柊景夜は勇者である   作:しぃ君

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 みなさん、明けましておめでとうございます!
 
 え?もう一月も五日だって?

 スイマセン!休日を満喫してました! 

 ですが原作を飛ばし気味だが、段々と山場に入っていきました。
 
 


十三話「レクリエーションと卒業と告白」

「なぁ杏?」

 

 

「何ですか?景夜さん」

 

 

「俺は何を見せられているんだ?」

 

 

 景夜の目の前に写るのは学ランを着て球子に壁ドンをする若葉と、それを横から止めに入る友奈(こちらも学ラン着用)。

 球子もいつもとは違う大人しい女の子風の出で立ちだ。

 

 

「このシチュエーションがやりたかったんですよ!」

 

 

 杏は鼻息を荒くして生末を見守っている。

「四国の勇者さんたちっていつもこんな感じなのかにゃ?」

 

 

「いいや、断じて違う。今回はたまたまだ」

 雪花の考えを速攻で切り捨てて、何でこうなってしまったのかを彼は思い出す。

 

  -----------

 

 遠征から帰って来て数日たったある日、若葉からこんな提案が出た。

 

 

「レクリエーションを兼ねた模擬戦?」

 

 

「そうだ、雪花と歌野も加わったことで戦術の幅も広がった。それにここ最近は嘘の報道ばかり聞いて皆もウンザリしてるだろう?」

 若葉のみんなに問いかけるような言葉に、そこに居る者たちは全員頷いていた。

 

 

「優勝者が他の者に命令することができる、どうだ?中々に面白いものだと思うのだが」

 若葉の提案にみんな乗り気になってきたが、ここで一つ重大な問題が起きた。

 

 

「景夜君はどうするの……?」

 千景の言葉に場が凍り付く。

 誰もが忘れていた景夜と言う勇者(化け物)のことを。

 

 

「ノープログレム!景夜のことは問題が出てからどうにかしましょう!」

 

 

「うたのん、それは何か投げやりだよ」

 結局、景夜も参加することになり。

 翌日、二の丸で模擬戦(レクリエーション)がスタートした。

 

 

 開始の合図から数分、それぞれ適当な場所に配置されたのでみんながみんな獲物を探し周る。

 そんな中、景夜はスタート位置から一向に動かずにいた。

 

 

「今日は風が涼しいな~」

 何故か一人黄昏ている景夜。

 既に、景夜の周りには続々と他の勇者が迫って来ていた。

 

 

 彼はそのことを分かっているのか、模擬戦用のゴム槍を地面に突き刺し、空を仰いでいた。

 

 

「見つけたぞ景夜!」

 

 

「サーチしてやっと会えたわ景夜」

 

 

「ヤバそうな人は最初に潰すに決まってるからにゃ~」

 

 

「ごめんなさい、景夜君。でも……今回は譲れないの……!」

 

 

「カゲヤ君見っけ!あれれ?!他のみんなもいる」

 

 

「景夜!今日と言う今日はお前に一泡吹かせてやる!」

 

 

 杏以外の全員が、景夜の下に集合していた。

 

 

 景夜は溜息を吐きながら、文句を垂れる。

 

 

「お前らさぁ~、もうちょっと遠慮とかないわけ?」

 

 

「そんなものはない!」

 

 

「ナッシングよ!」

 

 

「ないにゃ~」

 

 

「今は……無いわ」

 

 

「少しあるけど、何かカゲヤ君だったらこんなにたくさんいても負けそうな気がするんだよね」

 

 

「おい友奈、それは言うなよ!ああ、もちろんタマも遠慮なんてないぞ」

 それぞれ違う回答が飛び交う中、景夜は槍を地面から抜き構える。

 

 

「来るぞ!」

 若葉の声が放たれた瞬間には、景夜は雪花の背後を取っていた。

 

 

「まずは一人」

 突然のことにも、雪花は何とか対処しようとするが、如何せん相手が悪い。

 受け流そうと思って構えた槍は、いつの間にか柄の中心部分から真っ二つになっていた。

 

 

「嘘!チート過ぎるでしょ!」

 あまりの出来事に悪態を突いているが、これで雪花は脱落。

 

 

 次に景夜が狙ったのは千景だ。

 

 

「ごめん、チカ。模擬戦でも負けるわけにはいかないんだ」

 あまり使わない足払いの攻撃で、体制を崩した所を狙おうとしたが、視界端からの斬撃の所為でその攻撃は中断される。

 

