最強の魔法使い(自称)が暴れるそうです。RE: 作:マスターチュロス
【あらすじ】
緑谷と轟、その決着は轟側の勝利で幕を閉じた。
助けて勝つ、それを最後まで貫けなかったことに緑谷は涙するも、オールマイトは優しく抱きしめ、受け止めたのであった。
【雄英体育祭会場── 観客席 ──】
第二回戦第2試合が終了し、残りの試合も何やかんやあって終わった頃、ついに第三回戦のトーナメント表が決定した。
《第三回戦》
●第1試合『結依魔理沙』 VS 『轟焦凍』
●第2試合『爆豪勝己』VS『飯田天哉』
これにてBEST4が決定。今から始まるのは上位勢同士の争い、事実上の準決勝戦である。
(殺す)
魔理沙はにこやかに左拳を右掌にぶつけ、気合を入れた。
「魔理沙ちゃん、顔が怖いわ」
「大丈夫、いつも通り」
「いつもの100倍怖いわ」
梅雨ちゃんに二度指摘されるも、魔理沙は挫けない。たとえ相手が悲劇の主人公だろうと、私は容赦しない。完膚なきまでにブッ潰す。それが私である。
「爆豪くん! 次は僕が相手だ……!」
「殺す」
「……相変わらず口が悪いなキミは」
やや離れたところで、魔理沙は爆豪と飯田のやり取りを耳にした。そのやり取りがあまりにも自分と重なる。
(……最悪)
爆豪の悪い影響をモロに受けていると感じた魔理沙は、恥ずかしさに思わず顔を伏せるのであった。
■
〔さぁ最終決戦まであとひと息ィ!!! 三回戦第1試合!! 最初に現れたのはァ!! 最初っから最後まで暴れっぱなしのバーサーカー!!! ヒーロー科ァ!! 結依魔理沙ァ!!!〕
〔バーサス!!! ついに炎を解禁したブリザードボーイ!!! 今回も全てを吹き飛ばすか!!? ヒーロー科!! 轟焦凍ォ!!!〕
結依と轟、両者がステージの上で立ち会い、構える。
「分かってると思うが、私相手に
「……ッ!!」
両者の視線が交差する。
〔まずは恒例のルーレットからァ!!! あスタートォ!!!〕
プレゼントマイクの指示のもと、モニター内のスロットがグルグルと回る。
「今回は〜〜!! コレ!!!」
ミッドナイトは勢いよくホログラムのモニターを叩き、スロットが停止する。
「『舞闘』!!!」
〔イレイザー、解説よろしくゥ!!!〕
〔……魔理沙は徒手空拳に基づいたあらゆる武術が使える。つまり、拳法オンリーだ〕
〔サンキュー!! イレイザー!!!〕
簡単な説明が終わり、審判が試合開始の宣言をする。
「それでは、始めッ!!!」
合図と共に動き出した両者。最初に動いたのは、轟だった。
轟はステージ全域を凍結の力で侵食し、足場を凍らせにかかった。
「開幕ブッパやめたのは賢いが……」
魔理沙は勢いよく片足を振り上げ、そして強く地面を叩き潰した。
ドゴンッッ!!!!
凄まじい衝撃が地面に炸裂し、ステージが粉々に砕かれ、地面が隆起する。
それにより轟の氷は砕かれて表面積が大きくなった地面の破片に吸われ、氷の侵食が遅延した。
それでも侵食を止めない轟。ステージ全域を凍結させれば、魔理沙は地面に着いただけで足の裏が凍結し、身動きが取れなくなる。
だがこの方法を突破する手段を結依魔理沙が持っていることも、轟は騎馬戦での戦いで知っている。
粉塵で視界不良の中、結依魔理沙が取る択は……
「空中からの最速攻撃……!」
轟が身を伏せた瞬間、結依魔理沙の空中膝蹴りが空振りした。
「マジかよ……」
魔理沙は瞬時に高速で前蹴りし、反転しつつ空気を蹴って上空へ舞い上がる。そして空中で右足と左足を高速で繰り出すことで、空中浮遊を実現していた。
「やるじゃん」
「…………」
「だがこれはどうかな!!」
魔理沙は空中でサマーソルトを放ち、風の斬撃が真っ直ぐ轟に向かう。
斬撃は地面を一直線に削りながら轟に襲いかかったが、轟は氷の壁を生成してガードし、斬撃を凌ぐ。
だが、その瞬間に発生した"氷の無い地面"に魔理沙は着地し、全速力で轟との距離を詰める。
結果、氷の壁が砕けたと同時に、魔理沙の顔が轟の前に現れた。
「最速風神拳」
魔理沙が一瞬しゃがんだと同時に突き上げアッパーが放たれ、轟の胴体にクリーンヒット。そのまま胴体をかち上げる。
その瞬間、轟の肉体は雷に打たれたかのごとく痺れ、思考が停止する。
