最強の魔法使い(自称)が暴れるそうです。RE: 作:マスターチュロス
【あらすじ】
雄英体育祭が終了し、魔理沙は見事全種目一位を獲得した。爆豪との因縁も一段落つき、魔理沙は思い残すことなく会場を後にした。
戻レない(43話)
【結依家】
雄英体育祭終了後、魔理沙は会場の後片付けを手伝った後に帰路に着いた。その頃にはもう日が暮れていたが、高校生の門限的に何も問題ないので特に気にすることなく帰宅した。
「ただいま」
魔理沙は靴を脱ぎながら挨拶をする。
「おかえ……? 魔理沙、いつの間に外に出てたの?」
「ん?」
「瞬間移動できるなら自分の部屋に直接移動すればいいのに」
「んー……?」
違和感。どうやら自分と母の間に認識のズレがあるらしい。
こんな時、最も役に立つのは『
(……どうやら先に分身体が帰ってきてたらしい)
事情を把握した魔理沙。分身体とは、雄英体育祭中にステイン確保をお願いしたもう一人の結依魔理沙であり、それが仕事を終えてそのまま帰宅したらしい。
私が私なら親にバレないよう瞬間移動で部屋に帰宅するが、母親に見られているということはわざわざ玄関を通って部屋に戻ったということ。
何故? いや現に自分も玄関から入ってきてはいるが。
(今は適当にごまかそう)
「外出る時は靴履くでしょ? 靴脱ぐ場所がここしかないから、部屋じゃなくてこっちにワープしたの」
「確かにそうね。……なんだか久しぶりに魔理沙が玄関から帰ってくるのを見た気がして……」
「いつもは音もなく帰ってくるからしょうがないよね、じゃっ」
そういいつつ魔理沙はそそくさと靴を脱ぎ、階段を駆け上って自分の部屋の扉を開く。
バンッ!!
「ただいま、私」
「……おかえり」
ベッドの上に座っていたのは、分身体の結依魔理沙。しかし我ながら普段の禍々しい気が見られず、どこか萎れている。
「どうした?」
「……」
分身体は少し黙った後、口を開いた。
「……ステインが覚醒した。勝ったのは私だが、真の意味でステインに勝つことはできなかった」
「は?」
戸惑う魔理沙。その発言の真意が分からず、魔理沙は無意識に読心能力を使うも、分身体も魔理沙と同様に強固な精神バリアが張られているため、全く読めない。
「……説明してもらっていいか?」
オリジナルの魔理沙に促され、分身体はこれまでの経緯を話した。
ステインが身につけた魂への直接攻撃、だがそれすらも乗り越えて一度倒した魔理沙だったが、意識のない状態で再び暴走したステイン。
追跡の末に捨て身の覚悟で精神世界にダイブするも、説得に失敗。ステインは自ら魂を切り刻んで死亡するも、魔理沙はその決断と信念を踏みにじってまで蘇らせ、警察署に送り届けた。
死んで欲しくなかった、尊厳も踏みにじるつもりはなかった。唯一生き返らせる手段を持つ自分が、ここでステインの死を無かったことにしてまで贖罪を果たさせるべきなのか、何が正しかったのか……
重くのしかかった空気の中で吐き出した分身魔理沙が、俯いたまま動かない。そんな己を見て、オリジナルの魔理沙が分身魔理沙の手を握る。
「……苦しいこと頼んで、悪かった」
心からの謝罪に分身魔理沙は顔を上げ、手を振り払う。
「いや、謝らなくていい。これは私の……選択だ」
「そうか……」
その言葉を聞き、オリジナル魔理沙は少し思い耽った後、パッと明るい表情を取り戻す
「でもどうせお前と同化するし、苦しみはそれで分かち合う感じにしようや!」
「……そうだね」
流石の名案にオリジナルの魔理沙はニッコリと笑った。
「じゃ、さっそく」
魔理沙と分身体は互いに両手を前に出し、手と手をピッタリと合わせる。あとは深呼吸をして、同化するだけ。
「……アレ?」
だが二人が何度念じても、一向に進まない。何も起きない。
「「
「そんなことあるか?」
「人生初かも……」
お互いに何度も手のひらを叩き合うも、何も起こらない。まさかの分身が解除できないという、何ともいえないバグのような何かに巻き込まれたようだ。
「マジかよ……」
「こういう時、我々の体に詳しい『大賢者』さんに聞くべし」
オリジナルの魔理沙はスキル『大賢者』を発動し、直接質問する。
「大賢者、分身、同化(解除)できない、理由」
さながら検索エンジンに片言でワードを打ち込んでいるかのように質問するオリジナル魔理沙。その質問に大賢者が答える。
『解。原因は
「変容?」
『そのままの意味です。二人のマスターは精神の形が少々異なっているのです』
大賢者の言葉に今度はオリジナルの魔理沙も首を傾げる。精神の形の違いが同化できない理由とどう関係があるのか。
『解。マスターの『多重並列存在』で生み出された分身はオリジナルとほぼ同一といって過言ではありません』
『分身後に新たな能力を獲得したとしても、マスターの膨大な能力数の前では微々たる差であり、同化の障害にはなりえません』
『ですが、精神の差異は可能性の生産量において決定的な差を生みます。その差こそ自他の境界であり、"個性"と名付けられるものです』
「個性って、能力の方の意味? それとも人格とか性格の方の意味?」
『解。どちらの意味で捉えても問題ありません』
「? それは……つまり?」
オリジナル魔理沙はじっくりと考え、答えを出す。
