最強の魔法使い(自称)が暴れるそうです。RE:   作:マスターチュロス

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令和ッ!!





リベンジマッチ(41話)

 

 

 

青白の轟くんかっけぇ......なんて思い耽る今日この頃。現在、私こと結依魔理沙は二回戦を突破し、準決勝に進出。他もまぁまぁ色々あった結果、次のトーナメント表はこうなった。

 

準決勝戦

 

第一試合 結依魔理沙 VS 轟焦凍

 

第二試合 爆豪勝己 VS 飯田天哉

 

 

あぁ、上鳴負けてもうたか。わかってるとはいえ、レシプロの加速に生身の人間が反応出来るわけないか。ドンマイ。

 

しかし、戦闘センスお化けの爆豪に勝つのは無理そうだなぁ。アイツは昔っから動きがおかしい(いい意味で)から、スピード特化で対人戦闘技術の足りない委員長じゃ爆豪に勝てない気が......、や、でも速いってだけでも十分強いしなぁ。もうやってもらわなきゃわかんね。

 

問題は私の相手である轟焦凍。アイツ目覚めやがった。あの絶対零度と蒼い炎は確かにヤバいが、別に極低温で凍らされたところで足止めにも何にもならないし、というか熱変動無効を使えば火傷も凍結も効かない。ただし、こっちも自分の体から放出する熱攻撃が一切出せなくなるけどな。

 

でも何も問題は無い。問題があるとしたら、この体育祭編の話数が通常の三倍ほどの長さになってしまったから、そろそろ決着させなければならない。あと二話くらいで決着させよう。そうしよう。

 

 

 

魔理沙は控え室で茶を啜りながら、次の試合が来るまで待機していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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『準決! サクサク行くぜ』

 

『お互いA組屈指の実力者対決! 二回戦では二人とも派手に暴れまくって会場を盛り上げてくれたぜ!! 今回もやり過ぎないよう程々に暴れてくれ! 結依魔理沙VS轟焦凍!!』

 

『スタートッ!』

 

 

やっと来たよ準決勝、対戦相手は轟焦凍! どうやら心も吹っ切れたようで随分と勇ましい雰囲気が出てるじゃないか。やはり人間、笑顔が一番だな。

 

ほら、轟くんもニコッとしてるぞ。ちょー珍s

 

 

「アブソリュートフレア」

 

 

轟は悪意の無い純粋な笑顔からいつもの冷静な目付きへ変え、緑谷くんを屠った必殺奥義を初手から発動させた。絶対零度の氷が私をフィールドごと凍らせ、核にも匹敵する蒼き炎が全てを燃やし、ステージが大爆発を起こす。あまりの唐突さで魔理沙は反応することが出来ず、全ての攻撃がモロ直撃し、姿が一時的に見えなくなってしまった。

 

果たして準決勝第一試合は三秒で終わってしまうのか。

 

 

それはある意味的を得ていた。

 

 

ドゴンッ!!! という大きな爆音と共に全てが終結した。人々の目に映った光景は信じ難い現実として焼き付けられ、動揺を隠せずにいる。二回戦で、あの緑谷出久を戦闘不能にしたアブソリュートフレアを正面から受けて......

 

 

『結依魔理沙! 会心の一撃で場外フィニィィイイイイイイイイイイイッシュ!!!』

 

 

歓声が湧き上がる。ほんの一瞬の出来事で誰も見ることが出来なかったが、魔理沙の一撃で轟が場外まで吹き飛ばされたということだけは理解することが出来た。

 

『おいイレイザー! 速すぎて理解できないから解説任せたぜ!!』

 

『....おそらく、シンプルに真っ直ぐ走って殴りにいったのだろう。俺にもよく分からない』

 

『アレを正面から受けてなお止まることなく殴るって、なんてクレイジーなガールだぜ.........』

 

 

相澤の予測の通り、魔理沙はただ真っ直ぐ走って殴っただけであった。絶対零度の氷で左腕が千切れようとも、灼熱の蒼き炎に身を焦がされようとも、魔理沙は問答無用で突破し、強烈な右ストレートを轟の頬に叩き込んだのだ。

 

千切れた左腕を高速で修復し、焼け焦げた雄英高校のジャージは人に気づかれる前に直した魔理沙。そして轟の安否を確認するために、ステージ外へと降り立つ。

 

「お疲れさん。アクエリでも飲む?」

 

私は異空間からスポーツドリンクをパッと取り出し、轟の目の前に差し出した。美味しいよね、アクエリアス。私は嫌いだけど。

 

「...今、何した......」

 

アクエリより状況説明を求める轟焦凍。なんだよ、お前もアクエリ嫌いなのか。もしかして、ポカリも嫌か? 私は嫌だ。

 

まぁそれは置いといて、説明は必要みたいだからしてあげよう。

 

「走って殴った、以上!」

 

「....そうか。」

 

何かを悟ったのか、呆れた顔で空を見上げる轟焦凍。しかし右腕は目を覆い隠すように添えてあった。

 

「......泣いてるの?」

 

