柊景夜は勇者である   作:しぃ君

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 とかゆを待ってた方はすいません!

 こちらを先に投稿させていただきます。


第十四話「運命の分かれ道」

 ひなたの告白の件から少し時間が進み、翌日の朝になっても景夜は自分への嫌悪感が抜けずにいた。

 自分が好きなのは若葉なのに、ひなたとの一件があってからどうしても気持ちが揺らいでしまう。

 昔から好きだったのに簡単に揺らいでしまう自分の気持ちに、心底反吐が出るような気分だ。

 珍しく朝練をサボった景夜に対し、彼の気持ち知ってか知らぬか、誰も部屋に来ることはなかった。

 

 

 一様、いつも通りの時間に登校して来たものの。

 授業には集中できていなかった。

 

 

「景夜くん!ちゃんと聞いてる?……この問題を黒板の方に来て解いて」

 

 

「は、はい」

 

 

 最近は、普通教科の担当もし始めた紅葉からの指名。

 黒板の問題を見ると、そこそこ難しい問題に顔を顰める景夜だが、紅葉の有無を言わせぬ視線に負けてせっせと問題を解いていく。

 

 

「スゲーな景夜、あんな難しい問題解いちまうなんて」

 

 

「景夜さん、頭いいですからね」

 球子と杏が景夜のことを褒めているが、若葉や雪花がそれを否定する。

 

 

「いや、景夜は頭が良い訳じゃない。元々努力家なだけで、勉強も私やひなたと出会った当初は並みと言った所だったからな」

 

 

「だね~、景にゃんからは努力家の気配がビンビンするんだよね」

 若葉は昔の記憶から、雪花は第六感に近い直感から、景夜の努力家な面を知っている。

 

 

 四人がそんな会話をしてる中、ひなたはボーっと景夜のことを眺めていた。

「ひなたさん大丈夫かな?なんかボーっとしてるし」

 

 

「ドントウォーリィよみーちゃん、こういうときは若葉か景夜に任せて方が良いわ」

 歌野と水都の席はひなたの席からそう遠くないのだが、ひなたの耳には今の会話は聞こえていないらしい。

 

 

 授業終了のベルが鳴り、お昼休み。

 みんなが昼食の為に食堂に出向く中、ひなただけが教室に残っていた。

(昨日、私はここで……)

 昨日のことを思い出し、そっと唇に指先を触れさせる。

 キスをしたときのことは、ひなた自身良く分かっていない。

 唇が重なったとき、頭の中で何かが弾けるような感覚がして、ただ無我夢中に自分の気持ちをぶつけた。

 

 

 それが悪いことだと分かっている、景夜が好きな人も知っている。

 それでも、伝えずにはいられなかった。

 そんな所に、ひなたが来ないことを可笑しく思ったのか、若葉がやって来た。

 

 

「ひなたどうした?今日は景夜もお前も少し変な気がするが」

 

 

「心配をかけてすいません、私は大丈夫です。ささ、早くみなさんの所に行きましょう」

 若葉の心配をする言葉に罪悪感を抱きながらも、ひなたは何でもないように答えた。

 

 

 少しづつ変化する日常の中で、彼ら自身も変わっていく。

 良い意味でも悪い意味でも。

 

  -----------

 

 午後は訓練で、景夜と若葉は道場にて刀と槍を交えていた。

 訓練の時だけでも集中しようとした景夜だが、上手くいかず。

 その日は負け続きだった。

 

 

「景夜?今日は調子が悪いのか?霊核魂になってから一度も勝てなかったのに、今日だけで既に五本は私が取っているぞ?」

 

 

「何でもない、心配掛けてワリィな。……少し水被って頭冷やしてくる」

 若葉の心配する言葉が胸に響く、罪悪感で押し潰れそうな心を何とか隠し、景夜は逃げるように道場の外にある水道に行く。

 

 

 何度か頭に水を浴びせ、道場に戻ろうとしたとき。

 紅葉が物凄い笑顔で現れた。

 紅葉の深紅色の髪が太陽の光で反射されて、美しくも恐ろしい雰囲気を醸し出している。

 

 

「か・げ・や・く~ん?あなた、今日はあんまり集中できてないわね」

 

 

「し、師匠!?……それは……その……」

 言葉が詰まった景夜を紅葉は吟味するように眺める。

 

 

 そして、

 

 

「何か悩み事でもあるの?だったら相談しなさい、あなたには良い仲間がいるでしょう?」

 

 

「それは……そうなんですが……」

 

 

「他の子たちに言い辛いんなら、私が聞いてあげる。それで、何があったの」

 景夜は紅葉の優しさにうるっときたが、持ちこたえて話す。

 

 

「例え話ですよ。師匠にもし好きな人がいて、それで昔からの親友の異性に告白されたとします。その時に師匠はどっちを選びますか?昔から好きだった人か、昔から隣に居た人」

 

 

