最強の魔法使い(自称)が暴れるそうです。RE: 作:マスターチュロス
【あらすじ】
職場体験に備え、ヒーローネームを決めたA組のクラスメイト達。
帰宅後、留守番していたはずの分身体、結依魔梨奈が行方をくらました他、警察から魔理沙に連絡が入る。
至急、保須市に来て欲しいらしく、結依魔理沙は瞬間移動で保須市に向かうのであった。
【保須市──路地裏付近──】
指定された地点に瞬間移動した魔理沙。近くには数人の警察官が待機しており、彼らの案内の元、路地裏へ移動する。
そこには、血まみれで倒れている人間の姿があった。
「……殺人事件か」
「はい……、それも一瞬で首を切断されて……」
「犯人に心当たりは?」
「……」
隣の警察官も、現場検証していた警察官も全員、
「……まさか本気で疑ってる?」
「可能性としてかなり低いですが、その線も考えています」
「正直だね。気に食わんけど」
魔理沙は現場検証中の警察官に近づくも、数人の警察官が銃を構えて牽制しようとする。
「……仮に私が犯人ならわざわざこんな面倒な状況にしないし、なったところでこの場にいる全員を皆殺しに出来るから、疑ったところで意味ないぞ」
「……ハァ……」
隣にいた警察官が溜め息をつき、銃を下ろすよう指示を出す。
「存在が規格外すぎて彼女の態度でしか推察できないの……ホントに嫌すぎる……」
「それはスマン」
魔理沙は素直に謝った。
「で? 何で私を呼んだ?」
「その前にまず、この事件について軽く説明させてください」
隣の警官はパラリと書類を捲り、メモした内容を伝える。
「午後4時頃、帰宅途中の近隣住民がこの殺人現場を発見しました。被害者は『
「調べによると彼はパトロールの最中で、午後1時頃、保須市某所にてヒーロー殺しステインの聞きこみ調査を行っていました」
「……ん? ステインは捕まったよな? 捕まえたの私だし」
「はい。ステインに関しては現在、警察側でどう公表するか検討中です。貴方の名前が出せないので」
「あぁ……辻褄合わせ」
魔理沙は納得したかのようにポンと手を叩いた。
魔理沙がステインを逮捕してから二日が経過したが、未だ各種メディアに公開されていないのはそういう事情だったらしい。誰に、"ステイン逮捕"の功績を違和感なく渡せるか、ヒーロー側と上手く話を擦り合わる必要があるのだろう。
もしくは、
「話を戻しますが、住民いわく、その聞き込み調査中に
「
魔理沙は首をかしげる。顔の黒い女の子など、日本ではそこそこ珍しい部類ではある。その女の子が事件の鍵を握るのだろうか。
少し考えるために顎を引いた瞬間、血溜まりに映った自分の顔が目に映った。
「顔の黒い……女の子……」
言葉を反芻する魔理沙。その特徴を備えた存在が、ちょうど目の前に映り込んでいる。
「私か!?!?」
「……ハイ。我々は貴方が重要参考人ではないかと疑い、公安委員会の方に連絡を取りました」
「しかし貴方は今日登校日で雄英高校に通っていると聞かされ、雄英側にも事情を聞いたところ、貴方の所在に関する十分な証言を得ました」
「したがってその黒い顔の女性が貴方ではなく別の誰かだったか、もしくは何らかの手段で偶然その場所にいた貴方だったのか、で意見が割れました」
「そういうことか……」
「貴方は現場に到着してから一切それらしい反応を見せませんでしたので、やはり人違いである可能性が高いか、もしくは貴方が規格外の力で被害者を殺したか……」
「……」
何とんでもねぇ2択で迷っているんだと、心の底から思った魔理沙。いくら私が完全犯罪をやってのける力があるからって、ここまで姿も動機も曖昧な犯人の候補として、私がピックアップされるのは流石に理不尽じゃないか?
