来週はテストあるので投稿できないかもしれませんスイマセン。
二〇一九年一月初旬。
景夜たちは高松市の温泉に来ていた。
高松市は香川一の都会であると同時に、四国有数の温泉地でもある。内陸部の山地には江戸時代から湯治場として利用されてきた塩江温泉郷があり、瀬戸内海沿岸や市街地にも天然温泉が湧く。
バーテックスとの戦いも幾度目かを終えた頃、巫女の神託により、襲撃がしばらく起こらないことが告げられた。そのため景夜たち勇者は休養として、貸し切りの温泉旅館で過ごすことが許可されたのだ。
「にしても、いい湯だな~」
普段よりも数倍緩んだ顔の景夜が、湯船で寛いでいた。
木の板の向こうからは、女子特有のピンク色の会話が響いてくる。
だが、今の緩み切った景夜に届くことはない。
「月が綺麗だな……」
ここには、勇者の六人に加えて巫女のひなたと引率役の華恵に紅葉が来ている。
今頃、あちらは更に賑やかになっている事だろう。
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普段とは別人のような緩んだ顔で若葉が湯に浸かっていると、露天風呂の戸が勢いよく開けられた。
球子を先頭に、友奈、杏、千景が姿を現す。
「あ、やっぱり先に入ってやがったなっ! タマが一番風呂になろうと思ったのにっ!」
指差してくる球子に、若葉は湯に浸かったまま答える。
「球子がぁ、『旅館探検だー』などと言ってぇ、館内をうろつき回っていたのがぁ、悪いんだろう?」
「うわ、溶けかけの飴みたいに緩い顔しやがって。よし、一番風呂は逃したが、三番目はタマのものだーっ!」
「タマっち先輩、走っちゃダメだよ!」
止めようとする杏の声も聞かず、球子が飛び込むようにして温泉に入る。
「はぁ〜……」
杏はため息をついた。
その後、友奈、千景、杏も、球子に続いて温泉に浸かる。
学校のいつもの七人と+αで、温泉旅館に泊まる――人数は少ないが、ちょっとした修学旅行気分だ。
球子はひなたの前に行き、手をワキワキさせながら言う。
「よ〜し、じゃあ定番の身体チェックと行こうか。さぁさぁタマに見せてみタマえ、春の身体測定以降、持たざる者を置き去りにして、お前の体がどれだけ遥かな高みへと成長しているのかっ!?」
「あ、あの、球子さん、何を……?」
身の危険を感じ、後退るひなた。
若葉と杏が、ひなたを守るように球子の前に立ちふさがった。
「球子、お前の行動は読めている! ひなたには触れさせん」
「タマっち先輩、温泉は人の体を調べる場所じゃないんだよ!」
むっ、と怯む球子。
だが次の瞬間、彼女の目はむしろ杏の身体に焦点を合わせた。
「あんず……よく見たら、お前も成長してないか?」
「え?」
「許せーんっ!」
球子は杏に飛びかかり、体中をくまなく触って調べ始める。
騒いでいる球子たちを、友奈は困ったような苦笑するような顔で見ている。そして、ふと思いついたようにその場にいる全員へ尋ねた。
「そういえばみんな、お医者さんの検査で、おかしなところとかはなかった?」
「おかしなところ……?」
千景が怪訝そうな顔をする。
友奈の質問に全員が答えようとする中、露天風呂の戸が静かに開かれた。
「そうね、皆には何か違和感があったら言って欲しいわ」
「そうそう~、子供は健康第一だからね~」
凛とした優しい声と肩の力が抜けそうなほど間延びした声が、露天風呂に木霊する。
「紅葉姉さんに華恵先生まで……」
「……クソゥ!タマも成長すればあんな風になれるのか!」
「……凄いわ……」
「……凄いですね……」
「……凄いね……」
「……凄いです……」
勇者五人と巫女一人、三者三様の声が聞こえる。
二人は手短に体や髪を洗い、すぐに湯船に浸かる。
「で!皆は特に変わったことはある?」
華恵は友奈の言葉を借りつつ、全員に尋ねる。
勇者たちは医療機関で、定期的に身体状態を調べられている。
特にバーテックスの襲来が始まって以降、戦いの度に綿密な検査が行われていた。
勇者の力を使うことが人体にどんな影響を及ぼすのか、まだ不明瞭な部分が多すぎるためだ。
それに、勇者の中にはイレギュラーがいる。
勿論、
彼だけが、土地神の集合体である神樹からではなく、天の神の父・伊邪那岐神から力を借りている。
今後、彼の体にどういうことが起きるのか?
