水上の番外編   作:しちご

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最鮗話 君に朝霜が降る、礼号組に拉致るために

 

~これまでのあらすじ

 

5番泊地へと訪れた神風型姉妹の所属を虎視眈々と狙うくりくり空母龍驤

しかし標的を執務室に引きずり込むよりも先に川内型忍者に拉致られてしまう

もしかして手間が省けたんかと口にするまな板をシバき倒す利根

仕方なし救出隊を組織しようとしたその時、泊地に高笑いが響き渡った

 

見よ、泊地本棟の屋根に仁王立ちするその威風

Kと記された青いマスクはサイドテールの髪を邪魔しない形に包んでいる

 

「誰やッ」

「人呼んで、航空仮面!」

 

小脇に気を失った神風を抱え、突如現れたその怪人の声が響く。

 

「貴女たちは、川内型忍者の恐ろしさがわからないのですかッ」

 

そう言うや否や泊地壁面を駆逐艦を抱えて器用に降りてくる航空仮面。

 

「いや、くりくり投手なんか遊星仮面なんかどっちかにせいや」

 

待ち時間に呟かれた龍驤のメタなツッコミは華麗にスルーして、

謎の青い一航、もとい航空仮面が真摯な声色で言葉を紡いだ。

 

「龍驤」

「おッ」

 

マスクに空いた覗き穴からは真摯な瞳が見えている。

 

「神風の事はこの航空仮面にまかせてくれませんか」

「いやとりあえず神風は引き渡せや」

 

そっと受け取ろうと龍驤が一歩進めば、航空仮面は一歩下がる。

 

「龍驤、そんな平和な言い草は貴女らしくありませんよ」

 

競歩速度の捕り物の中で会話が積み重ねられる。

 

「キ、キミは誰なんや、ウチの知っとる艦なんかッ」

「待て龍驤、勢いに押されてノリを合わせるでない」

 

龍驤の醸し出した無駄に衝撃的な雰囲気を利根が叩き落した。

そして何故に神風を確保しているのかと競歩速度のままで問う。

 

「随伴艦の空きを埋めないと、如月さんが乗り込んでくるんですよ」

「ええ事やな」

 

しばし無言で競歩とムーンウォークが競い合う。

 

「……自由への逃走ッ」

「逃がすなあぁッ」

 

やがて全力ダッシュへと変わるいつもの泊地風景であった。

 

【挿絵表示】

 

 

 

『万愚節番外 というタイトルが既に嘘な気がする普段通り』

 

 

 

泊地の艦娘も哨戒なりと出払って、穏やかと言うには少しばかり強い日照の5番泊地。

 

執務室でかりかりと無言で書類を片づける龍驤の頭頂には顎が乗せられ、

ハイライトの消えた瞳を後ろから包み込む乳の持ち主はアトランタだ。

 

「いや龍驤、何と言うかお主の背後霊はバリエーション豊富過ぎでないか」

 

書類の受け渡しをしながら隣の利根が言えば、じっと見つめてくる乳置台。

 

無明の闇がそこに在った。

 

限界を迎えた龍驤がナミダ……コレガヒトノカンジョウなどと何故か人の心に目覚めた

殺人機械の様なカタコトを発したあたりで急遽話を振らねばと周囲の意見が一致する。

 

「そいやさー、何でカガはあんなにキサラギから逃げ回ってんだ」

 

そして些事を気に留めないUSAな気質の防空艦が問いを発した。

 

「あー、ウチが一航戦から外れた後に加賀がふてくされてグレたそうでな」

 

聞いた話やがと断って航空母艦加賀のモラルハザードの話をする。

そのあまりの酷さは、当時の赤城に「アレ、もう駄目じゃね」と見限られるほどと。

 

「そんな世紀末空母加賀に乗り込んで乗員の性根を叩き直した伝説の甲板士官が」

 

解説を聞き提督がふむりと頷いて続きを促す。

 

「如月艦長」

「アッ、ハイ」

 

駆逐艦如月へと艦長職で栄転していき、大戦に於いて同職で従軍していたと。

 

「ちなみにウチは外れた後は二航戦で新人の蒼龍を洗脳しとった」

「洗脳言うな」

 

「いやー、飛龍がアレは洗脳やとしょっちゅう言うもんやからなー」

 

教導艦として名高いものなと今一つ深刻さを理解できていない様相の提督に、

そっと叢雲が横から平坦な声色で記憶に在る光景の有様を囁いた。

 

「ロングヘアーで大人し気な姉が先に進水して再会の日を心待ちにする飛龍さん」

 

蒼龍も時折髪を下ろしていている事があり、それを思い出し頷きを返す聞き手。

 