 

「礼は言わないわよ」

 

 

「別に構わない、それに数が居ないとアイツは倒せん」

 二人のやり取りに微笑ましさを覚えながらも、しっかりと敵を見据える。

 

 

(仕切り直そう)

 そう考えた景夜は、跳躍して姿を眩ませる。

 

 

「逃げたか……」

 

 

「エスケープしたわね」

 

 

「だったら、狙いを変えるまでよ」

 千景が、大鎌を歌野と若葉に向ける。

 愚策ではあるが、闇討ちならまだ景夜に勝てる可能性があると考えての行動だろう。

 

 

「私も手伝うよ、ぐんちゃん!」

 

 

「だな、景夜を倒した後はこの二人が敵になるだろうし」

 こうして、三対二の戦いが始まった。

 

  -----------

 

 景夜は天守閣の屋根に立ち、みんなの行方を捜す。

 天守閣三階の窓から双眼鏡で戦況を見ているひなたと水都に、景夜は問かける。

 

 

「ひなたに水都、残っている奴は後誰だ?」

 

 

「球子さんだけですね」

 

 

「それ以外は?」

 

 

「みんな相打ちですよ、激しい戦いがあったみたいですから」

 何故か終始水都が黙っていたが、景夜はそんなことは気にせず天守閣を下りていく。

 

 

 その時、球子の旋刃盤が景夜の横を通り抜けて行った。

 

 

「あっぶな!けど、これでタマに武器はない。悪いけど俺の勝ちだ」

 

 

 景夜は完全に油断していた、この姿を紅葉に見られていたら完全にお仕置きコース確定だろう。

 そんな油断していた景夜の眼前に、一本の矢が迫っていた。

(は?……もしかして、ひなたに騙された?)

 「確実に当たる」、杏は確信していただろうし、どこから出て来たのか球子もドヤ顔で景夜を見つめている。

 

 だが、景夜は飛んできた矢を歯で噛んで止めて見せた。

「ぺっ、まさか杏も残ってるなんてな」

 

 

 呆然としていた球子をゴムの穂先で叩いてリタイアさせ、残る杏にも穂先を向ける。

「良い作戦だったよ杏、危うく負けるところだった。てか、霊核魂になる前までの俺だったらまず負けてた」

 

 

「……ありがとうございます、でも負けは負けです」

 

 

「そのことでな、一つ提案がある」

 そこで景夜は自分には命令しないと言う条件付きで、杏に「命令権」を譲った。

 

 

 この時の景夜は、あんなことにあるとは思いもしてなかったのだ。

 

  -----------

 

 こうして、第一回バトルロワイヤル模擬戦は、柊景夜の勝利に終わった。

 だが、勝利の権利である「命令権」は伊予島杏が獲得することになった。

 そして――

 

 

「私のものになれよ、球子……」

 

 

「わ、若葉君……そんなこと言われても、タマには他に好きな人が……」

 

 

「待ちなよ、若葉君!球子さんが嫌がっている」

 

 

「あ、高嶋君……って!なんじゃこりゃあああっ!」

 

 

「カット、カットぉっ!ダメだよ!タマっち先輩!ちゃんとセリフ通りに言ってくれないと!」

 

 

 教室の中で、若葉が球子を壁際に追い詰め、腕を壁ついて逃げ場を塞いで甘い言葉を囁く――いわいる『壁ドン』

 そこにやって来た友奈が、若葉と球子の間に割って入る……三角関係。

 

 

 

 景夜からしたら、何が何だか分からない光景だ。

 本当ならこのシーンは自分がやる予定だったのかもしれないと思うと、背筋に嫌な汗が流れた。

 因みにこれは、景夜も読んだ杏がお気に入りの恋愛小説の一節を若葉と球子と友奈を使って再現してるのだ。

 これの前にも、歌野と雪花を使って寸劇を繰り広げていた。

 

 

「こんな恥ずかしいセリフ言えるかっ!というか、なんでタマが『内気で大人しい少女』の役なんだよっ!」

 

 

「このヒロイン、背が低いって設定だから。タマっち先輩に合うかなって」

 

 

「タマがチビだって言いたいのかぁっ!」

 球子は杏に対して抗議をしている、景夜から見てもこの寸劇は何とも言えないものがあった。

 

 

「というか、私は男装までさせれているんだが……」

 

 

「私も……何だか男子の制服って、変な感じ」

 

 

「悪かったな、変な感じで」

 

