最強の魔法使い(自称)が暴れるそうです。RE: 作:マスターチュロス
【あらすじ】
結依家に新たな家族、
【体育祭明けの登校日】
早朝、結依魔理沙は魔梨奈を叩き起した。
「すまん、登校日直前に悪いんだが言い残したことがある」
「……何? あと今深夜3時だし早朝じゃねぇし」
魔梨奈のツッコミに対し魔理沙は意に介すことなく、話を続ける。
「体育祭で異形が現れた」
「……は?」
「ちょっと待て」
魔理沙は自分の額を魔梨奈の額に直接当て、自身が体験した体育祭での記憶を魔梨奈の脳内に流し込む。
雄英体育祭最終種目、第一回戦第一試合。結依魔理沙は塩崎茨、もとい異形幽香と対面し、妖精もろとも亡き者にした。
あの戦いの中で、いくつか聞き逃せないワードがあった。『器』と『お母様』である。
『器』は結依魔理沙を意味し、異形たちは結依魔理沙を奪還することが目的だったらしい。だがそれ以上の情報は無い。
そして『お母様』については、知っている。
それは、異形達の大ボスといっても過言ではない存在。
「
その名を口にし、分身体こと魔梨奈が戦慄する。
「……マジかよ」
異形の到来、それを記憶を通じて感じ取り、理解した魔梨奈。そしてこれまで感じていた違和感の数々が点と点で結びつく。
「もしかしてA組の中に……」
「
魔梨奈の疑念を言語化し、肯定する魔理沙。クラス全体に読心術が使えないのはほぼ間違いなく異形の介入によるものだ。それが出来る異形は数多いが、ここまで音沙汰なく潜伏できている時点である程度は絞れる。
「アレが関わってないなら苦労しないが……」
魔理沙は最悪の存在を思い浮かべる。その力は異形の中でも常軌を逸しており、異形魔理沙の力でも太刀打ちできるか怪しい。
仮にもし、A組に潜伏している異形がアレの息のかかった者なら、どんな手を使ったとしてもそれを暴くことは出来ない。それがアレによって定められたシナリオなら、全てはソレに従う。
「……骨が折れるな」
魔理沙は現状を再確認し、今後の展開を冷静に予測する。
『お母様』がいるなら、間違いなくこの世界は異形達の手によって蹂躙される。そして既に何匹かの異形がこの世界に潜伏している可能性があり、そいつらの行動次第でこの世界は簡単に終わる。
「とりあえず潜伏してる異形を炙り出す。そのためにまずウチのクラスを徹底的に……」
そう思い立った矢先、魔梨奈が口止めした。
「待って、迂闊に動くのは危ない」
「迂闊? どこが?」
「下手に嗅ぎ回って、異形たちが強行手段に出たらどうする?」
「?」
魔梨奈の回答に、魔理沙は首を傾げる。そんな魔理沙を見て、魔梨奈は再び口を開く。
「こっちの動き次第で、相手が何してくるか予想できない。あの第一試合で起きたようなことが、また突発的に起きるかもしれない」
「何より、私らを
「……」
「私らが死んだら、終わりだ」
魔梨奈の言葉が、深く重くのしかかる。この先において、魔理沙たちは選択を間違えてはならない。
この世界の脅威を知り、それに対抗しうる力を持った自分たちが過ちを犯せば、生きとし生ける全ての存在に被害が及ぶ。
その重みを理解した上で、自分たちは慎重に、正しく選ばなければならない。
「……ならどうする?」
魔理沙は魔梨奈に問いかける。
「潜伏している異形は、放置するべきだ。アイツらはおそらく、自分の身に危険が迫るか、作戦に支障が出ない限り動かない」
「そう言い切れる理由は?」
「異形らにここまで動きがないのは、間違いなく私らが抑止力になっているからだ」
「……あっちも下手に動いて私らとぶつかりたくないのか」
「おそらく」
「……じゃあなんで、アイツら体育祭の時に出しゃばってきた?」
「……、さぁ……?」
肝心な部分が解明されず、沈黙する二人。だがそれを打ち破るように、魔梨奈が声を上げる。
「とにかく!! この世界のシナリオが一つの結末に収束しているなら、私らはその先の結末で決着をつける!」
「そのための
魔梨奈はそう言うと、自らの額を魔理沙の額にくっつけ、その内容を直接脳に流し込む。
流し込まれた情報を数秒で処理し終えた魔理沙は、再び魔梨奈と向き合った。
「……わかった」
二人は向き合い、互いの拳と拳を合わせる。
祈りすら届かないこの世界を守るために、二人は誓いを立てた。
この世界で、最後まで戦い抜くことを。
■
二人はその後、軽く睡眠をとった後に朝を迎え、いつも通り朝食を食べた。
宣言通り二人分の食事を用意した母に魔理沙たちは複雑な気持ちになるも、ありがたく完食した。
その後、二人はどっちが登校するかを決めるジャンケンを行い、数百回におよぶ相子の末に魔理沙が勝利。そのまま瞬間移動で登校した。
音もなくA組の席に着席したことで、近くにいた数名のクラスメイトがギョッとこちらを見る。しかし魔理沙の顔を見た後に、ホッと一安心する。
「なんだ、結依か……」
「……!」
「これ毎回ビックリするんだよな……」
「それな」
「うーん、失敬」
切島、口田、瀬呂、砂糖からのお言葉を受け止め、反省する魔理沙。だが止めるつもりはない。
そうして魔理沙は切島ら4人に混ざって先日の体育祭について語り合っていたが、突如魔理沙の背後に人が現れた。
「魔理沙くんッ!!!」
振り返るとそこには、
「お、委員長じゃん。どしたん?」
