柊景夜は勇者である   作:しぃ君

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あとちょっとで本編かも!


第三話「奥の手とクリスマスと決意」

 西暦二〇一五年  

 

 季節は冬。今日は一二月二四日、世間は少し活気を取り戻しクリスマスムードを作っている。

 外は雪が降り積もる中、景夜達勇者はある説明を受けていた。

 

 

「へ~、奥の手か~。何か凄そうだね!」

 

 

「友奈もか!タマもそう思うぞ!」

 放課後になり、みんなが寄宿舎に帰ろうとした時にひなたに呼び止められたのだ。

 何でも、自分たちが将来使うであろう奥の手のことを説明してくれた。

 

 

「それにしてもトロールと――――か……。何か、俺の奴はどっちもヤバそうな奴なんだけど」

 

 

「…そうね、柊君の精霊は少し私たちのとは違うわね」

 

 

「ですが、私たちの精霊も妖怪とかの類なんですよね……」

 杏の言う通り、景夜以外の勇者に告げられた奥の手と言う名の精霊はどれも起源は妖怪や化生の類なのだ。

 

 

 精霊とは、勇者たちの奥の手。勇者本人が意識を集中させることで、神樹内にある概念データに接続して戦況に合わせ自ら選び出して具現化する。精霊は人間の魂や妖怪などで、その特徴を必殺技のように使える。

 身体的に過重な負荷をかけるため、大社から使用を極力控えるよう命じられている。

 

 ひなたの説明はざっとこんなものだ、その他にも個人で扱う精霊の特徴なども伝えられた。

 

  -----------

 

 一般的なトロールについてのイメージは、巨大な体躯、かつ怪力で、深い傷を負っても体組織が再生でき、切られた腕を繋ぎ治せる。醜悪な容姿を持ち、あまり知能は高くない。凶暴、もしくは粗暴で大雑把、というものである。

 景夜の父であるシエルの故郷では有名であり、景夜にも半分はシエルの血が流れているために相性がイイらしい。

 能力としては、自己治癒能力と怪力と変身能力と多い。

 その他にも固有の能力として、ノルウェーの「トロールのいたずら」を少し改変した()()()()()()()()ことが出来る。

 

 

 景夜は、「チート過ぎない!」と言葉が漏れたが若葉に「盗めても使いこなせなければ意味がない」とバッサリ切り捨てられた。

 

 

「そう言えば!今日は一二月二四日ですね!明日はクリスマスですよ!」

 

 

「ひなたの言う通りだな……。みんなは予定あったりするのか?」

 景夜の問いにほぼ全員が「特にない」と返す中、千景が一人頭に疑問符を浮かべていた。

 

 

「クリスマス……?」

 

 

「郡先輩、…その…もしかしてクリスマスの事知らないんですか?」

 

 

「そうなの!ぐんちゃん!」

 千景の反応に、全員が驚いた顔している。球子など「五万ぶっタマげただ」と意味の分からない発言を飛ばしている。

 

 

「じゃあ!明日クリスマスパーティしようよ!」

 

 

「タマは賛成だ!」

 

 

「私も賛成です!」

 

 

「私も別に構わまない」

 

 

「こう言う、イベント事は欠かせません!」

 

 

「俺も別に大丈夫だぞ」

 全員が賛成したのを見て、千景もおずおずと言葉を放つ。

 

 

「みんながやるなら……」

 

 

 そこからは、急いでクリスマスの準備が始まった。買い出し組と飾りつけ兼食事組に分かれて作業を行う。

 買い出し組は球子&杏&若葉、飾りつけ兼食事組は景夜&ひなた&友奈&千景だ。

 景夜は本当なら、荷物持ちとして行きたいのだがなにしろ料理経験があるのがひなたと景夜しかいないのだ。

 

 

 景夜はある人に電話を掛ける。

『スイマセン、師匠。今お時間良いですか?』

 

 

『全然いいわよ!それで何か用なのかな?』

 景夜は少し事情説明をして、師匠にお使いを頼む。

 

 

『えっと、骨付き鳥とケーキね。分かったは少し多めに買ってくるからね!』

 

 

『ええ!?べ、別にいいですよそんな。』

 

 

『アタシが食べたいの!アタシの分も含めて用意しておいてね~!それじゃ!』

 

 

「えっちょ!師匠!…ダメだ、電話切れてる。」

 景夜は「面倒ごとになりそうだな~」と呟き、食事の準備に入った。

 

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 一方、買い出し組はというと…

「結構買ったな~、パーティは景夜の部屋でやるんだろ。大丈夫なのか?あの部屋結構狭いぞ」

 

 

「狭いように見えるのは、景夜が色々ものを置いてるからだ。昨日の内にひなたと片づけをしたと聞いたから大丈夫だ」

 

