最強の魔法使い(自称)が暴れるそうです。RE:   作:マスターチュロス

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警告:前話にて暴走した魔梨奈でしたが、後半話を繋げづらかったのでやむを得ず大変更しました。このまま読み進めるといきなり「え?」ってなるので変更前の56話を見た方はもう一度、変更後の56話の後半あたりを読んでくださると幸いです。本当に申し訳ございません。許してください、何でもしますから。


なお、変更後(56話に編集済みとついている)の56話を既に見た方はこのままお進み下さい。


※今回は今まで以上に激しい戦闘が見込まれます。わけわからないかもしれませんが御容赦下さい。





テメーは俺を怒らせた(57話)

 

 

 

「ししょおおおおおおおおおおおお!!!」

 

「頑張ったな緑谷きゅん。こんな、こんなにボロボロ………というか死にかけてない? おい、誰だ緑谷きゅんをここまでボコボコにしたヤツは。シバくぞ」

 

「そ、それがですね師匠………」

 

 地面に座りつつ、緑谷は現在の状況を魔理沙に伝える。保須で脳無が複数体出現し、自分が脳無に攫われかけてなんだかんだ倒したこと。その後路地裏にて操られた魔梨奈と出会い、交戦し、そして今に至る過程を緑谷は熱心に語った。魔理沙は何も言わず、緑谷の治療を行いながら淡々と話を聞いていた。

 

「なるほど。魔梨奈は職場体験サボってたわけじゃなくて、何者かに操られてたと。アイツ、三日前は大丈夫だったんだけどな」

 

「………はい。助けたかったんですけど、やはり力不足で………痛っ」

 

「全く無茶をするぜホント。私と全く同じ個性が暴走してるっていうのにさ、果敢に立ち向かうなんて緑谷きゅんはアホか。私の個性の危険性を昔っから理解してたのは緑谷きゅんだというのに、ホント、ボロボロになっちゃってさ」

 

「本当……すみません………グッ!」

 

 目に見える傷は全て消し去り、元通り動ける身体に戻したとはいえ、身体が受けたダメージはそう簡単に抜けることはない。特に緑谷はマッスルフォームによる強化形態を維持しつつ魔梨奈の猛攻を耐え凌いだのだ、いったいどれほどの負荷がかかっていたのか。一歩間違えれば死にかねない危険行為に魔理沙は注意しつつも、自分を待ってくれたことに感謝する魔理沙。

 

 しかし感謝を言い終えた頃には、緑谷は既に寝てしまっていた。どっちにしろ絶対安静だし、このまま緑谷の家のベットに送り届けた方が安全と判断した魔理沙は、緑谷の部屋にスキマを繋げ、優しくベットに乗せてあげた。

 

「………辛い思いをさせて、ごめんな……」

 

 緑谷の頭を優しく撫で、深い哀しみに昏れる。この力があってなお、自分は幼なじみ(弟子)一人救えないというのだろうか。保須の惨状も、自分がもっとしっかりしていればこうならなかったのではないかと、取り留めのない罪悪感が魔理沙を襲う。

 

 これからの自分が出来ること、それはこれ以上被害を拡大させないこと。この保須の悪夢を、私の手をもってして終わらせること。それが今私に出来る唯一の手段、ヒーローとしての使命。

 

「いい夢見ろよ、緑谷きゅん。今から私は、緑谷きゅんや街の人が見てしまった悪夢を、終わらせに行くからな」

 

 覚悟を決めて立ち上がる魔理沙。魔梨奈を乗っ取った犯人は目星が着いている。そいつに地獄を味合わせたら、帰ってみんなでお疲れパーティーを開くぞ。

 

「さぁ、"正義執行(ヒーロー)"の時間だ」

 

 そう言って魔理沙はスキマを閉じ、保須(戦地)に戻った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ____________________

 

 

 

 

 

 保須市の外れ、今は大規模な戦闘によりほぼ瓦礫と化した領域の中、異常なまでにエネルギーを蓄えた存在が堂々と佇んでいた。

 