やがて蒼龍型二番艦は設計変更で同型艦と言えない程度に差異が出来

飛龍型一番艦として新たな名前を得て進水の運びに至った、そして ――

 

「いざ会ってみたらツインテールで「飛龍には負けないよ」とか言い出す謎の生き物が」

 

なんということでしょう。

 

聞いてしまった提督の脳裏に、赤城には負けへんでーとか煽り顔で言って

赤い一航戦のメンタルをヤスリで逆撫でするどこかのツインテールが思い起こされる。

 

「洗脳だな」

「間違い無いのう」

 

しみじみとした声色で(提督―利根)間で執務室の総意が纏められた。

 

「と言うか龍驤が二航戦組の頃に二航戦だったのか」

「それどころか、『蒼龍飛龍の二航戦』の先任空母じゃ」

 

「面倒を見たとは以前に聞いてはいたがな」

 

航空戦隊再編に於いて、二航戦龍驤の元に新造艦の蒼龍が配備され

慣熟航行から様々な訓練など事細かに面倒を見られた経緯が在る。

 

言われ提督は、宴席で蒼龍パイセーンと絡んでいく龍驤を思い出した。

 

「……そろそろ蒼龍の胃に穴が空くな」

「しかも自分が沈んだ後の始末をさせた形でのセンパーイじゃからのう」

 

そんな話題に挙げられている極限パワハラ教導艦は、無駄にマッタリとしている。

色々と諦めたら柔らかくて暖かくて何か良い匂いがしていて落ち着けるらしい。

 

「の割にソウリュウは突撃しねえなー」

「あれ、何やウチの影響が突撃一本やと思われとる」

 

そんなリラクゼーション乳からの心無い一言が龍驤を襲う。

 

【挿絵表示】

 

「ヨー島からも陽炎隊が突撃ばっかすると苦情が」

「濡れ衣や」

 

提督の追撃を致命傷で耐える。

 

「本陣からもあの全自動突撃型空母は椅子に縛り付けて置けと」

 

見事なまでの四面に楚歌が流れている昼下がりであった。

 

【挿絵表示】

 

 

 

(TIPS)

 

 

 

「まあ全自動突撃型空母も少しは大人しくしておくっぽい」

「キミにだけは言われたないな」

 

ジョンストンを呼んで突撃三銃士を連れて来たよとか紹介されそうなニ隻の会話。

 

そんな全自動突撃型の片割れ駆逐艦が配ったのはコカなコーラのスリムボトル。

私のリクエストだとキメ顔のアトランタは龍驤の背後に接続されたままだ。

 

泊地に自販機を入れている手前、結構要望が通り易いらしい。

 

「と言うか、龍驤分補給は寮でやれんものかの」

「いやー、空母寮怖くて近寄りにくいからノーセンキューだわ」

「あれ、何や何時の間にかウチが健康サプリみたいな扱い」

 

何が怖いかと利根が聞けば、主にサラトガとか答えるUSA。

 

【挿絵表示】

 

怖い話になりそうな気配に、そっと提督が口を開き話題を変えた。

 

「そういや過去のシェアマップでブルネイはペプシじゃなくてコカになってたんだが」

 

良く冷えた赤いスチールボトルを眺めながら、ふと思い出したような声色で言う。

ブルネイはペプシの国との普段の認識と、少しばかり異なる記憶だ。

 

「90年代のNYT調べのヤツやな」

 

さらりと拾うサラトガ被害艦筆頭。

 

50%ちょいのコカと50%にちょい足りんペプシでコカ側の国に分類されとるやつやろと、

まだ平和だった時代に多少話題になった世界規模の調査地図に関して話す。

 

「基本的にだいたい合ってはいる調査なんやけど、ブルネイはちょい事情があるねん」

 

そもそもアレはコンビニ小売りでの売り上げ比較の調査やからと繋げ、

だいたい合ってそうだがと言う提督に、少し落ち着いて思い返してみと龍驤が言う。

 

「飯屋はペプシ、屋台はペプシ、小売りもペプシ、家庭の冷蔵庫の中に在るんもペプシ」

 

コンビニ以外で流通しているのは主にペプシの国だと。

 

「あー、高い場所ではコカコーラも結構普通に見るんだけどなあ」

「以前の7つ星ホテルとかやな、まあ金持ちは好きな方を選べるわけやが」

 

安宿の冷蔵庫にはペプシしか入っとらんのよなーと、しみじみと繋げる。

 

「アレや、スーパーの棚に並んどる両者の比率が8:2なあたりでお察しな感じや」

 

そのあたりでコカコーラ教祖(アトランタ)の乳圧が増し、龍驤が涅槃へと旅立ったと言う。

 

 

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