よまわりさんって戦えるっけ。   作:銀ちゃんというもの

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原作(ウェブ版)とにらめっこしながら作るのきつい。


よまわりさん、ついていくと決める。

 ゆさゆさ、人ではない体を人ではない手足で揺らされている感覚に目が覚める。

 

 ん、まだ寝足りないよー。

 

『起きて。ロリコン』

 

 なんでよ! 私ロリコンじゃないよ! ぐへうっ、私なんで叩かれたの!? 

 

『いいから起きて、穴を登らないといけないから』

 

 蜘蛛さんの珍しい長文ありがとうございます。じゃなくてそういえばそうだ、穴登るんだった。

 

 …………。

 なんか忘れてると思った。今更だけど私、蜘蛛さんに名乗ってねえ。蜘蛛さんも名乗ってないから忘れてた。

 

 っと先程まで考えてたんですよ。うん。ズキズキする。何がって、頭が。自分の名前を思い出そうとすると頭痛くなるんだよ。小説みたく「名前は……私の! 名前は……?」ってなったよ。これってあれじゃない? 名前を思い出せない主人公はなんかの陰謀的なのに巻き込まれていく感じのやつ。やだよ? そんな陰謀的なやつあったら避けさせてもらうよ? ……よし! こんな事考えてたらほんとに巻き込まれそうだから考えないでおこう。

 

 それは置いておいて、ってナニヲオイテオクンダロウナーワカンナイナー。……うん。

 えと、実は蜘蛛さんのHP回復が終わったあとこの穴を脱出する作戦を考えていたんだよ。それと、今のこの蜘蛛の巣は目標地点の4分の1ぐらいまで伸びてるんだよ、蜂とるためにね。

 難しい説明は省くけど、蜂さんはまだ襲撃に来ない。いつ来るかわからない。今の巣の強度を保ちながら上に伸ばさなければいけない。上に伸ばしてくと作るの難しい。っていう感じなんだよ。私、糸は専門外だしね。することないね! 

 

 ……ひま、することない。考えることもそこまでない。目標って言ったって今は蜘蛛さんについていくしかない。うーん……。

 

 そうだ! なんかあるまで寝てよう! そのことを蜘蛛さんに伝えなきゃ! 

 

『蜘蛛さん! 暇だから寝てますね!』

『……』

 

 今の無言は、あきれてるんじゃないよね! お休み! Zzzzz。

 

 ◇

 

 どごおおおんと突如響いた轟音の所為で飛び起きた。

 何の音!? 今の轟音は何!? 探知で気配をさが……! 

 

 ぢ、り゛ゅ……う゛? 

 

 よく見たら、周りの岩とかが吹っ飛んでるじゃないですかーやーだー。

 崩れた岩が私にかぶさってHPが10になってる。その代わり岩がかぶさったおかげで地龍から隠れてる。けど、ふっつーに怖い。だってLV1の探知でもこの距離だったらどこに何がいるかわかるんだもん。がたがた震えるしかないね。

 

《熟練度が一定に達しました。スキル『恐怖耐性LV1』を獲得しました》

 

 震えが収まった。

 よく考えたらよまわりさんの体でも震えるのかぁ。前に地龍見たときどうやって隠れたんだっけ? 自分。

 ……どうせいっちゅーんじゃああああ! 

 

《熟練度が一定に達しました。スキル『恐怖耐性LV1』が『恐怖耐性LV2』になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル『恐怖耐性LV2』が『恐怖耐性LV3』になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル『HP自動回復LV1』を獲得しました》

 

 そこまで感じてないけど、自分こんなに怖がってるのか……。意外な自分の一面に驚き。

 

《熟練度が一定に達しました。スキル『隠密LV1』を獲得しました》

 

 やったぜ。

 ……とか思ってるけど実際はマジ怖えぜやっと怖がっている感覚が追いついてきた。

 ……ガタガタぶるぶるなのです。

 なのですっ! 