「はァ、可笑しいなァ。アレほどのエネルギー弾ならそろそろ大爆発を引き起こしてもいい頃何だが」

 

 魔梨奈は自分の手を開いては閉じ、開いては閉じと動作確認をし、近くにあった大きな瓦礫に向けて衝撃波を放つ。問題なく粉々に砕けた瓦礫を見て、魔梨奈は自身のコンディションに不具合はないことを確信する。

 

「最初はクソだったが、慣れると本当に便利な個性だなァ。今までずーーッとコイツが持っていたなど、勿体なさすぎる」

 

 先の戦闘で個性の扱いに慣れたのか、かなりスムーズに能力を発動できるようになっていた。言語も不自由になることも、勝手に能力が発動することも無く、完全にこの能力を手中に収めたと感じた彼女は、何も無い空間で大きく高笑いする。

 

 もはや誰にも止められまい。そう思っていた矢先に、自分と全く同じオーラを纏った人間が近づいていることに気づく。

 

「誰だ!!!」

 

 戦闘態勢に移行する魔梨奈に対し、近づいてきた人物は惚けた顔で、ある意味堂々とした態度で、魔梨奈の目の前に現れた。

 

「誰って、私だよ私。ったく忘れたのか? 家族の顔すら忘れるなんて、薄情なヤツだぜ」

 

「魔梨奈さんよォォォ…………」

 

「ッ!?!」

 

 瓦礫の影から現れたその女は、自分以上のドス黒いオーラを纏い、同じ金髪で同じ魔女のような服を着た、瓜二つな見た目をした女だった。いや、他人ではない。魔梨奈は思い出した。この人間は、己が野望を叶える際、最も邪魔になる存在であることを。自分とコイツは、何れにしても必ず戦わなければならない宿命の敵であると。

 

「お前は、結依魔理沙」

 

「やっと思い出してくれた? お姉ちゃんすっごく嬉しい。けどもっと言うなら、()()()()()()()()()()()()()()が消滅してくれればも〜っと嬉しいかなぁ」

 

「何ィ……」

 

 不快な表情を浮かべる魔梨奈。魔理沙は特に表情を変えることなく、話を続ける。

 

「私は回りくどいこと言うの嫌いだからさ、単刀直入に言わせてもらう。お前、()()()()だろ?」

 

「はァ?」

 

 魔理沙の訳の分からない発言に首を傾げる魔梨奈。だが魔理沙はそのまま話を続ける。

 

「おっと、惚けても無駄だぜ? お前がステインである根拠は全部大賢.私が用意したからな。今から証拠述べてってやるから耳の穴かっぽじってよーく聞け。一回しか言わん」

 

 魔理沙はそう言うと、スキマから記録表のようなものを取り出し、そこに書き留めていた言葉の数々を淡々と述べ始めた。

 

「ここ最近、腑に落ちない点がいくつかあった。なぜ私と魔梨奈は、いつまで経っても元の姿に戻れないのか。大賢者曰く、「僅かな存在値の差」がこの現象を引き起こしていると言っていたんだが、それはつまり存在値がズレた原因が体育祭終了以前にあったってことだ。まぁ心当たりがあるとすれば、屋内戦闘訓練、USJ襲撃事件、雄英体育祭、そしてステイン戦の四つに絞られる」

 

「体育祭終了後、私らは()()を探した。個性は同じ、身体能力も等しく、身体の構造や臓器の大きさ、バストサイズ、全部同じだった」

 

「が、唯一違った部分、私は持っていなかったが魔梨奈だけ持っていたモノがあった」

 

「本来の人格以外に、()()()()()()()()()()()()()()()

 

「………」

 

 押し黙る魔梨奈。

 

「二重人格…………と言えるほどソレは立派なもんではなく、矮小で直ぐにでも掻き消えそうなくらいひ弱で脆そうな、そんな精神が魔梨奈の精神世界の隅っこに潜んでいた。今思えばコイツは精神世界の腫瘍のようなモノで、見つけたら直ぐに摘むべき芽だった」

