Armored Core Faded world 作:四十三又槍
気味の悪い、赤に染まった空。昔は青く澄んだ空だと誰かが言っていただ、ほんとうなのだろうか? 小規模なミグラントに属する若年の男、ジャック・コールッディングは自らの操縦するR2Bのコクピットから、空を見上げていた。周辺ではミグラントの仲間が、制圧を終えた施設の探索を忙しなくしている。
このあたりは正式な名称は埋もれてしまい、
それにしても、先程の戦闘は上手くいった。作戦目標の“採掘施設”は、ジャックの所属するミグラントよりも数倍規模のミグラントが運営していた。奇襲をかけて撤退させたので、こちらの被害は非常に軽微だ。
「おい、ジャック! あったぞ」
「お、了解。ちょっと待てよ」
仲間のひとりが手を振ってよんできたので、着いて行ってみることにした。並大抵の兵器が発見されても、もう慣れた事なので騒ぎはしない。それでも騒ぐということは、アレが見つかったに違いない。採掘施設、そう聞けば誰でも連想する、擬人型兵器。
――そう、
旧世代の兵器であり、使い手の力量次第で性能が大きく左右されるが、ジャックの所属するようなミグラントでも、一機さえ確保すれば他のミグラントの追随を許さない。ACには、旧世代の技術がふんだんに使われ、質量には見合わない強力は戦闘力を備えているのだ。たとえ単騎であっても、大抵の部隊な殲滅出来るイレギュラーな力を。
仲間に着いていって、辿り着いたのは大きなガレージ。今回の戦闘で使用されなかった兵器がいくらか残っていて、その中にはそこそこの値打ちがある
「で、ACはどこにあるんだ」
「ああ、こっちだよ」
更に案内されたのは、こちら側のガレージから区分けされた場所にあった。扉を開けると、鉄臭い臭いが鼻を刺す。だが、そこには確かに一機のACがあった。どうやら装甲に付着した錆を剥がしていた途中のようで、所々土や錆が残っている。まだ塗料を塗られていない鋼色で、最良の状態で発掘された様子ではなく、所々にボロが見えた。いわゆる粗悪品か、ジャンク品と言ったところだろう。
だが、発掘される大抵のACはジャンク品だ。状態が良いのはほんのひとにぎりで、手に入れられるのは規模の大きいミグラントか、傭兵稼業をやって稼がないといけない。
それでも、充分に一級の戦力だ。機体から離れた場所には、
敵の増援部隊が来るまでどれくらいの猶予があるか分からないので、見当たった武装を取り付けると、ここまでの輸送用に使った
戦利品が全て積み終わったのを確認すると、ジャックはいつでも交戦可能なように防衛型に乗り込んだ。他の仲間も防衛型は高機動型に乗り込み、エンジンをかける。全員の準備が完了すると、輸送ヘリのプロペラが風を切った。次の瞬間になるともう既にヘリは空に飛び出していた。ジェックも地平線にカメラを合わせると、防衛型の足をすすめる。しばらく経って後ろを振り返ると、採掘施設が遥か後方に見える。ジャックたちは、もう安全だと胸を撫で下ろした。
だが、ミグラントにとって安心出来る時間など、ほんの僅かに過ぎない。ACを手に入れたとはいえ、この荒れ果てた大地に生きる者は、常に死に晒されているのだ。
だが、今だけは安心したい。やっと、危険地帯を抜けて帰れるのだ・きっと、これは普通の事。ひと時の安息に、誰もが気を抜いていた。そう、そんな時だ。
『部隊後方に小規模な熱源を確認。高速で接近中。熱源数は……1? 高機動型の偵察か? い、いや、この速度は、まさか!』
まるで銃口を喉元に突きつけられたような、戦慄した声。直接口に出していないモノの、その正体を誰もが理解した。そう、その敵は――
大気を裂く、ブースターの燃焼音。強烈な爆発音が巻き起こり、その距離は急激に縮まっていく。その爆発は、銃声と共にやってきて、ジャックの後ろに辿りついた。
「くそ、ふざけんな」
ジャックは機体を急速旋回させ、ソレと交戦しようとした。漆黒の機体に、黒烏のエンブレム。ジャックは果敢に銃撃を試みるが、ソレはまるで滑るように接近する。必死にガトリングの標準を合わせようとするが、気がつけばもうACは目の前まで来ていた。最後の手段としてシールドで殴ろうとするが、ACは急速にブースターの燃焼を早め、ブーストチャージを繰り出した。
強烈な衝撃が走り、ジャックは機体に叩きつけられる。強烈な嘔吐感、朦朧とする意識。ひしゃげた装甲に押しつぶされた肺から、急激に酸素が吐き出されていく。ジャックの意識は急激に遠ざかり、目の前が白くくすんでいった。
「く、そが……」
薄れゆく意識の中ジャックが見たものは、次々と爆散していく慣れ親しんだ仲間たちの姿だった――
――それから、どれだけの時間が経ったのだろうか。ジャックには、何もわからない。ジャックが目を開けた時。そこに広がっているのはただただ惨劇だった。飛散した機体の破片、墜落したヘリの残骸。みな変形を留めていない程に破壊され、その場を動くものは無かった。
だがそんな中、ACだけは砂で衝撃が和らいだのか変わらない姿を残す。
「畜生ッ……」
みんな、みんな死んでしまった。ジャックは機体から抜け出すと、その怒りと悲しみを込め、地面を殴りつけた・だが、地面は柔らかな砂で、その感情を発散させない。ただ粗悪品のAC。無機質な出来損ないだけが、ジャックの言葉を聞いていた。
その日はジャックにとって最大の変化の日であり、一匹の若鳥が飛び立つ事が決められた日。いや、若鶏というにはあまりにも幼すぎるかもしれない。そう、その日は一匹の夏虫が、戦火に飛び込んだ日。その日、この日こそが“フレイムフライ”の誕生が決められた日だったのかもしれない。