魔理沙は飛び蹴りで浮き上がった轟の身体を地面に叩きつけ、跳ねた体に再び最速風神拳を叩き込む。
そして浮き上がった体に再び飛び蹴りを食らわせた後、腿砕きで太ももの裏側に強烈な蹴りを放ち、転倒すると同時に蹴り上げ、再び最速風神拳を叩き込む。
最後は浮き上がった体に力いっぱい溜めたアッパー攻撃を食らわせることで、轟の体は天高く上昇し、そして呆気なく地面に墜落した。
〔何が、起きた……?〕
〔分からん〕
解説者も投げ出す中、魔理沙が口を開く。
「これでもまだ、半分の力だけで勝つつもりか?」
「クソ……ッ」
轟が立ち上がろうとする。だが、体が言うことを聞かない。
魔理沙は轟の頭部を片手で鷲掴みし、軽々と持ち上げた。
「さよなら」
そう言い残すと、魔理沙は振りかぶって轟の体を場外へ投げようとした。
だが魔理沙の体は一瞬にして凍結し、動きが固まる。
「まだ……負けてねェよ」
轟は満身創痍の中、魔理沙を凍結させて脱出し、ステージに立つ。
一方、氷像と化した魔理沙もパンプアップによる筋肉の膨張で氷を砕き、自由の身となった。
「今さら抵抗するなんて、やっと本気出す気になったか?」
「……」
押し黙る轟。脳裏には、憎い父親の顔がチラついている。
「親父が憎いのは変わらねぇ……。アイツの思惑通りに動くなんて、反吐が出る」
「だが……」
轟は言葉に詰まり、思い返す。憎しみとは裏腹に、ただ純粋に、何者にも囚われずにヒーローをやりたいという気持ち。この気持ちは、復讐を果たすまで願ってはならないものだと思っていた。
次第にその気持ちすら忘れ、復讐することにのみ囚われていたが、緑谷があの時、忘れていたあの頃の気持ちを思い出させてくれた。
血筋や過去に囚われない、"今"という瞬間に没頭する、あの頃の気持ちを。
「お前の前で意地張るのも、馬鹿らしいな」
その瞬間、轟の表情はまるで憑き物が取れたかのように凛としていた。
「……お前は強いよ、轟」
魔理沙はそう言うと後方に大ジャンプし、距離を取って拳を構えた。
対する轟は、右半身の氷結と左半身の燃焼を同時発動させ、結依魔理沙と退治する。
「いくぞ」
轟は大量の氷壁の大津波を繰り出した。その規模は、2回戦第2試合において緑谷に放ったものと同レベルのものだった。
あの時、緑谷は大ジャンプで回避し、空中から攻めに行った。だがそれをやると今度は大火炎による反撃と水蒸気爆発による二段構えで消し飛ばされるのは既に緑谷くんが体験済み。
なら私が取れる択はコレだ。
「
魔理沙は迫り来る氷河を前にして腕を高速で回転させる。この能力は腕の回転数に応じてパンチ力が増大し、強烈な一撃を放てる。
ただし、ここは雄英体育祭。やりすぎると轟くんはおろか、後方の観客席まで消し炭にしかねないので、回しすぎてはいけない。
氷壁を完全に相殺し、轟くんを場外に吹き飛ばす程度の衝撃波を残し、なおかつ周囲に被害を出さない程度の威力。
「19回だな」
腕を回し終えた魔理沙は、迫り来る氷壁に向けて究極の一撃を放つ。その瞬間、地響きのような音と共に氷壁が崩れ、発生した衝撃波が轟の体を一瞬で壁に叩きつけた。
「まt」
そして言葉を言い切る前に、審判ことミッドナイト先生も再び派手に吹き飛ばされた。
大量の小さな氷の破片が周囲一帯にバラ撒かれ、観客席に飛び火するものもあったが、一部は観戦していたプロヒーロー達によって守られた。
〔またかよ……! 〕
〔手加減しろって言いたいところだが、アレでも手加減した方か……〕
〔嘘だろ……? 〕
プレゼントマイクがドン引きする中、粉塵の中から現れたのは、拳を突き出したまま立っている結依魔理沙の姿だった。
そして轟はその圧倒的な衝撃によって壁まで吹き飛ばされ、めり込んだ状態で気絶していた。
「轟くん場外!!!」
審判の宣言の後に一瞬、間が空くも、会場から歓声が聞こえた。
ふぅ……と、ひと息つく魔理沙。上手く調整できるか心配だったが、これなら上出来だろう。いやはや、ここが殺人現場にならなくて良かった。
「魔理沙さん場外!!!」
突然、聞き捨てならない宣言が聞こえ、魔理沙は耳を疑う。
「は?」
魔理沙はスッと視線を下に向けると、いつのまにか自分の足がフィールド外に出ていることに気づいた。
(反動考慮するの忘れてたッ!!!)