 

 学ランは元々景夜のものだ。

 だが、成長するにつれ学ランよりブレザーの方が着やすいことが分かり。

 中学一年の秋には、ブレザーに変えた。

 杏が必要だからと言うので、押し入れから引っ張り出してきたのだ。

 

 

 杏監督の厳しいこだわりであった。

 因みに、ひなたはとてもホッコリした顔で、若葉・友奈・球子の演技を鑑賞していた。

 もちろん、スマホでその様子を撮影することも忘れていなかった。

 

 

「とっ、とにかくっ!あんずの言う通りにしたぞっ!もうこれで命令は終わりなっ!」

 

 

「私もこれで終わり……でいいか?」

 球子は顔を赤くしがら叫び、若葉はぐったりしていた。

 

 

「面白かったけど、やっぱりちょっと恥ずかしいよね」

 友奈も照れながら言う。

 

 

「まぁ、少し再現度に不満はありますが、よしとしましょう。さて、次は……」

 杏の目が、千景に向く。

 

 

 ピクッと体を震わせる千景。

「私も、あんな恥ずかしいことを……?……ぜ、絶対にお断りよ……!」

 

 

「ふふふふふ。千景さんに合った役柄は何がいいでしょうか?」

 杏は口元に悪どい笑みを浮かべる。

 

 

「うぅ……」

 体を強張らせる千景。

 

 

 しかし、杏は首を横に振って、

「千景さんには、別の命令にします」

 

 

「え……?」

 

 

 千景が怪訝そうな顔をしていると、杏は教卓の中から白い用紙を取り出して、千景に差し出した。

 用紙には『卒業証書 三年 郡千景』と書かれている。

 

 

「命令は、これを受け取って下さい」

 

 

「これって……」

 千景は呆然としながらも、その卒業証書を見つめる。

 

 

 友奈と景夜が微笑んで、

「よく考えたら、ぐんちゃんって三年生だから、本当はもう卒業だしね。卒業証書、私たちで作ったの」

 

 

「まぁ、今のチカだったら命令じゃなくても受け取ってくれるって言ったんだけどさ」

 同じ教室で授業を受けているため、お互いに殆ど意識しないが、千景は中学三年生。

 普通の学校であれば、卒業式を迎えている時期だ。

 

 

「といっても、学年が高一になるってだけで、学校もここから変わらないけどな」

 

 

 球子は苦笑気味に言う。

 この学校が勇者を一箇所に集めて管理することを目的とした施設である以上、高校生になっても学校が変わることはない。

 

 

「だが、形だけでも、こういう行事は行った方がいい」

 

 

「ええ、私もそう思います」

 若葉とひなたが頷いて言う。

 

 

「そうね、こういうイベントがあってこそよ」

 

 

「そうだね、こうやってみんなで過ごすのは楽しいし」

 

 

「私もみんなに賛成~、行事は大切にしないとね」

 歌野と水都に雪花も笑顔で頷いてい言う。

 

 

 学校は変わらないから、意味を感じなかったから、千景自身は『卒業』という行事を忘れていた。

 けれど――

 

 

「……あ、ありがとう

 千景は少しぎこちない笑顔で卒業証書を受け取った。

 

  -----------

 

 その日の夜、景夜はひなたに呼ばれて教室に来ていた。

 

 

「景夜君……ごめんなさい、こんな遅くに呼んでしまって」

 

 

「大丈夫、まだ十時前だし。で?どうしたんだ?」

 時刻は十時前だが、それでも辺りは暗く子供が歩き回る時間ではないのは確かだ。

 

 

「実は……つい先日、樹海緊急脱出システムが完成しました」

 

 

「樹海緊急脱出システム?」

 聞いた事のないシステムの名前に、驚く景夜。

 

 

「名前の通り、樹海化の最中でも樹海から脱出することができるシステムです。本来は重傷者が出て来た時の為の緊急措置として開発されました」

 

 

「そんな、システムが……」

 

 

「景夜君にこのシステムの使い方を教えます……だから」

 ひなたの言葉が詰まる、また何か言い辛いことでもあるのだろうと景夜は思い、少しの間続く言葉を待った。

 だが、ひなたの口から出てきた言葉に景夜はより驚いた。

 

 

「次の戦いが始まったら、これを使ってすぐに脱出して下さい!」

 

 

「……?!?!ひなた、お前何言ってるのか分かってるのか」

 

 

