俺は高校生探偵、工藤新一。
幼なじみで同級生の毛利蘭と遊園地に遊びに行って黒ずくめの男の怪しげな取り引き現場を目撃した。取り引きを見るのに夢中になっていたオレは、背後から近付いて来るもう一人の仲間に気付かなかった。
オレはその男に毒薬を飲まされ、目が覚めたら体が縮んでしまっていた!!
工藤新一が生きていると奴らにバレたら、また命を狙われ、まわりの人間にも危害が及ぶ。
阿笠博士の助言で正体を隠すことにしたオレは蘭に名前を聞かれて、とっさに江戸川コナンと名のり、奴らの情報をつかむために、父親が探偵をやっている蘭の家に転がり込んだ。
その後、赤井さんを中心としたFBIの力を借りて黒の組織を壊滅させた俺は無事に元の姿に戻ることができた。もちろん公安である安室さんの助力も大きかった。
コナンの言葉を信じて協力してくれた安室さんには、どれだけ感謝しても足りないぐらいだ。
けど今、そんな安室さんは完全に俺を信用に足らない人間だと判断してしまっている。
おそらく「俺」は敵を前に逃げ出した臆病者だと思われてるんだろう。
工藤新一は組織が壊滅するまで安全なところに身を潜めていた。あの組織の顛末を知る人間なら誰だってそんな風に考える。
それは仕方ないし訂正しようとも思わない。
だがここで問題が発生した。
毛利探偵事務所で説明を聞いた安室さんは驚いたようなショックを受けたような顔を見せた。
原因は「コナンが親の都合で海外に引っ越した」せいだ。
何も知らない蘭の様子から「コナン」が無事だというのは理解したらしい。
けどたかが協力者がいなくなったってだけでここまで落ち込むとは予想してなかったぜ。
どうすりゃいいんだ?
俺がそのコナンだって言って信じられるか?
安室さんはバーボンなわけだからアポトキシンのことも知ってるはずだ。
いや、けどなぁ
勝手に話したりしたら灰原……じゃなくて宮野に叱られるよな。
赤井さんもあれ以降、姿を見せないし。安室さんは俺のこと信用してない。むしろ半分無視られてる。
つーかコナンにあんな親切だったのは何なんだ?
もしかして安室さん子供好きとか……なわけないか。
「工藤君、いつまでついてくるつもりなんだい?」
前を歩いてた安室さんがすげェ冷たい目を向けてくる。そこまで嫌われるようなことしたっけ?
「えっと……俺も沖矢さんのこと心配してるからさ」
「面識ないんだよね? 彼はそう言ってたけど?」
「あーーーー……」
やべェ、安室さん相手に下手なごまかしは通用しねぇ。余計不振がられるだけだ。
「君、一応は高校生探偵として名前が知られていたんだよね。だったら彼の行き先のひとつも思い付かないのかい?」
シラケた目の安室さんから、期待の欠片もないような質問が向けられる。
うん、まあ……いつもならこういう目をギャフンと言わせてやるのが快感だったりするんだけどさ。
相手が安室さんだとそういう気分にならないっつーか。
探偵事務所で安室さんがわずかに見せた寂しげな顔が、俺の脳裏にこびりついて離れない。あの顔は俺が「コナン」だった時にも見た顔だった。
「ボーッとしてるみたいだけど、僕の話を聞いてる?」
「ああ、聞いてるよ」
コナンだった時には届かなかった安室さんの肩を軽く叩く。不機嫌な安室さんの顔から不信感が滲み出てるけど気にしない。
「俺に任せとけって」
大丈夫。赤井さんは俺が見つけてやるから。
なんてことは言えないけど、とりあえず笑顔を向けた。
「俺は迷宮知らずの名探偵だからな」
とりあえずジョディ先生のところにでも行こうと歩きだした俺のそばを安室さんもついてくる。
「最近の君が何かを解決したなんて聞いたことがないけどなぁ」
けど、安室さんが飛ばす言葉のトゲにいつまで耐えられるか。それが最大の問題だ。
大人げない安室さん可愛すぎるんだよバーロー。