最強の魔法使い(自称)が暴れるそうです。RE: 作:マスターチュロス
【あらすじ】
→本編にあるので省略ッッ
【保須市 ── 固有結界内 ──】
雄英体育祭が激戦を迎えている頃、保須市では警察組織による厳戒態勢が敷かれ、プロヒーロー連続殺人の容疑者、ヒーロー狩りステインの拘束に動いていた。
その中心として、ステイン確保に名乗り上げたのは公安委員会所属のプロヒーロー『結依魔理沙』。彼女は今現在体育祭で活躍している結依魔理沙(本物)の"分身体"であり、ステインの暴行を止めるべくして現れた、ヒーロー側最強戦力である。
分身体結依魔理沙はステインと交戦した後に固有結界を発動。半径20kmにも及ぶ巨大な結界を構築し、結依魔理沙とステインのみが存在する世界へと作り替える。
この結界は保須市の街並みを丸ごとコピーした上で、現実世界とは次元の位相がズレた位置に存在する独立した空間となっている。すなわち、この空間内で起こった出来事は一切外に影響せず、逆にこの空間内であれば一切外からの影響を受けないということ。
つまり、このコピー空間内では街ごと吹き飛ばす攻撃をしたとしても建造物損壊罪や器物損壊罪にならず、通行人も存在しないので人質を取られるような心配もなく、気軽に悪魔じみた力をブッパできるのである。
そんなガン〇バルびっくりの無法地帯と化したエセ保須市にて、ステインは一方的に結依魔理沙から攻撃を受けていた。
受けていたのだが……
「ハァ……ハァ……、お前、いったい幾つの個性を持っているんだ……? そんなに個性を抱えて……よくまともに生きてこられたものだな……」
私の目の前に立っていた者は、人ならざるなにかであった。
「そりゃどうも。まともに生きたと胸張って言える自信はないが……、それよりお前こそなんなんだ。手足縛って集中砲火したのに何でピンピンしてるんだ」
魔理沙は震えながら立ち上がるステインを見て、猛烈に衝撃を受けていた。
ただの人間が、結依魔理沙のありとあらゆる魔法の爆撃を受けた上で立ち上がってくるという事実に、逆にこっちの体が固まって動けなくなる。
確かに、多少の手加減はした。流石にブッ殺して遺体縛ってからのリザレクションは倫理的に問題がある気がするので、そこそこの威力で常人が気絶する程度の魔法を5000発ほどブチ込んだ。
にも関わらず、この男は気絶することなく何度も立ち上がった。その薄暗い瞳の奥でナニカを燃やしながら、何度も目を開き、魔理沙に鋭い視線を向ける。
100%おかしい、そう魔理沙が思う中、ステインが口を開く。
「その質問に答えることはできない。俺自身でさえ理解していないものだからな……」
「だが、
ステインの動きに魔理沙が静かに反応する。魔理沙の警戒心は常にピークであり、1フレームレベルでステインの行動を目と脳で精査している。
ステインは魔理沙の反応を見て、不気味にニヤケる。
「今の俺を突き動かしているのは、お前のような贋作から正しき社会を守るという、揺るぎない俺の『正義』によるものだと、俺は確信している」
「お前のような『贋作』ごときに、俺は屈しない。俺は必ず、この腐りきったヒーロー社会を粛清し、正しき世をつくる。それが俺の成すべき正義であり、宿命だ」
ステインは自分の滅茶苦茶にへし折られた愛刀を地面に置き、『正義』を宿した瞳で魔理沙を射抜いた。
ステインの肉体は広範囲にわたる火傷で皮膚が爛れ、顔の半分が凍傷によって壊死し、左腕は脱臼と複雑骨折であらぬ方向に腕が折れている。
見るからに瀕死である。少なくとも、彼はピンピンではない。ここまでするつもりは無かった、なんて言い訳したら裁判所からビンタされそうだが、それはそれとしてステインは何故か意識を保てている。
これが『正義』一つでどうにかなる事象とは到底思えないのだが、心当たりがあるとすればただ一つ、『異形因子』だ。だがステインと私はほんの数十分チャンバラしただけの関係であり、爆豪や緑谷くんほど長く付き合ってきたわけではない。
(……
爆豪とステインに共通するもの、それは私との長期間の接触ではなく、外的要因による重度の
まず爆豪は私の存在と緑谷くんの成長という二重苦に苛まれ、幼少期から蓄積していた感情が極限にまで煮詰まった結果、異形因子に適合しより強大な爆発力を得た。
そしてステインは、贋作の私から一方的に攻撃を受け、自分の正義が失われかねない状況に晒されたことで、不死身のような力を得た。
(全部私のせいじゃねぇか!!!)
