よまわりさんって戦えるっけ。   作:銀ちゃんというもの

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今回遅れた分7000字越えだってよ。
すんません切るところ見つからなかったのです。
今回は155話の次の話「S23 エルロー大迷宮突入」のシュン視点のお話でございます。


とあるおっちゃんと勇者のエルロー大迷宮

それはエルロー大迷宮を超えて向こうの大陸に移るためバスガスさんに正規ではない入り口に案内してもらっている時のことだ。

 

 

水着を着てエルロー大迷宮へ入るための海底洞窟に向かう途中近くの草むらでガサガサという音がした。

何かが潜んでいると察した俺たちは警戒し俺は魔法を撃つ準備を始めた。

 

「誰かいるのか?」

 

バスガスさんが草むらに向かって声をかける。

 

「ひゅいっ」

 

「女の子の声?」

 

思わず声に出して言ってしまった。女の子の声のようだ。隠れているのは魔物ではなく人らしい。

 

俺は草むらに近寄りのぞき込む。

そこにいたのは声の通り幼い女の子だった。女の子の目は夜のように黒く長い髪の毛の隙間からでもわかるほど真っ黒でうっすらと水のような雫がうかんでいる。黒髪黒目、日本ではよく見る容姿にどこか懐かしさを覚える。

・・・って、

 

「泣いてる!?」

 

徐々に皆が集まってきて先生が。

 

「シュン君ー。女の子をなかしちゃいけませんよー?」

「いや先生誤解です!」

 

するとカティアまで攻めるような目で見てくる。

 

「シュン・・・あなた・・・」

「カティアまで・・・」

 

「とまあ冗談はさておきー。大丈夫ですか?」

 

冗談だったらしい。先生は女の子に事情を聴き始める。

 

「え・・・あっえと・・・はい」

「どうしてこんなところにいるんですかー?あぶないですよー?」

「先生、一回この子を村に連れて行ってあげた方がいいんじゃないですか?」

「そうですねー」

 

村までこの子を連れて引き返すような流れになったところでバスガスさんが口を開く。

 

「いや、コイツを連れて行った方が一人も欠けずに向こうに渡れる確率が上がるぞ」

 

不敵な笑みを浮かべながら言う。

 

「どうしてですか!この子が危険な目に・・・」

「いや、コイツにとっちゃあの迷宮は家も同然だ、そうだろ?」

 

俺の言葉をさえぎってバスガスさんが続け、女の子に質問する。

 

「え!?あっえあ、まあ・・・はい」

 

バスガスさんを見てなぜか驚いた様子の女の子が頷く。

どういうことだ?こんな小さな女の子にとってエルロー大迷宮が家のようなものって。

 

「なあ俺らは今からあの迷宮をこえて向こうの大陸まで移動するんだ。ついてくるか?」

「えっああ、はい・・・わかりました」

「一応俺はあくまで案内人だ、みんないいか?」

「え?ああ、まあ」

 

バスガスさんがそうした方がいいというのならそうした方がいいのかもしれない。

バスガスさんにエルロー大迷宮が女の子にとって家のようなものとはどういうことなのかを質問する暇もなく女の子がついてくることが決定したのだった。

 

 

 

海に着いた。

ここから潜って入るというのに女の子は水着を持っていないのでバスガスさんが家にまで戻って取りに行こうという雰囲気も女の子が水着を取りに行こうとすることもないため女の子は黒いパーカーのような服とスカートという服装のままだった。

 

「いいか。水龍が現れても絶対に戦おうとはするな。殺されるだけだ。基本は逃げる。洞窟の入口は潜ってすぐのところだし、洞窟の中にまでは狭くて水龍も入ってこれない。潜ったらすぐさま洞窟の中に逃げ込む。わかったな?」

 

バスガスさんの一言に俺たちは頷く。

なんの持ち物も持っていなかった女の子以外は全員バスガスさんの空間収納に荷物を預けてある。

 

「それでは、風玉を配ります。間違っても噛み砕かないでくださいね」

 

先生が皆に一個ずつ小さな球を配る。

これは風玉と言い風の魔法で空気を圧縮してそれを封じ込めた玉だ。

口に含んでいれば水の中でも空気の心配はいらなくなる、だがかみ砕いたりすると圧縮した空気が破裂し大変なことになる。非常に危険な代物だ。

 