誰も、予想がつかない。
若葉たちからは特に何か違和感があるという発言はなかった。
油断は出来ない、もしこの子たちに何かあったら。
きっと自分は冷静でいられないだろう、と華恵は感じ始めていた。
「華恵先生!ちょっと触ってみてもイイですか?」
深く考え混んでいた華恵に球子が声を掛ける。
「?ええ、いいわよ」
華恵は特に何も考えず返事をしてしまった。
「それじゃあ!お言葉に甘えて!おお!ぶっタマげた、何でこんなに大きいのにフワフワして柔らかいんだ!」
「ひゃっ!ちょ、ちょっと!た、球子ちゃん、い、いきなりなにを!」
「だって、先生が触ってイイって言ったんですよ?」
先程まで、真面目な雰囲気が漂っていた露天風呂は、ピンクな雰囲気が充満していた。
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景夜は一人部屋でみんなが来るのを待っていた。
「暇だ……汗かかない程度に槍でも振るか?」
いかにも修行厨な景夜らしい発言だが、その提案を紅葉が却下した。
「それは、ダーメ!そろそろみんなが来るから、それにご飯も」
「えーっと、やっぱり。俺はこの部屋で寝る感じですか?」
「そりゃそうよ!みんなの団結力を高めるものでもあるし、絆を深めなさい!」
景夜からしたら、みんなとの友情レベルや信頼レベルはカンストしてると思うのだが。
そこは景夜、諦めは早い。
こういう時の紅葉にどんな理屈をぶつけても、よく分からん超理論が飛んでくる気がしたのだ。
紅葉と話す事数分、みんなが戻って来た。
「すまないな景夜、待たせた」
「すいません、待たせてしまいましたよね?」
「別に、師匠と今後の修行について話してたし。全然待ってないよ」
最初の一言が無ければ、最高なのだが。
そこは景夜、余計な一言を挟んでみんなを出迎える。
みんなが来ると、ほぼ同時に料理が運ばれてきた。
「……何だか、豪華過ぎないか?」
景夜の言う通りだ、テーブルには一人につき一匹の大きな蟹と刺身の山が築かれていた。
「……そうかしら?私たちは一様は勇者だもの、世界を救ってるに等しいことをしてるんだし、当然じゃないかしら?」
一様、と付けてる辺り。そこら辺の問題は解決していると言っていい。
そんなことを言う千景を嬉しそうに見ながら、景夜は食事に手を付けた。
晩御飯を食べた後は、ゲームで盛り上がった。
将棋にTVゲームにトランプに人狼ゲーム。
色々なゲームをやり、今はトランプの頂上決戦。
『スピード』で勝負をしている。
ちなみに景夜を除いた四人は全く勝負にならず、球子や杏は自信喪失して体育座りになっていた。
『スピード』は、札を出す速さを競うゲームだ。
無数のアクションゲームやシューティングゲームをやり込んできた、卓越した動体視力と状況判断力を持つ千景。
対して、武術によって鍛え上げられた凄まじい反射神経と集中力を持つ若葉。
三回勝負で、現在どちらも一勝一敗。
若葉と千景が対峙する。
「……負けない、絶対……あなたには……」
千景は小さく呟く。
それはただ相手への繊維の表れに過ぎないはずだが、若葉には何かそれ以上の――意味があるように思えた。
だが、今までのゲームで若葉は千景の動きを把握している。
恐らく、次の勝負は勝つ。
二人の手が動き、目にも留まらぬ速さで次々に札を出していく。
わずかに若葉の札の方が速く減っている。
この勝負、若葉の勝利――
「うひゃああぁ!?」
突然奇声をあげ、若葉は持っていた手札をバラ撒いた。
ひなたが若葉の耳を後ろから甘噛みしていた。
「な、何をする、ひなたぁ!?」
若葉がひなたに抗議している間に、千景は札を出し終わってしまった。
「勝者、ぐんちゃん!」
「勝者、チカ!」
友奈と景夜が千景の手を上げる。
ひなたは若葉を叱るように、
「ダメですよ、若葉ちゃん。ゲームなんだから、そんな怖い顔しないで、もっと楽しんでやらないと」
「だ、だからと言って……く、くすぐったいだろう……!」
そこからは、若葉の弱点である耳を弄ったり。
勇者ゲームという名の枕投げをして暇を潰した。
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夜中三時頃だろうか。
布団がめくれる音で目が覚めた若葉は、自分の隣で寝ていたひなたと景夜がいないことに気付いた。
