最強の魔法使い(自称)が暴れるそうです。RE: 作:マスターチュロス
【あらすじ】
200■年4月27日、日本にとある女の子が誕生した。
彼女の名前は『結依魔理沙』、個性は『食べた相手の個性をパクる』個性であり、その他にも様々な異能を携えていた。
彼女の力は世界の均衡を容易に破壊する。
彼女の力を恐れた国際機関は結依魔理沙をアメリカのとある施設に移送し、そこで監視及び隔離することを決定したのだった。
※この章は後から追加された外伝です。本筋にはちょっとだけ関与します。また、外伝飛ばして5話に突入すると外伝ラストのネタバレがあります。ご注意ください。
スパルタ教育(4.125話)
結依魔理沙が移送された場所は、アメリカ合衆国ニューヨーク市に位置する島『ロフト島』。四方全てが川に囲まれたその島には世界最大級の刑務所『カメリア』が存在する。
先進国の中でもトップクラスの犯罪件数を誇るアメリカでは犯罪者を収容する施設が何百と存在するが、その中でもここカメリアは『最も過酷な刑務所』として有名であり、現在においても多くのヴィランから恐れられている。
カメリアは個性黎明期以前から存在する施設だったが、人類が個性に目覚めて以降、カメリアは犯罪者の収容施設として常に機能している。黎明期には最大2万人ものヴィランを収監していたこともあったが、個性への対策が追いつかず、脱走や刑務官への反逆行為が横行し、一時期無法地帯と化したこともあった。
しかしヒーローの台頭や個性犯罪への対処法が充実してきた他、法整備が追いついたことも相まって、カメリア含む多くの刑務所で脱走者は徐々に減少していった。特にカメリアでは強力な個性をもった人間が刑務官として数多く務めるようになったので、刑務官に逆らう人間はほぼいなくなり、この時期からカメリアはアメリカ最大の刑務所の一角として名を馳せるようになる。
しかしヒーローが台頭し始めて間もない頃、数十人の警官が束になっても全く歯が立たないほどの力をもった人間が各国に出現し、世界の均衡は徐々に崩れだした。
喋るだけで人を殺す個性、自然環境に甚大な影響を及ぼす個性、国際条約によって禁止された危険物質を生み出す個性、世界の法則を自由に書き換える個性、あらゆる物質を崩壊させる個性……
そして、相手の個性をパクる個性。
そういった個性を野放しにできないと判断した国際社会はあるプロジェクトを立案、実行し、その一環としてアメリカではカメリアを含む3つの刑務所に新たな研究施設を設けた。
それらの研究施設の名はプロジェクト名にちなんで『
ワザップは表向きでは個性応用学(異能応用学)の研究施設として、個性の仕組み解明や個性を応用した商品開発を行っているということになっている。
しかしその実態は世界の均衡を崩しかねない人たちを超法規的手段を用いて収容し管理する施設である。
【この世界は強力な異能力者たちを人間社会から無理矢理引き剥がし、隔離することで秩序を保っている】
【果たしてそれは人間社会において健全と言えるのだろうか】
───────── By デストロ
■
そういった経緯により、結依魔理沙も同様にカメリア刑務所の地下研究施設に連れていかれた。そこで一通り施設内におけるルールや今後のスケジュール等について説明を受けた後、マイルームへ案内された。
部屋の中はベットから机に至るまで全て真っ白だった。それ以外にも部屋の扉の近くには連絡用モニターが設置されており、部屋の外に出たい時はそれを使って職員に連絡しなければならない。なお勝手に出た場合、この施設に入る際に付けられた特殊なリストバンドが反応し、全職員に緊急連絡が入ってしまう。カメリア刑務所最強の刑務官が鎮圧しに来るらしい。
ちなみに両親は刑務所内に入れないので、住む場所が決まるまで近場のホテルで過ごすこととなった。
仮にも父親で割とお高い役職についている男が何の準備も無しに海外渡航するとはなかなかキモが座ってるなと最初は思ったが、よくよく顔を見ると目の下にめちゃくちゃ濃いクマが出来ていたので、まともに考える時間は無かったのだろう。
あとカメリアに着く前、空港で母さんと再会したが、何故か母さんは上機嫌だった。話を聞いてみると、どうやら久しぶりの海外でテンションが爆上がりらしい。
これから娘が刑務所内の施設にぶち込まれるというのに何故そんなに呑気なのかと突っ込んだら、「魔理ちゃんは最強だから大丈夫よ!」と返された。まぁそうだけど、何かそうじゃない。