「じゃあ、俺が先導するから、みんなついてこいよ」

 

バスガスさんが風玉を口に含み海に潜っていく。

あの女の子もバスガスさんに続いて風玉を含んで潜っていく、服はあのままで大丈夫なのか皆心配そうな様子だがあの女の子を連れていくことを提案したバスガスさんも女の子も何も言わないので皆黙っている。

俺以外が潜ったのを確認した俺は皆に続いて海に潜った。

 

 

海の中で視界の端に大きな影が迫ってくるのを見えた。

 

水龍クラグ。

 

レベルは8、ネッシーのような見た目をした水龍だ。

ステータスはとてつもなく高い。スキルも豊富だ。

まだ俺たちはバスガスさんが海底洞窟の入り口にたどりついたばかりだというのに女の子と俺以外水龍には気づいていないようだ。

 

水龍がブレスの予備動作をする。

咄嗟に皆の前に出た俺は水龍のブレスに聖光魔法を放つ。

ブレスと魔法がぶつかり合うことにより水流が発生する。

それに流されるままに洞窟の入り口へと吸い込まれていくなか女の子がなにかしらの魔法を扱っているのを見た。

体を壁にぶつけながら流され浮遊感の末、地面に叩きつけられる。

 

「みんな、大丈夫か?」

 

俺は風玉を口から出しながら周囲の安否の確認をする。

誰一人命に別状はないようで安心する。

 

ただ女性陣の水着が破れて目に毒だ、いや女の子だけ体も服も傷一つついていない。

ステータスがだいぶ高いのだろうか。

だとしたら女の子が水の中で使っていた魔法は水の魔法で水流を操り皆が海に取り残されないようにしてくれたのかもしれない。あの水流の中で魔法を使うとはだいぶ魔法の腕もすごいのか。確かにこんな子がいたら迷宮をこえやすくなるかもしれない。

 

「水魔法で水流を操ってみんながバラバラにならないようにしてくれたの?ありがとう」

 

お礼を女の子につげると。

 

「げっまじですか、気づいてたのですかぁ」

 

と俺でも聞き取るのが困難なほど小さな声で呟いていた。

海まで歩いているときにわかったのだがどうやらこの女の子は極度のコミュ障らしい。向こうから話しかけてくることはまずなかったしこちら側から話しかけると答えてくれはするが小さな声でだいぶ緊張したようだった。

 

「かー!しょっぱなからこれじゃ、先が思いやられるな!ま、無事に中に入ることはできたな。ようこそ。この世の地獄、エルロー大迷宮へ」

 

バスガスさんのおおざけな言葉にげんなりしながら治療を始めた。

 

 

 

飛び起きて慌てて周りを確認する。

ほのかなランプの明かりと岩の壁。

迷宮にもぐって二日目、見張りを交代しながら睡眠をとっているところだった。

 

見た不思議な夢にだいぶ汗をかいてしまった。

 

「大丈夫ですか?」

 

先生が顔をのぞき込んでくる、見張りは二人一組の交代制だが女の子・・・いや、昨日名前を聞いたら「なんでもいいです」って言ってたから夜ちゃんと呼んでいたんだ。由来は髪の色だ。夜ちゃんがいるから一組だけ三人で一組になっている。

今の見張りは先生とバスガスさんと夜ちゃん。

 

「大丈夫です。ちょっと夢見が悪かっただけですから」

 

心配して近づいてきたらしい先生に笑みを浮かべてごまかす。

 

「そいつは縁起が悪いな」

 

バスガスさんが俺の言葉に食いつく。

どうやら縁起が悪いというのは十年以上前に現れた迷宮の悪夢と悪夢の従者と言われる神話級の魔物のことをさすらしい。

 

「けど、たしかその魔物は討伐されていませんでしたか?」

 

先生は知っていたようで質問をすると

 

「世間ではそう言われてるな」

「世間では?」

「ああ。一般的には軍団相手に大虐殺を起こし、最後は大魔法の直撃を受けて跡形も残らず死んだって話だが、俺にはどうもそれが信じられん。あの化物がそう簡単にくたばるのかってな。きっと今もどこかで生きていて、虎視眈々と獲物が来るのを狙っているんじゃねえかと、俺は思ってる。なあ夜ちゃん?」

