最強の魔法使い(自称)が暴れるそうです。RE: 作:マスターチュロス
【あらすじ】
ついに雄英体育祭最終種目決勝戦を前に、結依魔理沙と爆豪勝己が対峙する。魔理沙最後の能力ルーレットは爆豪勝己によって中断され、文字通り"全力"でぶつかり合うことに。
幼少期から続いた因縁に決着をつけるべく、魔理沙はあらゆるリスクと引き換えに全力を出すことを決意。ただし条件として、爆豪が負けた場合、この戦いを観戦した全ての国民の記憶を改ざんすることを宣言。
緊急事態を察したヒーロー陣が駆けつけようとするも全員無慈悲にスキマ送りされ、もはや誰にも止められなくなった二人。試合開始のゴングは鳴らぬまま、二人の対決が始まる。
【雄英体育祭会場 ──決戦ステージ──】
仁王立ちで手招きする魔理沙。挑発と受け取った爆豪は考えるよりも早く動き出し、最大級の火力をぶつけるために振りかぶる。
「ボサボサァアアアアアアアアア!!!!」
爆豪の右の大振りが振り下ろされる瞬間、魔理沙は一歩で爆豪の脇下に潜り込み、右手で顔面を鷲掴みした。
そして地面に叩きつけ、グラりと会場が揺れる。直撃を食らった爆豪は脳震盪を引き起こし、意識が暗闇の中に沈みかける。
だが爆豪は反射的に魔理沙の顔面を掴み返し、特大級の爆発を引き起こした。
「ゲホッ!! ゲホッ!!!」
発生した煙が気管支に入り込み、咳き込む魔理沙。
だが手を離したことで爆豪は、隙だらけの胴体にもう一撃叩き込もうとする。
「見えてるぞ」
魔理沙は目を閉じたまま爆豪の攻撃を受け流し、流れるようにカウンターを叩き込む。
「グゥッ……!!!」
予期せぬ反撃をくらい、爆豪は腹を抑えつつ後退した。
「言っておくが、私の隙をつくなら全力の攻撃をぶつけ続けるのをオススメする。さっきの轟戦みたいに力加減とか魔法の選択をミスるから」
「わざわざ丁寧にありがとよ。ならそうさせてもらうわ」
爆豪は後方に跳躍し、爆破の反発で高さを調整してから、全身をキリモミ回転させて魔理沙に突撃した。
「
爆豪の放ったソレは前方全てを巨大な爆炎で焼き付くし、衝撃波が観客席まで吹き抜ける。
「足りねェなァ!!!」
だが爆豪が着地すると同時に、魔理沙は爆炎の中から顔を出し、爆豪に掴みかかろうとする。
しかし爆豪はそれを予期していたかのように後ろに飛び、右手の平に力を込める。
「ッ!?」
「こっちが本命だ」
爆豪は前のめりになる魔理沙に向けて、右手の平を振り払う。
「
爆豪は
そのあまりの威力に爆豪自身も後退し、地面を抉りながら停止する。流石に力を出しすぎたせいか、手のひらからジンジンとした痛みが襲いかかる。
そんな最中、青白い爆炎の中から数十匹のコウモリが群れをなして現れ、爆豪の目の前で人の姿に形作る。
爆豪が瞬きした直後、ソレは一瞬で結依魔理沙に変貌した。
「残念。あと
「……無傷かよ」
全力の攻撃が掠ることなく虚空に消え、爆豪は戦慄した。
「こっちもそろそろ殺るよ」
魔理沙はスキマ空間から道路標識の付いた柱を取り出し、爆豪の前で構えた。
「……ッテメェ」
「
魔理沙は容赦なく柱を振り回し、爆豪に直撃させた。
「グッ……!!」
だが爆豪は左腕で柱の攻撃を耐え抜き、吹き飛ばされぬよう踏ん張っていた。
「やるな。だがコイツはどうだ?」
魔理沙は手に持っていた柱を一瞬で鉄くずに変え、磁力操作で全ての鉄クズを爆豪の体に付着させる。
重量にして約800キログラムの鉄くずがのしかかり、もはや立つことすらままならなくなった爆豪。あの時と同じ、結依魔理沙の足しか目に映らなかったあの光景が蘇る。
「クソがぁぁッ!!!」
再び這いつくばされたことに怒りを覚え、気合いで顔をあげようとするも、重すぎてまともに上がらない。
「まだ序の口だぞ、爆豪。この程度でへばってたら到底私の相手にはならん」
魔理沙が残酷にも上から目線で語りかける。その声が、とても煩わしい。憎い。あまりにも憎い。
だが、この張り付いた鉄くずを殺すには、爆発で吹き飛ばす他ない。それすなわち、自身に向けて最大火力の爆発をぶつけるということ。
そんなことをすれば体がもたない。……百も承知だ。
「
爆豪は伏せたまま、地面に超特大の大爆発を引き起こし、結依魔理沙を巻き込みながら宙へと舞い上がった。
高温、高圧、そして失神するほどの爆音が鼓膜を容赦なく破壊し、爆豪はそのまま地面に墜落。グタリと倒れてしまった。
一方、魔理沙はピカピカの実の能力で光と同化し、容易にすり抜けてしまった。つまり無傷である。
