最強の魔法使い(自称)が暴れるそうです。RE: 作:マスターチュロス
【あらすじ】
雄英体育祭最終種目『ガチンコタイマン勝負』第二回戦、結依魔理沙は見事、常闇踏陰を下し、3回戦に進出するのであった。
【雄英体育祭── A組観客席 ──】
常闇VS魔理沙の戦いが幕を終え、一息つくクラスメイトたち。
「それにしても、アイツ強すぎじゃね……?」
上鳴がふと、感想を漏らす。
「今に始まったことじゃねぇけど、やっぱ制限あって正解だよなぁ……全力のアイツとか、想像したくない……」
震える上鳴に対し、切島が肩を叩く。
「まぁまぁ、先の不安を考えたってしょうがねぇよ。今は、次の戦いに集中しようぜ」
「切島くんの言う通り! だが次の相手は僕だということを忘れずにな」
ビシッと、賛同ついでに宣戦布告する飯田。そして即、席に座った。
「さて、次の戦いは……」
「デクくんと、轟くん……!!」
お茶子が興奮気味に口を開く。
「クラス最強候補同士の戦いか……なんかワクワクするな!」
「……」
切島が同意を求めるも、爆豪は口を開かない。
ただ真剣に、試合風景に目を向けていた。
■
舞台から立ち去り、観客席に向かおうとしていた魔理沙だが、その途中にて意外な人物と遭遇した。
(エンデヴァー……!!)
轟焦凍の父親、エンデヴァー。その数多の実績と数多くのサイドキックを従え、日本でナンバー2の実力を持つ男。
その一方で、彼はオールマイトを超えるために子どもをこさえ、過酷な訓練を子どもに施し、家族仲を引き裂いた男でもある。
なかなかに闇深い経歴の持ち主だが、強さを追い求めるという点に関しては私と同類だし、その強さの代償を他の人間に支払わせているという点も、似ているかもしれない。
彼の野望と、轟くんの遺恨はウチの緑谷くんが解決してくれるとして、私に出来ることは……
(余計なちょっかいを出して、変な空気にしないことかぁ……)
魔理沙は己の影響力の強さを省みて、そのままスルーすることにした。
「待て。そこの魔女」
「ギクッ」
アニメ以外ではろくに効かない効果音を口に出しながら、魔理沙はゆっくりと振り向く。
「お前だな、結依魔理沙。
(マズイ。既に地雷爆発してた……)
魔理沙は相澤先生が特殊ルールの説明の際に発していた言葉を思い返す。確かに、あの発言はちょっと不味かったかもしれない。
エンデヴァーはもちろんのこと、オールマイトよりも上みたいな発言になると"平和の象徴"の名を腐らせかねない。それは治安的な意味でもヒーローへの信頼的な意味でも、あまり良くない気がする。
(最悪マインドコントロールでどうにか出来るが……)
そう無闇には使わない。それが結依魔理沙の自己ルール。ここは諦めて、ブン殴られるとしよう。
「舐めるなよ……」
「……ん?」
エンデヴァーの雰囲気がガラッと変わる
「あの男は、"オールマイト"は、お前よりも遥か高みにいる」
「お前ごときが超えれる相手ではない」
「……」
概ね察した魔理沙。これは、私が一言でも喋ると拗れる話題だ。この男の野望を打ち砕くのはやはり私ではない。緑谷くんか、……青い炎の人しか……
魔理沙は静かに、振り返らず、なるべく刺激しないように後を去った。全てを緑谷くんに託して……
(後は、任せた……!!)
第二試合を見るべく、魔理沙は観客席に足を運ぶのであった。
■
【雄英体育祭── 試合会場 ──】
〔さぁ第二回戦第2試合!! まず登場するのはァ! その
\ワアアアアアアアアアアアアアアア!!! /
〔バーサス!! エンデヴァーの息子ォ! まだ実力は半分しか見せてないやべーヤツ!! ヒーロー科、轟焦凍ォ!!! 〕
\ワアアアアアアアアアアアアアアア!!! /
緑谷と轟が土俵に上がり、両者ともに顔を合わせる。
「俺が勝つ」
「いいや勝つのは、僕だ!!」
互いに睨み合い、覇気がぶつかり合う。その様子を見て、審判は鼻息を荒くしていた。
「それでは……始めッ!!」
ミッドナイトの合図とともにゴングが鳴らされ、試合が始まった。
その瞬間、轟は最大出力で凍結を発動し、正面全域を全て氷で埋め尽くす。
その規模は雄英体育祭会場の観客席よりも高く成長し、天上を突き抜けるほどであった。
ドゴンッッ!!!