 

実物を見たかのような言い方でバスガスさんは返す。なんで夜ちゃんの名前を出したのかはわからない。

 

「まるで実物を見たかのような言い草ですね」

「おう。何を隠そう、悪夢の第一発見者とは俺のことだからな」

 

そして俺は自分の強さに自信を持ちすぎていたことをバスガスさんに自覚させられたりそして話は変わりバスガスさんが純粋な興味で水龍に勝てるかと聞かれ水中では無理、地上では五分と返した後バスガスさんが俺のステータスを鑑定し、お返しに俺もバスガスさんのステータスを見たすぐのことだ。

 

バスガスさんが言った。

 

「なぁ夜ちゃん。お前さんあいつと戦ったとして勝率はどんくらいだ?」

 

この中には誰一人として夜ちゃんのステータスを知る者はいない。

気になる。

だが勝手にみるのはマナー違反だから本人に許可を貰わないと。

そう思いながら期待の目を寄せる。

先生もどうやら気になってるようで夜ちゃんを見つめている。

しばらく沈黙の後。

 

 

「・・・・・・10割です・・・」

 

 

折れたのか声を出した夜ちゃんの声はいつもより小さかった。

諦めたかのように出した夜ちゃんは十割と・・・は?じゅうわり?

十割・・・。

 

「先生確認です。十割ってどれほどでしたっけ」

「100%です」

 

・・・。

 

「ですよね。ここは夢ですか?」

「現実です・・・おそらく」

 

・・・・・・。

 

「十割!?」

 

見ると10%って勘違いしてくればいいものをという顔をした夜ちゃんに大して驚いていないバスガスさんが話しかけていた。

 

「なぁお前さんやっぱり」

「・・・いわないでください」

 

何のことはよくわからないがやっぱりバスガスさんは夜ちゃんのことを何か知っているようだ。

気になることを夜ちゃんに質問してみることにした。

 

「夜ちゃんステータスはどうなっているの・・・鑑定してみていい?」

「だめです」

 

口数は少ないし長文は話さないが最初のころより話してくれるようになったなと思いながら夜ちゃんの回答に少し・・・いや結構がっかりする。

まあ本人がだめというならしょうがないだろう。

 

 

 

迷宮にもぐり五日目。

これからのルートを決めることになった。

危険な最短コース、の大通路。

比較的安全な遠回りコース、は文字通り遠回りコース。

危険はあるかどうかわからないが曰くのあるコースとやらは例の悪夢と従者が昔テリトリーにしていた所らしい、そこには今は悪夢の残滓と呼ばれる悪夢に似た魔物が大量にいるらしい。

そして強くて悪夢と同じ習性を持ってるとか。

そのルートは外すこととなった。

 

そして多数決で決めた結果最短コースに行くことになった。

夜ちゃんはなんか謝るような表情をしていた。

 

 

大通路に入って少し。

バスガスさんが魔物がいないと異常事態を報告してくる。

すぐに近くの通路からコース変更することにしたがもう手遅れだった。

 

地龍。

 

レベルが低く進化したてのようだ。

 

振り降ろされた爪を盾で受けたハイリンスさんが吹き飛ばされた。

隙を見逃さずに俺とバスガスさんが足を切る、カティアと先生の魔法が炸裂するだがそれでもダメージはあまり入らない。

 

「夜ちゃんは!?」

 

夜ちゃんは水龍に十割勝てるとは言っていたがまだ子供だ。

心配してみると俺のすぐ横を真っ黒い球が飛び地龍の右腕に直撃し腕が吹き飛ぶ。

苦痛に喘ぐ地龍がやけと言わんばかりに空中機動のスキルでアナを狙い駆けだした。

アナが放った電撃の魔法が地龍にダメージを与えることは能わない。

咄嗟にアナとハイリンスさんの間にハイリンスさんが入った時、地龍の側面に再び黒い球が当たる。体制が崩れた地龍。そこに先生の暴風魔法、縛風。相手を拘束する魔法だ。しかしそれも逆鱗の所為でもちそうにない。

