柊景夜は勇者である   作:しぃ君

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何でこいつ、一つも完結してないのに三本目出してんだとお思いの方スイマセン。
この作品は、東郷海斗は勇者であるの前日譚とも言える作品で、のわゆのお話です。


prologue「始まり(終わり)はいつも突然で」

 二〇一八年七月三〇日。

 

 

 乃木若葉(のぎわかば)柊景夜(ひいらぎかげや)は香川県丸亀城の本丸石垣の上に立ち、瀬戸内海を見つめていた。若葉が手に持つのは一振りの刀。物心ついた頃から居合を納めていた若葉にとって、その重みは体に馴染んでいる。一方、景夜が持つのは分不相応に大きい槍。三年前に初めて槍を振った景夜にとって、最初は苦戦したものの今ではすっかり馴染んでいる。

 

 

 真夏の日差しが頭上から降り注ぎ、肌に汗がにじむ。周囲ではセミが騒がしく鳴いていた。二人の間に会話は無く、それでも心は通じ合っているのか二人同時に目を閉じた。

 

 

 少女が思い出すのは、あの日の絶望と怒り。

 

 少年が思い出すのは、あの日の希望と悲しみ。

 

 

 

  -----------

 

 二〇一五年七月三〇日 夜

 

 

 当時小学生の乃木若葉と柊景夜は、島根県にある神社の神楽殿避難していた。修学旅行中で香川から島根県にやってきていた若葉たちは、そこで強い地震に見まわれた。地震はその後も断続的に起こり、教師たちが非常事態と判断して、地域の避難場所である神社へ生徒たちを移動させたのだ。神社に避難した人の数は、近隣住人も合わせてかなり多い。

 

 

 授業日数の関係で若葉の学校は夏休み中に修学旅行が行われるが、まさかこんな災害に巻き込まれるとは想像もしていなかった。

学級委員長の若葉はクラスメイトの点呼を取り、全員揃っていることを担任教師に伝えた。教師から聞いた話によると、地震は島根だけではなく、全国各地で起こっているらしい。その影響で津波や地割れなども起こっており、日本中で被害が出ている……と。

 

 

しかし、避難してきた若葉と同学年の生徒たちは、修学旅行中に起こったこのイベントをむしろ楽しんでいるようだ。友達同士で話したり、スマホを持っている人はニュースサイトを見たりしている。

 

 

 若葉の隣にいる景夜は、若葉の肩に頭を乗せて寝ている。髪の毛は銀髪で一見外国人かと見間違えるが顔つきは日本人そのものだ。父親が外国人で母親が日本人のハーフなのだ。気持ちよさそうに寝てる景夜をチラッと覗き見た後は三人組の女子グループがおしゃべりをしているので、若葉は彼女たちの方に目を向ける。

 

 

「明日もここにいないといけないのかな?」

 

 

「えー、せっかく修学旅行なのに。」

 

 

「誰かトランプとか持ってない?」

 

(注意した方がいいか……いや、そこまでする必要はないな。むしろこうやっておしゃべりすることで、不安は和らぐだろうから)

 若葉そんなことを思っていると。

 

 

「……あ、乃木さんがこっち睨んでるよ」

 

 

「あたしたち、ちょっと騒ぎすぎ?」

 

 

「怒られるから、静かにしてよう」

 さっきまで話していた彼女たちは、すっかり静まり返ってしまった。

 

 

(あ……別に怒るつもりはなかったのに。……私の顔、そんなに怖く見えるのか……?)

 

 

「わーかーば、ちゃん」

 後ろから声をかけられて振り返ると、パシャリとカメラのフラッシュが光った。クラスメイトにして幼なじみの上里ひなたがスマホを構えていた。

 

 

「物憂げな表情の若葉ちゃん……んー、絵になりますね。背景が社殿の中というのも良いです。それに寝ている景夜君とのツーショットです。私の若葉ちゃん秘蔵画像コレクションがまた一枚増えました」

 

 

「ひ〜な〜た〜……私の写真など集めるな、消せ!」

 

 

「イヤです! この画像コレクションは私のライフワークですから!」

 わけの分からないことを堂々と宣言するひなた。

 

 

 そのやり取りの所為で目が覚めたのか、景夜が欠伸をしながら眠りから覚める。

「やっと起きたか景夜、お前はこんな状況で良く寝てられるな。」

 

 

「おはようございます、景夜君。気分はどうですか?」

 

 