「神樹様から、景夜君宛に神託が来ました。次の戦いで完成型と呼ばれるサソリバーテックスにお腹の所を貫かれて……景夜君は……死にます」

 ひなたが言った言葉は事実上の死刑宣告だ。

 神樹から来る神託は未来予知そのものだ、外れることはまずない。

 

 

 だが、景夜は諦めない。

 そんな、ことで諦める訳にはいかない。

 

 

「ひなた、神託の中で俺の近くに誰かいたか?」

 死の宣告を受けたのにも関わらず彼は、ひなたに対してこう返してきた。

 

 

「……球子さんと杏さんが居ました、状況から見てあの二人を庇ったものだと思います」

 景夜にはひなたの細かい説明のお陰で分かったこがある。

 

 

 それは――

「近くにタマと杏がいるのか……そうすれば後は何とかなるな」

 

 

「景夜君……」

 

 

「心配すんな。予想では完成型に通じるのは友奈の『酒呑童子』と若葉が降ろす予定の『大天狗』、それに加えてチカが宿す予定の『玉藻の前』だったか」

 

 

 完成型……予想では、今景夜が言った最上級の精霊たちを降ろさないと相手にすらならないと考えられている。

 

 

「最後に俺の『織田信長』。前に調べたんだが、第六天魔王としての織田信長は『他化自在天』っていう固有の能力的なものがあるらしい。能力としては人間の望みを叶えたり快楽を与えて、それを自分の快楽とすること」

 

 

 ひなたは最初、景夜が何を言っているのか分からないと言う顔をしていたが、次第に変わっていく。

 

 

「俺の近くに仲間が居る限り、俺が死ぬことはない。アイツらは、俺が死にそうになったら「生きろ!」って言ってくれる奴らだからな」

 

 

「……それでも、あなたには……」

 

 

「なあ、ひなた。人間が天の神に負けるときってどういう時だと思う?」

 

 

「戦える力を持つ者が居なくなったときでしょうか」

 ひなたの考え方は間違っていない、だが景夜は違う。

 

 

「ひなたの考えは多分正解だ。ただ、俺が思う正解は違う。俺が思う正解は諦めたときだ」

 

 

「諦めた……とき……」

 

 

「そう!誰もが諦めたとき、本当の意味で俺たちは天の神に負ける。成長を諦めて、抵抗することを諦めて、そして最後は生きることさえも諦める」

 哲学の問いに近いものだ、本当の正解などない。

 ただ景夜は、自分の考えは間違いなく正解に等しいものだと思っている。

 

 

「歴史上に語り継がれる偉人はどんな苦難にも挑戦していたと思う、時に挫折し、時に苦悩し、時に絶望する。もうダメだって何度も思った人は大勢いただろうし、そこで諦めてしまった人もいるかもしれない。でも……」

 

 

 景夜がひなたに向き合い、真剣な眼差しで言う。

「自分を信じ、仲間を信じ、最後まで諦めなかった人たちが居るお陰で俺たちの今がある!」

 ひなたにちゃんと届いただろうか、景夜はそれが心配だった。

 

 

「それに、ひなただって。俺が生きることを諦めなられないから、このことを伝えたんだろう?」

 

 

「そ、それは……」

 

 

「……ひなた、信じて待ってて欲しい。無事に帰ってくるとは言えないが、ちゃんと五体満足で帰ってくるから」

 景夜は、ひなたの俯いてしまった顔を手で少し強引に向き合わせた。

 

 

「だから、ここで待ってて欲しい俺たちの帰る場所は丸亀城(ここ)なんだから」

 

 

「…………」

 ひなたは何も言わない、だが何かを決心した顔をしていた。

 

 

「景夜君……私があなたに戦ってほしくない理由は……これです」

 

 

 景夜の手を押しのけて顔を近づかせる、景夜は動揺して動けずにいた。

 そして、唇が重なった。

 普通のキスではなく、舌を絡ませてくるような情熱的なキス。

 

 

「……ん…はぁ…はぁ…」

 ひなたの色っぽい声が漏れる。

 景夜は突然のことに驚き、脳が蕩けていくような感覚に襲われる。

 

 

 何とかひなたから離れると、先程とは違いか細く消えるような声で彼女はこう言った。

 

 

「私は、あなたのことが好きだから」

 そして、ひなたは逃げるようにその場を後にした。

 月明かりが照らす静かな教室、そこにただ一人。

 

 景夜は取り残されていた。

 




 次回もお楽しみに!

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