カティアが炎を先生が風を、炎が混ざった熱風が吹き荒れる。

アナが風、バスガスさんが闇の魔法を放つ。

俺が放つ聖光魔法、聖光線。隣で夜ちゃんが放つ正体不明な土魔法の杭。

その二つが同時に地龍を穿つ。

地龍のHPは0になった

 

「龍殺しですか。これで私たちも伝説の仲間入りですわね」

 

とカティアが言う。

 

龍を倒し俺と共に最後のを決めた夜ちゃんを見ると謝るような目でハイリンスさんを見ていた。

何故だろうか。

 

「ふう。一時はどうなるかと思ったが、まさか龍殺しを達成するとはな。こいつの死骸は俺が預かるが、問題ないか?」

「お願いします」

 

バスガスさんが油断なく地龍の死骸に近づいていく。

 

「・・・?」

 

夜ちゃんが不思議そうな顔で地龍の死体を回収するバスガスさんを不思議そうに見つめていた。

 

「どうしたの夜ちゃん?」

「・・・地龍の肉は土臭いですよ?」

「えっ?道具とかに加工するんだよ?」

「えっ?」

 

・・・どうやらだいぶ感覚にずれがあったようだ。

 

「ふつうはこんな魔物いねーよ。こいつがここで一番強いとか思ってる奴は勘違いすんなよ。大通路で一番強いのは地竜だ」

 

だからレベルが低かったのか。

 

「龍殺しか。ユリウスたちと戦ったことがあるのは竜までだった。あの世の土産にいいものができたな」

 

ハイリンスさんが地龍の攻撃を止めてくれたおかげと礼を言うととどめを刺したのはお前と夜だと俺を褒め乱暴に頭を撫でる。やめてくださいよと笑いながら腕から逃れる。そんな弛緩した空気が流れていた。

 

が、突如背を氷柱で刺されるような悪寒が走る。

振り向くと岩の上から見下ろす八つの瞳。

悪魔の残滓と呼ばれる魔物。

 

動けなくなるほどの威圧。

皆も動けない・・・いやバスガスさんはかろうじて動けるようで夜ちゃんだけは無視して飲み物を飲んでいる。まるで危険ではないと知っているように。

 

[勇者?]

 

念話を傍受し聞こえた声は何者かに向けられた声だ。

 

[勇者]

 

何者かはそこらじゅうにいた。

 

声が、聞こえる。

支配者、鑑定不能、転生者、と。

ノイズがはしるような程の量の残滓。

 

白の体に赤い目は、まるで白い絵画に赤い絵の具の飛沫をばらまいたように広がる。

無限に続く白い絵画に赤い点、それらは言語を理解し、俺達、転生者というものを知っていた。

 

「転生者を知っているのか!?」

 

バスガスさんが目を見開くが気にしない。

 

[知ってる]

[知ってる]

[知らないわけがない]

 

「なぜそれを知っているんだ?」

 

[マスター]

[マスター]

[従者]

[従者]

[マザー]

[マザー]

[従者とマザー]

[マザー]

[マスター]

 

「そのマスターと従者は、転生者なのか?」

 

[そのうちわかる]

[そのうち知る]

[すぐに知る]

[すぐにわかる]

[宣言]

[宣告]

[終わりの始まり]

[禁忌]

[世界が始まる]

[壊れる世界]

[世界が終わる]

 

白い絵画に黒い絵の具が塗られていく・・・。

 

[知りたいなら]

[聞けばいい]

[お前たちは]

[近くにいる]

[知る意味はない]

[どうせ死ぬ]

[みんな死ぬ]

[生き足掻けばいい]

 

白いそれらは闇に染め上げられその場から姿を消した・・・・・・。

 

 

「バカ野郎が!」

 

バスガスさんの拳が俺の顔面へと向かう、怒られる。俺は受け入れる。

俺の行動で皆が死ぬかもしれなかったのだ。

ハイリンスさんがバスガスさんを抑え、先生がなだめる。

 

「すいません。どうしても、聞かなければならなかったんです」

「それは、死んでもか?ほら、お前も何か言え」

 

なぜか夜ちゃんに振るバスガスさん。

 

「・・・・・・あの子たちは襲ってきませんよ・・・多分」

 

あの子たち?夜ちゃんは残滓のことを何か知っているのか?

