

(師匠、人がいっぱいでヤバいです! 震えが止まりません!!)

 

(手に"人"の字を10回くらい書けば落ち着くよ。たぶん)

 

(人人人人人人人……)

 

 緑谷からの救難信号に、読心を通じてアドバイスする魔理沙。その直後、緑谷は迷いなく自分の手に人の字を描き、それを飲み込む素振りをする。

 

(アカンこの子、猜疑心が無い)

 

 緑谷の将来に一抹の不安がよぎる魔理沙。半分バーサーカーと化してるとはいえ、悪い女の子に騙されないか心配である。

 ま、ヴィランの女の子なら緑谷くんの丸太のような腕が土手っ腹に炸裂するだろうが。

 

 そんな魔理沙の思惑はさておき、続いてB組が入場し、普通科、サポート科、経営科も参戦。少し前に宣戦布告した普通科の"心操人使(しんそうひとし)"の姿も見え、役者が揃い始める。

 

「選手宣誓!!」

 

 会場のど真ん中で指揮を取るは、18禁ヒーローのミッドナイト先生。

 ヒーローコスチュームでお立ち台に立つ彼女の姿は、会場にいるほぼ全ての男の視線を釘付けにする。

 

「18禁なのに高校にいてもいいものか……」

 

「いい!!」

 

 常闇の疑問を即答で答えた峰田。

 

「静かにしなさい!! 選手代表!!!」

 

「結依魔理沙!!!」

 

 ミッドナイト先生に名を呼ばれ、列を抜ける魔理沙。代表者は当然、入学試験でトップの成績を残した者……つまり私である。

 

 魔理沙はゆっくりと台を一歩づつ登り、置かれたマイクを手に取る。こんな大舞台に立てる機会、生まれ変わる前は一度もなかった。……あまり覚えてないが。

 

「あ、あ〜……」

 

 声の出具合とマイクの音量を確認し、決められた台詞を口に出す。

 

「先生、我々選手一同は、日頃の成果を発揮し、正々、堂々、戦うことを誓います。■■■■年、5月■日、選手代表、結依魔理沙」

 

 パチパチパチパチパチパチパチパチパチ……

 

 予定通り、役目を果たした魔理沙。会場から拍手やホイッスルボイスが聞こえ、誰もが温かく会場を見守る。

 

 そんな中、A組のクラスメイトらは落ち着いた様子の彼女を見て、一抹の不安がよぎった。

 

「あぁ……それともう一つ……」

 

 マイクを返す手前、魔理沙はクルッと生徒側に振り向き、声を出す。

 

「わ・た・し・が!! 優勝を頂くからな。お前ら全員まとめて正々堂々叩き潰してやるからかかってこい。 以上!! 解散!!! てか帰れ!!!!!」

 

「「ざけんなぁあぁあぁあぁああぁあ!!!!!」」

 

 Boooooooooooooooooooooooooooooo!!!!!!!!!!! 

 

「何が帰れじゃボケェエエエエエエ!!!」

 

「途中まで普通だったくせに裏切り者ォォオオオ!!!!」

 

「調子のんじゃねぇぇぇえええ!!!!」

 

「俺と戦えぇえええええええええ!!!!」

 

 他クラスからのブーイングに対し、魔理沙は耳に手を当て、まるで聴こえんとばかりに煽り散らかす。

 

 その姿を見てA組のクラスメイトの一部は、手で顔を覆った。

 

 にこやかな表情で魔理沙は列に戻り、ミッドナイト先生の指示を待つ。

 戻る最中に全方向から強烈な目線が突き刺してきたが、その程度の悪意など大したことではない。赤子が睨んだところで無駄である。

 

「急だけど第一種目を発表するわよ!」

 

「ほんと急やね」

 

 まるで何も無かったかのように進められ、ツッコミを入れるお茶子。このぶっ飛び展開に対する耐性の高さも、雄英の魅力である。

 

「今年最初の種目は.これよッ!!」

 

 バンとモニターに表示されたのは、『障害物競走』。原作通りである。

 

 そして始まるルール説明。魔理沙は事前に知らされているため、特に原作との変更点らしきものは無いことは確認済み。強いて言うなら、私だけ専用の箱? に入れられてからのスタートらしいが。

 

「そして今回は特別仕様! 1年A組結依魔理沙には諸事情により特別なハンデが与えられるわ!」

 

 [彼女は雄英史上最強の生徒さんなんでね。我々教職員一同、全会一致の決断です]

 

 相澤先生の補足も入り、会場に響めきが走る。それもそのはず、雄英高校は今まで多くのトップヒーローを排出した超名門校であり、現トップヒーローであるオールマイトやナンバー2のエンデヴァーも雄英出身である。

 

 それらすべてのトップヒーローを含めた上で、彼女が最強であると雄英が宣言した。しかもハンデ付きという、これまで一度として無い例外的措置。その対応は一部の反感を買い……

 

「嘘つくのも大概にしろオオオオオ!!!!!」

 

「いくら入試トップでも、オールマイトに比べたら……ねぇ?」

 

「彼女が可哀想だろオオオオオオ!!!!!!!」

 

「それでも雄英かアアアアアアアアアアアア!!!!!」

 

 会場から聞こえる雄英へのブーイング。魔理沙からすれば、この見た目と力を持った上で心配されること事態、中々にない機会だ。

 魔理沙を間近に見さえすればその意見も止むだろうが、残念ながら観客全員に挨拶しにいく時間は無い。

 

 こうなることは事前に想定していた。だから既に、相澤先生と打ち合わせしている。

 

ドンッッ!!!!! 

