よまわりさんって戦えるっけ。   作:銀ちゃんというもの

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平成最後の投稿!


よまわりさん、名をもらう。

よし、魔王さんに仕えると決めたら善は急げ。

蜘蛛さんと人魔滅ぼしに行こう!

 

「待て。貴様ら何をしようとしている?」

 

とめないでギュリーさん!

パラダイスが待ってるんです!

 

『ああ、これは手っ取り早く人族も魔族も根絶やしにしようとしてますね』

「それを私が許すとでも思っているのか?」

 

あ、すいません。

そのマジな神様オーラを出さないでくれません?

 

「まったく。アリエル、貴様これの手綱は握れるのか?」

「あははー。ちょっと自信ない」

 

笑ったあと急に真顔になる魔王。

 

「ぶっちゃけ二人とも良くも悪くも自分に正直だからね。やりたいことはやる。やりたくないことはやらない。自分の命がかからない状況だったら、やりたいことは何が何でもやり通すよ」

「それが極端な方向に向いても、か。なんとも厄介な」

「あ、その子は蜘蛛ちゃんの命がかかったら必死で動くかも」

『言葉は通じるけれど意思の疎通が不可能な怪奇生物ですね』

 

ちょっと待って、どんどん私達の評価が落ちていってる!

 

「仕方がない。私もそばにいよう」

「いいの?」

「致し方あるまい。この星でもはやそやつを止められるのは私だけだ。私の見ていないところで勝手に暴れられでもしたら惨事だ。いつ爆発するかもわからないのだから、常に見張っておくしかあるまい」

「よっしゃ!神3柱部下にゲット!」

「部下ではない。監視役だ」

「いいよいいよ。ただ、便宜上ギュリエも蜘蛛ちゃんもよまわりさんも私の部下ってことにしていいかい?」

「構わん」

 

蜘蛛さんと私も頷く。

 

「おっし。じゃあ、これからの予定を簡単に説明するけど、まずは魔族のとこ行って魔族をまとめます」

「当てはあるのか?」

「もちろん。先代から魔王の称号受け継いでからちょくちょく接触はしてたのよ。とりあえずアーグナーっていう古株と、バルトっていう今魔族をまとめてる小僧には軽く話を通してあるよん。まあ、いざ魔王として表舞台に出ようとした瞬間に、どっかの誰かがありえん攻撃してきたから進行は滞ってるけど」

 

誰だろうなぁ。

シラナイナぁ。

 

「うわ、目がいっぱい泳いでる。気持ち悪」

 

うわぉ、蜘蛛さんの目の中にある目がめっちゃ動いてる!

 

蜘蛛さんが目を閉じる。

 

「話を戻すけど、とりあえず出てくるときに魔族の軍備を整えておくようには言っておいたから、準備ができたら人族相手に戦争かなー」

「戦争をするほどのことか? この間こやつが盛大にやってくれたおかげで死者の数はそれなりに確保できているはずだが?」

 

あー知らないんだギュリーさん。

 

「ギュリエ、今のMA領域エネルギー充填率、3%しかないのよ」

 

いつになく真剣な顔の魔王の言葉に、ギュリーさんが目を見開く。

 

「馬鹿な!?」

「これまでコツコツ貯めて71%まで回復してたのに、それがごっそり減った。原因は、おそらく先代の勇者と魔王」

「タイミングを見ればそうなるか。だが、ありうるのか? そんな大量のエネルギーが消費されればいくら干渉権を失った私でも気づくはずだ」

『そのエネルギーがこの星で使われれば、の話ですね』

「まさか。そういうことか」

『そう、あなたにお話しした転生者の話と繋がるわけです。先代の勇者と魔王は次元魔法を改造し、システムの最終責任者である私を割り出し、攻撃を仕掛けた。MA領域を破壊し、そのエネルギーを使って十中八九私を狙って故意にエネルギーを消費していますね。システムは私が死んでもそのまま存続することを知っていたのでしょう。あわよくば私の権限を奪うことも視野に入れていたのかもしれませんね。もっとも、最大の誤算はシステム管理者がこの私だったということですが。あの程度の攻撃で私を殺せると本気で思っていたのか、私のことを知らなかったのか。おそらく後者でしょうね』

 

わー星のエネルギーの半分をあの程度とか言ってるよぉ。

 

「こんなことをしでかすのは、1人しかおらんな」

「でしょうね」

 

あ、魔王さんとギュリーさんは犯人がわかっているのかな?