だがこの推理、あながち間違いとは言えない。何故ならちょうど今不在で、私と顔が瓜二つで、最近家族になった怪しいヤツを知っているから。
ステイン捕獲作戦時、公安の方には自分の分身体を行かせると言っていた。それを警察側が知っていたかどうかは知らないが、あの時送り出した分身体が今なお解除できてないのは公安すら知らないことであり、家族だけの秘密である。
(魔梨奈……)
魔理沙は魂の回廊を通じて結依魔梨奈の居場所を探り始める。魂の回廊はざっくり言うと見えないパイプのようなもので、遠隔で魔力の受け渡しが出来る他、片方の大まかな位置情報を知ることもできる。
魔梨奈は魔理沙からコピペして生まれた存在なので、始めから魂の回廊が構築されている。本来は名付け等による契約によって構築するものだが。
(……対馬?)
随分と辺鄙なとこにいるようだ。何をしているか知らんが、緊急事態なので普通に念話を飛ばす。
(もしもし聞こえる?)
(……ッうおッビックリした!? 何!?)
念話越しに驚く魔梨奈。
(今そこで何してる?)
(いや……分霊箱をどこに埋めるか考えてたとこなんだけど)
(あ、そゆこと? ちなみにもう埋めたの?)
(……それはちょっと上手くいかなくて、その……暇だったから先に場所だけ決めておこうかなって)
(オーケーオーケー。とりあえずその話については後で共有してくれ)
(分かった。そっちのことも後で共有よろしく)
(うい)
ブツリと念話を切り、意識を現場に戻す。
(とりあえず、魔梨奈の言い分は理解した。詳しいことは後で聞くとして、まずは……)
魔理沙は再び現場検証中の警察官に近づき、その場でしゃがんだ。
「今からこの死体の頭から記憶読むから、避けて」
「は? 何を言って……」
「彼女にやらせてあげてください」
「……いやしかし、……」
「ほら許可貰ったから早く避けて」
魔理沙は周囲の警官を退かし、目の前の死体、その頭部に触れる。
人の体には様々な経験が蓄積されているが、その殆どが魂の消失と共に失われてしまう。
だが死の間際に経験した出来事は、魂の残穢として死骸に残存する。その出来事がよりショッキングであればあるほど、残る残穢の量も多くなる。また、その残穢によって怪異的存在が発生することも。
魔理沙はその残穢を読み取ることで記憶を読むことができる。ただしその時感じた感情も一緒に取り込むので、常人がやるとおそらく気が狂うが、魔理沙は魔理沙なので問題ない。
(…………)
魔理沙が体内に残穢を取り込んだことで、脳内に死亡直後の映像がフラッシュバックする。
それは、背後からの一撃。何者かが背後から走って近づいている音を聞き、振り返ろうとした瞬間、首を勢いよく撥ねられ、天地がひっくり返る。
首が空中でクルクルと回転しているため視界がブレまくり、地面に落ちた頃には視界が薄暗くボヤけていてよく見えない。
「…………せ…………だ」
微かに聞こえた声。それと同時に犯人が目の前を通ったが、被害者の意識はもう失われる寸前であり、半目でボヤけた視界しか見えない。
被害者は残していった家族に思いを馳せながら、絶命した。
「後ろから一撃で首飛ばされたから分からん!!」
魔理沙は死体から手を離し、その場にへたりこんだ。
「……何か他に手がかりは?」
「何か死に際に犯人がボソボソ呟きながらそっちの方向に歩いていったけど、視界がボヤボヤしてるせいで犯人の格好すら分かんなかった」
ハァと溜め息をつく魔理沙。思ったよりあんまり情報を抜くことができなかったが、魔理沙には秘策がある。
「……仕方ない、人体蘇生だ」
「蘇生!?!?」
「あんま見せたくないから、後でこの場にいる全員の記憶を改ざんするけど良い?」
「……ッッ」