「若葉にひなたか、おはよう。気分は良好だよ、修学旅行が潰れてると言う現状がなきゃな。」

 景夜は、若葉の隣から腰をあげて立ち上がる。

 

 

「厠ってどこだっけ?」

 

 

「確か、ここを出て石畳にそって歩けばすぐですよ。」

 

 

「ありがとな、ひなた。ちょっと言ってくる。」

 景夜が神楽殿から出てすぐ、ひなたが先程の話に戻す。

 

 

「そんな怖い顔をしないでください。眉間にしわが寄っちゃいますよ。ぐりぐり」

 

 

「……人の眉間を指で押すのはやめてくれ」

 

 

「ちょっと解してあげようかと思いまして。そんな風に厳しい顔をしているから、さっきみたいにクラスメイトに怖がられちゃうんです。」

 

 

「み……見ていたのか。」

 若葉は恥ずかしさで顔が熱くなる。

 

 

「まぁ若葉ちゃんは生真面目すぎますからね。一年生の時からずっと学級委員長で超優等生。クラスの人たちから『鉄の女』ってイメージで見られてますし。」

 

 

「うぐ……」

自分でも自覚していたが、改めて言われるとショックである。

 

 

「でも……そんなイメージ、壊しちゃえばいいですよね!」

 ひなたはにっこりと笑って若葉の手を取り、さっきの女子クラスメイトのグループの方へ歩き出した。

 

 

「お、おい、待て!?」

 

 

「こんばんはー」

 戸惑う若葉を無視し、ひなたは彼女たちに声をかけてしまった。彼女たちは何事かとキョトンとしている。

 

 

「すみません、実は若葉ちゃんが皆さんに混じっておしゃべりしたいと」

 

 

「ひ、ひなた、何を!?」

 

 

「何を恥ずかしがってるんですか。さっきもですね、みんなを注意しようと思ってたんじゃなく、どうやって話しかけようかなーなんて可愛らしい悩みを抱えていただけなんです。」

 

 

「な、そ、そんなことは――」

 

 

 否定しようとすると、ひなたが手で若葉の口を塞いでしまった。

 

 

「んー、んー!」

 女子たち三人組は少しの間キョトンとして――

 やがて吹き出すようにして笑った。

 

「へー、なんか乃木さんのイメージ変わった」

 

 

「いつもきちんとしてるし、すごく優等生だし」

 

 

「そうそう、もっと厳しくて怖い人かと思ってたー」

 

 

「そうなんですよねー。あと、若葉ちゃんは無愛想だから損をしていると思うんです」

 妙な成り行きだが、若葉とひなたは女子グループ三人に混ざっておしゃべりをしていた。ひなたに至っては、まるで数年来の友人のように親しげに話している。誰とでも仲良くなれる彼女の気さくさは、若葉にはないものだった。若葉は生真面目すぎる性格のせいで、クラスの中では少し浮いている。

 

「でも、中身はすっごくかわいい女の子なんですよ。それはこの上里ひなたが保証します。だから、仲良くしてあげてくださいね」

 

 

「か、かか、かわいい……? 何を言ってる!?」

 若葉が睨んでも、ひなたは「まぁまぁ」と悪びれもしない。

 

 

「あはは、面白い。大丈夫だよ、私たち、もう乃木さんと友達だし」

 彼女たちは若葉とひなたのやり取りを見て、笑いながらそう言った。

 

 しばらくおしゃべりした後、若葉は神楽殿の外に出た。夜と言えど七月の暑さは相当のもので、少し夜風に当たりたかった。古来、神社の鳥居は外界との境界という意味を持っていた。まだ人々が信仰心を忘れていなかった時代、神社は異界とされていたのだ。若葉は神社の持つそんな意味など知らなかったが、この場の静謐な空気を感じることはできた。

空を見上げると、無数の星が輝いている。

 

 

「若葉ちゃん、こんなところにいたんですね。もうだいぶ遅い時間ですよ。寝ないんですか?」

 ひなたも外に出てきて、若葉の隣に立つ。

 

 

「寝ている間に何か問題が起こるかもしれないからな。念のために起きておこうと思う」

 

 

「先生方が起きててくださいますよ」

 

 

「私は学級委員長だから、責任がある」

 

 

「はぁ〜……本当に若葉ちゃんは。真面目すぎるというかなんというか」

 少し呆れたようにひなたは微笑んで、

 

 

「だったら、私も起きてますよ」

 

 

「……付き合う必要はないぞ」

 

 

「いいえ、私は若葉ちゃんの幼なじみですから。ずっと一緒にいます」

 はっきりとした口調でひなたがそう答えると、若葉としてもそれ以上強く言えなかった。

 