「つまりコイツと私の間に、性格か能力において凄い決定的な違いが生まれたってこと? そのせいで同化できないの?」
『その認識で概ね間違いありません』
「いや意味わからん! どこにそんなきっかけがあった!!!」
『解。推測ですが、彼女は個体名"
「……お前、まさかステインの思想に染まったわけじゃねぇよな?」
「馬鹿野郎。話が一生平行線だったから私はステインを救えなかったし、嫌なこともしたんだよ……」
「そうか……」
振り出しに戻るオリジナル魔理沙。そんな中、大賢者が声を上げる。
『解決方法はあります』
その言葉に、二人が反応を示す。
『一つは、マスターの精神を統一することです』
突拍子もないセリフに二人は動じない。
『両者の精神を直接接続し、同期させることで精神の統一化を計ります』
『ただし不確定要素として、
大賢者の説明に納得する二人。このリスクは、流石に見逃せない。仮にも精神を、人格を統合するというデリケートな分野のため、可能な限りリスクは消したい。
「……ちなみにその言い草だともう一つありそうだが?」
『解。第二の方法はシンプルに、オリジナルのマスターが分身体のマスターを存在ごと消滅させる方法です』
「私に私を殺せと!!?」
『何か問題でも?』
即レスで返ってきた無慈悲な問いかけに、魔理沙の脳が捻れる。
「問題……ある、かも、 だが、どう?」
オリジナルの魔理沙はしどろもどろしながら分身体の方を見た。
「……死にたくは、ないな」
ボソリと呟く分身体。その一言だけで十分理解した。
「……わかった」
オリジナルの魔理沙は分身体に手を差し伸べる。
「原因が分かるまで、合体するのはやめよう」
「私……」
差し出された手を分身体は握り返し、共に生きていくことを決意する二人。そんな感動的な場面に水を差すように大賢者が突っ込む。
『これからの生活はどうするつもりですか、マスター』
「「……」」
突かれたくない問題を掘り起こされ、声が詰まる両者。突発的に自分が増えたとなっては、色々と問題が出る。
「とりあえず母さんには前もって伝えておこう」
オリジナル魔理沙がそう言うも、分身体魔理沙が暗い表情をする。
「……片方しか許しませんとか言われたら」
「その時は諦めて、最後の一人になるまで殺し合う」
「最悪」
頭を抱える分身体魔理沙。そんなことをすれば骨が折れるどころの騒ぎではないが、そんな日が来ないことを祈る。
「で、学校は? 私が増えたからもう一人の私も学校に通わせてくださいとか言えるわけない」
「一日交代で登校して、帰ってきたら能力で記憶を共有するとかならワンチャンいけるかもしれないが……」
「面倒だがそうしよう」
次々と話が整理され、概ね結依魔理沙の分身事情はひと段落ついた。
「他に問題ある?」
「ない」
「じゃあ明日からはそれで」
そう言うと、オリジナル魔理沙は一瞬でパジャマに着替え、魔法で口の中を洗浄し、寝る準備を整えた。
「おやすみ私」
「おやすみ」
そう言い終えた直後、爆速で入眠したオリジナル魔理沙。我ながら都合のいい体に、分身体魔理沙は呆れつつも寝る準備をする。
(……私のベッド、無くね?)
既にベッドはオリジナル魔理沙に占拠され、寝る場を失った分身体魔理沙。仕方ないので虚空から敷布団を用意し、ベットカバーと枕、布団も用意した後に、歯磨きを終えてから就寝した。
(疲れた)
■
【翌日(振替休日)】
「というわけで母さん、家族が増えます」
「産んでないのに……?」
困惑する母。それもそのはず、朝起きたら何故か娘が分身していた上に、人権を主張してきたのだから。
「あ、食費はかけなくていいから。一日交代で飯食うし」
「お腹空かないの……?」
「……アレ、言ってなかったっけ。私、食べなくても魔力があるから平気なんだけど」
「そうなの……?」
母は少し考えた後、思い切って口を開く。
「……いいえ、二人ともちゃんとご飯を食べてもらいます!」
「Why?」
「家族だからよ」
「……まぁ、そう?」
魔理沙なりの配慮だったが、母がそういうならそれに従おう。
「じゃ、とりあえず原因が分かるまで二人三脚するわ」
「フフッ、分かった。……えっと?」
「どう呼べば……いいの? どっちも魔理ちゃん?」
「「……あ」」
一切考えてなかった二人。どっちも魔理沙だと紛らわしいことこの上ない。
「……どうする?」
「名前を変えるのは? 片方は魔理沙で、もう片方は……"
「良いねソレ。気に入った、魔梨奈もらうわ」
分身体魔理沙、および魔梨奈が名前を拝借した。
「おい良いのか? 公平にジャンケンで決めた方がよくねぇか?」
「流石にオリジナルが名前変えちゃダメだろ。仮にも私は分身なんだから」
「まぁ……そういうなら」
魔梨奈に説得され、魔理沙は渋々引き下がる。
「というわけで母さん、こっちが魔梨奈で、そっちが魔理沙になりました」
「どっち……?」
説明を受けたものの、全く見分けられない母。なお本人同士は感覚でオリジナルか分身かを識別できるが、見た目では到底分からない。
「仕方ない、母さんの前では髪色変えるか」
そう言うと、魔梨菜は髪色を一瞬で銀髪に染め上げた。
「あっ、分かりやすい!」
「似合うじゃん」
魔理沙のグータッチに、魔梨奈も答える。
こうして、結依家に新たな家族が増えたのだった。
To Be Continued...