ことある事にトラブルの種をばら撒く女、結依魔理沙。撒いたら撒いた分以上にたくさんのトラブルを解決しているつもりではあるが、厄災であることに変わりない。
魔理沙が心の中で一人ツッコミする中、ステインが戦闘態勢に再び移行する。
「さて、第二ラウンドといこうか。雄英生徒」
そう宣言するステインに魔理沙は何とも言い難い表情する。第二……第二だろうか。もう最終ラウンドといって差し支えない気がするのは自分だけなのか。
ボロボロのステインを前にして、魔理沙は何の変哲もない刀を取り出し、構えた。ステインは何も持ち合わせていない。
ステインはただ姿勢を低くし、肩幅と同程度に足を広げ、利き足を前に出している。
「俺とお前、どちらの正義が正しいか……証明してやる」
「……」
ステインの凄まじい覇気に気圧され、刀を強く握りしめる。魔理沙の剣技は、魔法や徒手空拳に比べてあまり洗練されてはいないが、少なくともこの世界において魔理沙より剣を扱える人間はごく僅か。多く見積って片手で数えられる程度と思われる。おそらく。
剣は間合いを維持する上で最強……ではないが、ある程度懐に入られてもどうにかなるのが剣だ。仮にステインが拳銃を持っていたとしても、魔理沙ならゼロコンマゼロゼロゼロイチ秒で銃身を切り刻むことが出来る。
負ける可能性はゼロ。それで間違いないはずだ。
「ハァ……、いい構えだ。じゃあ……こっちから行くぞ」
ステインは一瞬のうちにして姿を消し、魔理沙との距離を詰める。なお並外れた動体視力でステインの姿を捉えた魔理沙は、まず途中の足蹴りによって飛ばされた小さな瓦礫を剣の峰で弾き、その隙に背後に回ったステインに対し魔理沙は瞬時に振り向き、低く放たれた蹴りに対して魔理沙は素早く刀を振り下ろした。
一瞬の攻防、その刹那の中で魔理沙はステインの攻撃を見切ったはずだった。しかし魔理沙が振り下ろした刀の先にステインの足は無く、引き戻された足と入れ替わるように現れたもう片方の足が、魔理沙の刀を蹴りで打ち砕いた。
刀の破片が体に突き刺し、さらに追い討ちをかけるように右拳が魔理沙の左胸を穿ち、後方へ吹き飛ばす。
魔理沙は後方に向けて
予想を遥かに超えた動きに魔理沙は驚きつつも、次のステインの動きに注目する。だがステインはその場から動かない。
当の本人も自身の変化に驚いているのか、ただ一心に、自身の手足を見つめていた。その身体はボロボロにも関わらず、今までの自分を遥かに超える力を発揮し、そしてなおそこに存在する。
『正義』が、絶対的な『正義』がそこにある。社会を正す正義の力、それが自分に宿っていることを確信し、心から打ち震える。
「全ては、正しき"社会"のために」
「超位魔法発動、『
ステインが歓喜している中、魔理沙は容赦なく超位魔法を発動し、ステインを跡形もなく消し飛ばした。もう既に魔理沙の警戒レベルはいつぞやのクローン人間*1と同レベルに達しており、これ以上の様子見は無駄だと察したのだ。
ただし、超位魔法は発動までに時間がかかる。したがって魔理沙はとあるアイテム*2を使用することで詠唱時間を超短縮し、ほぼ無詠唱で解き放ったのである。
ズガドォォォォォォォォォォン!!!!
ただでさえ瓦礫まみれで荒れ果てた地形をさらに粉々に吹き飛ばし、直径約100Mのクレーターが形成される。
これまで手加減で使っていたどの魔法よりも遥かに強力で、ケタ違いな威力を誇る超位魔法。余程の相手でなければコレ一発で相手は消し炭となり、灰すら残さない。
「……最悪の気分だ」
魔理沙は今日一の溜め息をつく。結局、魔理沙は圧倒的な暴力で人を殺めてしまった。たとえ私がこれから先、数十億人の人間を救ったとしても、法律上魔理沙は殺人犯であり、悪である。
しかし彼女の頭の中では既に、時間の部分的巻き戻しによるステインの修復を考えていた。そこに葛藤はなく、ただ起きてしまったことへの対処にだけ注力する魔理沙の姿があった。
これが、結依魔理沙という名の
私はヒーローではない。でも誰よりも人を救う力がある。
そして誰よりも人を殺す力があり、そして人を蘇生する力もある。
(結局私は、何……?)
