柊景夜は勇者である   作:しぃ君

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 すいません、もうちょっとだけ過去編が続きます


第二話「稽古とデートと墓参り」

 地獄を見た。

 

 最悪な最後を見た。

 

 世界は炎に満ちていて、生きているものは少年一人だけ。

 

 その近くには、大切な者たちだった骸が転がっている。

 

 二人の少女は胸に穴が開き、一人の少女は右肩から腹の方にかけて噛まれたような歯形がある。

 

 もう一人の少女は、全身がボロボロですでに呼吸は止まっている。

 

 幼馴染だった、守るべき二人の少女もすでにこと切れていた。

 

「――――――――――」

 

 声にならない叫びが響く。

 

 守れなかったのだ、少年は誰一人として。

 

 師匠も、母親も、大切な友も、愛していた人も……

 

 誰一人として救えなかった、やがて少年も炎に包まれる。

 

 少年の瞳に(希望)は無い、暗闇(絶望)だけがそこにあった。

 

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 目が覚める、隣には何故か温もりのあるものがあり、景夜はまたかと呟いた。

 

 

「気が利いてるんだか、利いていないんだか」

 

 

 最近は、こんな夢ばかりを見ていた。ひなたに全てを打ち明けてから二か月が経ち、今は十月も半ば。

 食事は喉を通るようになったが、最近は夢の所為で寝つきが悪い。

 

 

 だが、このままではダメだと思い。景夜は修行を始めた、瞑想である。

 布団の誘惑に何とか打ち勝ち、ベットから出て服を着替える。

 まだ、ベットの上ではひなたが小さい寝息を立てている。

 

 

 ひなたに全てを話した日から、三日から四日に一回の間隔で景夜のベットに忍び込んでいた。

 景夜としては少し所か大変困るのだが、ひなたが気遣ってくれてると思うと強く言えない。

 そんなこんなで、なあなあでこんな生活をしている。

 ひなたは本当は、悪戯心七割、善意三割でやっているということを景夜はまだ知らない。

 

 

 この二か月は、色々忙しかった。まず、天逆鉾の扱いの為にある人に弟子入りした。

 師匠から色々なことを教わりながら、暇な時間を見つけては友達と遊んだりした。

 師匠からは、こう言われた。

「景夜くん、修行をするのも大事だけど仲間や友達は最も大事にするものなのよ」

 その言葉に従い、杏と本の良さを語り合い、球子や友奈と外で遊び、千景とゲームをしたり。

 

 

 二か月の間で、みんなともそれなりに仲良くなることが出来た。

 千景以外とは、みんな名前呼びだ。

 二か月のことを振り返っている間に、道場に着いた。

 今日は日曜なのでまだ誰も来ておらず、景夜は座禅を組みひっそりと瞑想を始めた

 

 

「ふぅー」

 

 

 景夜の息を吐く音だけが、道場を満たしていた。

 

  -----------

 

 どれくらいの時がたっただろうか、目を開けると刀の素振りをする若葉の姿が目に入る。

 とても綺麗だ、と思いつつもその姿から目を逸らして、時計に目を向ける。

 

 

「五時半過ぎ…か」

 

 

 景夜は、もう一度目を閉じる。

 

 

 今度は、瞑想ではなくイメージトレーニングを始める。

 イメージするのは今日までの修行を終えた自分、その対面に昨日までの若葉を投影する。

 そこからは、思いつく限りの戦術を試す。防御を捨てる戦術、攻撃を控えてカウンターを狙う戦術、武器を落としたりして意識を逸らす戦術。

 三〇分程の時間で計二〇回は挑んだが、その中で勝てたのは防御を捨てて攻撃をし続けるといものだ。

 

 

 攻撃は最大の防御なり、今回の作戦はそれでいこうと決意し立ち上が若葉に稽古を持ちかける。

 

 

「若葉一本頼む」

 

 

「よし!受けてたとう」

 若葉は中に鉄芯を入れて強度と重量を上げた木刀と、居合の為に必要な鞘を持つ。

 景夜も柄の中に鉄芯を入れて強度と重量を上げた槍で、穂先はゴム性のものを使う。

 