「そうね~、やっぱり好きな人かしら。親友からの告白は断るでしょうね、まぁ出来る限りフォローはするつもりだけど」

 紅葉のキッパリとした物言いに驚きながらも、景夜は改めて自分の師を尊敬した。

 

 

「凄いですね、師匠は……俺はてんでダメみたいです」

 

 

「へぇ~、もしかしてひなたちゃんにでも告白された?」

 数秒後、彼は自分の失言に気付き、猛烈に恥ずかしくなり冷やしたばかりの頭が、また熱くなっているのを感じる。

 

 

「……やらかした」

 

 

「アハハ、景夜くんはホントに嘘が下手だね」

 少しからかわれた後、紅葉に昨日の件を話した。

 

 

「……そんなことが、道理でひなたちゃんも今日は少しボーっとしてた訳だ」

 紅葉は納得したような顔つきで手を叩く。

 

 

 そんな紅葉を見ながら、景夜が申し訳なさそうに呟いた。

「師匠、俺どうしたらいいんでしょう。若葉が好きという気持ちはここにあって、でもひなたが泣いてしまう姿は見たくなくて。……俺の前では泣かないかもしれません、それでも俺が振ってしまったら、きっと何処かで泣く。誰にも見つからないような場所で」

 

 

「だろうね、あの子は強いから。……君を苦しめない為に、そうするでしょうね」

 

 

「それに……怖いんです。もしもひなたを振った後、そのことでアイツとの関係が終わってしまうかもしれない!」

 

 

 すれ違い、よくあることだ。

 それまで仲の良かった友達でも、たった一回のすれ違いで関係が終わってしまうかもしれない。

 

 

 その後、ようやくすれ違いに気付いて後悔した時には、もう手遅れなのだ。

「景夜くんは失うことが怖いのね?だから、悩んでるんでしょう」

 

 

 景夜が無言で頷く、その表情はいつもの彼のものではなく、お化けを恐れる子供のそれだ。

 自分が死ぬのは怖くない、何時か終わる命だと分かっている。

 景夜が本当に恐れるものは「()()」と「()()」、友達を失うのが怖い、家族を失うのが怖い、仲間を失うのが怖い、無力故に何かを失うのが怖い。

 

 

 普段は見せない、彼の弱さ。

 いつもの景夜は、ゆうなれば勇者・柊景夜の仮面を被ってるに過ぎない。

 本当の彼は、どこにでもいる少年だ。

 変わった生い立ちがあるが、いつも笑顔でいつも楽しそうで、見ているこっちが幸せになれるような、そんな才能がある子だった。

 彼が変わった理由は、大切なものを失いたくないから、無力な自分でいたくないから。

 

 

 だから、鍛えた。

 紅葉と言う師匠を作り、自分を追い込みに追い込んで。

 誰からも、どんな敵からも、大切なものを奪わせない為に。

 もう何も失わない為に。

 

 

 今、紅葉の目の前に居るのは。

 勇者としての柊景夜ではなく、ただの少年としての柊景夜。

 千景に散々言っておきながら、景夜は『勇者』であろうとした。

 それが、彼の本質。

 典型的なお人好しで、大切なもののことに関しては優柔不断。

 

 

 紅葉は少し悲しく思う、自分より年下の彼らに重荷を背負わせていることに。

(私も、あれが完成すれば……)

「取り敢えず!景夜くんに良いアドバイスを上げるわ!」

「ほ、本当ですか?是非お願いします、師匠!」

 あまりの嬉しさに目を輝かせる景夜、相当悩んでいたのだろう。

 

 

「そんなに大切なら、どっちも取りなさい!今の関係を失いたくないのでしょう?あなた前に言ったらしいじゃない、人間の手の長さは短い。なら、どっちも取るしかないわ」

 

 

「どっちもって、それって二又とかになるんじゃ……」

 

 

「良いのよ別に、昔は一夫多妻制とかあったでしょ?それみたいな感じよ」

 紅葉は冗談半分本気半分のつもりが、景夜は真剣に考え始める。

 そして、唐突にいつもの調子に戻り笑顔で紅葉に感謝する。

 

 

「ありがとうございます師匠!お陰で色々吹っ飛びました、二人や他のみんなに何て言われるか分かりませんがやるだけやってみます!」

 

 

「そ、そっか……頑張ってね……」

 

 

「はい!」

 少年の笑顔が眩し過ぎて、紅葉は冗談半分だと言うことが出来なかった。

 その後、景夜はすぐに道場に戻っていったが、紅葉は水道に残り一人呟いた。

 

 

「……若葉ちゃんが何とかしてくれるか!」

 この教師、何ともダメな人である。

 

  -----------

 

 その日の夜。

 時刻は、昨日と同じ十時前。

 教室には景夜と若葉とひなた。

 景夜は窓側に立ち、若葉とひなたが廊下側に立って向かい合っている。

 

 

「ワリィな、遅くに呼んで」

 