頭に過ぎる疑問を押しのけ、目の前のことだけ考える魔理沙。とりあえず本当にステインが爆死したかどうか確かめる必要がある。
「これで生きてたらホラーだろ……」
瓦礫と化したビル群の上を歩き、慎重に爆心地へ近づいていく。
「……いねぇ」
塵も残さず消し飛んだか。いや、まだ結界内に魂の気配を感じる。少なくともこの場所では無い。魂は基本的に動き回らず、動く時はたいてい天に召される時か、性質が変化して霊魂やら怨霊やらに変化した時くらいである。
つまり、ヤツは死んでいない。超位魔法の爆発に乗じて姿をくらましたのだ。
「ん」
魔理沙は指でクイッと持ち上げる動作をすると、周囲の瓦礫が根こそぎ空中に打ち上げられ、フヨフヨと浮遊する。魂の気配は結界経由で感知しているが、具体的な位置を割り出すには情報がなく、難しい。
だが生物なら常時何かしらの波長を出し続けているので、『波長を操る程度の能力』を使えば探知が可能。またスキル『万能感知』でも周囲の生体反応を探知できる。
魔理沙は結界内全域に『波長を操る程度の能力』と『万能感知』による二重チェックで生体反応を探知し、その結果、南南西方向に約230Mほど離れた地点にて反応を感知した。
魔理沙はすぐ魔法陣を展開し、反応をキャッチした地点に無数の鎖を飛ばす。
だが鎖を出すと同時に、正面から2本の投げナイフが飛んでくる。
「危な」
不意打ちに気づいた魔理沙は2本とも素手で叩き落とし、ホッと一息つく。幸い、鎖は相手の四肢に巻き付き、完全に身動きを封じている。
「……マジでどうなってんだお前。直撃ではなくとも相当痛いはずだろ……」
ギチギチと擦れ合い、限界まで引き伸ばされる鎖。その様子から察するに、ステインは相当力を余している。
(いや馬鹿な……)
もうこれ以上ないほどにダメージは与えている。与えているのに、一切の怯みを見せない。
「……はい?」
鳴り響く異音。その正体に魔理沙は気づき、驚く。
ステインが、鎖を引きちぎろうとしている。その有り余った力を振り絞り、まるで意味がないと言わんばかりに、拘束から抜け出ようとする。
鎖が魔法陣ごと砕かれ、魔力として空気中に霧散していく。そして向こう側では爆発と共に周囲一帯の瓦礫が吹き飛び、煙を撒き散らしながら何かが現れる。
「雄英生徒ォ……!」
「ッ!?」
いつの間にか、ステインは魔理沙の背後に回り込み、ナイフのようなナニカを差し向ける。
魔理沙は咄嗟に
しかし出血はせず、傷すら付いていない。にも関わらず、魔理沙は歯を食いしばるほどの激痛に襲われ、まるで
(今のは……ッ!)
視界が歪む中で魔理沙はステインの異常な攻撃に察しがついた。それはアクセラレータを発動していたから……ではなく、先ほどから訴えかけているこの感覚が教えてくれたからだ。
(精神……いや、
魔理沙は一瞬でこの攻撃の正体を見破り、そして必死に、今にも脆く崩れそうな魂を繋ぎ止める。
私がナイフだと思っていたもの、アレは私の魂が反射的にスキルを発動し、視覚的に見えるようになっていただけの、ただの『錯覚』。実際のステインの手には何も握られておらず、傍から見ればただの空振りにしか見えない。
要するにエア斬撃である。……どこかで見た事があるような気がするが*3、おそらくアレと同じ類いのもので、『殺気』をナイフの形にして私の魂を切りつけたと考えられる。
(その手の攻撃は基本効かないはずなんだけどなぁ……)
結依魔理沙の外殻は物理耐性のみならず精神攻撃耐性も非常に高い……と自負していたが、その伝説はあの攻撃と共に脆く崩れてしまった。
何はともあれ、これ以上くらうと魂の形を維持できず、廃人になってしまう。そうなる前に対処すべく、魔理沙は蹌踉めく体を足の踏ん張りで抑え、体勢を立て直した。
だが目の前の光景が異様すぎて、魔理沙はただただ唖然とする。
ステインは力だけでなく、容姿も完全に変貌していた。全身から黄金色のオーラが溢れ出し、手には光り輝く刀が握られ、武神のような覇気を放ちながらその場所に存在している。
「……ステイン」
魔理沙はその名を口に出し、噛み締める。それは本当に彼を指す言葉なのか、疑わしいほどに生まれ変わってしまった彼を見て、魔理沙は戦慄する。
「今のを受けて死なぬとは、改めて貴様の異常性が分かる」
「貴様は、この世にいてはならない"害悪"だ」
再び鋭い殺気が光の刃となって魔理沙に襲い掛かるも、魔理沙は紙一重で回避する。
「お互い様」
魔理沙は即座にベクトル操作で凝縮した光と魔力の集合体を、手で薙ぎ払うと同時に解き放つ。
それはさながら
しかし、何故かステインの体は半分に割れず、傷だけを残してその場に立ち続けていた。
「……なんでぇ?」
その異様すぎる光景に思わず言葉が漏れる魔理沙。間違いなく切り裂いたはずなのに、相手は死ぬどころか倒れもしない。いったい何が起きているのか。
その直後、有能スキル『大賢者』から衝撃の報告が入る。
〔警告⚠️強化個体『ロード・オブ・
「……は!?」
〔変換効率は、およそ98.8%と試算。〕
驚きを隠せない魔理沙。いつの間に解析していた大賢者もさることながら、その驚くべき力の正体に魔理沙の脳ミソに混乱を招く。
(だとしても化け物すぎるだろ!!)