「キミにどうしても伝えたいことがあって来たのだが、少し席を外してもらっても良いか?」
「……マジか」
意味ありげに絶句する瀬呂を見て、切島がピンと閃く。
「もしかして告白!?」
「違う!!! 断じて違う!!!」
「私に告白とか、モノ好きを通り越して異常なんだが?」
「違うと言ってるだろ!!!」
ゼェ、ハァと声を荒らげる飯田。その様子を見て、魔理沙は愉悦を感じた。
「話というのは、兄の件だ……!」
「あー」
「え? 何て?」
耳元で呟かれた魔理沙は理解するも、残りの4人の耳には届かず、首をかしげた。
「スマン、席外すわ」
「やっぱ告白か……!?」
「違う!!!」
「……!!///」
「後でなんて言われたか教えてくれよ結依!」
「絶対教えない♡」
魔理沙はそう言い残すと席を立ち、廊下の方に足を進めた。
そしてA組のデカイ扉をゆっくりと閉め、魔理沙は飯田と向き合った。
「インゲニウムには口止めしたんだけどなぁ」
「その事なんだが、まずは一言言わせてくれ。ありがとう……!」
飯田は深々とお辞儀をした。
「たまたま鉢合わせただけだから、気にする事はないよ」
「いいや、キミは恩人だ……! 兄からも礼を預かってる、もし良かったらウチに遊びに来て欲しいと」
「それは……うん、お兄さんが治ったら行こうかな」
「是非来てくれ!!」
ギュッと手を握られた魔理沙。なんというか、少々小っ恥ずかしい。
こうして面と向かってお礼をされたことは今までなかったので、何とも歯がゆい気持ちだ。
「ところで、どうやって兄を助けてくれたんだ? あの時は体育祭の真っ只中で、キミも手を離せなかっただろう?」
「体育祭が始まる前から分身してたんだよ。本体の私が体育祭で頑張っている間に、分身体の私がお仕事してたわけ」
「……そう、か」
イマイチよく理解できなかった飯田。そもそも飯田からしてみれば、魔理沙がなぜ分身していたのか、何の目的で現場付近を彷徨いていたのかが全くもって分からない。その答えはシンプルに、魔理沙が公安ヒーローとして最初からステイン捕縛を目的に動いていただけの話なのなが、この情報を公表することはできない。
「うし、教室戻るか」
「お、おう……」
魔理沙の言葉に流されて、魔理沙と一緒に教室に戻る飯田。その二人の様子を見ていた切島たちは、扉の向こうで行われていた会話の内容を邪推する。
「あの感じ……告白失敗か……?」
「でも飯田って、女にフラれたら目に見えて顔に出そうだよな?」
「なら逆に成功した……ってこと?」
「……!!///」
「あの二人付き合うのか……!?」
ドンドンと話がエスカレートする中、4人の間に黒い影がポツンと佇む。
「付き合わないよ♡」
「「うわッッ!?」」
4人中2人がガタガタッと音を立てて体勢を崩し、驚いた表情でこちらを見る。
「結依……! ビックリさせんなって……!!」
「いやぁ、勝手に色恋沙汰にされたら困るからねぇ」
「ゴメンて。ちょっと悪ふざけで盛り上がってただけだから……!」
「私に悪ふざけを仕掛けて生きて帰った者はいないぞ?」
「怖いこと言うなよぉッ!!」
「…………ッ」ガクガク
半分脅しのようなセリフに震える4人。なおこれまで魔理沙に悪ふざけ(暗殺)を仕掛けてきた輩はみな葬られたので、事実である。
その後、普通にホームルームの時間になったので5人は元の席へと戻り、いつもの授業を受けるのであった。
■
結依魔理沙が学校を通う間、留守番中の結依魔梨奈は自身の部屋に戻り、異形襲来への対策について考えを整理していた。
(仮にもし、この世界の結末が
我ながら突拍子のない推論だと感じているが、魔梨奈はその最悪の未来の訪れを"避けられない運命"だと確信している。
これは逆説的な推論、結依魔理沙を殺すというほぼほぼ不可能な事象が発生しているが、あの力の正体が強烈な因果律操作能力なら、この矛盾もきっと解消される。いや、
私も因果律操作能力を持つが、お互いの能力が衝突した場合、おそらく私は敗北する。確証は無いが、そもそも私の能力は"食べた相手の能力をパクる程度の能力"であり、因果律操作はあくまで副産物。本家本元の因果律操作にはおそらく手も足も出ないだろう。
なのでその対抗策として、私は
分霊箱とは己の魂を分割し、その断片を特殊な魔術で物体に封じ込めたモノだ。分霊箱が存在する限り、その作成者の魂は失われず、肉体を失ったとしても魂は現世に残り続ける。
また多重並列存在等のスキルによる魂と能力の複製が可能なため、理論上魔理沙は分霊箱を無限に作成できる。ただし、多重並列存在による分身は大幅に魔力を消費するため、乱用すると本体の弱体化を招く。
分身体も魔力を無限に生産できるとはいえ、その速度にも限度がある。なので、既に
これにより、本体を弱体化させずに分霊箱を量産。魂の片割れとはいえあくまで"分霊箱"なので、これらは"結依魔理沙"とは異なる存在。そのため世界が終焉を迎えたとしても、分霊箱は世界に残り続ける。
結末の中で
ただし現状の問題点として結依魔理沙と結依魔梨奈は
したがって今回は
魔梨奈は概ね考えを整理した後、能力で多重並列存在を作成しようと試みる。しかし、やる寸前で魔梨奈の心がブレーキをかけ、思わず躊躇ってしまった。
そしてフツフツと、魔梨奈の脳内に疑念が浮かぶ。
(意識のある自分を、自分で切り刻む……?)