 

「……ひなた」

 

 

「なんですか?」

 

 

「さっきはありがとう。ひなたがいてくれなかったら、さっきもまたクラスメイトたちから距離を置かれてしまうところだった。」

 

 

「いえいえ、私は若葉ちゃんが誤解されてるのが嫌だっただけですよ。」

 当然のことのようにひなたはそう言った。しかし、それでは若葉の気が済まない。

 

 

「何事にも報いを。それが乃木の生き様だ」

 それは若葉の祖母がよく口にする戒めの一つ。祖母を慕っている若葉は、その言葉をとても大事にしていた。

 

 

「だから私は、ひなたの友情に報いたい。してほしいことがあったら、なんでも言ってくれ。」

 

 

「そこまで言うなら……う〜ん、では私の若葉ちゃん秘蔵画像コレクションを増やすために、何か……コスプレとかいいですかね。……この際だから少し過激な……」

 ひなたが不穏なことをつぶやき出す。

 早まったかもしれない……と若葉は少しだけ後悔した。

 

 

「まぁ、何をしてもらうかは後でじっくり決めます。とにかく、若葉ちゃんはもっと気楽にクラスの人たちに話しかけたらいいんですよ。そしたら、みんなも若葉ちゃんのことを分かってくれて、もっと仲良くなれると思います。もし一人で話しかけるのが気後れするなら、さっきみたいに私が手伝いますから。」

 

 

 ひなたの言葉がゆっくりと若葉の体に染み入っていく。

(もっとみんなと仲良くできる……か)

 若葉はクラスで少し浮いているが、彼女自身も無意識に他のクラスメイトから距離を置いてしまっているのかもしれない。さっきも実際に話してみたら、簡単に仲良くなれたのだから。

 

 

「ああ、ですが、そうして若葉ちゃんがクラスで人気者になってしまったら、もう私に構ってくれなくなるかもしれません。私は過去の女として捨てられてしまうんですね……よよよ。」

 

 

「な、何を言っているんだ!? そんなわけがないだろう! ひなたは何があっても私の一番の友達だ!」

慌てて言う若葉に、ひなたはおかしそうに笑う。

 

 

「冗談ですよ。若葉ちゃんったら――」

 

 突如、地面が激しく揺れ始めた。

 

(これは……今までの地震とは段違いに大きい……!)

 

  -----------

 

 少し長めの用を足した景夜も、神楽殿に戻ろうとしていた。だが、そのとき突然強い揺れに襲われる。

(何だよ、また地震か……それにしてはさっきより遥かに大きい!)

 

 

「たくっ!?一体何なんだよ!」

 景夜は姿勢を低くして耐える、数十秒の揺れのあとに急いで神楽殿の方に向かって走り始める。少年は運が良かった、とっびきりの豪運と言えよう。

 

 空は一見、何の変哲もない星空のようだった。

 

 だが、違う。今までとは決定的に――

 

 無数の星々はまるで水面を漂うように蠢いていた。星のように見える『それ』は鳥か何かだろうか。しかし、動きが不規則な上に、夜にあれほど多くの鳥が空を飛んでいるのはおかしい。

 

 そして星々の幾つかが次第に大きくなっていき―

 

 絶望が、空から降って来た。

 

 先程も言った通り、柊景夜と言う少年は運が良かった。景夜は目の前で、尻餅をついている女の子に手を差し伸べる。女の子は景夜のクラスメイトだ、助けるのは景夜にとって当たり前で呼吸をするのと変わらない。

 

 

「だいじょう――」

 

 

 そして、手を差し伸べて次の瞬間。差し伸べた手が、赤く濡れた。景夜はまるで血のようだと思い、そしてその赤い液体が本当に血であることを一瞬の内に理解した。だから、走り抜けた、目の前の女の子だった肉塊とそれを貪る白い『ナニカ』の横を通り抜けて神楽殿に。

 

 

 頭の情報が追いつかないまま、神楽殿にたどり着く。脳裏に浮かぶのはいつも凛々しい顔をしている若葉と日常の中で柔和な微笑みを絶やさないひなた、二人の幼馴染の顔だった。神楽殿にも幾つかの白い『ナニカ』が入り込んでいた。中は滅茶苦茶でその中で一振りの刀を持ち白い『ナニカ』に立ち向かう若葉の姿が見えた。

 

 

「どうなってんだよ……これは。」

 

 