とりあえずフカフカのベッドにダイブする魔理沙。ここに辿りつくまで本当に長い時間拘束されたから精神的にめちゃくちゃ疲れた。なので寝る。
魔理沙はものの数十秒で寝始め、明日に備えて力を溜めることにした。
『Get up hurrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrry!!!!!!!!!!!!!!』
「ッんああああッ!?!?」
雀の鳴き声よりも喧しい声が部屋中に響き渡り、焦って布団を蹴り飛ばす。また何か襲撃でも起きたのかと周囲の状況を確認した魔理沙だったが、特に何も起きていない。
『新入り!! 今何時だと思っている!? もう朝の7時!! さっさと着替えて運動場に集合しろ!!!!』
「…………
寝起きで全く理解出来なかったが、精神安定スキルと思考加速スキルのダブルアップにより魔理沙はこの状況の全てを理解した。
この研究施設には一応教育プログラムなるものが存在し、基本的に午前中は戦闘訓練、午後は勉強といった感じだ。自由時間は午後5時から午後8時30までで、午後9時までに自室にいなければ特別収容プロトコルが下される。
そういう説明を昨日聞かされてはいたが、まさか今日から実施するとは。心を読んでいれば察せたが、昨日の私は省エネモードだったので仕方ない。
魔理沙は指パッチンで施設特製の学生服に着替えると、連絡用モニターの方に駆け寄った。
「
『とっくに開いている。分かったらさっさとこんかい!!!!』
「理不尽」
先に言えと、言いたくなる気持ちを抑えて魔理沙は扉を開けた。
…………あのジジイの理不尽さも、感情のコントロールに必要な訓練だと思えば辛くない。どんな目にあおうと、前を見据えて真っ直ぐ歩けば私はさらに強くなれるはずだ。
扉を出た後、AI搭載型のサポートロボの指示に従って突き進むと、運動場にたどり着いた。
「入学早々遅刻とはいい度胸だな新人!!!!! 罰として腕立て伏せ10分! 腹筋10分! ランニング10マイル(16km)! これを3セット終わらせるまで訓練への参加は禁止!!!! さぁ始め!!!!!」
開始早々かなりハードな課題を課せられてしまった魔理沙。一般的な成人男性ですら音を上げるメニューだ。
「……
「年齢なんぞ知らんッッ!!!!!!!!!!」
なけなしの抵抗も虚しく、仕方なく腕立て伏せを始める。…………地味に回数じゃなくて時間指定なのが腹立つが、こういった隙間時間の間は物理と化学の勉強に集中出来るので丁度いい。
魔理沙は親から貰った物理基礎の教科書と化学の教科書を無詠唱で召喚し、第3の腕を生やすことで教科書を捲りながら腕立て伏せを続ける。
勉強、筋トレ、能力コントロール、これら全てを同時に行うことで並列思考能力も上げながら全身全てを鍛え上げるという超完璧プラン。前世の自分では絶対にできなかっただろうが、今の私なら完璧に遂行できる。
とはいえ勉強に関しては教科書10分読んだところで得られるものは限られている。なので思考加速スキルを用いて体感時間を100倍に増やし、1000分の知識をたったの10分で脳に詰め込み、無理矢理暗記スキルで固定させた。
「……ッフがっ!!」
情報のキャパオーバーで鼻血が出たが関係ない。この力を完全にコントロールするには相応の知識と技術、そして経験がいる。だが普通の特訓では100年かけても魂に毛が生える程度にしか身につかない。
だからこそ、限りある時間をあらゆる手段を用いて無限に引き伸ばし、ありとあらゆる力を理解する。そのためならば、鼻血を垂らそうが理不尽押し付けられようが気合いで全部乗り越えてみせる。
「……はァッ……次は腹筋……!」
腕立て伏せを終えた魔理沙は腹筋に移行し、基礎物理学の勉強の続きをしながら第4の腕を用いて属性魔法の練習を行う。
だが物理の教科書は長いし、属性魔法はあらゆる作品に登場するため覚える量が尋常じゃない。そのため、時間停止能力で時間を止めながら少しづつ覚えていく。
(垂直抗力N=mg cosθ、静止摩擦力F=mg sinθ……動摩擦力F'=μ'N……これが成り立つ理由は……)
(属……せ、……法…………ド…………クエ…………メ…………から…………や……)
並列思考がカオス過ぎて熱が出始めたが、構わず続ける。ただリソースを物理基礎と腹筋に割いているせいで属性魔法の特訓が中々上手くいかない。なので今度は属性魔法の方に集中し始める。
(メラ……全身を巡る力を感じ、魔力回路を形成して指先に誘導し、周囲の酸素を巻き込むイメージを保ちながら着火……!)