 

《熟練度が一定に達しました。スキル『HP自動回復LV1』が『HP自動回復LV2』になりました》

 

 ………………。

 

《熟練度が一定に達しました。スキル『恐怖耐性LV3』が『恐怖耐性LV4』になりました》

 

 …………………………。

 

《熟練度が一定に達しました。スキル『隠密LV1』が『隠密LV2』になりました》

 

 ……。

 ………………。

 はっ、怖くて意識が遠のいてた? ……私が? 

 そうだ! 地龍と蜘蛛さんは!? 

 

 気配は……蜘蛛さんは、いる。地龍は……。いな、い? 

 

 

 岩をどけてみようかな。あ、蜘蛛さんもちょうど重なってた岩から出てきた。なんだろ、蜘蛛さんからこわーいオーラ的な奴が……。

 

『……闇ノ王』

 

 あ、ごめんなさい! 忘れてました。てへ。

 

 ◇

 

 あー蜘蛛さんの殺気みたいなやつこわかった……。

 

 今は、元もとブレスで壊されるまで巣があったところを見ている。

 巣が張ってあった巨大な壁にはクレーターができてる。壁に。

 

 おかしいよね、これ。異世界転生ものにはでたらめキャラがいるけどさ。

 大岩を貫通した挙句。これ、だよ。

 

 こんなに無防備に突っ立ってるのに蜂は襲い掛かってこないよ。

 …………そりゃそうだよね。怖いもん、恐いもん。

 

『……これからどうする?』

 

 蜘蛛さんが珍しく私に意見を求めてくるけど私は答えが見つからないよ。

 私は蜘蛛さんほど判断能力があるわけじゃないし……。決めた。

 

『蜘蛛さん。私は蜘蛛さんについていきます』

 

 これが私の答え。

 どうする? って聞かれたところで私はそこまで頭がよくない。なら、唯一といってもいい気軽に話せる存在。その人に、私はついていこう。

 こんなこと考えるの、私のキャラじゃないかなぁ。もうちょっと能天気にいこうかな? 

 

 

 私達は地龍が行った通路と反対の通路を歩いてく。当たり前だね! 

 ……なんか蜘蛛さんが『隠密最強兵器のダンボールがほしい』とか言ってきた。すごく同意見。蜘蛛さんは、マップがほしいとかも言ってるけど。ごめんなさい。頭悪すぎて探知つかってるときいろんな情報がはいってくるけどわかるのはせいぜいどこら辺にどいつがいるか程度。それ以上は私の頭の処理速度が追いつきましぇーん。

 

《熟練度が一定に達しました。スキル『演算処理LV1』が『演算処理LV2』になりました》

 

 タイミングよすぎでしょ! 大して変わらないけどさ。……はぁ。

 

 ◇

 

 私達が進む道はかなり広い。

 まあ、体長2メートル半もある蜂が自由に飛び回り、体長5メートルくらいはありそうな巨大蟷螂が縦横無尽に動き回れるくらいには広い。

 

『エルローグレシガード LV7 ステータスの鑑定に失敗しました』

 

 巨大蟷螂は群がる蜂をその両手の鎌で迎撃する。

 普通の蟷螂と違って、腕が6本もある。

 まるで阿修羅みたいだ。

 蜂は空中から攻撃しようとしているけど、その鎌の攻撃範囲になかなか踏み込めなくて、戦況は膠着してる。

 

 私達はその様子を岩陰に隠れながら観察する。

 両方とも私達の存在に気づいた様子はない。

 隠密の力は思ったよりちゃんと効果を発揮してくれているみたい。

 よかった。

 蜘蛛さんが蟷螂とかをさらに鑑定している。

 

 うっわ。蜂が一刀両断されてる。すごい切れ味だね! 