巨大な衝撃波が氷塊の中央から鳴り響き、暴風と氷の破片が轟に襲い掛かる。
轟は背後に氷壁を出すことで場外アウトを防ぎ、耐え忍んだ。
「何だ……?」
轟が目を開けると、巨大な氷塊の中心が円形状にくり抜かれていた。そして巨大な人影が現れた。
「
緑谷は初手からマッスルモードを発動し、轟の攻撃を拳一発で守りきっていた。
3分限定の超強化形態、それを惜しみなく使ってきたことに轟は戦慄する。だが想定内。
「まだまだ行くぞ……!!」
轟の氷結が再び襲いかかる。だが先程よりも規模が小さい。
「フッ……!!」
緑谷は一呼吸で氷結の射程外に移動し、回り込んで距離を詰める。
「クッ……!」
轟は氷を生成しながら距離を稼ぐ。
「スマッシュ!!」
緑谷はデコピンで轟の進路方向に暴風の弾丸を飛ばし、足を止めさせた。
轟は振り向いて緑谷と真正面に向き合い、牽制として氷を飛ばす。
「轟くん……! キミは……ッ!」
飛んできた氷を緑谷は易々とかわし、拳を振りかぶる。
「動きが、単調だ……ッ!!」
間を詰めた緑谷が轟の土手っ腹に正拳突きを叩き込み、衝撃が炸裂する。
轟はくの字に折れ曲がりながら吹き飛ぶも、背後に氷壁を張ることで再び場外アウトを逃れた。だが、体へのダメージは尋常ではなく、意識を保つのがやっとだ。
「そんなんで……本気で勝ち上がるつもりかよ……!」
「……ッ!!」
轟はよろめきながら、立ち上がろうとする。
「うるせぇ……ッ!! 俺は……」
「俺はテメェを倒して……証明するんだ……!」
思うように体が動かず、咳き込む轟。だがそれでも、立ち上がろうとする。
「クソ親父の個性なんか頼らずとも、一位を取れ「キミの!!!」」
「キミの、
緑谷の言葉に、気付かされる轟。同時に様々な記憶が鮮明に蘇る。
"ヒーローには、なりたいんでしょ? いいのよ、お前は……"
"なりたい自分に、なっていいんだよ……"
「ボクはキミと……!! 全力を尽くして戦いたいんだ……!!!」
「この雄英体育祭で、みんなの夢が集まる場所で……!! キミは!!」
「全力も出さずに負けて、後悔しないのか!!!?」
緑谷の声が何度も内側で反響し、繰り返す。
「まだ……」
轟は膝を立て、再び立ち上がる。
「まだ……負けてねぇ……!!」
轟の左半身が燃え盛り、爆炎が立ち上った。
〔轟が!! 左の炎を解放したァ!!!! 〕
湧き上がる歓声。ついに秘められし力が解き放たれ、会場は大盛り上がりを見せる。
「焦凍ォォオオオオオオオオオオオオオ!!!!!」
そんな中、エンデヴァーは誰よりも大きい声で息子の名を叫び、興奮を露わにしていた。
だが轟は、ただ目の前にいる緑谷に集中していた。それ以外の音は全て嘘のように消え、己の呼吸だけが耳を突き抜ける。
なりたい自分のために戦う、そんな、幸せな理由を胸に。
「こっからが本番だ……轟くん!!!」
「あぁ……!!」
二人は示し合わせたように動き出し、そして大量の氷が観客全員の視界を覆った。
轟は凍結能力を使う度に体温が低下し、動きの鈍化や凍結範囲が縮小するという弱点を持っていた。だが、左の炎を解放したことで弱点が解消され、無制限に氷を出せるようになった。その結果がコレである。
だが緑谷はその尋常ならざる跳躍力で迫り来る氷壁の大津波を飛び越え、波の上に着地する。
そして足が凍結する速度よりも速く、右足と左足を交互に動かすことで緑谷は津波の上を一気に走り抜く。
その速度は、飯田のレシプロバーストに匹敵するほどの速さであった。
「フン……ッ!!」
だが轟は後方に巨大な氷壁を出現させた後に、左の掌を翳す。
直後、巨大な爆炎が緑谷を包むと同時に、大爆発が何もかもを巻き込んで全てを吹き飛ばした。
その威力は凄まじく、審判は当然のこと、観客席の人間まで吹き飛びかねないほどの風圧が発生し、会場は突発的な嵐に巻き込まれた。
全てが終息した後に、二人の姿がモニター内に映る。轟は満身創痍になりながらも、氷を盾にギリギリ生き延びていた。
一方、緑谷はマッスルフォームを強制解除され、両手を地面についたまま踏みとどまっていた。
「ちく……しょう……!!」
だが僅かに、緑谷の左足が場外に飛び出ていた。
「緑谷くん……場外! 轟くんの勝利!!!」
〔なんと勝者は!!! 轟焦凍に決定だああああああああああああああああああ!!!!!! 〕
\オオオオオオオオオオオオオオ!!!! /
凄まじい結果と共に浴びせられる歓声。両者の壮絶な戦いはこれまで行われた試合の中でもダントツに激しく、記憶に残る試合となった。
会場の歓声に包まれる中で、轟は自身の左腕を見つめていた。
使わされた、それが最初に感じた轟の感想だった。何故自分はここまで熱くなっていたのか、自分でも理解できない。
不愉快、そう思い込もうとするが、どうしてもあの言葉がよぎる。
"キミの、
その言葉が、轟の心を大きく揺さぶっていた。
「……クッ」
口惜しいと思う感情を押し殺し、轟は選手入場口へと帰還した。
一方、緑谷もまた、悔しさを胸に会場を後にする。
(せっかく……たくさん鍛えてもらったのに……!!)
