最強の魔法使い(自称)が暴れるそうです。RE:   作:マスターチュロス

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【あらすじ】

 『食べた相手の能力をパクる能力』、それが自分の個性であること知った結依魔理沙は、同級生の髪の毛を食すことで新たな個性を獲得していく。
 そんなある日の夕方、多古場海浜公園にて謎の宗教組織が女性を襲う事件が発生。悲鳴を聞いた以上助けにいこうとしたが、プロのヒーローがごまんといる世の中において素人の自分が助けに行く意味と、自身の立場を考慮した結果、魔理沙はなくなく助けに行くのをあきらめてしまう。
 しかし魔理沙のボディガードらしき人から「訓練だ」と告げられた魔理沙は、よく分からないまま海浜公園へと向かう。そこで白装束の男が女の人を襲う場面に出くわした魔理沙は、物陰からタイミングよく飛び出した後すかさず男が持っていた凶器を光弾で撃ち落とし、上空からかかと落としをお見舞いするのだった。




朽ちた神剣さん☆9評価ありがとうございます。

ぼるちるさん☆4評価ありがとうございます。




まだ始まったばっかなのになぜ決死の戦いをせねばならぬのだ(3話)

 

 

 男の脳天にかかと落としが炸裂し、顔面を勢いよく地面にぶつける。男の折れた鼻からは大量の血が流れ、男の周りに血溜まりが形成される。

 あまりにもスマートな決着に魔理沙は少々興奮してしまう。練習の成果を身に染みて実感できた。

 

「··········女の、子? それも·········幼稚園児?」

 

 先程まで腰を抜かしていた女性が私の方をジロジロと見た後、ゆっくり私の方に近づいて頬に触れる。お姉さんの手はとても温かく、やわらかい手をしていた。

 

「どうしてこんな危ないことしたの?」

 

 お姉さんは私の目を真っ直ぐ見つめながら、心配そうな声で問いかける。しかしそう言われても、訓練だからとしか言いようがない。

 お姉さんのリアルな演技に押され、魔理沙は無言で目を逸らしてしまう。·········これ、本当に演技か? それとも私を困らせるためにわざと言っているのか、全く分からない。

 私は顔を逸らしながら、お姉さんの傷ついた体をベホイミで癒していく。擦り傷も、銃撃による傷もみるみる消え、透き通るほどに美しい肌へと変わっていく。

 

 そんな最中、血まみれの男は震えながら手を伸ばし、杖格納型簡易レーザー銃を手にする。男はまだ意識を失っておらず、気合いと根性でこの世にしがみついていた。

 

「··········このっ、ガキィッ!!!」

 

 男は容赦なくトリガーを引き、結依魔理沙の右のもも足をレーザーでぶち抜いた。

 

「ぐッ!?」

 

「どっ、どうしたの!?」

 

 痛みを抑えるためにしゃがみこみ、傷口を手で抑えようとする結依魔理沙。その様子を見てお姉さんはアタフタと焦ったが、足の出血とさっきの男が目に入った瞬間、お姉さんは咄嗟に魔理沙を自分の背後に回した。

 

「子どもになんてことするの!!!」

 

「··········あれが、子ども? クックック·········、その子は子どもなんかじゃあありません。我々に仇なす異形の子········化け物ですよ」

 

 男はべっとりと顔面に鼻血をつけたまま、杖を持ってゆっくりと立ち上がる。男の形相は鬼のように凄まじく、さきほどまでの雰囲気からガラリと変化していた。

 

 それはまさに、人間が本気で誰かを殺そうとするときの目と表情であった。

 

「退きなさい。貴女よりも先にそこのガキを殺します」

 

「··········私が、みすみす子どもを見捨てるような人間に見える?」

 

「では、貴女もろとも殺します」

 

 男が再び銃のトリガーを引こうとした瞬間、お姉さんは私を突き飛ばそうとして手を出したが、私はそれをスルリと避けた後、逆にお姉さんを突き飛ばした。

 

「⋯ッ!? ダメッ!!!」

 

 男はニヤリと笑いながらトリガーを引き、射出されたレーザーが容赦なく結依魔理沙の体を撃ち抜く。さらに男は彼女を確実に殺すべく、何度も何度もトリガーを引き続け、体が蜂の巣になるまでレーザーを射出し続けた。

 

「嫌ぁぁあぁあああああああああああ!!!!!」

 

 あまりにも惨い仕打ちに目も当てられず、お姉さんは体を丸くしてうずくまってしまう。

 私のせいであの子は巻き込まれ、そして死なせてしまった。その耐え難き現実が、彼女の心を深く抉った。

 

「クックック、大人に逆らうからこんなことになるんですよ」

 