 

「ポティマス!!!!」

 

 ギュリーさんの体からものすごいオーラが立ち上る。

 

「どこまで腐れば気が済むのだ!?」

「しかも、あいつは支配者。それも権限を確立した。今の状態であいつを始末すれば、空いた穴が世界の崩壊を加速させちゃう。そこまで計算して行動を起こしてるのだとすれば、悪知恵だけは働くと認めざるを得ないね」

「クソッ!」

 

怖い。

 

「まあ、そういうわけで、早急な立て直しが必要なんだよ。幸いさっき言ってた件で多少補充はできてるはずだから、少しだけ猶予はあるけどね。私はその猶予を使って魔族を鍛え上げる。そんでもって人族とど派手に決戦と行こうじゃないか。生贄は、多いに越したことはないからね」

 

魔王の底冷えするような笑みに、ギュリーさんは難しい顔をして黙り込んだ。

そして渋々と言わんばかりの顔で頷く。

 

「それじゃあ、行動開始するけど、とりあえずは魔族領に戻ろうか」

「ああ、悪いが、私は少しだけ外す」

「ん? どして?」

「ここのような生き残りの施設がないかどうか、改めて星を隅々まで点検してくる」

「あー」

「じゃあ、ギュリエはそれを頼もうかな」

「うむ。ここも去る時に完全に破壊したほうがよかろう」

「だね」

「じゃあ、行こうか。よまわりさんと若葉ちゃん、それとも姫色ちゃんって呼んだほうがいい?」

「どっちも嫌」

 

お、蜘蛛さんが喋った。

 

「じゃあ、なんて呼べばいいの?」

『白織なんてどうです?一応私の眷属候補ということで、神としての名前を命名してみましたが、いかがです?』

「じゃあ、白ちゃんって呼んでいい?」

 

蜘蛛さん・・・白さんが頷く。

そして気づいた!

私の名前は!

 

 

「あ、それならギュリエは黒ちゃんにしよう」

「なぜそうなる」

「ちっちっち。ギュリエは一応伝説にもなってる龍神様でしょ? 本名はあんま伝承でも残ってないけど、どこで身バレするかわからないし、名前くらい偽っておかないと」

「まあ、それなら構わん」

『すいません!私の名前は無いんですか!?』

 

ギュリーさんを除いた全員の視線がスマホに向く。

スマホから聞こえるDさんの声が一言。

 

『考えていませんでした』

 

がーん。

泣いていい?

泣いていいよね?

と、そこで。

 

現世(うつしよ)

 

白さんが呟いた。

 

「それがよまわりさんの名前?」

 

白さんが頷いた。

 

「長くない?あと由来は何かある?」

 

確かに長いけど!

それがいい!

白さんがつけてくれた名前だもん!

 

「現世は現世側の生き物だから」

『それがいいです!』

「私達も現世側だと思うんだけど・・・。じゃ、現世ちゃんでいいかな?」

 

頷く。

 

「おっけー」

「では、この施設を破壊する。そのあとは別行動ということで構わないな?」

「オッケー。でも、合流する時はどうするの?」

「魔族領にいるのだろう? ならばこちらから出向く。受け入れの用意はそちらに任せる」

「あいよー。黒ちゃんが来た時には体裁だけでも整えとくよ」

 

そこでスマホから声が聞こえる。

 

『では、私もお暇させていただきます。これからも高みの見物をさせていただきますので、せいぜい私を楽しませてくださいね?』

 

スマホがふっと消える。

神になって思ったけどDさんの転移がハンパなさすぎる。

 

「よし。じゃあ、白ちゃん、現世ちゃん行こっか」

 

魔王さんの言葉に頷き、白さんと施設を後にする。

私達が施設から脱出したあと、地響きが起き、私達が開けた施設へとつながる穴が塞がっていった。

黒さんが破壊を始めたみたい。

 

「のんびり歩いて帰る? それとも急いで走って帰る? のんびりなら多少観光とかもできるけど。お金はあるし。どうせ黒ちゃんが世界の点検を終わらせるまでにそこそこの時間はかかるだろうし」

 

うむむ。

これはお菓子を食べる一択では。

 

「あ、現世ちゃんは街に入っちゃだめね」

『買ってきてくれるんですか?』

「うん、だってよまわりさんが街中入ったら大変なことになるでしょ」

『なるほどです』

 

「え? 何?」

『何してるんですか蜘蛛さん』

 

突然蜘蛛さんに捕まれて転移させられた。

転移した先は街の中。

魔王さんに町中に行くなとか言われたのにいきなり町中来ちゃったよ。

魔術で隠蔽かけとこうかなぁ。

こんな感じでヨット。

よし、これで白さんと魔王さん以外には認知不能になった!