 そして、戦いの火蓋は切って落とされた。

 その結果は……

 

  -----------

 

 景夜の持っていた槍が宙を舞い、後方でカランと音を立てていた。

 結果は…負けだ。

 昨日までの若葉だったら勝てていたのに、今日の若葉には勝てなかった。

 

 

「腕を上げたな、今回は危なかった」

 

 

「だぁ~!くそ!二か月そこらじゃ勝てないって分かってても、悔しい」

 景夜は後方に落ちた槍を拾い、先の戦いを振り返り改善点を見つけ出す。

 

 

「あの場面でこういくべきだったのか?いやでもそれじゃあ……ブツブツブツブツ

 

 

「おーい景夜!…ダメか感想戦に集中している」

 景夜に声を掛けようとしたが若葉の声も聞こえておらず、よほど集中しているらしい。

 時刻は七時を過ぎている、一時間も稽古していることに驚く者はここに居ない。

 

 

 景夜が何やらブツブツ独り言を言っている間に、ひなたがやってくる。

 

 

「お二人ともお疲れ様です。これをどうぞ」

 

 

「助かる、ひなた。景夜!ひなたが来たんだもう出るぞ」

 

 

「…ああ、分かった」

 ひなたからもらった飲み物を景夜にも渡し、若葉がタオルを受け取る。

 

 

「ひなた、タオルが一枚しか無いのだが?」

 

 

「ごめんなさい!忘れてしまったみたいです。」

 

 

「なら、いいよ。若葉が先に使え、流石に男子が汗を拭いたタオル使うなんて嫌だろ」

 

 

「別に、景夜なら構わんのだが…。ならば、ありがたく先に使わせてもらおう」

 こんなやり取りをして、若葉が汗を拭き終わった後に景夜もタオルで汗を拭く。

 

 

 そう言えば、とひなたが突然言い出した。

「景夜君、今日って空いていますか?」

 

 

「別に修行以外の予定は入れてないけど?どうかしたのか?」

 

 

「なら!修行の予定はキャンセルして下さい」

 景夜はこの時点で嫌な予感がしていた、だがひなたの頼みを断る理由がないため、そのまま了承する。

 

 

「分かったけど……何かあったか今日?」

 

 

「はい!景夜君――」

 

 

 ここでひなたが、爆弾級の発言をした。

 

 

「デートに行きましょう!」

 

 

「「はい!?」」

 景夜と若葉の声が道場に響いていた。

 

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 時刻は午前一〇時、諸々の準備をして場所に向かうひなた。景夜には先に待ち合わせ場所に行ってもらっていた。

 昔、よく遊んだ公園を待ち合わせ場所に選んだ。

 ひなたの服装は白を基調としたロングワンピースに、橙色のカーディガンを羽織っている。黄色の小さいバックには財布やスマホ、あとはリップクリームなどの小物が入っている。

 ひなたは、オシャレな格好に気を使っていた。

 景夜は、ギターケースと灰色パーカーにジーパンという何とも無難な格好で待ち合わせ場所にいた。

 ギターケースには、念のために天逆鉾が入っている。

 

 

(幾ら、幼馴染とはいえ女の子と出かけるんだからもう少し…、いえ景夜君はあれがデフォルトでしたね)

 

 

「スイマセン、景夜君。待たせてしまいましたか」

 

 

「いや、別に。それに女子の着替えに時間が掛かるのは前から知ってるよ」

 

 

「もう!景夜君は、面白くないですね~。本を読んでるんだから、もっとこう…」

 

 

「わかったよ、その服新しいやつだよな?似合ってると思う、カワイイぞ」

 

 

「ふぇ?!い、いきなり言わないで下さい!ビックリするじゃないですか、もぉ」

 ひなたは景夜の唐突な褒め言葉に、少し頬を染めて先に歩き始めてしまった。

 

 

 そんな、二人を後方から見守る影が五人。

 

 

「なぁ、若葉こんなことして楽しいか~」

 

 

「何言ってんの、タマッチ。すっごく楽しいよ!」

 

 

「アンちゃんは嬉しそうだね!」

 