 

「そうなんですか?」

 杏は少し意外な顔をした。

 

 

「若葉さんは、手伝は無かったんですね」

 

 

「まぁな、いつもは一人でやる奴なんだが。昨日は中々に整理するものが多かったから、ひなたに応援を依頼したらしい」

 そうこうしながら、買い物を終えた三人は丸亀城への帰り道を歩いていた。

 若葉だけが気付いていた、不審者(ストーカー)に。

 

 

「土居、伊予島。私が合図を出したら、急いで走れ。今、何者かに追われている」

 

 

「ま、マジかよ。…わかった、合図が来たら杏を引っ張って走る」

 

 

「私も状況は把握できました。どんな合図ですか?」

 若葉は、先程拾っておいた石を後方から付けて来た男に向かって投げつけた。

 

 

「今だ!」

 

 

「おい!若葉いきなりすぎるぞ!」

 

 

「もうちょっと安全な作戦を立てましょうよ~!」

 球子と杏はこう言いながらも、ちゃんと走っている。数分程追いかけっこが続くと杏に疲れが見え始めた。

 

 

「ハァ……ハァ……ゼェ…ハァ」

 まだ、鍛え始めて4ヶ月も経っていない。

 元々病弱で運動もあまりしてこなかったインドアの杏からしたら、数分のチェイスも中々に堪える。

 距離も少しづつ詰まってきているどうするべきなのか、若葉は思考し始めた。

 

 

 その時、追い掛けていた男が急に止まった。

 前を見ると、そこには笑顔で怒っている景夜がいた。丸亀城の敷地まで後二〇〇mはあるだろう、なのに何故か彼はいた。

 その姿を見て、若葉が叫ぶ。

 

 

「景夜!こいつを頼む、私は二人を」

 

 

「りょーかい!任せとけ!」

 言葉はそれだけなのに、自然と頼まれたことは理解し処理することができる。

 

 

 景夜が一歩踏み出す、背負っていたギターケースが揺れ、男が一歩後ろに下がる。

 景夜が二歩目の足を出す、先程までの笑顔が無くなり真顔になり、男は少年の異様な雰囲気に驚き腰を抜かして尻もちをつく。

 景夜が三歩目の足を出す、段々と男との距離が詰まる、男は何度も立とうとするが何故か足が上手く動かず立ち上がれない。

 そして、四歩目に――

 

  -----------

 

「すいませんでした!」

 

 

「いやいや、別にいいよ。こっちこそ疑わせるようなことをして悪かった」

 

 

 男はただ球子が落とした、ハンカチを拾って届けようとしただけのいい人だった。

 でも、中々声を掛けることが出来ず。最終的にストーカーの様に付いて行ってしまったのだ。

 運が悪かった、それだけだが少しムカついたので――

(若葉め!後でひなたと一緒にお前のコレクション増やしてやる!)

 こう思っていた。

 

 

 その後は、普通に準備をして一日を終えた。

 景夜の部屋には、飾りつけ用のリボンやらなんやらがダンボールに入れて置かれていた。

 景夜はその箱を無視しつつ、パソコンに向かっている。

 イヤホンマイクを被り、通話をしながらゲームをやっている。

 

 

「郡先輩、そっちの方に殺人鬼行きましたよ」

 

 

「分かったは、発電機の修理よろしく」

 

 

 短い言葉を交わして、景夜はゲーム内の自分のキャラを動かして発電機を直させる。

 景夜と千景がやっているゲームはDea❍ by Da❍lightと言う、簡単に言えば殺人鬼と生存者に分かれてやる鬼ごっこだ。

 生存者はマップ内にある発電機を修理し、脱出ゲート開けて逃げきれれば勝ち。

 殺人鬼はすべての生存者をフックにつることが出来れば勝ち。

 

 

 簡単そうに見えるが、奥の深いゲームだ。景夜は初めて3ヶ月は経つが未だに殺人鬼が近づいて来た時の心音にはドキッとしていた。

 そんな時――

 

 

「ごめんなさい、柊君。殺人鬼そっちに行ったわ」

 

 

「え、ちょま!ああ、もう!郡先輩は発電機の方俺のやつ継続してお願いします」

 

 

 その後、結局は千景に助けられ何とか脱出に成功した。

 

 

「郡先輩お疲れ様です」

 

 

「柊君もお疲れさま。今日は遅いからもう寝ましょうか」

 

 

「そうですね、それじゃあおやすみなさい」

 

 

「ええ、おやすみなさい」

 景夜はパソコンをシャットダウンさせて、ダンボールにぶつからないように歩きベットにダイブする。

 

 

「今日も疲れた~」

 呟きは、誰に聞かれることもなくただ消えていった。

 