「....泣いてねぇよ」

 

「お母さんが応援してくれたのに準決で瞬殺されたから面目ない気持ちなの?」

 

「心を読むんじゃねぇ」

 

悪意しか感じ取れない魔理沙の笑い声が轟の耳を犯す。今までだったら憎悪を募らせていたはずのムカつく言葉は、何故か心地よいものへと変化している。決して轟がマゾになったわけでなく、心に余裕が出来たということの証拠であった。

「...ありがとう」

 

 

 

轟の口から、微かに感謝の言葉が漏れていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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〜 控え室 〜

 

 

轟との戦闘を終えた魔理沙は、次の最終決戦に向けて準備をしていた。心を落ち着かせるためにお茶を用意し、腹が減っては戦ができぬということでクッキー☆を用意し、ついでにCDプレイヤーに『感情の摩天楼 〜 Cosmic Mind』(処刑用BGM)を流して気分爽快ダイヤモンドユカイ。いつでもかかって来やがれ。

 

ちなみに爆豪VS飯田の結果は、案の定爆豪の勝利で終わった。もう、爆豪の動体視力が気持ち悪いくらいヤバかった。レシプロの蹴りを見切ってカウンターとか、一体どこまで強くなったのだか。

 

 

バアン!!

 

 

......何事? 突拍子もなくドアが思いっきり開かれて、誰かがやってきたようだ。確かにいつでもかかってこいとは言ったが......比喩だよ?

 

「あ? なんでボサボサ野郎がここに...、控え室......あ!! ここ2の方かクソが!!」

 

出てきやがったのは決勝戦最後の敵である爆豪勝己。あの言葉的に、部屋間違えたなこの野郎。女の子のいる部屋に堂々と押しかけるとはいい度胸してんな爆発さん太郎が!!

 

「部屋間違えたのかな爆豪きゅん? 私が案内してやろーか?」

 

「テメェの案内なんかいらねぇよ!! あとそのCDプレイヤー止めろ! うるせぇ!!」

 

仕方なく停止ボタンを押して音楽を止める。んったく、せっかく気分爽快ダイヤモンドユカイだったのに今じゃダダ下がりカタストロフィだわ。責任取れや。

 

不満気な目線で爆豪を睨んでいると、それに気づいたのか爆豪が再び食ってかかってきた。

 

「何か言いたいことでもあんのか、あぁん?」

 

「いや、幼馴染兼お前の師匠として少々言いたいことがあってな......」

 

「誰が弟子だ」

 

「まぁ、そういうなって。で? 私に勝つ勝算はあるの? ちゃんと考えてないと轟きゅんみたいに瞬殺するよ」

 

「......言わねーよカス」

 

「ま、そう言うと思ってたよ。じゃ、修行の成果を楽しみにしてるね」

 

とりあえず手短に話を切り終えて、私はまたクッキーを摘んで出場のコールがかかるまで暇を潰そうとしたのだが、爆豪が部屋の扉を開けると、少し震えた声で呟くように言葉を発した。

 

「......一回戦の時、テメェ表情変えたよな。何があった」

 

爆豪は振り返らず、ボソッと言葉を零した。少々動揺したが、悟られぬよう何気ない雰囲気を漂わせつつ言葉を返す。

 

「......何も無かったよ。一撃で」

 

「実際は」

 

「いや、ほんと実際もなにも一撃でおしまいさ」

 

そう言うと、爆豪は今までに見せたことないくらいの悲壮な顔を私に向けた。そして部屋を出ていこうと......すると見せかけて鋭い剣幕で突如部屋の机をぶっ叩き、爆発させた。ギョッと驚いた私の顔面を爆豪は鷲掴みした後、鋭い目付きで睨みつけながら言いつける。

 

「嘘つくんじゃねぇよボサボサが。俺より強え奴がしみったれた顔をすんなボケカス。さっさとはっきり言え、でなきゃ殺す」

 

爆豪は魔理沙の顔面に圧をかけるよう力を込め、何かを吐かせようとどこか必死に魔理沙を押さえつけた。

 

「私に何を吐かせたいんだよ」

 

「惚けてんじゃねぇ、一回戦の時から様子が変わった、今もそうだ。何隠しているか知らねーがこの決勝戦でもそんな表情されっと萎えるんだよ。だから吐け」

 

真剣な目付きで魔理沙の首と顔を押さえつける爆豪勝己。なるほど、そういうことか。妙に突っかかってくると思ってたらそういう事だったのね。

 

「つまり私の心配をしてくれたと」

 

「都合のいい解釈をするなクソボケカスが」

 

「だってどー考えてもそーでしょうが!!」

 

確かに爆豪の言う通り、この雄英体育祭で不安要素が増えた。異形連中がこれからどう動くのか予想できないし、ほんの少しずつだが覚醒者も増えている。自分がこの世界に生まれたことで与える影響が割と多くて困っているには困っている。だけど、困っている様子はそこまで周りに見せていない。見せないよう振舞ってきたんだから、それに気づくってことは相当私に気を使ってるってことだよな! つまり! 爆豪は私の心配をしてくれたってことだ!! 異議なし!!