 

「さっき言ったように、私にも別人格の芽があるか調べたが私には存在しなかった。つまりこの人格はステイン戦で憑いた代物であり、原因はステインにあるということになる」

 

「もちろん、ステインが憑けた人格なんだから、魔梨奈についた別人格はステインの人格に決まってるよなァ?」

 

 魔理沙の目付きが一層悪くなる。

 

「ここで私に質問、ドラえもん。かなりの精神耐性を持っている魔梨奈がなぜ、ステインの人格に取り憑かれてしまったのか。余程強力な能力でやらん限り、取り憑いて乗っ取ることは不可能なはずなんだが、もしお前がそれに特化した強力な力を手に入れたのなら、出来なくもない」

 

「余程強力な能力、私に匹敵するほどの力、引っかかると思わないか? そういえば私らがチート能力で魔梨奈の存在をマインドコントロールで捏造した時、他のみんなは気づかなかったのに()()()()()気づいていたよなァ。もっと言うなら、確かステインは魔梨奈との戦闘で目覚めてたよなぁ!」

 

「そう覚醒!  お前は覚醒の力で魔梨奈の精神に『人格』を植え付け、寄生虫のごとく成長して魔梨奈の精神を乗っ取ったのさ!! しかもお前は他の覚醒者と違って「精神」が強化されていたからな! 他者の精神を乗っ取るなんて容易いんだろ?」

 

「ここまで回りくどく言ってやったんだ。さっさと自白して正体を明かせ。今ならびっくりドンキーのハンバーグステーキを三割引で食えるクーポンを進呈しよう」

 

 詰め寄り、威圧をかける魔理沙。追い込まれたと思われた魔梨奈だったが、魔梨奈はケラケラと笑いつつ魔理沙に反論する。

 

「はァ、言わせておけばぬけぬけと。人格の植え付け? 精神を乗っ取る? 覚醒者? 馬鹿馬鹿しいにも程がある。存在値だかなんだか知らん値まで使って俺を貶めたいのだろうが、それを吐いたところで結局はお前の被害妄想止まりだ。無意味に等しい」

 

「………あー、そうだな。そう言い返されると流石の魔理ちゃんも困る。確かにチート能力なんて、傍から見れば存在しないに等しいもんな。プログラミングについて全く知らん人に高度なプログラムを見せたとこで理解されるわけないし、私がどんなに言っても結局私の被害妄想止まりだ。お前の言う通りだよ」

 

「だろう?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ま、仮にお前が魔梨奈じゃなかったとしても、お前は器物損壊罪、許可の無い個性の使用及び個性による暴行罪etcで現行犯逮捕だけどな」

 

「……」

 

 

 シーン

 

 

 静まり返る世界。瓦礫で埋め尽くされたこの世界の中心に二人、魔理沙と魔梨奈が立ち尽くす。誰も言葉を発さず、時間だけが過ぎていく。しばらく立ち尽くしていると、魔梨奈が引き攣った笑みで暴露した。

 

「ハッ、ハハハッ、あーあァ。あのまま騙されて帰っていれば死なずに済んだものを.」

 

 魔梨奈? は必死に強者のオーラを取り繕いながら魔理沙に威圧をかける。

 

「そうさァ、()()()()()()だ。この身体を手に入れた代わりに、コイツの姉妹であるお前くらいは見逃してやろうと思っていたが、正体がバレた以上戦わざるを得ないようだァ」

 

「最初っからそう言えば、こんなに文字数喰うこともなかったんだけどな。さぁ、後は分かってるなステイン?」

 

 刹那、殺気と同時に魔理沙は強烈な波動弾を放ち、ステインに炸裂する。躊躇がない攻撃にステインはたじろぎ、再び立ち上がろうとすると喉元に剣先を向けられてしまった。

 