魔理沙は心の中で思わずツッコミを入れる。それもそのはず、一撃で肉体が滅びる攻撃を精神ダメージに変換したところで、今度は精神が崩壊して廃人になるだけの話である。
それだというのに耐えている。ということはつまり、ステインの精神強度は肉体よりも遥かに高いということになる。そんなことある?
「……貴様、何をしている?」
ドスの効いた声で聞かれ、魔理沙はビクッと反応する。
「……考え中」
「俺を前にして随分と余裕だな」
「……いや違うって。余裕じゃないから考えてるの。マジで割と普段適当に戦っても勝てるから改めて対策を……」
「そんな暇があるとでも?」
ステインの殺気の刃が横一線に薙ぎ払われるも、魔理沙は一瞬でしゃがんで回避する。
「あるよ」
魔理沙は回避した後にバックジャンプし、距離を取りながら八卦炉を構える。
「魔砲『ファイナルマスタースパーク』」
魔理沙の視界全てを覆うほどの超極太レーザービームがステインの影を丸ごと飲み込み、跡形もなく消し炭にする。
魔理沙は考えた。
この一撃でだいぶ削れる、そう読んで放ったファイナルマスタースパークだが、事はそう上手くはいかない。
なんとステインは真正面から
「ッ!!」
痛みで思わず手を引く魔理沙。その拍子に八卦炉を落とし、魔力供給が絶たれたことで光線が消滅。そしてステインが真っ向から距離を詰めた。
魔理沙は精神エネルギーの集合体である
(魂以外は軒並み透過すんのか……ッ!!)
魔理沙は瞬間移動で瞬時に離れ、ステインの前から完全に姿を消してしまう。
「何処に消えた……?」
見失うステイン。360°見渡しても、魔理沙の影も形もなく、ただ瓦礫と化した街だけが広がっている。
空からの奇襲……も考えたものの、魔理沙の姿は見つからない。
「臆病者が……」
ステインが悪態をついた瞬間、それを千里眼で把握していた魔理沙が衝撃の戦法に出る。
「ザ・ワールドッッ!!!!」
ブゥゥゥゥゥゥゥゥゥンッッ!!!
訪れる静寂。運命の歯車が急速に停止し、息を止めるように時間が停止する。
停止時間、わずか5秒。それが『ザ・ワールド』の限界であり、弱点である。
たった5秒しか時を止められないので、相手を一方的に攻撃するには至近距離での発動が必要である。だがしかし、
魔理沙にとって"5秒"とは、十分過ぎる時間なのである。
今、この小説を読んでいる人全員が思った、『セコい』と。
また、この小説をよく読んでいる人はこうも思っているだろう、『舐めプしてやがる』と。
うん、正解。
悪態をついた直後、突如ステインの精神に尋常ではないほどの負荷がかかる。
それ即ち、
(何が起きている……?)
未知の現象。明確に攻撃されているにも関わらず、相手の姿が一切見えない。
再びステインの精神に負荷がかかり、反動で吐血する。
「何が……!」
未知の現象。繰り返す不可解の中、ただ棒立ちするしかないステイン。
どこから攻撃が来るか、警戒は常にしている。だがその攻撃は既にくらっており、魂に深いダメージを与えている。
「何……
再び襲いかかる負荷にステインは耐えきれず膝を着き、再び血を吐き出す。
こんな、理不尽な攻撃が存在するものなのか。一方的に、そしてその攻撃の正体すら悟らせず、反撃の余地すらも与えない暴力。
(俺の……『正義』が……ァッ!!)
消える。そう悟った瞬間、"絶望"の魔の手がステインの精神を一気に消耗させていく。
「全ては正しき"社会"の"ォ……ッ!!!」
To Be Continued...
【紹介コーナー】
●課金アイテム
→『オーバーロード』に登場する課金アイテム。見た目は砂時計であり、使用すると超位魔法の詠唱時間を短縮し即時発動できるようになる。
●ロード・オブ・ステイン
→異形因子と適合し、精神が覚醒したステイン。殺気を形にして魂に直接攻撃する能力を得た他、あらゆる物理ダメージを精神ダメージに変換する力も獲得した。なお、その他にもう一つ能力を獲得している。