 訳が分からないのも当然だ、こんな事に巻き込まれたら誰だってこうなるだろう。そして、景夜はもう一人の幼馴染でもあるひなたを見つける。

「景夜君、何も言わずにこの槍を取ってください!」

 いつもの彼女からは程遠い、力の籠った声に少年は答える。ひなたから渡された槍は何の変哲の槍だ、穂先の部分が錆びて茶色くなっている。柄の部分も腐りかけているだが不思議とその槍が暖かく感じた。

 

 

 景夜がひなたから、槍を受け取ると槍の穂先の錆と腐りかけていた柄の部分もいつの間にか、生きているかのように瑞々しく輝き始める。穂先が綺麗に三等分に割けるその中から、新たな神々しい輝きをした穂先が現れる。三等分に割けた穂先が、まるでソードビットのように穂先を中心に円を描くように周り始める。

 

 

 古の時、《国造り》の名を持つ天の神の父が居た。

 

 かの神が国造りの為に使った、一本の槍が有った。

 

 その槍は最強ではなく、持ち主に最高を与える。

 

 その名は―――《天逆鉾(あまのさかほこ)

 

  -----------

 

 「若葉ちゃん!外にもあの変なのが溢れてます!」

 神楽殿の外から聞こえるひなたの声に応じて外に出る。

 

 いつの間にこれほど湧いたのか神楽殿の外は大量の化け物たちに囲まれていた。逃げようとした人々は退路をなくして絶望にくれている。

 神楽殿の中から出てきた若葉は、刀を握りしめる。その瞳の先で一人の少年が自分の身長を超える槍を、巧みに使い敵を一体一体確実に倒していた。

 だが、若葉には分かる。少年、いや景夜が武器を扱いきれずにあり余る力に振り回されていることが。

 

 

「キリがないぞ!どうにかならないのか。」

 

 

「景夜!大丈夫か!」

 

 

「何とか、そっちは?」

 

 

「私も平気だ、ひなたも大丈夫そうだな。」

 辺りをもう一度見渡す。

(たとえ敵が何十匹いようと、負ける気はしない—―)

 

 

 そんな若葉の甘い考えは、余にも簡単に砕ける。

「…な、なに……?」

 

 

「うそ…だろ……?」

 化け物たちに異変が起こった。

 複数の個体が一か所にまとまり、粘土を集めるように巨大化しつつ姿形を変えていく……。

 

 

 あるものはムカデのように長い体形となり。

 あるものは体表面に矢のようなものを発生させ。

 あるものは体組織の一部が角のように硬質化して隆起し。

(……進化……している……?)

 

 

 単体では乃木若葉と柊景夜に勝てないことを()()()()のだろう。彼らが自分達より強力な存在に対抗するために選んだ手段は、『進化』であった。『成長』なんて優しいものではない、明らかな生命としての『進化』。

 ある意味では、その化け物は地球上のあらゆる生物を超越した存在を言えるかもしれない。例えば『神』や『悪魔』と呼ばれるような—

 

 集合し大型化した個体の一匹が、その体に発生した矢を射出した。矢は進行方向上にいた人間数人を貫き、その先にあった神楽殿を破壊する。たった一撃で、神楽殿は三分の一ほど崩壊してしまった。圧倒的ともいえる力の差がそこにあった。

 

 

 その間にも化け物の小型個体は次々と数を増し、集合と変形を繰り返し、無数の大型個体が生まれていく。

 若葉と景夜の頭の中から勝てるなどと言う考えはとうに消えて無くなっていた。桁外れの破壊力を持ち、無数に出現する敵に、どうやって勝てばいいのか。

 恐怖と絶望で全身が崩れそうになった時—

 二人を支えたのは二人にとって共通の親友だった。

 

 

「諦めないでください、若葉ちゃん、景夜君。」

 

 

「……ひなた……」

 

 

「…ひな…た…」

 

 

「若葉ちゃんと景夜君、みんなを死なせたりはしません。」

 はっきりと、何かの確信をもったような口調でひなたはそう言った。

 

 

 ひなたはその場にいる人々全員に向かって叫んだ。

 

 

「これからは私に付いて来てください!安全な場所へ誘導します!」

 そしてひなたは迷いのない歩調で歩き出す。その姿は十歳の少女とは思えない、凛とした空気があった。

 

 

「ひなた、どこへ……?」

 

 

「そうだ、ちょっと位説明を…」

 

 

「若葉ちゃんと景夜君は露払いをお願いします。」

 今の彼女には有無を言わさぬ雰囲気があった。

 