体育祭までの二週間、緑谷は何度も魔理沙と特訓し、基礎力を高めていた。入学前から行っていた筋トレメニューもかかさず行っていたし、そのおかげもあってか、あの爆発をくらっても少しボロボロになる程度で済んだ。
だがあと一歩、あと一歩足が前にあったら、こうやって地べたに目を向けることも無かった。まだ試合を続けられていた。
それが悔しくて悔しくてたまらない。涙が、抑えきれない。
「オールマイトとも……約束したのに……!!」
"キミが来たってことを、世の中に知らしめてほしい! "
大好きなヒーローの期待に応えられなかった、それだけで緑谷の心は限界だった。
「おかえり」
緑谷がハッと前を向くと、入場口に二つの人影が見えた。
「おかえり、緑谷少年」
そこに立っていたのは、魔理沙とオールマイトであった。
「……ッ!」
緑谷は顔を上げず、一心不乱に走り出した。
二人は気持ちを思いやるべく、両手を広げて迎え入れる。
結果、緑谷はオールマイトに抱きついた。
(……負けた!!!!)
オールマイトにNTRた魔理沙。だが仮にも私は女性、女の胸の中では泣けないという男のプライドがあったのかもしれない。あと異性の体に抱きつけるほどの女性耐性が無いのも関係しているであろう。
魔理沙は切り替えて、緑谷を後ろから抱きしめてあげた。
「すみまぜん……! オールマイト……!! 僕……!!!」
「頑張ったな……緑谷少年。キミは、轟少年を救おうとしたんだろう?」
「きっと、伝わってるさ。キミの思いが……」
優しく、肯定するオールマイト。だがそれでも、勝ちたかった。その心が強かったが故に、涙が止まらない。
魔理沙は何も言うことなく、ただ二人を温かく包み込んだ。
■
「ご迷惑をおかけして……すみませんでした……」
緑谷は二人に深々と謝罪した。
「いやいや気にすることはないさ。むしろオジサン、涙脆くてついもらい泣きしそうになったよ……!」
そう言い、わずかに漏れた涙をオールマイトはハンカチで拭った。
「師匠もすみません……変なとこ見せてしまって……」
「いやいいさ。むしろ逆に申し訳ないというか、私があそこにいた事で緑谷くんが傷ついてしまったんじゃないかとか、ちょっと思うところもあって申し訳ないというか……ごめん」
杞憂と気遣いが交差しながら、申し訳なさそうに謝る魔理沙。それを緑谷は慌てて否定し、感謝の意を伝えた。
「とりあえず、帰りにポップコーンでも食べるかい?」
「オールマイトが外出たら人集りできるんで、私が買ってきますよ」
「魔理沙くんも今回のイベントでだいぶ注目されてるけど、大丈夫?」
「……、変身能力で一般客に紛れ込むから大丈夫です」
「あれ……? 師匠は相澤先生と契約して、試合以外で個性使えないんじゃ……?」
「不死鳥の加護でリザレクションするから!!!」
そう言うと魔理沙は一瞬で見知らぬ男性の姿に変身し、人通りの多い屋台エリアに向かって走っていった。
「師匠……」
「……え? 相澤先生と契約って、何?」
オールマイトは困惑しながら、緑谷少年に話を聞いた。
「それはですね……」
二人はそのことについて話を広げながら、観客席へと戻っていった。
to be continued...