 

「それにしてもよ、乃木さん。私たちが付いてくる意味はあったのかしら?」

 

 

「い、いや、それはだな……」

 若葉が言葉に詰まってる間に二人は動き出してしまい、五人は急いでそれを追いかけた。

 

 

 先程から周りにじろじろ見られている気がする。景夜はそんな風に思っていたが、ひなたが注目されてるのだろう考え特に何も言わなかった。

 だが、現実は違った。

 

 

「あそこにいる子たち可愛くない」

 

 

「分かる~、女の子も可愛いし、男の子の方はハーフか何かかな?カッコいい」

 ひなただけではなく、自分も注目されてるなど知る由もない。

 

  -----------

 

 あるデパートにて、二人は買い物をしていた。服屋さんに入っては、試着や物色をして店を出る。

 何回か、それを繰り返した末に。景夜もひなたも冬服を何着か買って出で来る。

 その姿を見守る五人、すでに二人は違う行動をしているが。

 

 

「タマっちもう行くよ!」

 

 

「分かったから、少し待ちタマえ」

 

 

「郡さん、そろそろ」

 

 

「待って!今良いところなの」

 

 

「何だか、こういうのも良いよね!」

 

 

 景夜とひなたは新しい店の前に来ていた。

 でも、先程までとは全然違う。

 ランジェリーショップだ。

 

 

「な、な、な!お、おいひなた!こんな所に来るなんて聞いてないぞ!」

 

 

「はい。言ってませんから!」

 景夜の訴えに何てことないように、笑顔で返すひなたはまるで小悪魔のようだ。

 

 

「景夜君は、いや…ですか…?」

 上目遣いで尋ねられた景夜に、それを断れる訳もなく。そのまま店内に連れていかれた。

 

 

「あー!か、景夜君たちがランジェリーショップに!」

 

 

「ら、らんじょりーショップ?なんだそりゃ?」

 

 

「ちょっとお高い女の人の下着屋さんだよ、そうだよねアンちゃん」

 

 

「そうです、友奈さん。友奈さんも知ってたんですね!」

 

 

「うん、たまにドラマで聞いたりしたから」

 二人の話す内容に着いて行けない、千景、球子、若葉の三人。

 だが、一つ分かったことがある。

 

 

 それは、―――

 

 

「あの、景夜がそんな場所に入っただど!」

 

 

 景夜が、女性の下着のお店(そんな場所)に入ったということ。

 

 

 その頃、ランジェリーショップに入った景夜はとても気まずかった。

 店員の女性とひなたが話すのを見ながら、周りに視線を向ける。

 下着、下着、下着。どこに行っても下着だらけ、時たま過激すぎじゃないかと思うような物もあった。

 

 

「景夜君、こういうのはどうでしょうか?」

 

 

「へっ?!…悪くないと思う」

 一歩間違えれば、変態扱いされかねないので慎重に言葉を選んだ。

 

 

 ひなたが見せて来たのは、白い水玉模様の入った水色の下着だった。

 景夜は、なんでこいつはあんなものを堂々と自分に見せられるのか疑問に思っていた。

 

 

「ふむふむ、悪くないですか。そうですか!」

 そこから景夜にとって羞恥に悶えるのは、当たり前の結果だった。

 

  -----------

 

 一二時を過ぎた頃になってやっと解放された景夜は、フードコートに買った袋を持ってやって来ていた。

 ひなたには軽いものを持ってもらい、重いものは率先して持った。

 神器のブーストがあるので全部持つと景夜が言ったが、ひなたが譲らないのでこうなっていた。

 荷物をひなたに任せて、昼ご飯を買いに行く。

 

 

「ざるうどんの大に野菜かき揚げのトッピングと、とろろうどん下さい」

 

 

「はい、ちょっとまってね。えーっと合計で六八〇円だよ」

 

 

「じゃあ、千円からで」

 

 

「はいよ、お釣三二〇円とレシートね。このブザーが鳴ったら取りに来てね」

 うどん屋さんのおじちゃんから、お釣とレシートと一緒にブザーを渡される。

 その後は、ひなたの下に戻り少し話す。

 