「お前の罪は三つ。一つ、関係の無い人間まで巻き込み、さらに街に被害を及ぼした罪。二つ、私の大切な幼馴染を傷つけた罪」

 

「そして三つ、お前は、私の家族を傷つけ、挙句の果てに身体を乗っ取り暴虐の限りを尽くした」

 

「私にはお前を()()義務がある。倒すじゃあない、殺す………だ。さしずめお前の本来の覚醒能力は魂撃ではなく『正義之伝染(ミーム汚染)』。お前の正義(人格)が人から人へと伝染し、『信者(共感者)』が増える。人助けの正義なら平和だが、お前の場合、ただ気に食わない人間を殺すだけ。人殺しの正義が信者を犯罪者へと変えるんだ。酷い話だろ? ミーム汚染は立派な干渉系(チート)能力、警察の手に負えるわけがない。なら、私がお前を殺すしかないだろう?」

 

「だから、お前を、この場で、殺す」

 

 溢れんばかりの殺意に周りの瓦礫は砂と化し、地は震え天は嘆く。今までに類を見ないほどの魔理沙の変わり様、内に秘めた暴虐性がステインに何をもたらすのか。ただ殺されるだけでは済まされない。

 

 魔理沙は構えていた剣先でステインの顎下を軽く刺し、殺意を見せつける。

 

 しかしステインは恐怖に屈しなかった。確かに魔理沙は強い、だがステインは魔梨奈の記憶から今までの魔理沙の戦績を知り、勝てる要素を見出した。そして確信する、この殺し合いは自分が有利であると。

 

「…クックック、フッハッハッハッハッハ!! 殺すだと? お前は本当にコイツから話を聞いたのか? コイツの身体を乗っ取る前の時点で既に俺はコイツと互角の力を持っていたんだ。そして今、俺とコイツは合体し、単純計算なら戦力はお前より倍強い。実質二対一、お前のどこに勝算がある?」

 

 自信げに語るステイン。自惚れているわけではない。さきの二対一というのに加え、魔理沙と魔梨奈の戦闘スタイルが同一のものだとするならば、ステインは既に魔理沙の動きを把握している。この身体の記憶を読み取れば初見殺しの能力も対処可能。実質魔理沙の手の内は全てバレているのに等しい。

 

 身体能力、個性が同じで、精神面、戦闘技術、判断力がステイン側に有利ならば、負けるのはどう考えても結依魔理沙である。

 

「………勝算ねぇ。殺ればわかるさ」

 

 魔理沙は全耐性をフル稼働させ、全ての個性をノータイムで発動させられるよう全身にエネルギーを光速で巡回させ、ステインを見据える。もう魔理沙は笑ってなどいない。ただ対象の存在に無限の絶望を刻み込むだけの修羅へと変化していた。

 

 対するステインも全耐性をフル稼働させ、エネルギーを光速で循環させる。ステインは高揚していた。この絶大な力を全力でぶつけ合えば、いったいこの世界はどうなってしまうのか。激しい戦いで待ち受ける臨場感、熱量、スリル、それらは己の糧となり、快感となり、全身を駆け巡るだろう。待ちきれない激戦にステイン(魔梨奈)は舌舐めずりした。

 

「絶対テメェから妹を取り返してやる!!」

 

「来い!! ここがお前の死に場所だァ!!」

 

 両者共に地面を強く蹴り、反動で一気に距離を詰める。蹴りの衝撃波が後方の瓦礫を跡形もなく吹き飛ばし、遂に魔理沙とステイン(魔梨奈)殺し合い(姉妹喧嘩)が始まった。

 

 まずは両者、拳による撃ち合いと瞬間移動による死角からの強襲を繰り返し、何度も何度も衝突し合う。直接顔面を狙ってきた魔理沙に対しステインは慣れた手つきで捌き反撃する。が、魔理沙は無詠唱で防御魔法を唱え、攻撃を一瞬防ぐと再び攻撃を仕掛ける。

 