その行為、そのおぞましさの意味を、魔梨奈は理解する。
それは、傍から見れば他の存在に手をかける"殺人"行為であり、自分の魂に手をかけるという点で見れば、"自殺"行為とも捉えられる。
それはあまりにも罪深い。例のあの人とは別ベクトルで、結依魔梨奈は自身の魂を穢すことになる。
だが、
自らの手で自らを滅ぼすことが、結依魔梨奈の存在意義を大きく揺るがしてしまうことを、魔梨奈は無意識に実感していた。
(無理だ……)
魔梨奈は諦め、ベッドに寝転がる。まさか自分がここまで奥手になるとは思わなかった。
(前の自分なら……)
きっと出来ていた。そう考えるうちに、ドンドン今の自分が前の自分と違うことを心で理解させられる。それではいつまで経っても元の状態には戻れない。
それでは世界を救えない。分かっている。だから。
(私は……)
天井に向けて手を伸ばす魔梨奈。その手は過去の
to be continued...
【紹介コーナー】
●例のあの人
→ハリーポッターシリーズに登場する闇の魔法使い、『ヴォルデモート卿』。本名はトム・マールヴォロ・リドル。ホグワーツ創始者の一人であるサラザール・スリザリンの末裔にして、半純血。これまで数多くの対抗勢力、敵対者を容赦なく殺害し、魔法界を恐怖のドン底に陥れた。それ故に、名前を言うことすら憚られるようになった。史上最強にして最悪の魔法使い。
●無為転変
→呪術廻戦に登場する特級呪霊、『真人』の持つ術式。魂の形を知覚し、その有り様を自在に変化、改造することが出来る。発動条件は人間態で直接素手で体に触ること。触れるだけで相手の魂を歪め、死亡あるいは怪物に変化させることができる他、自身の魂に触れることで自在に体を変形させ、さらに肉体の損傷すら魂の変形で治療することが出来る。さらに魂を分けて行う分身や、手を増やすことで戦闘中でも領域展開の印を組むことができるなど、多種多様な用途が存在する。
●多重並列存在
→転生したらスライムだった件に登場するスキル。正確には『多重存在』と『並列存在』(書籍版では並列存在のみ)であり、『並列存在』は本体の意識は分割しないまま自分と同じ肉体を生成し本体の意識の元で遠隔操作する能力。『多重存在』は『並列存在』よりもさらに上位の能力で、意識を分割してそれぞれ独立した思考で動くことができる他、別時間軸の世界線に自身(分身)を存在させることもできる。
書籍版では『多重存在』の特性も『並列存在』に統合され、同一時間軸上において独立した意識を持つ自分の分身をつくる能力となっている(結依魔理沙の分身もだいたいコレ)。なお、並列存在でつくった分身の魔力量(魔素量)は必ず本体の最大魔力量の10分の1以上でしか作れず、それよりも少ない魔力量で作ることは出来ない。また、分け与えた魔力(魔素)が分身体の維持費となるため、戦闘によって魔力が霧散したり攻撃や回復によって魔力を消費すると、その分回収時の量が減少する。分かりやすく言うならポケモンの『みがわり』である。
結依魔理沙は元々莫大な魔力量(最大で宇宙全体の総質量エネルギーの13倍の量を引き出せる)を備えている他、無尽蔵に魔力が増え続ける能力もあるため、多少多めに多重並列存在を作ったところさしたる影響は無い。MAX10体まで分身したとしても各分身体の魔力量は宇宙1個分以上の魔力量になるため、よほど相手が頭おかしくない限り負けることはない。