目が起きたついでに探そうと思い、若葉も布団の誘惑を断ち切って部屋の襖を開けた。
ひなたと景夜の後姿を見つけて、急いで追い掛ける。
景夜は天逆鉾を持っていたので、何か鍛錬でもするのだろうと思っていた。
二人は月明かりが照らす中、静かに話していた。
「不和による危機……か」
「はい、そういう神託が授かりました」
若葉の所からでは上手く聞こえないので、近付こうとしたが何故か足が止まった。
理由は、分からなかった。
「ヤバそうなのは若葉か、あいつはまだ死んだ奴らの復讐の為に戦っている。それじゃダメだって言ったのにな……」
「……景夜君は、やっぱりそう思いますか?」
「まぁな、あいつが戦う理由は過去にある。本当は未来の為に戦っていくのが正解だと思う。何せ、あいつは誰かを見捨てるなんて出来ないやつだからな、だから若葉には未来を生きる人の為に戦ってほしい」
それ以降の言葉は、聞こえなかった。
だが、あの二人が自分のことを話しているのは何となく分かった。
時刻は夜中の三時頃、幻想の月が何故か赤黒く輝いていた。
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「多すぎるだろ……」
スマホに表示されるマップを見ながら、景夜が険しい表情を浮かべる。
バーテックスの襲撃が起こったのは、勇者たちが丸亀城に帰ってから半月ほど経った頃だった。
今回はマップに表示されるバーッテクスが異常なほど多い。
「今までの十倍……?ううん、もっといるかも」
友奈も敵を示す印で埋め尽くされたマップを見ながらもつぶやいた。
その声には緊張の声が混じっている。
過去のバーッテクスの襲来では、四国に侵入してきたのはせいぜい百体程だった。
だが、今回の数は目算しただけでも千以上。
戦闘に慣れていきた今の勇者たちにとって、バーッテクスの一体一体を倒すことは難しいことではない。
しかし、これほどの数になれば、状況は変わってくる。
数て押し切られれば、危うい――
(いや、ここは落ち着いて連携を取って行こう。幸いなことに杏は目が良い、その少し臆病な性格は戦闘では役に立つ!)
景夜は瀬戸内海の海の向こうから押し寄せてくる敵群を見据え、槍の柄を握る。
「連携して――」
「私が先頭に立つ」
景夜が言葉を言い終わる前に、若葉が飛び出した。
そこからが地獄の始まりだった。
先行した若葉の周りにバーッテクスが集まっている、先に若葉を潰す作戦らしい。
落ち着こうとした思考が、若葉がバーッテクスに噛みつかれたのを見て彼方に消え去った。
急ぎで、他の勇者に指示を出す。
「若葉は俺がどうにかする、みんなはここを死守してくれ!司令塔は杏だ、お前の目があれば戦況の変化にも気付ける!」
「ですが!景屋さん、無茶ですよ!幾ら景夜さんが強いと言っても、あの数は……」
流石にあの数は辛い、だから『トロール』を使う。
トロールを宿して少し肌が緑がかった色になった景夜、僅かに筋肉も付いている。
勇者装束もそれに合わせて変化し、花の模様と装束の色が変わる。
装束の色は、白色に橙色に紅色に桃色に青色、それとピンク。
花の模様は花便が六つになり、紫羅欄花・姫百合・彼岸花・山桜・桔梗・グラジオラスの六つの花が咲く。
トロールの変身能力故の形なのだろう、景夜はそのまま若葉の下に跳んだ。
邪魔になる奴は斬り捨てて、一刻も早く若葉の下に向かう。
その行動が招いた結果は――
「っ‼‼あうぁぁああ‼‼」
右腕に噛みつかれて咄嗟に槍を持ち替て、敵を斬る。
噛みつかれた所為で、右腕が取れた。
尋常ではないものだ、噛んだだけで右腕が千切れた。
意識が飛びそうになる、痛みが全身を巡る。
脳に灼けるような激痛が走る、その為に行動が鈍りまた噛みつかれる。
今度は左足だ、噛んで骨さえ砕く歯のようなナニカで音を立てながら近寄って来る。
もう痛みを感じる余裕がない、だから景夜は禁忌に手を出した。
「その性質、盗ませてもらうぞ!」
進化体になるためには、何体かのバーテックスが溶け合って作られる。
バーテックスは言わば細胞だ、一つでは完成せず複数が揃いやっと完成する。
それに加えて、たった数体が揃っただけで反射板のようなものを作るなどありえない。
きっとだが、数体が合わさることで作用が起き中で増殖or増大させてるのでは?