口ごもる警察の方たち。もし仮に出来るなら、失われた命も戻り、事件解決の手がかりも得ることができる。
「何故我々の記憶を……! そうすればこれまでの調査記録がアンタのせいで無意味に……!!」
「私だって本当はやりたくないが、これを見たお前たちが友人や家族の死を回避するために私を頼るパターンが生まれるだろ」
魔理沙の言葉に警察官らが押し黙る。
「理不尽な死とか、不治の病とか重篤な病気くらいなら治しても良いけど、寿命伸ばしたいとかでせがまれるのは嫌なんだ」
「あとこれ切っ掛けに、80億人以上の人間から頼まれるのも気が滅入る」
「……」
魔理沙と警察の間で意見が対立し、ピリついた雰囲気が漂う。
「……記憶を弄ってもらって構わない。だから、救ってやってくれ」
「本気ですか!?」
一人の警官が驚きの声を上げる。もう少し慎重に考えるべきと助言するも、上司がそれを抑える。
「……まぁ言われなくてもするけど」
魔理沙は死体に向けて
その瞬間、因果律の逆転が発生し、血溜まりは生まれず、首に小さな切り傷を残したまま、五体満足で復活した堂池球太が現れた。
「これが、結依魔「仏ビーム」あばばばばばば」
魔理沙はこの事件に関与した全ての警官に片っ端から仏ビームを放ち、抵抗の余地さえ与えることなく記憶を改ざんした。また、警察が書き留めた書類も時間停止中に書き換え、都合のいい書類にすり替える。
これにより、堂池球太が殺害された証拠は無くなり、また結依魔理沙が蘇生した事実も消えた。後は本人に直接当時の出来事について聞くだけだ。
「サーカスさん起きてますかー?」
「……んぁ? ……ぁあ……何が、起きて……?」
「あなたは数刻前に背後からヴィランに攻撃されて気絶してました。当時のことについて覚えてますか?」
魔理沙が握り拳をサイドキックの人の口の前に運び、マイクのように扱う。
「……ちょ、ちょっと待ってください。頭が……ちょっとズキズキして……」
「ゆっくりで大丈夫ですよ」
魔理沙は堂池が落ち着くまで待ち、何度か深呼吸するのを見てから再び尋ねる。
「……ヴィランについては、あまり覚えていません。何かに切り裂かれたような気はしたんですが、具体的には……何も」
堂池はそう言うと俯いてしまった。
「……他に覚えていることはないですか?」
「他には……聞き込みをしていました。色んな人に、ステインについて何か知っていることはないか……聞いてました」
「その聞き込み調査の途中で、私と似た格好のした人物と出会いましたか?」
魔理沙が踏み込んで質問すると、堂池は顔を上げてこちらを向き、そしてまた俯いた。
「いや……
「あー待って、だいたい分かったけどこれ以上喋るとややこしくなるからストップ」
魔理沙が手でバッテン印を作ると、堂池は戸惑いながらも口を閉じた。
魔理沙は冷静に考察する。サーカスは顔の黒い女の子と喋った記憶は無いが、目撃証言はある。この場合、考えられるパターンは2つ。
1つ、目撃者が勘違いしている。日陰等で相手の顔が黒く見えたか、相手がガングロギャルだったか。2つ、目撃者は正しく、喋っていたのは結依魔梨奈で、話の末にサーカスの記憶を消した可能性。
後者のパターンは突拍子がないように聞こえるが、いくつか辻褄は合う。
まず、魔梨奈は外出していた。それがいつ頃からだったかは定かではないが、魔梨奈は分霊箱を埋める場所の候補地を探していた。
そして仮に魔梨奈が堂池と遭遇していた場合、まず堂池は思い出すだろう。雄英体育祭優勝者の結依魔理沙であると。しかし今日は平日、本来は学校に通っているはずの結依魔理沙が何故か保須市の街中を歩いており、非常に怪しい。堂池はステインの聞き込み捜査から魔梨奈本人への事情聴取に切り替える。
