よまわりさんって戦えるっけ。   作:銀ちゃんというもの

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よまわりさん、お酒を飲む

土を操って穴を掘ってます。

私達は今、深夜の街に忍び込んで人目を忍んで適当な空き地に穴を掘っています。

百足があるから土魔法以上に楽に掘れるよ!

余分な土は蜘蛛さんが収納してるよ。

んである程度掘ったら、地下室みたいな空間作ってぇ。

あとは入り口を土でふさいで蜘蛛さんの糸が通れるくらいの穴をあけてぇ。

今度は穴を横に掘ってぇ。

街からだいぶ離れたところで地上につなげてぇ。

じゃじゃん、情報収集用兼魔王さんからの避難所兼吸血っ子の様子見兼蜘蛛さんの避難用卵置き場!

 

『長い』

『でもその通りじゃないですか。はい、とっとと卵設置してください、次早く行きましょう』

『早い』

 

 

海です。

水龍釣りました。

今、ぴくぴくしてます。

どうやら水龍ってえら呼吸だったようです。

そっと目をそらしました。

蜘蛛さんがなんか釣りあげました。

昔みた召喚士が召喚した水竜でした。

蜘蛛さんがこいつフグ型なうえに毒持ってるってことは毒袋とれるんじゃねとか言い出しました。

賛成です。

超同意です。

成功したらちょっと私にもください。

 

「はい」

『ありがとうございます、うまいです!』

「は。しまった。美味しいからつい全部食べちゃった」

『早すぎです蜘蛛さん!』

「この毒袋どうしよう、食べよう」

『え、せめて鼻つまんで・・・』

「まずい」

 

そんなやり取りをしていると声が聞こえた。

 

「自ら毒を食らうのは趣味なのか?」

 

そんな趣味蜘蛛さんにはないと思います。

え?

誰?

 

「久しいな」

 

あ、ギュリーさんだ。

振り返った先には管理者ギュリエディストディエスがいた。

 

 

ギュリーさんは死にかけてる水龍を無造作に海に放り投げる。

うわ、扱い雑。

あ、水龍泳いで逃げてった。

ギュリーさんが蜘蛛さんの隣に腰を下ろす。

 

「随分暴れまわってくれているようだな」

 

ぎ、ぎく。

あ、これ怒ってるのかなぁ。

いくら蜘蛛さんでも管理者、神相手だと逃げれないもんなぁ。

蜘蛛さんのたとえをまねすると「魔王を戦車だとたとえれば、ギュリエディストディエスは核兵器」

うん、オワタ。

 

「おかげで私は頭が痛いよ」

 

ギュリーさんが大きな溜め息を吐く。

怒ってるというよりなんか違う感じ?

すっごい疲れてる。

 

ギュリーさんが空間を歪めて、何かを取り出す。

瓶、酒?

 

「飲むか?」

 

キュポンと蓋を外すと、芳醇な香りが漂ってくる。

やっぱりお酒だ。

ギュリーさんがこれまた異空間からグラスを3つ取り出し、お酒を注ぐ。

有無を言わさず1個渡されちゃった。

 

「付き合え。それぐらいの強権を振るうくらいは許されるだろう」

 

あ、はい。

未成年なんですけど、ま、いいか。

 

ギュリーさんがグイッとお酒を飲み干す。

私もグイッと飲み干す。

美味しい。

ギュリーさんがおかわりを注いでくれた。

蜘蛛さんは一口飲む。

 

「追加はたんまりある。遠慮せずに飲むといい」

 

今度は蜘蛛さんがグラスのお酒を飲み干す。

 

 

 

「まったく、ポティマスのクズは引きこもったままだし、最低限の釘さしはしたがどうせまた碌でもないことを考えているに違いない。あれはもうどうしようもないクズだというのにサリエルは殺すなという。その言葉がなければ八つ裂きにして地獄に叩き落としてくれるものを。アリエルもダスティンも人の言うことを聞きやしない。特にアリエルだ。さんざん手出し無用だと言っているのに渦中に飛び込むとはどういう了見なんだ。ああ、事情はわかるがそれなら私に相談するなりすれば間を取り持つくらいしてやったものを。私は奴のことを少なくとも同士だと思っていたが、私の独りよがりだったというわけだ。まあ、はぐれ龍たる私にはお似合いだな。ボッチだボッチ」

「うへへ。世界が輝いているー」

『ほんとですね蜘蛛さん、ふへー』

「輝いているわけがなかろうが。こんな世界サリエルがいなければとうの昔に見捨てていたものを。他の龍どもがしでかしたことは許せないが、この世界の人間も馬鹿でクズばかり。浄罪システムで解放された人間が一人もいないことがいい証拠だ。どいつもこいつも罪科ポイントだけ貯めるだけ貯めて、ちっとも減りやしない。どれだけ悪行を積めば気が済むのだ。そのくせ悪龍討伐だなどとほざいて地域管理を任せている部下に戦いを挑む。悪はどっちだという話だ全く」

「あー、幸せー」

『ふへー。あっおかわりくださいー』

 

ギュリーさんがおかわりを注いでくれる。

 

「私は不幸だよ。お先真っ暗だ。だが、仕方ないのだろうな。これも惚れた弱みだ。私は彼女の望みを叶えてやりたい。それで彼女が死ぬことになろうとも、最期に彼女が笑ってくれるならばどんなことでも耐えてみせる。ただ、彼女が死んだ後のことなど知ったことではないがな」

「うぃ」

『わーめっちゃ惚れてますねぇ』

「君達も君達だ。アリエルに喧嘩吹っかけるだけでは飽きたらず、人間の戦争に介入するとはどういうつもりなんだ? ああ、いや。理由はわかるし気持ちもわかるがな。私も連中のことは何度八つ裂きにしてやろうかと思ったことか。正直に言えば少しスカッとしたのも事実だ。神言教は腐敗が酷いものだし、女神教も本来の教えとはかけ離れてしまっている。そもそも奴らにサリエルを信仰する権利などないというのに厚かましいことこの上ない。恥を知れ恥を」

「みんな殺してしまえー」

『ひゃっはー汚物は消毒ですー』

「まったくもってそれが一番手っ取り早いのだがな。残念ながら当のサリエルがそれを最も嫌うから始末に負えない。そしてそのサリエルの気持ちを私も裏切れないから始末に負えない。ままならないものだ。酒でも飲んでいなければやっていられん」

「お酒美味しい」

『お酒おいしいですねー』

「いい飲みっぷりだ。もっと飲め」

「わーい」

『ありがとうございますー』

 

 

 

おはようございます。

昨日はだいぶ飲んじゃったなぁ。

でもちゃんと記憶あるぅ。

まだ蜘蛛さんねてるなぁ。

お酒飲んだはずなのにそこまで酷くなってなかったし、逆にちゃんとコミュ障が発症せずちゃんと話せてたからメリットだらけ!?

 

「おはよう」

『おはようございます』

 

あ、蜘蛛さん起きた。

 

「記憶がないんだけど、私いつ寝た?」

『飲みすぎて途中で寝てました』

「結局ギュリギュリは何しに来たの?」

『ほとんど愚痴ってましたね』

「愚痴を聞いてもらいたかっただけか?何あの神様?」

『んま、おいしかったからいいじゃないですか?』

「うん、お酒は美味しい」


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