 男は至極満足そうに笑い、彼女の無惨な死体に目を向ける。が、そこにあったのは結依魔理沙の死体ではなく、緑色の謎の人形だった。

 

「何ッ!?」

 

 撃ち殺したと思いきや、撃ったレーザーは全てその人形が身代わりとなって受けていた。その事実に気づいた男は再び周りを見渡したが、魔理沙の姿は見つからない。

 

「上かッ!?」

 

 さきほどの奇襲を考慮して空を見上げたが、そこにも魔理沙の姿はない。彼女はいったい何処に消えたというのか、男は必死に考え、そして閃いた。

 

「··········下だな?」ニチャア

 

「違うよ?」

 

 男が下を向いた瞬間、背後から人の気配を感じた男は咄嗟に振り向こうとした。だが先にバイキルトで強化した結依魔理沙の蹴りが男の金的弱点にあたり、さらに魔理沙は個性"炸裂"を発動させることで男の金○を炸裂させた。

 

 絶叫、としか言いようのない悲鳴が海浜公園中に響き渡り、男は痛みのあまり杖を落としてしまう。魔理沙はその隙に杖を奪い、個性"鉄塊"を発動させる。

 個性"鉄塊"は鉄を丸い塊に変える能力。鉄は合金の材料として利用されることもあるから、おそらくこの杖も曲げられるはずだ。

 魔理沙が杖に力を込めると、杖はアルミホイル並に柔らかくなり、グチャグチャに丸められて鉄の塊に変化してしまった。これでもう男は攻撃手段を失ったことであろう。

 

「がぁッ!! ··········あぁッ! ···············ぁあッ!」

 

 男は何かを訴えようとしていたが、痛みのせいで全く言葉になっていない。よく分からないがこれ以上動かれても困るので、魔理沙は男の手足を縛ろうとした。が、その時、結依魔理沙の視界がグラりと揺らいだ。

 

「は?」

 

 こんな時に立ち眩みするとは思わず、魔理沙はバランスを崩し、膝を地面に着く。そして咄嗟に右手で鼻を押え、何かが溢れるのを止めようとしたが、止めきれなかった。

 魔理沙は自身の右手を見ると、そこには鼻血がべっとりとついていた。

 

 何でだ。何をされた。この男の個性か何かだろうか。いやしかし、さっきから頭が沸騰しそうな程に熱く、常時トンカチでガンガンぶん殴られているような痛みを感じる。何と言うか、風邪をひいたかのような感じだ。

 

 そんなことよりも、今のうちに男の手足を縛っておかなきゃまた暴れられる。そう思った魔理沙は魔法でロープを取り寄せ、お姉さんにも一本ロープを渡した。

 

「···············手伝って·······」

 

「ッ! ··········分かった!」

 

 魔理沙の意図について察したお姉さんはさっそくロープを持ち、悶絶中の男に近づく。ただ残念ながら我々は一般市民、人の縛り方なんて知らない。どういう結び方をすればいいのか見当もつかない。

 

「えーと·····えーっと! 人の··········結び方··········!」

 

 お姉さんは必死にネットの検索エンジンで人の結び方について調べる。ただこれ以上時間をかけるわけにはいかないと感じた魔理沙は、足だけでも縛っておこうと男に近づいた。

 

「馬鹿め」

 

 男は両手を地面を強く叩きつけると、2本の刀が地面から勢いよく射出され、魔理沙の両肩を貫いた。

 ただでさえ頭痛が尋常じゃないのに、さらなる痛みが魔理沙を襲う。

 

「化け物の子よ、油断したな? クックック··········私の個性"武器創造"は手を地面に触れることで発動し、強く叩けば叩くほど素早く生成される。が、その代わりに質は落ちてしまうがね」

 

 男は股間を抑えながらゆっくりと立ち上がり、再び地面に手をつける。すると地面から2m級の巨大な大剣が出現し、男はそれを気合いと根性で担いだ。

 

「はァッ! ··········はぁッ···············私の、体はもう··········ボロボロだが、せめて··········はぁッ··········キミだけでも、道連れに··········させてもらう··········」

 

「全ては···············尊きサナエ様のために」

 

 男は最後の力を振り絞り、剣を構えて一気に突進する。火事場の馬鹿力としか言いようがないパワーに我ながら驚くが、尊き神が私に力を貸してくれているのだと理解した。

 男は大きく息を吸い込み、全てを神に捧げる勢いで剣を振り下ろした

 

「死ねえええええええええええ化け物おおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」

 

 自分の身長よりも遥かに大きい鉄の塊が脳天目掛けて振り下ろされ、絶体絶命のピンチに陥る魔理沙。

 もうかなり限界だが仕方がない。アレをやるしかない。

 