 

「あれ? ここはどこ? 私は誰?」

 

魔王さんが混乱しまくってる。

人々で道がごった返しになっているので、屋根の上をジャンプしながら移動する。

 

「あのさー。そろそろ事情を説明してほしいんだけど?」

 

魔王さんが呆れたように言う、私も超同意。

 

「この街に転生者がいるんだけど、たまたまピンチのところを見ちゃったから救出する」

「白ちゃんが喋った!? しかも長文!?」

『珍しい長文ですね』

「へー。しかし転生者ねー。意外だなー。白ちゃんそういうのはメンドくさいって言って関わんないかと思ってた」

「進んで関わろうとは思わないよ。ただ今回はタイミングよく見つけちゃっただけ」

「ツンデレ乙」

 

現場に到着。

同時に女の人が刺されて死んだ。

 

「ありゃー。なんか修羅ばってる」

『のようですね』

 

なんか吸血っ子がいるからこの街はあの街なのかな?

その吸血っ子は吸血っ子を巡って2つの勢力がぶつかってるっぽいところにいるけど。

あ、あの吸血っ子抱えてるの、前に白さんが治療した護衛じゃん。

 

「エルフ? なんで奴らが」

 

魔王さんが呟いた。

エルフ?

耳が長い?

いるんだ?

 

魔王が飛び出そうとする。

それを白さんが制止する。

 

「もうちょっと待って」

「なんで?」

「極限のピンチに現れたほうが印象いいでしょ」

 

思った以上にとんでもない理由だった。

 

「白ちゃんって割とゲスいよね」

 

私もちょっとそう思う。

そうこういってる間に、護衛の人が倒れる。

こんどは吸血っ子が護衛の人の血を吸い始めた。

血を吸った吸血っ子も、血を吸われた護衛の人も、雰囲気が変わる。

ゆっくりと起き上がった護衛の人がエルフらしき男の1人に殴りかかった。

 

「あー、進化直後で理性ぶっ飛んでるね、あれ」

「吸血鬼になるのも進化なの?」

「そうだよー。特殊進化だね」

 

へー。

あー護衛の人がやられた。

女の人の魔法に呆気なく吹っ飛ばされてる。

 

「あん? あれは、まさか、ポティマス?」

 

魔王さんがすっごい雰囲気を醸し出して喋る。

ポティマス?

なんか聞いた覚えあるなぁ。

 

「ポティマスって、エルフ?」

「そうだよー。最低のクズ野郎の名前だよ。けど、あそこにいるのは本体じゃないね。あれはエルフの名も無き女の体を乗っ取って使ってるの。他人の体を使って自分は安全なところから高みの見物。自分以外はみんな道具としか思ってない最低のクズ。それがポティマスってやつだよ」

 

他人の体を乗っ取る?

あれー白さんって前マザーの体を乗っ取って。

あれー?

 

「ハッ!? そう考えると白ちゃんも最低のク、ブヘラッ!?」

 

白さんが魔王さんを殴る。

 

「見た目あんま力の入ってないただの右ストレートなのに、避けられないうえに物理無効貫通するとか。これがゴッドパワーか」

 

鼻血を出しながら魔王さんがキリッと解説する。

 

「まあ、あれだ。この世界のエルフって、白ちゃんが想像するような感じじゃないのよ。はっきり言って世界からしてみると害悪でしかないような連中なんよ」

 

へー。

 

「仮の体とは言えポティマスが出てくるなんて。どういう風の吹き回しだろ? まあ、いいか」

 

私達が止める間もなく魔王さんが飛び出していく。

 

「やあやあ。魔王少女アリエルちゃん、美幼女とその従者のピンチに華麗に参上!」

 

は、何始めてるの魔王さん。

まぁいいや。

私は影に隠れてよう。

街のほうどうなってるんだろう。

うわぁ。

混乱を極めてるねぇ。

あー今神化したばっかだけど自分の状態まだ確かめられてなかったなぁ。

そういえば気になってたけど私のエネルギーに魔力以外に別の力、というか答え合わせをすると神力があるんだけどこれ白さん達にはないんだよねぇ。

使えないかな?

とりあえず神力を全身に回して身体強化。

うん出来た。

次は神力での弾幕形成。

某弾幕ゲームにありそうな弾幕ができた。

次、神力と魔力を組み合わせて魔術の強化。

む、これはちょっと難しいなぁ。

うーん。

あ、待って。

空間収納に鋏入れっぱなしだから空間収納放置できない。

空間収納維持に神力使ってみよう。

うん出来た。

 

と、そんなところで白さんに強制転移させられた。




現世(うつしよ)です、異論は認めん!
ネーミングセンスが無いのは知っている

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