 

「今日ここに来た、本当の目的って何?」

 景夜の言葉に、ひなたが少し言い詰まってしまう。

 

 

「……それはですね」

 そうして、景夜に離したここに来た目的を。

 

  -----------

 

「へぇ~、ひなたちゃんも育ってきたね、そろそろ下着付けた方が良いよ。遅くなると、胸が垂れてきちゃっりするから」

 

 

「そうなんですか?それは大変です!」

 

 

「そうなのよ、だから今週末近くのデパートにでも買いに行きなさい」

 

 

「はい!そうします」

 ひなたが親しそうに話す年上の女性は、柊華恵(ひいらぎはなえ)。丸亀城の養護教諭にして景夜の母だ。

 

 

 ひなたが保健室を出ようと椅子を立った時、華恵が「ああ、それと」と言って何か言おうとしたのでひなたは止まる。

 

 

「何でしょうか?」

 

 

「行く時に、景夜を連れて行ってあげて」

 

 

「景夜君をですか?」

 

 

「…ああ。ひなたちゃんや若葉ちゃんあたりならもう気付いていると思うけど。最近、景夜が不安定な調子なんだよ。だから、気分転換も兼ねてお願いしてもいいかな?」

 

 

 華恵は悲しそうに言ったのを見て、ひなたは心が痛む。ひなたはいつも気丈に振る舞えるだけの極々普通な女の子だ、だからこそ戦えないからにはみんなをサポートしようと決めた。

 

 

 華恵が悲しいのは、息子が自分(母親)を頼ってくれないということ。それが悲しいのだ。

「華恵さん、景夜君があなた(母親)に言わないのは、景夜君の優しさだと思うんです。ですから……」

 

 

「分かってるんだけどね、やっぱり親は子供に頼って欲しいもんさ。大切なあの人との息子だからね」

 華恵がそう言ったのを見て先程は違う、親としての苦悩を見た。

 

 

「あと、それと―――に行ってきてくれないかい?」

 

 

「…分かりました、地図を貰っても?」

 

 

「ああ。少し待って、今渡す」

 三分程待つと、華恵からある地図を渡される。

 

 

「では、これで」

 

 

「ええ、気を付けて帰りなさい」

 保健室を出た、ひなたは景夜をどうやって連れ出そうか考え始めていた。

(どうやって誘いましょうか?景夜君のことなので私が誘ったら断らないと思いますが……)

 

 

「うーん?……そうだ!デート!デートと言うそういう体で行きましょう」

(うふふ、少し楽しみです!)

 

  -----------

 

「こんな感じです。どうですか?」

 

 

「そっか、そんなことが。母さんに心配掛けてたのか、はぁ~。全く、俺はまだまだだな」

 こんなことを言ってる景夜の顔は、とても嬉しそうだった。その顔を見てひなたも頬を緩めて笑う。

 

 

 それを見守る五人。

 

 

「そう言うことだったのか…。皆帰ろう、これ以上二人の邪魔をしたくない。」

 

 

「そうだな、タマもそう思う」

 

 

「カゲヤ君のお母さんも凄くいい人だね!」

 

 

「ええ、そうね。私もそう思うわ」

 

 

「良いお話しですね。感動します」

 そうして五人は静かに去っていった。

 

 その後、昼食を食べて少し休憩してる時。事件は起こる。

 

 

「ひったくりよー!誰か捕まえて」

 二〇代前半位の女性から、鞄をひったくる四〇代後半程の男性。景夜はすぐに立ち上がり、ギターケースを持って男の前に立つ。

 

 

「退けガキ!」

 

 

「やなこった!」

 

 

 右手を使って景夜を突き飛ばそうとした次の瞬間、男性は背中を床に強打して声を上げて蹲っていた。

 

 

「ぐああーー!」

 

 

 周りの者の殆どには見えなかっただろう、それ程の早業だった。だが、使った技はただの背負い投げだ。

 景夜の身長は146㎝、それに対してひったくり犯の身長は170㎝程だ。普通なら体格差的に出来ないが、景夜は今神器を背負っている。

 神器による、身体能力のブーストのお陰で大人一人位なら軽々と持ち上げられる。

 