「ザ・ワァァァァアアアアアアルドッッッ!!!!」

 

 

 

 

 魔理沙以外の全ての時間が停止し、あらゆる物理的なエネルギーが息を止める。

 男は大剣を振り下ろす途中で停止し、一切身動きが取れない。いや、時間が止まっている以上、動けないことすら認識できていない。それすなわち、"死"を意味する。

 

 ··········いや、流石にそれはマズイので寝てもらおう。

 

 魔理沙は拳を強く握り、黄色いスタンドと共に男の真正面に立つ。そして大きく息を吸い込んでから、ゆっくりと吐いた。

 

「昔から夢だったんだ、もしスタンドが使えたら何をしようかなって··········」

 

「これだね」

 

 筋骨隆々の黄色いスタンドが拳を構えると、結依魔理沙は再び大きく息を吸い込み、一気に吐き出した。

 

「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄ァッッ!!!!!」

 

 目に見えないほどの速さで繰り出される拳の連続。その一撃の重さは人の生体組織を粉砕するには十分で、数発食らうだけで人は再起不能になるだろう。

 しかし、時が止まった世界においてはそうとは限らない。あらゆる物理的な力が停止している以上、どんなに強く殴ろうが相手は吹っ飛ばないし、死ぬことは無い。

 

 だが撃ち込まれた破壊のエネルギーは男の中に確実に蓄積しており、今か今かと解放のときを望んでいる。このとき、もし時間が再始動したら、この人はどうなってしまうのか。それを今からお見せしよう。

 

「時は動き出す」

 

 

 

 

 時間が息を吹き返し、全てのエネルギーが再始動した瞬間、剣を振り下ろしていたはずの男が盛大な破裂音とともに後方へ吹き飛んでいった。

 

「はグわぁぁぁああああああああああああッ!!!!!」

 

 何をされたのか理解出来ぬまま、男は海浜公園に積み上げられたゴミ山の方まで吹っ飛び、そして頭から突き刺さってしまう。金的弱点を蹴り上げられてもギリギリ耐えるほどの根性の持ち主だったが、流石にザ・ワールド(近距離パワー型スタンド)のラッシュには耐えきれなかったようだ。

 

「あっ」

 

 ブツッと、何かが途切れたような音が聞こえた瞬間、私の意識が一気に遠のいていく。

 まだあの男の足も結んでないし、お姉さんを遠くに逃がしてもいないのに倒れるわけには··········と思ったが、よくよく考えればこれは訓練。あくまで練習である。

 

 あまりにリアル過ぎて途中から忘れていた··········

 

(··········もう、無理)

 

 ギリギリまで意識を保とうとしたが耐えきれず、魔理沙も同様に気絶してしまう。

 

「··········ッ大丈夫!? ねぇ! 聞こえる!? 起きて!!」

 

 既にスマホを投げ捨てていたお姉さんは倒れた魔理沙に近づき、意識があるか試してみたがピクリとも動かない。

 

「鼻血が··········! このままじゃ窒息しちゃう!」

 

 お姉さんは魔理沙の頭を地面から少し持ち上げ、気道を塞がないよう頭を自身の膝に乗せる。しかしこのまま寝かせたままにするわけにもいかないため、お姉さんは体勢を維持したまま投げ捨てたスマホを拾い直し、病院に連絡を取ろうとした。

 が、その手は黒い防護服を着た人達によって止められた。

 

「ッ! 助けてください! この子が大変なんです!!」

 

 お姉さんは魔理沙を抱えながら必死に訴えたが、防護服を来た人達は全くに意に介すことなく、仲間内で何か話し合っている。

 

「Get a car ready. We'll retrieve this girl」

 

「What about this woman?」

 

「··········Take them with you. I'll give you a proper explanation later」

 

 黒い人達は話終えると、さっそくお姉さんと魔理沙の身柄を拘束し、車の方へ連れていく。

 

「ちょっと! 離してください!!」

 

 乱暴に引っ張る手をひっぱたき、この場から逃れようとしたが、プロの手刀が首に直撃。お姉さんはあえなく撃沈してしまう。

 

「Also, get that guy in custody. I'll hand him over to the Jp police」

 

 リーダーらしき人の指示により、魔理沙に吹き飛ばされた男も回収された。

 

 そして黒服の集団は3人を車の中に詰め、海浜公園からたち去っていくのだった。

 

 

 

 

 

 






2023/4/18、話の内容がガッツリ変更されました。


いろいろ紹介

『みがわり』
→自分の体力を削って緑色の謎の人形を呼び出す技。このとき、魔理沙は変化技を受け付けなくなる。

『■■■■』
→とある宗教組織で崇められている神の名前。頭痛のせいで聞こえなかった。

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