「どうしたァ…その程度か結依魔理沙。もっと本気で来いッッ!!!」

 

「……ハッ、私は何時だって本気だ。だが今回の私はいつもより百億万倍本気だ!」

 

 魔理沙が指パッチンした途端、ステインの視界から魔理沙の姿が消えた。魔理沙の代わりに出現したのは数千万本の剣。剣の一つ一つ全てが伝説に名を遺した由緒ある剣であり、人類の財産とも呼べる代物がステインの全方位を取り囲み、剣先を向けている。

 

「さぁ、伝説を前に散れ!!」

 

 

「ゼロ距離全方位、王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)!!」

 

 

 あらゆる英雄の剣で出来た球体は徐々に収縮していき、球体内にいるステインに襲いかかる。

 

「子供騙しな、瞬間移動(ワープ)で避けられる」

 

 ステインは一瞬で別の場所へ移動し、串刺しになる未来を回避した。が、回避先で避けたはずの聖剣が突然目の前に出現し、すかさず回避するも背後からの槍に対応出来ずステインは腹部を貫かれた。

 

「な…………ッ!?」

 

「幻符『殺人ドール 〜 ゲイボルグver.〜』」

 

 容赦のない魔理沙の連続攻撃。幻符「殺人ドール」は十六夜咲夜のスペルカードだが、今回は普段のものとは違う特別版。魔理沙が投げたのは反射するナイフではなく因果律操作によって確実に心臓を貫く神槍、「ゲイ・ボルグ」を投げたのだ。さらに一本ではなく数百本、その全てがステインの心臓に目掛けて無慈悲に突貫する。

 

 ステインは直ぐに腹部を貫通している槍を灰に変え、襲いかかる数百本のゲイ・ボルグを回避しようとするが、ゲイ・ボルグは心臓必中、逃げても時間を先延ばしにするだけで意味が無い。だがステインは逃げつつも魔梨奈の記憶を読み取ってゲイ・ボルグの性質を知り、それに対応出来る能力を見出した。

 

「ザ・ワールド・オーバーヘブンッ!」

 

「残念、それは予測済みだ.」

 

「ッ!? 何だとッ!!」

 

 ゲイ・ボルグがステインの心臓に到達するより速く、魔理沙は懐に接近していた。この女、いったいどこまで先を読んでいるのか。こちらも先読みしているが、この展開は自分が読んだ未来の中で3番目に確率の低い未来だったはずだ。起こるはずがッ

 

 

不可説不可説転撃(無量大数の5400溝乗攻撃)

 

 

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 直後、ステインの視界は完全にシャットアウトした。一瞬だけ真っ白い光が目に映ると、すぐさま暗転し暗黒に包まれる。

 

(な………んだ、いっ、今のは…ッ!?)

 

 先の魔理沙の攻撃は速すぎて見えなかった。せいぜい分かるのは、一秒間に何万発か拳を連続で叩き込まれたという感覚だけ。そして今、暗闇に包まれて何も出来ないという結果だけが残っている。ただそれしか言えない。

 

ドゴォン!! 

 

 地面と衝突したステイン。今ので骨格全体がバラバラに砕け散ったが、持ち前の再生能力で自動修復していく。

 

「ここは………どこだ……アイツは何処にいる」

 

 剥き出しになった白い岩石、おびただしいほどのクレーターの数々がステインの目の前に広がっている。

 

 とても地球とは思えない光景である。もっと言うなら、昔テレビでチラッとだけ見た事のある小惑星イトカワのような、どこか別の星に来たような光景だった。

 

「あの野郎、まさか地球の外まで俺をぶっ飛ばしやg」

 

「見つけたステイン。ここまで吹っ飛んでたか」

 

 背後に出現したオーラにステインは反応し、咄嗟に下がって拳を構える。

 

 暗黒の夜空に浮かぶ深紅の月、恐らく地球から遠く離れた別の惑星(衛星)なのだろうが、その惑星の中心に黒い魔女のシルエットが映し出されている。その魔女は常人ですら可視化するほどのオーラを放ち、瞳の奥底に紅い波動を宿していた。