  -----------

 

 昨日から、一様は冬休みになったが鍛錬もあったのでみんなで集まれたのは四時を少し過ぎたあたりだった。

「――という理由で、今日は俺の師匠も参加するけど許してくれ」

 景夜は頭を下げるが、みんなは全然気にしてないと笑って許してくた。

 それが嬉しくて、景夜もたちまち笑顔になる。

 

 

「それで!なぁなぁ、タマたちにも師匠のこと教えてくれよ~」

 

 

「それ!私も聞きたいな!」

 

 

「ああ、私も興味があるぞ」

 

 

「どんな方なんでしょうね?」

 

 

「そうね……、私も知りたいわ」

 

 

「気になりますね」

 みんなが口を揃えて言ってくるので、景夜は師匠の説明を始めた。

 

 

「師匠は今一五歳だよ。それでいて結構綺麗な女の人かな?」

 

 

「え!?女性の方なんですか!」

 ひなたがビックリして立ち上がる。だが、その他の勇者は違う違和感を覚えていた。

 

 

「景夜、今一五歳と言ったか?」

 

 

「言ったぞ、別に変な事でもないだろ。こんな世の中だぞ?」

 

 

「そ、それもそうか」

 何故か、納得した若葉は質問を止めてしまう。

 

 

 その後も、少し質問攻めのような感じになったが何とか躱して師匠を待った。

 五時を過ぎたあたりになってようやく玄関のドアが開いた。

 

 

「景夜く~ん、ケーキと骨付き鳥買って来たわよ~」

 オフの日特有の、師匠の間延びした声が聞こえてくる。

 

 

「スイマセン、師匠。何かパシリみたいにしちゃって」

 

 

「別にいいわよ、暇だったしね~」

 そんな師匠を見て、ひなたと若葉が驚いて声を上げた。

 

 

「も、紅葉さん!」

 

 

「も、紅葉姉さん!」

 

 

「あら~、ひなたちゃんに若葉じゃない!久しぶりね~」

 三人のやり取りに少し付いていけない他の勇者たちに、景夜が紅葉に紹介を促す。

 

 

「ごめんね~、勝手に盛り上がちゃって。私の名前は赤木紅葉(あかぎもみじ)、景夜君の槍の先生兼若葉の従姉です!みんなよろしくね~」

 紅葉のテンポに付いて行けなかったメンバーも、時間が経つごとに紅葉と距離が近くなっていく。

 主に精神的にだが。

 

 

 楽しい時間はあっと言う間に過ぎていく、ゲームやらお喋りをして最後に「王様ゲームをやろう!」と紅葉が言いだした。

 景夜が割り箸を用意して、ついにゲームが始まった。

(ひなたにだけは、王様になって欲しくない!)

 景夜と若葉が同時にこう思っていた。

 そして――

 

 

「私が王様だね~」

 紅葉に当たった。王様になった紅葉がどんな命令を下すか分からないが、ひなたになるよりはマシだと思い紅葉の言葉を待った。

 「じゃあね~」と紅葉が声に出したその後顔つきと声が変わった。

 

 

「全員の戦う理由を教えて」

 

 

 簡潔な問、その問いに一番早く答えたのは若葉だった。

 

 

「奴らにバーテックスに報いを受けさせる、それが私の戦う理由です!」

 若葉の次に球子と杏が――

 

 

「杏を守るためだ!」

 

 

「タマっち先輩を守るため」

 二人は息が合っていて、行っている言葉も似ている。お互いがお互いを守るそんな関係。

 

 

 次に友奈と千景が――

 

 

「私は、大切な友達を守るため!」

 

 

「私も、…高嶋さんや柊君のような友達を守るため」

 

 

 似ているようで、少し違う。友奈は全を守りたい、千景は大切な小を守りたい。似ているようで違くて、逆にそれが綺麗に見える。

 次にひなたが――

 

 

「私は戦えませんが、せめて皆さんの帰ってこれる場所に」

 優しいひなたなりの、自分自身と戦う意思表示。

 

 

「景夜くん、あなたは何の為に戦うの。何の為にその力を振るうの?」

 紅葉の問いに、景夜は迷いなく答える。

 

 

「もう、これ以上大切なものを奪わせない為に。そして、柊景夜の生き様…明日を生きる人に希望を!これを果たすために戦う」

 景夜の迷いなき答えに、微笑む。

 その姿は、まるで妹や弟を大切にする姉のようで、母のような温かい何かがあった。

 

 

「そっか、それなら……修行頑張らなくちゃね!」

 

 

「はい!これからもよろしくお願いします!師匠!」

 この日、また少年に新たな決意が生まれた。

 

 みんなで明日を生きたいと言う決意が。




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 それではまた来週!
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