指に火を灯すことに成功した魔理沙は、この動作を意識せずに出せるよう何度も繰り返し行う。勉強はまだしも、こういう戦闘に関わる技は暗記スキルに頼らず身につけたいところ。何より暗記スキルは自分の目で見た映像は覚えられても、その時に感じた感覚やイメージまでは保存できない。あと情報を手軽に圧縮する個性みたいなのを持ってないから、人力で圧縮する必要がある。なので部屋に帰ったら覚えた物理基礎の知識を復習するつもりだ。
そもそもなぜ勉強する必要があるのか、その理由について簡潔に答えると、物理化学の知識が無いと効果を発揮しない能力がいくつか存在するからである。
特にベクトル操作、物質創造は仕組みを理解していないとイメージが難しい。ベクトル操作は1度だけ飛行機内で試したことがあるが、その時は間違って自分の血流を反転させてしまい地獄を見た。なので暫くは使いたくない。
大方物理に関する知識を蓄えてから再チャレンジするつもりだ。
(y=A sin2π/T・t…………、文字…………多…………)
(128……129…………130…………131……132……)
(親指に魔力の正のエネルギーを集中させ、中指の方には負のエネルギーを集中させ、それを勢いよく擦りながら雷のイメージを具現化し……)
並列思考にも少し慣れてきたおかげで、勉強も腹筋も魔法もスムーズにやれるようになった。だが暫くするとどこかで集中力が切れるので気は引きしめておく。
こうして50時間以上にもおよぶ時間停止により、ようやく物理基礎とド〇クエの属性魔法を習得した魔理沙は次にランニングコースへと向かう。
運動場に用意されたコースの外周は1周につき約2km。つまり8周すれば16kmだが、1周が長すぎてとても人間には走りきれない。元々競馬用のコースだったらしい。
だが丁度いい。程よく長いおかげで足回りの筋肉を鍛えながら、魔法の練習が出来る。少なくとも腹筋しながらの時よりも並列思考がかなり楽なはずだ。
「あああああああああああああああ!!!!!!」
蓄積した疲労を、叫ぶことによって吹き飛ばし、全力で走る魔理沙。しかしいくら異形魔理沙に生まれ変わったとはいえ、4歳の体で50時間以上ぶっ続けで動き続けるとどうなるか。
だいたいこうなる。
「ああああああああ"ッ……ッあ"あ"ッ──!!!」
疲労でバランスを崩した魔理沙は頭から勢いよく地面に激突し、地面と顔面を削りながら転がっていった。
かなりの速度で飛ばしていたので、顔面へのダメージがかなり酷い。今すぐにでも魔法か何かで直したいが、治癒魔法に関してはまだ練習していないので上手く直せるかどうか分からない。
……いや、これを機に治癒魔法の練習をするのもアリかもしれない。失敗すると多分顔面の骨格が変形するかもしれないが、その時はまた壊して再構築すればいい。
「新人は黙ってやれェ────ッ!!!!」
(うるせェ!!!!)