 

 

しばらく言い合いになった後、結局爆豪が折れて部屋を出ていった。なんだアイツ、可愛いところもあるじゃないか。やっぱり性格丸くなったなー。

 

 

 

さて、クッキーもお茶もCDプレイヤーも爆破されたし、寝るか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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『さァいよいよラスト!! 雄英一年の頂点がここで決まる!! 決勝戦、結依VS爆豪!!!』

 

『今!! スタート!!!!』

 

 

景気のいい目覚ましが私の脳をフル回転させ、血の流れを徐々に速くする。やっとここまで辿り着いたんだから、爆豪に勝って三冠を果たし、ゆっくりとおうちで寝るとしよう。正真正銘、これが雄英体育祭最後のショータイムだ。気合いを入れろ。

 

肩の骨を軽く鳴らし、気合いを入れる結依魔理沙。対する爆豪は......ずっと私のことを鋭い目付きで睨んでいる。控え室のこと、まだ引きずっているのかな?

 

「おい、結依」

 

「おっ、おう...なんだよ爆豪」

 

いきなり爆豪に苗字で呼ばれたから、驚いて上手く返事が出来なかった。あれ、爆豪が苗字で私を呼びかけたの、何気に人生初じゃね?

 

「俺はお前に、一度も勝てたことはねぇ」

 

「お、おu「返事するな黙って聞け!!」ハイ...」

 

何か爆豪が言いたげなようだ。目付きが控え室の時と一緒になっている。心読もうかな。

 

「その上、テメェの力を借りてまで手に入れた覚醒の力でさえ、テメェを超えることが出来ねぇ」

 

「なんでこんなに俺は情けねぇーんだよなぁ!! プライドも何もかも全てテメェに握りつぶされて、何度もテメェに負けて!! 俺は弱すぎだって言うのか!! あぁん!!」

 

爆豪が漏らしたのは、弱音だった。ナンバーワンを取ってこその最強のヒーロー、そうありたいと願う爆豪の前に現れたのは最強の壁、結依魔理沙。これまで爆豪は一度も彼女に勝てず、取るべき最強の証は全て彼女が持っていった。その上、彼女に助けられることもあった。諭されたこともあった。あまりにも高い壁に爆豪は己のプライドを少しずつ抑圧していき、結果的に魔理沙に稽古をつけてもらうことさえ許してしまった。アイツがいなければ、自分がナンバーワンだったはず....と考える自分に嫌気がさす日々。爆豪の自尊心はズタボロであった。

 

だがしかし、爆豪は結依に勝つことを諦めたわけではなかった。いやむしろここまで自身を犠牲にした以上、成果を出さなければならないとまで感じている。それくらい、彼は勝利に飢えていたのだ。

 

「はぁ....、とにかくテメェ、手加減なんかすんなよ。全力のテメェを上から捩じ伏せる...そんで俺がトップだ」

 

ギラついた爆豪の視線と宣戦布告を受けて、呆れた顔をする魔理沙。爆豪、昔っからずっと変わってないんだな。魔理ちゃんはある意味感心しているよ、ここまで変化を受け付けない奴は初めて見た。人間誰しも成長すれば、見た目も考えも味覚も変わるもんだと思っていたのだが、爆豪は変わんねぇや。すげぇや。

 

「そこまで言うなら、私も覚悟して立ち向かうとしよう。そんなに潰したいなら殺ってみろ」

 

腹を括って、戦闘態勢に移行する。幼稚園児の時に初めて爆豪と戦い、その後も何回かちょっかいを受けて、高校生になってまたぶつかって、戦闘訓練で暴走を止めて、二週間前に覚醒の特訓(実験)に付き合ってもらって......まぁ、断ち切れない運命のように戦ったな。会う度にいがみ合う、腐れ縁のような関係だったけど、なんだかんだ楽しかったぜ。こんなこと絶対本人の前で言わねぇけどな。

 

「上等だ。喋る暇もなく殺してやるよ」

 

爆豪も戦闘態勢に入った。昔と比べ、筋肉や体格がしなやかでかつ強靭になっている。油断も隙もない構えに、流石の私も警戒せざるをえない。本気なんだな爆豪、本気で私を倒したいんだな。

 

 

会場には声が聞こえていなかったのか、早くしろとでも言いたげな表情で観客は二人を見ていた。というかさっきから実況のほうも煩い。こちとら人間関係で困っているんじゃい!!

 

 

 

 

結依魔理沙と爆豪勝己、雄英高校一年A組のトップクラスの実力を持った幼馴染同士の試合。果たして勝利を手にするのは爆豪か、はたまた結依か。

 

 

 

 

 

 

 






爆豪、頑張れ。


いろいろ紹介

感情の摩天楼 〜 Cosmic Mind:東方キャラ、聖白蓮のテーマBGM。最初だけ聞くと処刑用BGMだけど、最後まで聞くと感動で涙が溢れるんぜよ。ぜひ聞いてほしい。



次か次の次で体育祭編ラストですねぇ。長かった。



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