 

 突然の地響きに会場が揺れ、瞬く間に静まり返る。誰もがその震源を恐れ、音の発生源に目を向ける。

 

 そこには、地面にクレーターを開けた魔理沙の姿がいた。

 

(いつの間に……ッ!?)

 

 切島や他のクラスメイトたちが、先程まで整列していた魔理沙の位置と見比べ驚愕する。

 

 魔理沙の手にはマイクが握られており、既に息は吸っていた。

 

「私の名前は、"結依魔理沙"」

 

「雄英高校1年A組、個性『魔法』」

 

()()()()()()()使()()

 

 魔理沙は会場全体を覆うほどの大魔法陣を空に展開し、木漏れ日が会場に差し込む。

 

 魔法陣の発動により、空から巨大な岩石が地上に目掛けて落下した。

 

「「は????」」

 

 観客が唖然する中、魔理沙は瞬間移動で岩石のもとにたどり着き、時間停止を織り交ぜながら超高速で岩石を切り刻む。

 

 そしてフワリと念動力で魔理沙が着地し、その1秒後に削られた岩が地響きを起こしながら落ちる。

 

 削られた岩石はすべて、現トップヒーロー50名を模した岩石像。それらが生徒ら全員を囲むように配置されていた。

 

 魔理沙は先程まで立っていた台の上に登り、指を鳴らす。

 

 その瞬間、岩石像の外側の領域の地面が連続で爆発し、会場から悲鳴が上がった。

 

「お前たちに私を倒すのは不可能だ」

 

「何故か分かるか?」

 

 静まる会場。魔理沙は返答を待つことなく、右手を掲げる。

 

 そして素早く右手を握りしめた瞬間、魔理沙を中心に禍々しい砂塵が発生し、ミッドナイトや生徒たちが思わず目を瞑った。

 

 吹き荒れる砂塵は囲んでいた岩石像のみを塵に変え、そして何事もなく消え去った。

 

「今ので、分からんヤツおるか?」

 

 会場からの返答は、無い。

 

「……だがこのルールなら、お前らにもワンチャンある」

 

「そして私も、このルールの範囲なら安全に"本気"を出せる」

 

「Are you OK?」

 

 魔理沙はレスポンスを求め、振り向きざまにマイクを投げる。

 

 投げられたマイクはくるくると回転しながら弧を描き、そして()()()()の手元に落ちる。

 

 魔理沙が緑谷に向けてウインクすると、緑谷は嬉々としてマイクを口に寄せた。

 

「Yeeeeeeeees!!!! I’m OKェエエエエエエエエエエエエエエエエエエエ!!!!!!」

 

 ワアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!! 

 

 会場の大歓声と共に魔理沙は魔法陣で大量の花火を会場全体に飛ばし、体育祭を華々しく盛り上げる。

 

 なお、この大歓声は魔理沙の能力で作り上げた()()()()()であり、観客席のほとんどの人は声を上げていない。

 

 だが仮初の歓声は観客全員の心を誘導し、"大多数が認めた"のだと錯覚させる。それが、結依魔理沙と相澤先生の狙いだった。

 

 集団心理を利用した例外的措置の適用、そして結依魔理沙のエンターテインメント化。その二つを達成し、魔理沙は晴れやかにお辞儀をする。

 

 [おいおい何だこの展開はァ!!!! 彼女はラスボスかぁ!?!? ]

 

 [ラスボスです]

 

 [ならそのルールってのまだ聞いてないよなァ!!!! ラスボス限定のルールっていったい何なんだァあぁあぁあ!!? 教えてくれェミッドナイトォ!!!! ]

 

 プレゼントマイクからのパスが繋がり、ミッドナイトがマイクを握る。

 

「まず、全種目共通の限定ルール!! 彼女、結依魔理沙の使える魔法の種類と数は、それぞれのテーマに従って決められるわ!!」

 

「それらのテーマは試合ごとにランダムに変わるから、毎試合異なる彼女の姿が見れるわ!!!」

 

 ミッドナイトが手を掲げると、魔理沙専用の制限ルールに関する情報がモニターに映し出される。

 

 テーマは10種類。『ALL』『無し』『不死鳥』『糸』『空気』『音波』『魔眼』『舞闘』『四大元素』『禁断』である。

 

