水上の番外編   作:しちご

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晃終話 ストライダーの頃

 

これまでのあら寿司

 

戦間の平和を満喫していた5番泊地は、重大な危機に直面していた

悪の独裁空母サンダンバラーが邪悪な航空戦力により、泊地を支配

してからというもの、あらゆる犯罪が泊地に氾濫し、艦娘の意識は

洗脳され、泊地は荒廃してしまった

 

革命軍のリーダーであるアオイホウはサンダンバラーを暗殺すべく

古来、東洋の島国で活躍していたと言う忍者をモチーフに川内型野

戦マシーンを吶喊させ、自爆装置を作動させ暗殺を成功させる

 

しかしそれはアオイホウによる新たな独裁政権の樹立にしか過ぎな

かった、泊地の艦娘たちは言う、歴史は繰り返すと

 

事態を重く見たレッドマナイタは泊地の治安回復のため、アカシに

命じ自爆装置付川内型装甲、通称芸者アーマーを完成させる

 

そして今ここに、泊地の命運は1隻の自称アイドルに託された

 

さあ征け! 芸者ウォーリアー那珂ッ!

 

 

 

『万愚節番外 そんな事よりジェミニウイングだ』

 

 

 

鳳翔厨房で、そっと髑髏マークが付いたボタンを押す。

どこか遠くで爆発音が響き、龍驤は深く頷いた。

 

「発売されとったら、きっと最後は爆発オチやったんやろな」

 

冥府に渡った提督ゴーストの残したTAITOな思い出を偲びながら、

しんみりとした雰囲気でカウンターの提督に銚子を追加する。

 

例によって例の如く、黒い労働の宿星が輝く互いの仕事明け。

 

様々な仕事を増やしてくれる問題艦たちの処分も、たった今終わり。

ようやくと穏やかな心持ちで、カウンターを挟む人と艦であった。

 

「しかし何でニンジャ」

「福利厚生で遊戯室に筐体放り込んどったからかもな」

 

さして予算がつくわけでもなく、SQNYやナインテンドーと書かれた

パワーステーションやヴィー、スウォッチなどと言う怪しい機械。

 

どれも中身はただのファミコンな代物を適当に放り込んでいたが。

 

どうも普通に中古筐体と、大戦前のデータで遊戯室をアーケード化した方が

整備に明石を放り込むだけで済むのも在り、結局は安上がりだと判明した。

 

何せ、売上を見込める。

 

そんな艦娘の小遣い巻き上げ計画は順調で、今の泊地は時代遅れの

アーケード旋風が吹きまくっている状態であった。

 

そして、次世代機以降な世代のはずの提督も意外と遊んでいる。

 

「まあ確かに、ニュージーランドストーリーとか普通に楽しかったわ」

「ウチの好みはバブルシンフォニーあたりやな」

 

妙にTAITOなラインナップであった。

 

単純に、ゲームデータは大戦時のロストテクノロジーなどの問題もあり、

現在に流通しているデータは妙に偏っていたり高騰していたりで。

 

たまたま安価だったレトロTAITOセットを購入したせいである。

 

などと話しながら、提督は日本酒で口を洗う。

 

「つか、何食っとん」

「ゴトがお土産でくれたんだ」

 

ゴトランド、スウェーデン海軍に所属する軽巡洋艦であり、

癖の在る藍の髪色を後ろに括る、5番泊地提督の初期艦である。

 

「あれ、何やおかしないか」

「疲れてんじゃないか」

 

歴戦を共にしたはずの戦友に疑問を抱くのは、疲労のせいだろう。

そう判断して頭を振った龍驤は、提督からお土産を渡された。

 

黒い。

 

炭の様に黒いそれは、飴と言うには柔らかく、グミと言うには固い。

 

嫌な感じに臭気の混ざった生薬の様な甘い香りが漂い、口に入れれば塩、

そして後から甘みと苦みが舌を蹂躙し、アンモニアが鼻に抜けた。

 

「おうふ」

 

サルミアッキ。

 