 

「……わかった」

 

 

「ああ、もう!…分かったよ!」

 迷ってる暇などない。今はこの親友を信じるのみだ。

 

 

「生きたい者は、私たちについて来い!」

 先頭に立って走り出す若葉と景夜とひなたに、戸惑いながらも、他の人々も同行した。ひなたの進む先にいる敵たちは、若葉と景夜が切る伏せていく。

 

  -----------

 

 景夜はそれ以降のことを覚えていない、若葉やひなたは覚えているだろう。だが、あの時の景夜は無我夢中だった。幼馴染である若葉やひなたを守るため、他に一緒に逃げる人を守るため。

 だが、あの日にも希望はあった天逆鉾然り、生き残った若葉やひなたたちがいた。それが彼にとっての希望。

 しかし、あの日には悲しみもあった、多くの友を失った守れなかった。

 だからこそ、景夜は鍛えたのだもう何も失わない為に、後悔だけはしないために。

 

 

「わーかーばー、ちゃん。かーげーやー、くん。」

 背後からの声で、我に返った若葉とそろそろ来ることが分かっていた景夜が揃って振り返った。振り返ると同時に、パシャリとカメラのシャッター音が鳴る。

 スマホを構えて笑っている上里(うえさと)ひなたがいた。

 

 

「刀を構え本丸から海を臨む美少女、その隣に槍を構えて同じく本丸から海を臨む美少年……絵になります。若葉ちゃんの秘蔵画像コレクションがまた一つ充実しました!」

 

 

「どれどれ、よく取れてるじゃないか。腕上げたな、ひなた。」

 

 

「はい!それは勿論!」

 

 

「ひーなーたー……!」

 

 

 若葉がひなたのスマホに手を伸ばすが、彼女は素早く自分のポケットにしまってしまった。

 

 

「ふっふっふ、これで手が出ませんね。」

 ひなたが勝ち誇ったように言う。

 

 

「まぁ、諦めろ若葉。俺たちがひなたに勝ったことないだろ?」

(く……ひなたのわけわからん画像コレクションは、いつか絶対消してやる。)

 若葉とひなたに景夜の関係は今も変わっていない。三人は最高の親友同士だ。

 

 

 ふと、ひなたが真剣な表情になり、海の向こうを見た。

 

 

「今日もここに来ていたんですね。」

 

 

「…ああ。」

 

 

「訓練終わりにな…」

 

 

 三年前のあの日。

 若葉たちが見た白い異形の生物――後に『バーテックス』と名付けられたそれは、世界中に出現し、人類を蹂躙した。

 四国や長野の一部など、ごく限られた地域だけが、なぜかその侵攻から逃れてるらしい。だがその他の土地は今や人類のものではなく、バーテックスの支配下に置かれてしまったと言っていい。

 

 

 その異常事態の中で、ごくわずかな少女たちが特殊な力を発言した。若葉と景夜とひなたもその一人だった。その力があったからこそ、三人は神社に避難していた多くの人を救うことが出来たのだ。

 しかし。

 あの時、失われてしまった命もあった。

 

 

 神楽殿で逃げ遅れ、バーテックスに殺された人たち。そのほとんどは若葉たちと同学年の、修学旅行に来ていた生徒たちだった。あの夜、若葉が仲良くなったクラスメイトも殺されていた。

 ―大丈夫だよ、私たち、もう乃木さんと友達だし。

 そう言ってくれた彼女たちの笑顔を、若葉は今でも忘れていない。

 景夜も忘れない、自分の目の前にでバーテックスに殺されて肉塊なってしまったクラスメイトを。

 

 

 生き残った生徒たちも、目の前で友人を惨殺された精神的ショックは大きく、日常生活に支障を来しているという。未だにカウンセリングを受け続けている者も多い。

 

 

「……バーテックスは私の友達を殺した。罪のない多くの人々の命を奪った。」

 

 

 それは許されない大罪だ。

 何事にも報いを……乃木の生き様である。

 

 

「必ずバーテックスに報いを受けさせる。そして、奪われた世界を取り戻す。」

 

 

「そうだな、もう何も大切なものを奪わせないために。」

 

 

「ええ。私も、お二人についていきます。」

 

 

 西暦二〇一八年――

 乃木若葉は、地の神の力を使う『勇者』。

 上里ひなたは、神の声を聞く『巫女』。

 柊景夜は、天の神の力を使う『勇者』。

 そのお役目を担っている。




 次回もお楽しみに!(何週間開くか分かんないけど)
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