 

「別に構わん、何か話があるのだろう?」

 

 

「………」

 若葉は言葉を返したが、ひなたは無言でいる。

 

 

 そこで景夜は、昨日起こったことを全て若葉に話した。

 

 

「……そんなことがあったとわ」

 

 

「それを踏まえて話がある。……俺は若葉のことが好きだ」

 一瞬、嬉しそうな顔をしたが、その顔はすぐに怒りに染まっていく。

 

 

「景夜!貴様、ひなたが隣に居ることを分かって言っているのか‼」

 若葉の怒りは最もだ。

 

 

 何せ、今の言葉は捉え方によってはひなたの告白を断ったも同義だし、それに加えて隣にいる者に告白するなど屑の所業だ。

 

 

「若葉ちゃん!景夜君を責めるのは止めて下さい!私が悪いんです、景夜君が若葉ちゃんのことを好きなのは分かっていたのに!あんな混乱させるようなことを言った私が!」

 

 

「何を言うひなた!今のは完全に景夜が悪いだろう!」

 完全に混沌(カオス)な空間になりつつあるが、景夜が言いたいことには続きがある。

 

 

「二人とも話を聞いてくれ!俺はひなたの告白を断った訳じゃない、ていうか断れるか!」

 

 

「な、なら何なんだ!今の言い方ではそう聞こえてもしょうがないじゃないか!」

 正論が返ってくるが、それをスル―し話を進める。

 

 

「結局、俺は何度考えてもひなたの告白を断ることが出来なかった。関係が壊れるのが嫌で、お前が泣いてる姿を見るのが嫌で。……俺は意気地なしだ……だから……」

 

 

「「だから……?」」

 二人が景夜の言葉を待つ。

 

 

「二人とも選んでいいか……?」

 

 

「二人とも?どういうことだ?」

 

 

「もしかして、私と若葉ちゃんの両方と付き合うと?」

 

 

「ひなたの言う通りだ……クズみたいなこと言ってるのは分かってるし、調子のいいことを言ってるのも分かってる。……でも、俺にはその位が限界だ」

 若葉とひなたは顔を合わせて二言三言話し、景夜に向き直る。

 

 

「私なりの解釈で行くが、私たちがお前の妻になり、お前が私たちの夫になる。こんなものでいいのか?昔の一夫多妻制のようなものだな」

 

 

「そうですね、少し違いますが概ね同じです」

 

 

「ふ、二人とも……本当に良いのか?」

 景夜がそう言うと、二人は呆れたように笑ってこう言った。

 

 

「仕方があるまい、それに私もひなたが泣いてる姿は見たくないしな」

 

 

「私も、大好きな景夜君と若葉ちゃんと一緒にいられるならそれで構いません」

 

 

「ありがとう!若葉にひなた」

 これで三人にわだかまりが出来ることはなくなる。

 

 

 後は、何時他のみんなに報告するかだが。

 「そんなことはどうでもいい」、と景夜は思っていた。

 色々なことがスッキリしたので、帰ろうと言おうとした瞬間。

 若葉に口を塞がれた、勿論唇で。

 

 

「ん~!んーー!」

 

 

 景夜の声にならない声が出る中、キスは続き。

 最終的にひなたと同じで舌まで絡めたキスになり、景夜の理性が取れかけた。

 

 

「私は自分の想いを口にしていなかったからな。昔から口にするより行動が得意だからな、行動で示した」

 

 

「お、おう。お前の気持ちは伝わった」

 

 

「お前への想いをに気付いたのは、お前が長く眠っていた期間だ。あの時の私には、お前が居ないだけで少し日常が味気なく感じた。胸にポッカリ穴が開くという感情をしっかりと味わった」

 

 

 熱烈に想いを打ち明ける若葉に、景夜とひなたまでもが赤くなってしまう。

「だからな……絶対に死ぬんじゃないぞ」

 

 

「分かってる、死なないさ。それに、死ねない理由が多過ぎるからな」

 ふざけるように笑って言う景夜に、若葉とひなたも釣られて笑う。

 

 

 今日ここに、昔までの三人とは違う関係が出来た。

 三角関係のようでそうじゃない、不思議な三人の関係。

 周りから見たら歪に見えるかもしれないが、これでいい。

 これが、三人にとっての最高の形。

 互いに想い合い、互いに惹かれ合う。

 

 

 三人だけの秘密が新しく出来た。

 




 初期段階にはちーちゃんもヒロイン候補に居たり居なかったり。
 まぁ、ちーちゃんは他作品でヒロインだから!(千景じゃないけど)

 明日は、オリキャラ設定だったり、オリジナル設定を詰め込んだやつを上げる予定です。

 次回もお楽しみに!

 誤字脱字などがありましたらご報告お願いします!

 p.s.
 因みにだが、あの場でどちらかを選ぶとバットエンド確定です。
 2人を選ぶからこそ、最高の形になります。
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