「良い作戦だ。地面ボロボロになっちゃったから直すね」
魔理沙は念動力で自身と爆豪の体を浮かした後、個性『創造』で魔力を建材に変換し、ステージを修復した。
「ほら立て、爆豪。まだまだ勝負はこれからだ」
「グ……!!」
全身の筋肉がズタボロに削られ、肺を動かすことすらままならず、爆豪は地べたで必死に呼吸を繰り返す。
魔理沙は爆豪の片腕を引っ張り上げ、そして左腕を振りかぶる。
「これで
結依魔理沙の左拳が爆豪の右脇腹に打ち込まれようとするも、爆豪は右手でそれを阻止した。
「……終わって、ねェよ」
魔理沙の左拳が徐々に押し返されていく。
「まだ……俺はァ……ッ!!!」
「終わって、ねェンだよ!!!!」
爆豪の結膜が黒く染まり、紅い虹彩が浮かび上がる。それはかつて暴走した時と同じ症状であり、爆豪が限界を超えて力を引き出している証左であった。
「
爆豪は至近距離で衝撃波のみを強めた爆発を引き起こし、周囲一帯に爆音を轟かせる。
凄まじい音の暴力によって二人の鼓膜は引き裂かれ、聴覚系の撹乱により、両者は目眩、耳鳴り、そして平衡感覚を喪失。
その影響は観客席にまでおよび、失神して倒れる者が続出した。
己も他者も省みない自爆技を放たれ、魔理沙はグラりと蹌踉めく。その最大の隙を突くように、爆豪は踏ん張った後ろ足で体を跳ね上げ、魔理沙に最大級の一撃を食らわせようとする。
「くたばれえええええええええええええ!!!!!」
刹那の瞬間、爆豪は振りかぶった右拳を振り下ろすと同時に、魔理沙は反転後ろ蹴りで爆豪の胴体をかち上げ、真上に突き上げた。
爆豪が最高到達点に達する間に全身の再生を終えた魔理沙は、たったの0.00001秒弱で吹き飛ばされた爆豪に追いつき、かかと落としを爆豪の背に叩き込む。
かち上げられた時よりもさらに速い速度で落下していくも、爆豪は魔理沙が設置したスキマ空間の中にスッポリと入り、地面との衝突は回避された。
魔理沙はゆっくりと地面に着地すると、再びスキマ空間を展開し、片手で爆豪の顔面を鷲掴みし、引っ張り出した。
「……成長したな、爆豪」
ダラリと垂れ下がる四肢を見て察した魔理沙は、そのまま爆豪の体を場外に突き出し、地面に投げた。
「だが私の勝ちだ」
魔理沙は気絶した爆豪に意味もなく話しかける。既に決着はつき、会場は気絶した人とパニックになった人で溢れかえり、会場は阿鼻叫喚の嵐であった。
当然、会場に在中していたプロヒーローと雄英教師が駆けつけようとしたが、『境界を操る程度の能力』、『距離を操る程度の能力』の前では誰一人として近づくことができない。
ここには、因縁の対決を果たした二人だけが残っている。
「約束通り、記憶は消させてもらう。流石にこの展開だと私が化け物すぎるからね」
「だが、約束は果たした。その証拠としてお前と、観客席で見ていた緑谷くんの記憶は残してあげる」
魔理沙はその場でしゃがむ。
「また勝負しよう。爆豪」
「何度でも」
返ることのない返事を待たず、魔理沙は座ったまま片手を上げ、指を鳴らす。
スキマ空間に隔離していた教師陣および先生方を解放した上で、日本全土を対象とした大規模マインドコントロールを発動した。
「結依魔理沙は体育祭決勝戦にて、ルール違反することなく爆豪勝己を一撃で場外に吹き飛ばし、勝利した」
「ついでにこの大会を観測した全ての日本国民は結依魔理沙に関わる全ての情報をあらゆるメディア媒体に流出することを禁ずる。この原因を意識的に追求することは出来ない」
■
【雄英体育祭会場】
長きに渡る体育祭も終わりを告げ、最後に表彰式が執り行われた。
万雷の拍手とともに表彰台が現れ、そこには好成績を収めたトップ3が立ち並んでいる。
第三位、轟焦凍&飯田天哉。原作では飯田が
第二位、爆豪勝己。原作では枷を付けられていたが、何故か今回は暴れることなく、静かに佇んでいた。もしかしたら、キレすぎて放心中なのかもしれない。帰り道は瞬間移動で帰るとしよう。
第一位、結依魔理沙。危ない場面がいくつかあったが、3種目全てにおいて1位を獲得し、名実ともに王者となった。これを公言することはできないが、我ながら喜ばしい。
放送は途中で打ち切られたが、会場では何の変わりなく表彰式が続けられた。
ミッドナイトが表彰台の前に立ち、スタッフに合図を送る。
「メダル授与よ!! 今年メダルを贈呈するのはもちろんこの人!!」
ミッドナイトの目線の先を追うように、観客と生徒が上を見る。