 地龍に会うとかいう恐ろしいことよりよっぽど現実味があって怖いんだけど。あの蟷螂の刃。

 蜘蛛さんが素通りするみたいだから私もそうさせていただこう。

 

 ん? 蜘蛛さんから念話で情報が伝えられてきた。

 ……ははっ。ここって下層なんだって。

 さらに下もあるんだって。

 知りたくなかった。

 

 あれだ、蜘蛛さんと私がもともといたエリアは上層だったんだ。そりゃ安全なわけだ。

 

 

 は!? えぇ? 眼前でおこった光景に目を疑う。

 三匹目の蜂が蟷螂に両断されたところで今度は突然現れた蜘蛛の牙に蟷螂が噛み千切られた! 

 

『グレータータラテクト LV18 ステータスの鑑定に失敗しました』

 

 わー。蜘蛛さんの進化系だ。

 

 今まで見た中で一番おっきいかもしれん、10メートルぐらいあるよあれ。

 蜘蛛さんと一緒にこそこそっとたいさーん。

 

 はは。

 下層こっわ。

 っとそこで蜘蛛さんがなんか言ってきてる。

 なになに? 『いけそうな魔物がいたら食料にして、それ以外は基本隠密で行こう』って? 

 大賛成です。

 

 ~蜘蛛さん&よまわりさんコソコソ移動中~

 

 一つの結論に至ったぜ。

 下層マジヤバいです。

 こんちきしょう。

 ははっ。

 

 私達は怖い連中に見つからないように隠れながら移動してるよ! 今のところ見つかってないよ! 見つかってたら死んでるし! 

 

 蜘蛛さんが寝ようとしてるよ! こんなところでよく寝ようって思えるね! 

 あっ寝た。

 ……某学校で暮らす感じのゾンビアニメのオープニングじゃ夢はまだあるけどここじゃそれすらほとんどないよ? なんで寝れてるの? 

 

 疲れた。できるだけ何も考えず蜘蛛さんが起きるまで周り見張ってよう。

 

 ◇

 

 蜘蛛さんが起きた。

 よく寝れなかったって。そりゃそうだ。

 あと、蜘蛛さんが寝てる最中に睡眠耐性がついた。

 今はLV7だよ。

 一気に上がったね。早くLV10にならないかな? 

 自分どんだけ眠いんだろ? よまわりさんの体だからわかんないや。

 

 蜘蛛さんがなんか考えてる。

 どうやら弱い魔物が何を食べてるか考えてるみたいだ。

 蜘蛛さんが動き出したしついていこっと。

 

 食料についてわかったことがある。蜘蛛さんが気づいたことだけどね。

 弱い魔物が何を食べてるのかというと、二つのものを主食にしてることがわかったみたいなんだ。

 一つは他の弱い魔物。

 それは、あたりまえだね。自分より強いのとは対峙したくないもん。

 それとは別にもう一つ、これこそが弱い魔物が最終的にどうしてもやむを得ず食べるものがあるみたい。

 それがこいつ。

 

『エルローゲーレイシュー LV3 ステータスの鑑定に失敗しました』

 

 黒いタニシだ。

 蜘蛛さんがあいつらは迷宮の壁に張り付いて、ゆっくり這うように移動している。

 その姿がすごくタニシっぽい。とのことでタニシ虫って呼ぶことになった。

 そのタニシ虫は、この下層にいっぱいいる。

 蜘蛛さんは、こんなにいっぱいいてなんで魔物の皆さんは食わないんだろう、と、そんな事を思ってるみたい。

 

 なので食べてみようってことになった。

 

 食べるために大きな岩かげに隠れて私は裏返った。

 むしゃむしゃ

 おえっ!! 

 

 マジで吐いた。もう食べたくない。地龍とは違う意味で怖くなったよ! 

 マズすぎて戦慄を憶えるくらいだよ。

 おぇ。

 

《熟練度が一定に達しました。スキル『腐蝕耐性LV2』が『腐蝕耐性LV3』になりました》

 

 まじかよ。HPへったぞ。腐食耐性上がったぞ。おい! 

 日本人だからかなのか蜘蛛さんと私にはお残しはいけないという信念があって、頑張って食べたよ。食べてる最中にも腐食耐性が1個あがったよ……。

 

 本当にどうしようもなくなったらまたタニシ虫を食べることになるのかな。

 やだなぁ。


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