魔理沙は自分が放った拳の反動で後退し、地面を抉りながら場外に飛び出てしまっていた。
「よって両者!! 引き分け!!!」
「両者の勝敗は決勝戦開始前に、より簡単な競技内容で決定します」
「ちょ……!」
魔理沙の伸ばした手は特に役立つことなく、そのままスタッフの案内のもと、退場させられる。
これにて、3回戦第1試合は終了し、魔理沙と轟はそれぞれ待機室、保健室に移動することとなった。
■
【雄英体育祭会場― 選手待機室 ―】
試合を終えて、魔理沙は待機室の机に肘をつきながら考えていた。
(……やっちまった)
あの時、背後にも衝撃波を出して相殺していれば……と考えたが、そうすれば今度は魔理沙側の観客に被害が生じるので、どうしようもない。
強いて考えるとすれば、氷壁を真っ二つに割いてから間髪入れずに二撃目を放ち、衝撃波で吹き飛ばす方が丸かったかもしれない。だがこの方法も向かってくる氷壁が背後の観客にぶつかる可能性も考えられるため、完璧な解答にはならない。
(……終わったことを延々と考えてもしょうがないか)
魔理沙はパチンと自身の両頬を叩き、気合いを入れ直した。
「うおっ!? どうしたんだい結依くん? いきなり自分の頬を叩いて」
「いや、気合いを入れ直したんだよ。委員長」
魔理沙が視線を向けると、そこには準備運動をする飯田の姿が見えた。
「次、相手"爆豪"だけど、勝てそう?」
「……勝つさ!」
スクワットをしながら、飯田は答えた。
「爆豪との戦い方について、知りたい?」
魔理沙がカマをかけてみるも、飯田は変わらず答えた。
「いや、それを聞いてしまったらフェアじゃない」
「気持ちだけ、受け取っておくよ」
「律儀やねぇ」
魔理沙が感心する中、準備運動を終えた飯田。あと数分後には、3回戦第2試合が始まる。
「いってらっしゃい」
魔理沙は待機室を出ていく飯田の背中を、手を振って見送った。
■
〔さぁて3回戦第2試合!!! まず登場するのはこの男ォ!! 女も子どもも容赦無しィ!? 勝利への道は誰にも譲れなァい!!! ヒーロー科!! 爆豪勝己ィ!!! 〕
〔バーサス!!! 止まらない爆走メガネ!!! 何気に今大会の全種目トップ5に入り込んだエリートボーイ!!! ヒーロー科!! 飯田天哉!!! 〕
両者はステージの上に立ち、構える。
「準備はいい? それじゃあ、始めッ!!!」
ミッドナイトの宣言により、第2試合開始のゴングが鳴り響く。
開幕最初に動いたのは、飯田だった。
「レシプロ……バーストッ!!!」
初っ端から最終奥義を繰り出す飯田。これにより飯田は10秒間、目にも止まらぬ速さで移動できるが、10秒経過後にエンストを起こしてしまう。
だが10秒もあれば十分。飯田は一瞬で爆豪との間合いを詰め、回し蹴りを食らわせる。
しかし爆豪は飯田の回し蹴りと同時に体を反らし、反撃の爆破ラリアットが飯田の顔面に炸裂する。
高速移動していたが故の衝撃と、爆破による音、そして地面に叩きつけられたことによる脳震盪により、飯田の視界は一瞬で暗転し、気絶してしまった。
「遅せェ」
綺麗すぎるカウンター攻撃に会場の歓声が沸き上がった。
「飯田くんダウン!! 爆豪くんの勝利!!!」
〔爆豪!!! 決勝戦進出決定だアアアアアア!!!! 〕
大歓声とともに幕を閉じた3回戦第2試合。勝ち上がったのは、その並外れた動体視力でねじ伏せたA組の爆弾魔、爆豪勝己。
これにて準決勝戦は終了し、ついに体育祭最後となる決勝戦が幕を開けようとしていた。
「ボサボサ野郎……!!」
次回、1話のみの番外編。
【紹介コーナー】
●最速風神拳
→鉄拳シリーズに登場するキャラクター、三島一八が使用する技。当たるとビリビリする。
●
→HUNTER×HUNTERに登場するキャラクター、フィンクス=マグカブが使用する念能力。腕を回せば回すほどパンチ力が上昇する強化系念能力。