 

「・・・はぁ・・・坊主が勝手に死ぬのならいい。だが他人様を巻き込むな。自殺がしたいんなら1人でやれ」

「バスガスさん、言い過ぎですよ」

 

バスガスさんがハイリンスさんを押しのけ岩に座り込む。過去のトラウマを刺激されたからか、顔色が少し悪い。

夜ちゃんはいつまでもいつも通り。

いつもは元気がなさそうで人におびえているように見えるのだが今は相対的に一番元気に見える。

カティアもハイリンスさんも若干顔が青いなか一人元気に立っていると少し不気味に・・・いや、先生も平気な顔をしていた。

 

大丈夫か?とカティアとアナに話しかけると腰が抜けてたてない、面目ないと言葉が返ってくる。

 

先生はゲテモノ好きだったから内面は気味悪かったと一言で済んでいた。

 

「ところで、あの子達が言っていたこと、どう思います?」

「わかりませんね。情報が少なすぎる。知りたければ聞けばいいって言われましてもね」

「終わりの始まり。みんな死ぬ、か」

 

悪夢のような言葉の残滓がそこらに浮いているような感覚を覚えた。

 

 

 

その後は戦闘回数も少なく夜ちゃんが戦闘をサボっていたこと以外は特に何もなく進んでいった。

バスガスさんは少し口数が減った。

余計なことを言いはするがすこし覇気がない。

笑いはするし少しトラウマを刺激されてしまったのだろう。

 

「さて、ここまでくれば出口はすぐそこだ」

 

抜け道として使う通路は縦穴と言われる場所だそうだ。

 

そこの危険は一つ目が足がワサワサと生えた虫型の魔物の巣。

 

「ひぃぃやぁ! ムリムリムリィィィ!」

 

カティアが火の魔法を連発しまくっている。

狭い空間で使って酸素とかは大丈夫なのかという無駄口をたたいていたら魔物は皆燃え尽きていた。

 

二つ目がめちゃくちゃでかい蜂。

作戦は夜ちゃんと俺とハイリンスさんが蜂を相手してそのすきにほかのメンバーが壁を上るというもの。

 

飛んでくるリーダーらしい蜂を俺が斬り、夜ちゃんがほかを如何なる手段を使ってか真っ二つにする。

 

次の群れはあと少しで到達してくる。

夜ちゃんは空中を文字通り歩いていどうしている。

のーんびりと。

たまに俺たちが対応しきれなくなったところを援護し蜂を切り捨てる。

 

だんだんつらくなってきたころ出口にたどりついた。

 

何日かぶりの日の光。

茜色の空がとてもきれいに見えた。

 

「こっち側にも俺のアジトがある。今日はそこに行こう」

 

今日はそう提案してきたバスガスさんのアジトで一泊止めてもらうことになった。

 

 

 

「お世話になりました」

「ああ」

 

「バスガスさん。もし――」

「坊主、俺はしがない案内人だ。案内人は案内することが仕事だ。ましてや俺はもうすでに引退した身。これ以上老人が出しゃばる幕じゃねえだろ」

 

バスガスさんと少し話して握手を交わす。

 

「夜ちゃんはどうするの?」

 

そこでカティアが声を出す。

・・・そういえばどうするのだろうか。

 

「・・・はぁ。よくこんな得体のしれない私を旅に連れて行こうとしますね」

 

夜ちゃんの口から初めて聞いた長文だった。

 

「やめておきます。次会うことはあるかもしれませんけど敵かもしれませんしね」

 

そういう夜ちゃんの言葉になぜか納得できてしまう。

つぎあったら敵かもしれない、その後別れた後も心から離れない言葉だった。

 




案内人さんは人型の現世の正体を一発で見抜きます。
だけどまあ人型だったのでそこまでトラウマは刺激されずに済みました。
そんで現世がトラウマの緩衝材になることにより残滓が現れても原作通りに必要なことしか話さないというふうにはなりませんでした。よかったね!
次回は現世目線です。
因みによまわりさんに現世と命名したはいいけどいまだに慣れてない作者さんでした。

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