『ALL』は全能力使用可能、種類制限無し。『無し』は全能力使用不可。『四大元素』は火、水、風、土属性の魔法のみ使用可能。種類制限無し。『禁断』はチート能力のみ使用可。ただし別途10種類のテーマからランダムに決定する。

 

 残りはそれぞれのテーマに関係する能力のみ使用可能。種類制限はテーマごとに異なる。

 

「ではさっそく、障害物競走における彼女のテーマを決めましょう!!!」

 

「ルーレット、スタート!!!」

 

 ミッドナイトの合図に応じ、モニターの中のルーレットが回転する。

 

「ストップ!!!」

 

 決定されたテーマ。それは……

 

「"不死鳥"!!!!」

 

 ミッドナイトの宣言と同時に一部盛り上がる会場。しかし大多数は未だ状況に追いつけておらず、テーマという概念も、不死鳥も何も分かっていない。

 

 ただおそらく彼女は、魔法で何でも出来る。その、"何でも"の部分をテーマが指定している。と、観客は感覚的にふんわりと理解した。

 

 ……普通に考えれば紛れもなく化け物だが、残念ながらここは雄英体育祭。逸る熱に浮かされ、ほとんどの人が気づかない。

 

「次に障害物競走限定のルール!! 彼女は他の生徒とは別に、あの大きな箱の中からスタートするわ!!!」

 

 再びモニターに映像が映る。それは、ドローンによる空中からのライブ映像。障害物競走のスタート地点の傍に、やたら大きく、白く長い豆腐ハウスが置かれていた。

 

((何アレ……?))

 

 生徒全員の心の中に疑問符が浮かび上がる。当の魔理沙も、あの中で何をやるのかは聞かされていない。見た目は白だが中身はブラックである。

 

「これでルール説明は終了よ! みんな位置につきなさい!!」

 

 ミッドナイトの指示に従い、生徒たちはスタート地点へと向かう。

 

「オイ」

 

 移動の途中、誰かが魔理沙を呼び止める。振り返ると、しかめっ面の爆豪がいた。

 

「……爆豪」

 

「テメェ、さっきのは何だ」

 

 胸ぐらを掴まれる魔理沙。そんな一触即発の状況でも、魔理沙はやや不服そうに答える。

 

「……私がマジ本気出したら人が死ぬでしょうが」

 

「そんなことはどうでもいい。……テメェ、あン時の約束忘れてねェだろうな」

 

 そう聞かれ、魔理沙は思い返す。幼少期に、爆豪と決闘したあの日を。

 

「制限はあっても、お前の顔面ぶん殴るのに手加減はしないよ」

 

「……チッ」

 

 爆豪は舌打ちしながらぶっきらぼうに手を離し、障害物競走のスタート地点へと向かっていく。

 

 魔理沙は着ているジャージのシワを直した後に、後ろから爆豪に声をかける。

 

「じゃ、上で待つよ」

 

「黙れ。"俺が"上で待つ。テメェが下から登ってこい」

 

 爆豪は一瞬だけ振り返ってキレ散らかし、再び歩き出した。そんな様子を見て、魔理沙は一泊置いてから溜め息をついた。

 

「……ホントお前だけだよ、ここまで私に食ってかかれるの」

 

 誰もが恐れ慄く最強に、唯一といっていいほど勝気でいる、幼なじみの爆豪勝己。

 いつまでも折れない彼を見ていると、心做しか安心する。

 

 その後、魔理沙はスタッフの案内に従い、箱へと向かっていった。

 

 

 

 






【結依魔理沙・体育祭限定ルール】

結依魔理沙は、各テーマに沿った魔法(能力)のみ使用できる。各テーマごとに制限内容が異なる。また、試合を行うごとにルーレットを回し、ランダムにテーマを決定する。決定後、その試合が終了するまで、他の魔法や能力を使うことは禁止である。

また、結依魔理沙はサポートアイテム(武器・防具等)の申請を行わなかったため、それらの使用は禁止。

以下、各テーマ内容。

●ALL
→全能力使用可能。種類制限無し。相手は死ぬ。

●無し
→全能力使用不可。武技・格闘術の使用も不可。ただし太極拳等の周知の格闘術は使用可。ほぼ素手。

●不死鳥
→不死鳥・および不死鳥っぽい能力のみ使用可。種類制限無し。

●糸
→糸系能力のみ使用可。種類制限無し。

●空気
→空気・大気に関係する能力のみ使用可。ただし竜巻等の暴風系は禁止。

●音波
→音・声にまつわる能力のみ使用可。ウタウタの実禁止。

●魔眼
→魔眼・目にまつわる能力のみ使用可。ギアス禁止。

●舞闘
→武技・武術のみ使用可。ただし素手、素足などの身体を使った武技、武術のみ。

●四大元素
→火、水、土、風の4種類の属性魔法を使用可。種類制限無し。

●禁断
→チート能力のみ使用可。ただし10種類のテーマの中からランダムに決定される。以下、10選(ぼかし有り)。

『境界』『時間』『完全生命体』『重力』『光』『召喚』『闇』『真実』『太陽』『言霊』









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