所謂リコリス菓子、甘草に塩化アンモニウムを添付した飴であり、

元は咳止めの喉飴として薬局に売られていた代物である。

 

そして提督と同じ様に、酒精で口を漱ぐ赤い軽空母。

 

「シスのが一番食い易かったな、薬局のはガチでヤベえ」

「いやどんだけ貰てんねん」

 

【挿絵表示】

 

カウンターに並ぶ様々なサルミアッキを挟み、提督と秘書艦は天を仰いだ。

 

そして改めて提督は言う。

 

「まあ何だ、何か簡単に日本的な物をください」

「高速メニューの焼味噌セットでええな」

 

切実な願いに、最近生まれた飲酒母艦に人気メニューを取り出す龍驤。

作り置きの塩握りに、バンブーのへらでこそいだ味噌をバーナーで焼く。

 

特に混ぜる物も無い古典の焼味噌であり、胡麻や葱程度を添えて

軽く湯漬けにすれば、史実に残る家康公の焼味噌茶漬けである。

 

三河一向一揆の折、大久保忠世宅で振る舞われ大変気に入ったと。

 

「米が口の中で解ける、漫画かな」

 

解ける様に柔らかく握る匠の技かと聞かれ、漫画の読みすぎやと返った。

 

「ビッグ錠が描いた事を真に受けんなや」

「そんな民明書房みたいな扱いをせんでも」

 

更に牛次郎などと付け足されたら、それはもう確定演出である。

 

「けど料亭とかでも、柔らかく握るんだろ」

「そら料亭は作ってすぐ食うからな」

 

味噌を塗った塩握りを食みながら提督が問えば、調理艦は銚子を付け。

こんな風やなと目の前で握れば、口の中で解れる塩握り。

 

「いややっぱ匠の技じゃね」

「これは流石にやな、おにぎりマシーンとかで作る感じのヤツや」

 

タカラトミー、究極のお握り製造機などの事である。

 

要は器の中で回転させて米を成形すれば、料亭握り程度の圧に成る。

お碗に米を入れてぐるぐる回して成形すれば人力で済む話だが。

 

しかしそれは、作り置きやお弁当のお握りとは違う物だ。

 

「食材って水分を含んどったりするから、温めると膨らむやん」

 

熱で膨張し、冷えると縮んでいく。

 

その時に周囲に在る物を吸い込むため、煮物などの具材は、

煮立てる時よりも冷める時の方が味が染みこみ易い。

 

「混ぜ飯は温かい内がよく絡むとかか」

「そやな、んで冷えた飯は縮んで米の間に隙間が出来るとな」

 

そして口に入れると、パラリと解けるお握りになる。

 

「ああ、つまりお握りの技って」

「お母んが握ったお握りは昼が食い時ってだけの話や」

 

熱い内に握ったお握りの事を、ハッタリ効かして説明しているだけと。

料亭風の柔らかい握りだと、冷えた時には隙間だらけで限度を越える。

 

「まあ、めっさスカスカになったのを好む人も居るけどな」

 

あるいはスカスカ過ぎて嫌がる人もと。

 

「空気食ってるとか、持つと崩れるとか言われてる様なヤツか」

「人の好みはそれぞれやんな」

 

んで鳳翔の焼味噌セットは昔ながらの作り置きやと。

 

やがて銚子が連なり提督が呑みを切り上げる頃。

焦げてアフロに成った一航戦と川内型姉妹が入店してきた。

 

唯一無事であった神通は、どんな顔をするべきかと悩んでいたらしい。

 

 

 

(TIPS)

 

 

 

ファイナルゾーンYをクリアした島風は、その瞬間に筐体の前で喝

采をあげた、そこは駆逐艦寮の遊戯室、福利厚生のために入荷され

た3画面筐体に、大戦前の遺物アーケードーアーカイブスから明石

が調整したダライアスの全ラウンドをクリアしたのである

 

しかし我に返ってみると、最初は2隻でプレイしていたはず……

 

そして隣の席を覗いて見ると、そこには精魂尽き果て大の字状態で

横たわっている天津風の姿が在った

 

SEE YOU AGAIN NEXT GAME

 

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