 

「魔理沙、お前何しやがった」

 

 睨みつけるステイン。だが魔理沙はケラケラと答える。

 

「別に? ただ一秒間に不可説不可説転(ふかせつふかせつてん)回ぶん殴っただけさ」

 

「ふかっ、なんだそれは」

 

「あー教えてやりたいところだが、10の指数を38桁も書き連ねるのは面倒くさいからパスだ。自分で調べろ」

 

 ウザったらしい口調で喋る魔理沙にステインは若干のイラつきを感じながらも、ステインは先の反省を数秒で行った。

 

 この身体は大量の個性を持っているが、個性名を言わなければ個性を発動出来ないのは欠点と言わざるを得ない。だが相手は己の個性を成長させたのか、小規模の個性ならば無詠唱で放つことが出来る。他の人間相手ならば欠点にはならないが、魔理沙が相手だと話が変わる。攻撃を捌く際、相手の方が速ければ必然とこちらが追い込まれてしまう。

 

 さらに自分は個性をあまり把握していない。記憶を見れば対処可能だが、まず相手がそんな悠長に待ってくれるはずもなく、連続攻撃の餌食となってしまう。さらに個性が多ければ多いほど多様な戦闘スタイルを編み出すことが出来、それぞれの特徴を把握しなければ理解が追いつく前に殺されてしまう。

 

 そしてこの戦いで最も大事なのは、何を持って勝利となるのかである。常人ならば、肉を裂き内蔵を引きずり出せば確実に死に至る。だがコイツと俺は違う。どれだけ細かく切り刻もうとも、死ぬことはない。痛みもない。魔力、と呼ばれるものが枯渇して攻撃手段を失うこともなく、どの状態異常もある程度耐性で無効化出来る。

 

 つまり、チート能力者に持久戦は無効である。

 

 チート能力者同士の戦いにおける勝利条件は存在抹消、および"相手の戦意をへし折ること"である。それを悟ったステインは、今まで楽しいと感じていたこの戦いが少々やるせないものに感じてしまった。どちらかが折れるまで無意味に戦い続ける、最初は楽しかろうともしばらくすれば誰でも飽きる。結局はお互いのメンタルの削り合いなのだ。いったいどこに熱くなれる要素があるのだろうか。

 

「ふーん、割と考えてるじゃん。そうさ、これがチート能力者同士の争い。楽しいだろ?」

 

「どこがだ。こんなモノ、ただのメンタルの削り合いだ」

 

「ステインは分かってねぇなぁ……あらゆる世界の主人公、敵キャラ、ラスボス、ヒロインetc、そいつらの能力を思うがままに行使できるんだぞ? 全世界の男子共通の夢じゃないか」

 

「好きなアニメキャラのポーズを取りながら能力を使ったり、好きなゲームキャラのセリフを言いながら能力使ったり、空を飛んで、地を駆けて、無限に楽しめる。好きなキャラ同士の技を掛け合わせて放つなんて中学生なら発狂レベルで喜ぶだろ?」

 

「俺はもう中学生じゃァねぇ………」

 

「そりゃ残念。その身体で体感した者ならば理解してくれると思っていたが、まぁいい。どちらにしろステインには消えてもらわなければならない。誰にも知られることなく永遠に、存在ごと消えてもらおう」

 

 

 魔理沙の周囲に大量の魔法陣が出現し、視界を埋め尽くすほどの弾幕が一気に放たれる。色彩溢れる弾幕だが、その一つ一つにおびただしい殺気が込められているのを感じたステインは舌打ちをするしかなかった。

 

 

「第二ラウンドか………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 地球から約二千光年離れた名もなき惑星の上で、第二ラウンドがスタートする。

 

 

 

 

 

 






どういう場合であれ、家族はみんなにとって奇跡なんだと忘れないでください。


(アン・ラモット)
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