再び練習のために時間を停止し、何となく感覚で治癒魔法を顔面にかけてみる。すると傷は塞がりはしたものの、肌の質感が何となくスライムに近い上にめちゃくちゃ痒いい。
(……失敗か。これも勉強が必要なタイプだな……)
魔理沙は追加で生物学の本や医学に関する本を大量に召喚し、静止した時の中で延々と本を読み続けた。
(…………あ、ランニング忘れてた)
魔理沙は勢いよく立ち上がり、サイコキネシスで全ての本を空中に浮かせながら走り始めた。全ての本のページをサイコキネシスで捲るのはかなり負担がかかるが、腕を生やす必要がなくなったのでとても走りやすい。でも頭が痛い。
(基底層の細胞分裂の超活性化、基底層の細胞分裂の超活性化…………!)
(ついでに足の疲労回復、足の疲労回復……!)
(次カーブ次カーブ次カーブ次カーブ今カーブ今カーブ今カーブ今カーブ今カーブ…………そう!!!)
何度も何度も試行錯誤し、身体を限界以上に鍛え上げ、自身の潜在的な力をひとつずつ目覚めさせていく。
本当に時間がかかるが、時間なんていくらでも引き延ばせるのでこの調子で頑張っていきたい。
とはいえ今の私の能力の総数は優に5000万個以上あるため、1日100個ペースで覚えていっても完全習得まで最低1300年以上はかかる。流石に1300年間時を止め続けると頭がおかしくなるので習得速度を上げたい。
一日につき5000個、これなら約26年で完全習得できる。
だったら変に並列作業するより、休憩時間のときに1年ずつ時を止めて個性を習得した方が早い気がしてきた。うん、絶対にそっちの方が早い。
魔理沙は全ての本を自分の部屋に送還すると、即座に時を再始動し、僅か10秒で外周を8周分走りきった。
「Finish!」
「…………右腕を出せ」
監督の言われるがままに右腕を差し出すと、監督は謎の白い機械で付けていたリストバンドに光を当てた。
「…………確かにランニング10マイル走り切ったようだが、腹筋が足りない。もう10分追加で腹筋しろ」
一瞬、「は?」と言いかけたが、よくよく考えたら腹筋をしてる最中はずっと時を止めていたのを思い出した。つまりカウントされてない。
「何だその不満な顔は、やる気ないのか!?!」
「……Fa…………OK, I'll do it now」
面倒事を起こすわけにはいかないので、仕方なく10分間腹筋を行う。
50時間に比べればたかが10分、すぐに終わるはず。そう思って腹筋を続けたものの、飽きてきたせいか1分がやたら長く感じる。
(…………そういえば他の人は今何してるんだ?)
もう完全に集中力が切れた魔理沙は腹筋をしつつも周りを見渡した。どうやら他の人は軍服を着た人達とナイフを使った戦闘訓練をしている様子。
自分以外の受刑者たちをマジマジと見つめていると、明らかにヤバそうな人間を一人見つけた。その者はよく分からない鋼鉄製のマスクで口元を封じられており、全身真っ白な金属性スーツで身を固めた女の子っぽい子。かなりの美人さんだが、目のヤツれ具合からとてつもない闇を感じるし、彼女が人を殴る時、やたら恍惚とした表情を見せるから、多分相当性格がねじ曲がっている。面白そうだがこういう子とは関わってはいけない。
次に目に付いたのは、中国人風のおじいちゃん。唯一戦闘訓練に参加しておらず、ただ座って見てるだけなのでやたらと目立つが、それよりもあのおじいちゃんの足元で蠢いている
最後に目に付いたのは、ナイフ捌きがかなり上手な男の子。年齢的に小学5、6年生ほどだろうか。個性は一切分からないが、小学生にしてはかなり体幹がしっかりしていて激しい動きにもついてこられている。
ここの収容者された人のほとんどが軍隊または公的機関に所属するため、戦闘技術の取得は必須項目。練習の様子からも本気具合がビシビシと伝わってくる。
私も今すぐ練習に混ざりたいが、腹筋完了まであと5分かかる。ここは大人しく我慢だ。
そしてなんやかんや5分が経過し再び監督官にリストバンドを見せに行くと、早急に今日の授業に参加するよう指示が下った。
To be continued....