状況を察した魔梨奈は隙を見て堂池の記憶を改ざんし、自分と出会った事実を無かったことにした。だから堂池は私の姿に見覚えが無かった。
(このパターンは十分考えられるし、私でもそうする)
その後、堂池は背後から一撃で首を切り落とされ死亡。午後4時頃に遺体が発見され、私が堂池を蘇生し、今に至る。
ではこの中で一番怪しい人は誰か。そう聞かれて最初に思い浮かぶのは、やはり結依魔梨奈か。しかし本当に見違えていただけのパターンや、全く関係のない通り魔に襲われたパターンだって考えられる。
(まぁ懸念点があるとすれば……)
(魔梨奈が、覚醒した
そこに一抹の不安を抱えるも、とりあえず魔理沙は今すべきことに取り組む。
魔理沙は残穢から拾った記憶を改ざんし、その映像をMP4方式に変換し、圧縮した後、無から生成したUSBメモリにその映像を直接封入した。また、堂池の改ざん済み記憶映像も同様に変換し、圧縮してUSBメモリに入れておく。
この事件に"結依魔梨奈"が関わっているなら、警察に介入させるわけにはいかない。万が一、結依魔梨奈が犯人だった場合、止められるのは結依魔理沙ただ一人。下手に動かれるよりかは、自分一人で作戦実行する方がマシである。
なのでこの、証拠っちゃ証拠だけど信憑性の低い証拠を出すことで捜査を遅らせる。これで時間稼いでる間に、私がこの事件を解決する。
「警察官さん、私が読み取った過去の映像を全部このUSBに移したので、証拠になるかどうかは分かりませんが参考にどうぞ」
「う、受け取っておきます……」
「他の人からしたら信憑性薄いと思うので、ここにいる
そう言うと魔理沙は再び瞬間移動をし、その場から消えてしまった。
■
【結依家】
帰宅後、魔理沙は母親とともに夕食を食べ、魔梨奈の帰りを待っていた。
「……遅くね?」
既に食事を終え、テーブルには魔梨奈の分の飯だけがラップされたまま放置されている。
魔梨奈と会話してから約2時間。微塵も帰ってくる気配がない。
「いよいよ本気で怪しいんだが……」
記憶を共有すると約束したにも関わらず、一向に姿を見せないことに魔理沙は疑い始める。
「場所だけでも把握するか……」
魔理沙は魂の回廊経由で魔梨奈の位置情報を割り出そうとする。
しかしその瞬間、ブツリと
「は?」
魔理沙は謎の感覚に襲われ、ペタペタと自身の体を触る。だが体に異常は無い。
「……!!」
目を瞑り、気を集中させた瞬間、魔理沙は気づいた。先ほどまで繋がっていたはずの
「魔梨奈……!!」
繋がりを絶たれ、手がかりを失った魔理沙。疑惑が最高潮に達すると同時に、魔梨奈を起点とした最悪のシナリオが頭の中で組み立てられ、魔理沙は戦慄する。
このまま見過ごすわけにはいかない。だが、魔梨奈の現在地が分からない。もし魔梨奈が海外、はたまた宇宙、はたまた並行世界に逃げられれば、探す手間がシャレにならない。能力で探知不可にされても厄介だ。
しかし解決法はある。それは
先ほどの事件から察せるが、もし魔梨奈が本気で殺人事件を起こしたのなら、あんな死体をわざわざ野ざらしにすることはない。何度も言うが私も魔梨奈もその気になれば完全犯罪が可能であり、よほど魔梨奈がバカでない限りこんな状況にはならない。
だが、魔梨奈がバカになる可能性があるとすれば……
「……」
この捕獲作戦は、一度も失敗できない。瞬間移動されるだけで即計画が破綻してしまう。だから、念入りに計画を立てねば。
こうして、魔理沙は夜が明けるまで作戦を考えるのであった。
to be continued...
【紹介コーナー】
●仏ビーム
→勇者ヨシヒコシリーズに登場するキャラクター、仏が使用する技。このビームに当てられたものは記憶が改ざんされたり消えたり若返ったりする。