そう考えたからこその一手。
そしてこの、禁忌とも言える一手は成功した。
自分の細胞が少し有れば、増殖して作れる。
失ったなら作ればいいのだ、
右腕と左足から出でいた血を使い、腕と足を生やす。
体中に電撃のような痛みが走ると共に、腕と足が再生した。
たった数分間の出来事なのに、その数分が一時間にも二時間にも感じた。
「退けよ!あいつは、若葉は、お前らが喰っていいような奴じゃねえんだよ‼」
また、跳ぶ。
腹に噛みつかれ、臓器を食われても。
体当たりで、体を潰されても。
不死鳥のように何度落とされても、彼は諦めず走り続けた。
少年は代償に気付かない。
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若葉は混戦の中、復讐心に身を焦がして憎悪のままに戦っていた。
だから、気付かない――
自分の背後に迫る、敵に。
「しまっ――」
「俺の仲間に近寄んじゃねえ‼」
空から、勇者が降って来た。
景夜の勇者装束は血だらけで、所々穴が開いている。
「景夜、お前……」
「両腕合計四本、両足合計七本、臓器合計は不明。これが俺の負傷した場所だ」
「な、一体何が!」
「これを帰ったら伝えろ、俺はそこまで持たない。……死ぬなよ」
「っ!分かった、お前こそ死ぬなよ!」
疲労と苦痛を押し殺し、若葉は刀を構えた。
満身創痍の勇者二人は、周囲のバーテックスへ武器を振るう――
かつてないほど大規模なバーテックスの攻勢だった。
その戦いは、止まった時の中で行われたが、勇者たちの体感時間にして六時間以上に及んだ。
長い戦いの末、勇者たちはかろうじて、バーテックスの撃退に成功する。
しかし、勇者たち全員の負傷と疲労はひどく――
特に景夜は、戦いが終わった後、すぐに大社管理下の病院へ搬送されることとなった。
樹海化が解け、景夜が丸亀城から病院へ運ばれた後。
若葉の頬に千景の平手打ちが入った。
友奈が止めようとするが、それでも千景は止まらない。
「乃木さん……どうしてあなた、あんな勝手なことを、したの……」
頬の熱を感じながら、若葉は千景の責めを無言で受ける。
「あなたが一人だけで勝手に戦おうとするから……景夜君が……」
球子と杏は、何も言わず若葉たちを見守っていた。
止めるべきかどうか迷っている――
そして実際に止めに入ることができないのは、彼女たちも千景の言っていることに心のどこかで共感しているからだ。
友奈は心のどこかで共感していても、それで責めることをしない。
何故なら彼女は、「自分がこうしていれば」と言う自責の部分があるからだ。
もし今、千景が怒鳴っていなかったら、球子が代わりに怒鳴ったかもしれない。
「自分勝手に特攻して……景夜君を巻き込んで……!せめて神樹の精霊の力を使って戦えば、影夜君の負担は減ったのに……あなたはそれもしなかった……!」
千景の言葉は事実で、だから若葉は何も言い返さない。
「彼は!あなたのために精霊まで使って……手や足を噛み千切られても助けに行ったのに……!」
(全て……私の判断ミスと思い上がりだ……)
自分一人で戦っているかのような吐出と、怒りに任せた暴挙とも言える行動。
それが景夜を危険に巻き込む結果になってしまった。
精霊の力を使わなかったのは、あの戦い方は消耗が激しく、長期戦に向かないからだ。
しかしその判断も、やはり『敵を一体でも多く倒す』ことしか考えていなかった。
精霊の力を使っていれば、景夜の負担を減らす戦い方もあったかもしれない。
「あなたは……周りが何も見えていない……!自分が、勇者のリーダーだってこと……もっと自覚すべきよ……‼」
勇者の先頭に立つ人間として相応しいのか――
かつて自分に向けた問いが、再び若葉の心に浮かぶ。
冬の空は冷たく重く、勇者たちの頭上を覆っていた。
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大規模襲撃の翌日深夜にて。
特別治療室前にて。
「はぁ~、やっぱりこうなったか……」
「……………」
死んだように眠る景夜を見ながら、紅葉がため息交じりに呟いた。
「やっぱりって?もしかして、分かってたの?」
「まぁ、何となくですけどね。」
華恵もまた、ため息を吐いていた。
顔色は悪く、恐らく昨日から寝てないだろう。
だが、それ以上に恐れていることがあった。
「若葉ちゃんから聞いた話が本当なら、あの子は四肢を合計して一〇本以上喰われているのよ。それ以外も臓器もやられたと言っていたわ」
ありえない、と呟く。
何故なら――
「ならどうして、この子はこんなにも健康体なの?」
景夜は特別治療室に居た。
だが、それは治療の為ではなく検査のためだ。
四肢を一〇本以上失って、それを再生させる。
そんなのが、デメリット無しで出来る筈がない。
だからこそ、この特別治療室には医者以外にも大社職員が何人も出入りしていた。
「ねぇ、紅葉ちゃんはまだ無理なの?」
「無理ですかね、私のは景夜くんのと同じで結構特殊な部類なんで……。スイマセン」
紅葉がらしくない感じで謝るものなので、華恵も少し冷静なる。
「いいのよ、元々子供たちに世界を任せるなんて屑の所業に近いもの」
この日。
冬の空は冷たく重く、大人たちの頭上も覆っていた。
来週もお楽しみに!
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