 

 事件は早々に解決し、ひったくり犯は警備員に連れていかれた。女性からお礼を言われて、少し照れる景夜をひなたは誇らしそうに見ていた。

 まるで、私の幼馴染は凄いんですとでも言いたげな表情だった。

 

  -----------

 

 その後は、デパートを少しぶらついた。三時頃に、ひなたが行きたい所があるといいバスを使って移動する。バスに揺られること二〇分程、そこに着いた。

 

 

「ここは……霊園」

 

 

「そうです、頼まれごとがありまして」

 

 

「それってもしかして!」

「景夜君が考えている事で大体あってると思います。」

 

 

 霊園の奥の方に進んで行く、その先でポツンと一つだけ場所が離れた墓を見つける。

 

 

「父さんの……、ひなたがどうしてここを?」

 

 

「華恵さんに、頼まれたんです。最近行ってないだろうから、と」

 

 

「母さんが……」

 その言葉の通り、景夜はここ最近と言うか二か月近く行けていない。

 天災が起こる前までは、一か月に一度ここに来て近況報告をしていた。

 

 

 父である、シエル・フォトムの命日の日に必ず来ていたのだ。

 それが、最近は行けていなかった。

 父が死んだ後、ノルウェーの方からも親族が来てくれた。景夜からしたら従兄にあたる者たちは、みんな景夜に優しくしてくれた。

 寒い国から来た従兄の心は、とても温かく感じた。

 

 

 だが、もうその従兄達もいない。

 全て、あの『バーテックス』と言う化け物たちに殺されてしまった。

 悔しくて、だからこそ精一杯生きようと思った。

 景夜とひなたが無言で墓掃除を始める。丁寧に丁寧に、心を込めて洗う。

 

 

 その後は、色々なことを父に話していた。新しく出来た友達のこと、これから来るお役目のこと、そして決意を――

 

 

「父さん、俺頑張るよ!頑張って生きて見せる。それでさ、決めたよ俺の生き様。若葉がいつも言うから、俺もやりたくなってみたんだ!」

 その生き様は……

 

 

「若葉が、何事にも報いをなら。俺の生き様は――」

 たっぷり息を吐き、宣言する。

 

「明日を生きる人に希望を」

 

 

 明日を生きる人に希望を、それは明日を生きる人に希望を持ってもらいたいという願いと、自分が強くなり希望になって見せるという決意。

 

 

「とても良いです!カッコいいですよ、景夜君」

 日はもう傾き始めて、時刻はもう五時を回っていた。

 

 

「そろそろ帰るか」

 

 

「そうですね……ハックシュ!」

 ひなたがカワイイ、くしゃみをする。景夜は来ていた服を脱ぎ、ひなたに渡す。

 

 

「ほら、風邪引くぞ。ひなたのお陰でいい休日になったのに、ひなたが風邪引いたら申し訳ない。」

 

 

「大丈夫ですよ、景夜君。服は買いましたから」

 自分の買い物袋から、服を取り出そうとするひなたの手を掴み無理矢理止める。

 

 

「それじゃあ、冷たいだろ。いいから着ろ、俺は長袖着てるから寒くないし」

 明らかに無理をしてるのが分かる、ひなたはクスリと笑い。景夜からもらったパーカーを着る、サイズはあってないしコーディネートとしてもダメダメだ。

 けれど、着ていると落ち着くし温かい気持ちになる。景夜の匂いが付いてるからか、景夜に抱きしめられてるようだと思いひなたは少し照れた。

 

 

「景夜君、手を握って下さい。手も寒いので」

 ニッコリと微笑むひなたの顔が綺麗だと思ったが、景夜は言わない。

 言ったらきっと、からかわれる気がしたから。

 

 

「分かったよ。…ひなたの手ホントに冷たいな」

 

 

「景夜君の手は、温かいですよ」

 二人で手を繋ぎながら霊園を出て、丸亀城()に帰る。

 帰る間、二人の間に会話はなかった。

 

 それでも、心は通じ会ってると二人は信じていた。

 




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