そこには、体育祭会場のてっぺんで逆光に照らされながらも輝く、あのヒーローの姿が。
「とうッッ!!!」
彼の象徴とも言うべき雄大なBGMと共に、天からヒーローが舞い降りる。
「私がメダルを持ってk「我らがヒーロー『オールマイト』ォ!!!」」
シーン……
派手に着地したオールマイトとミッドナイトのセリフが見事にダダ被りし、会場中の人たちが沈黙した。紛うことなき失敗である。
その何とも言えない空気の中で、オールマイトはとぼとぼと表彰台の前に立ち、メダルを掲げた。
「気を取り直して! 飯田少年! おめでとう!! これからのキミの成長に期待して、このメダルを進呈しよう!!」
「はい! ありがとうございます、先生!!」
ピシッと直角90度腰を曲げてお礼を申す飯田天哉。あまりの真面目さにオールマイトはやや狼狽えたが、ギュッとハグをして次に移る。
「轟少年! おめでとう!! 前より顔つきが変わったのには、何かワケがあるのかな?」
オールマイトの言葉に、轟は遅れて返事をする。
「俺は緑谷と結依にキッカケをもらって、気持ちが変わりました。ただ、まだ俺にはやらなくちゃいけないことがある。まだ、取り戻せるとわかったから……」
「……深くは聞くまいよ。今の君ならきっと取り戻せる」
オールマイトが優しくハグし、次の表彰台へと移る。そこには、何か思い耽っている爆豪の姿があった。
「爆豪少年、よく頑張った。君は最後まで全力で自分と向き合い、ここまで辿り着いたね。私が君に言うことは何一つ無い、君が君自身の思い描くヒーローになれるよう、応援しているよ」
「…………次は絶対アイツをぶっ飛ばす」
「……ほどほどにね?」
余程悔しかったのか、爆豪は血が出るほどに下唇を強く噛み締め、怒りを押し殺していた。そんな彼にハグする勇気もなく、オールマイトは最後の受賞者に移る。
「結依少女! 三冠おめでとう!!! 君はこの体育祭で、伝説的偉業を歴史に刻み込んだ!! キミは、学校の誇りだ!!!」
「ありがとうございまs」
「ただもう少し!! ちょっとだけ! 手心をくわえて接すること! いいね!?」
「はい! これからも頑張ります先生ェ!!」
半端ヤケクソ気味に返事をする魔理沙に対し、オールマイトは魔理沙に右手を差し出す。
女子生徒にハグするのはオールマイトといえど何かと問題になるので、代わりとしての握手なのだろう。そう察しつつ、魔理沙も右手を差し出す。
こうして二人の握手によって喝采が上がり、閉会式も幕引き寸前。最後にオールマイトが口を開く。
「……さァ!! 今回は彼らだった!! しかし皆さん! この場の誰でもここに立つ可能性はあった!! ご覧いただいた通りだ! 競い! 高め合い! さらに先へと登っていくその姿!! 次代のヒーローは確実にその目を伸ばしている!!」
「てな感じで最後に一言!! 皆さんご唱和ください!!」
その一声で、会場中の人たちが握り拳を固める。
雄英高校最大級のイベントの最後を締めくくるなら、やはりあの一言。
「せーのッ」
「「「プルスu『おつかれさまでした!!!』ルト……」」」
再び静まり返る会場。そしてすぐに盛大なツッコミが入る。
「「「そこはプルスウルトラでしょオールマイト!!?」」」
「ああいや……疲れただろうなって思って……」
最初なら最後まで締まらず、お茶目を晒し続けるオールマイト。そこもまた、彼の魅力の一つである。
最後まで人を笑顔に変えたオールマイトを横目に、終始笑っている魔理沙。ガタイのいいオールマイトがお茶目な行動を連発しているせいでもあるが、何よりこの体育祭が無事に終わってくれたことに喜びを感じていた。
ろくでもない事件はこれからも巻き込まれるかもしれないが、今はこの束の間の平和を楽しんでもいいと思えた。
的なこと言っておけば少しは私の好感度はアップすると思い、言ってみた。
雄英高校体育祭編、完。
※旧ストーリーではこの後にヒーロー免許を取る話が出ますが、既に免許あるので丸々消えます。ご了承ください。
【紹介コーナー】
●バッドウィズウィン
→『BAYONETTA』シリーズに登場するキャラクター、ベヨネッタが使う技。相手の攻撃が当たるギリギリのタイミングで敵の攻撃を完全回避する技。俗に言う無敵回避。ただしタイミングがシビア。
●ジキジキの実
→『ONEPIECE』に登場する
●距離を操る程度の能力
→東方Projectに登場するキャラクター、小野塚小町の能力。文字通り距離を操るが、これは空間干渉によるもの。そのためワープも出来る。