城下町でデルフを購入した輝夜とルイズは城下町を出て、人目のつかないところでドレイクを呼び出して、そのまま帰宅した。ちなみに、ドレイクを匣から出したとき、デルフが騒いだ。それに便乗して、ルイズも説明を求めてきた。それに対して輝夜は一言、『異世界の技術』としか、言わなかった。デルフは輝夜が異世界から来たことに驚いていたが、匣アニマルについて何の説明にもならなかったのでルイズと共に詰め寄った。あまりのしつこさに輝夜は辟易して、気だるげに説明した。しかし、2人共、あまり理解できなかったみたいだった。しかし、輝夜はこれ以上説明する気が起きず、その話はここで終わりとなった。
「ハァ……」
「あんたでも、そんな顔するのね」
そして、今、ルイズの部屋に戻って、しばらく経って、輝夜は何故か、額に手を当てて、ため息をついていた。それを近くで見ていたルイズが珍しいものを見たと言わんばかりに呟いていた。そんなときだった。
「はぁい♪ダーリン♪」
「…………」
いきなり、扉が開き、キュルケとタバサが入ってきた。キュルケの手には輝夜たちにとって見覚えのある剣を所持していた。
「ちょっとツェルプストー!何、勝手に入ってきているのよ!」
「あら、いいじゃない。別に」
「良くないわよ!」
いきなり、キュルケが入ってきたことで、ルイズはキュルケと口論をし始めた。そんな2人を輝夜は横目に流し、タバサのほうを向いた。
「お前は?」
「……タバサ」
「そうか。知っていると思うが俺は光城輝夜だ」
「うん。知ってる」
「だろうな」
そこで2人の会話は止まってしまった。輝夜はタバサのことはこの世界の誰よりも早く自分の死ぬ気の炎に興味を持った人物であり、それなりの実力者であると評価していた。しかし、それだけであり、別に深くタバサのことを知ろうとは思っていなかった。それに対してタバサは、輝夜や輝夜の炎について、興味を持っているが元々口数の多い性格ではないため、口をつぐんでしまった。そして、輝夜はいまだに言い争いをしているキュルケに声をかけた。
「それで、ツェルプストー。何の用だ?」
「もう、ダーリン!キュルケって呼んでよ!」
「……何の用だ?」
キュルケのダーリンという言葉に輝夜は頭が痛くなったが、顔には出さず改めて尋ねた。
「もう!つれないわね!でも、そんなところも良いわ!それと、これダーリンにプレゼントよ♪」
そう言うとキュルケは見覚えのある剣を輝夜に差し出した。
(……これ、あの店の成金ナマクラじゃねぇか)
キュルケが差し出した剣は輝夜たちが先程入った武器屋で紹介された大剣だった。どうやら、輝夜たちが出ていった後でキュルケたちもそこに入って、その武器を購入したみたいだ。
「……おい、デルフリンガー。あの店主の親父。ある意味、大物じゃないのか?ただの馬鹿とも言えるが」ボソッ
「あ、あぁ。俺様も驚いたぜ……。ってか、何気に毒吐くな、オメーさん」ボソッ
輝夜に恐怖を与えられたのにもかかわらず、貴族を騙す店主に輝夜とデルフは呆れ半分、感心半分で小声で話していた。そんな輝夜たちを余所にキュルケは自分が買ってきた大剣についてアピールしていた。
「………」
ルイズはキュルケの持つ大剣に分が悪いと思い、顔をしかめていた。
「……ハァ。ご苦労だったな……」
すると、輝夜はため息をつきながら、キュルケにそう言った。
「別に大したことないわ♪ダーリンのためなら、二千エキュー位ーーー」
「そう言う意味で言ったんじゃない。そんな
「…………え?」
(さらりと言いやがったぜ!こいつ!)
輝夜の言葉にキュルケは間抜けな声が出た。ルイズも目を見開いて、輝夜を見た。タバサは特に表情に変化を見せずにただじっと輝夜を見ていた。デルフはキュルケの買った大剣をナマクラと隠そうともせずに言ったことに驚いていた。
「刀身にそんな宝石を散りばめた剣などとてもじゃないが実践向きじゃない。ある程度硬い物を斬ろうとすると逆にその剣のほうが折れてしまうだろうな。大方、
輝夜があっけらかんと言うのを聞いて、キュルケは騙されたという事実に呆然としていた。それを見て、ここぞと言わんばかりにしたり顔でルイズがキュルケにほくそ笑んだ。
「あっはははははははははぁ!!何よ、それぇ!!ナマクラを買わされるなんて、ツェルプストー家の名折れねぇ、キュルケ!!」
「いや、金が無かったから買わなかっただけで、金があれば即買いしそうな位、そんなナマクラに見とれていた奴が言うな」
しかし、そんなルイズに対して、輝夜があっさりと水を差すような言葉を言った。あまりにも、あっさりと言ったためか、その場の空気は一瞬、何が起きたのか、わからない位静かになった。(ただ1人、輝夜はどうでもよさそうにしていた。)そして、せっかくの良い気分を邪魔されたのが気にくわなかったのか、ルイズがキッと輝夜を睨み付けた。
「ちょっと、あんたねぇ!!人がせっかく良い気分だったのにそれを邪魔しないでくれる!!」
「……お前、自分が性格の悪いことをしているって、言っているようなものだって、理解しているのか?」
「う、うるさいわね!!あんたは誰の味方なのよ!?」
「俺は俺の味方だ。逆に俺の敵となる奴は俺の主観で決める。そして、敵じゃない奴は他人でしかない。ヴァリエールもツェルプストーも俺にとっては他人だ。他人同士のいざこざに対して、俺はデメリットがない限りはどちらか一方的に荷担しようとは思わない」
「ッ!?な、なら、あんたは、空気を読んで何も言わないっていうことはできないの!?」
「あいにくだが、俺は空気を読めない訳じゃない。わざと空気を読まないだけだ。(特に読む必要性の無いものはな)」
「余計にたちが悪いわよ!!」
輝夜の自分勝手な言葉にルイズは憤慨した。
「何よ!!せっかく、その剣を買ってあげたって言うのにあんたには恩情は無いわけ!?」
「………俺に剣を買ってあげようと思った本当の理由は、俺のご機嫌取りのためだろ?」
「ッ!?そ、そんなことは……!」
短く言い捨てた輝夜の言葉にルイズは図星だったため言葉が詰まった。そんなルイズを見て、輝夜は軽くため息をつきながら言った。
「もともと俺には新しい武器は必要ないんだよ。俺には既に愛用の武器を持っているし、それが手持ちになかったとしても、そこら辺に落ちている武器や体術でどうにかするだけだ。だから、悪いが本気で他人のために思っていたのならともかく自分の都合のためにそこまで必要ないものを贈られても恩情などあまり感じないな。それと、自分の思い通り行かなかったからって、そいつに八つ当たりするのは筋違いだと思うが?」
「くっ……!!」
輝夜の言うとおり、自分の言葉が八つ当たりだということを自覚していたのか、ルイズは唇を噛み締めていた。もともと輝夜はこういった恩着せがましい考えを嫌っている。もちろん、輝夜もルイズの使い魔を引き受けたように借りを返すという意味で恩返しするときもある。だが、無理矢理、恩を売りつけようとしたり、その恩をいつまでも引き続けるという行為はする気もされる気も無かった。もし、してくるなら、黙って受け止める気も無く、反撃するつもりだ。
「ちょ、ちょっと待ってくれよ、相棒!!それって、俺も使わないってことか!?」
すると、輝夜の言葉に聞き捨てられないと言わんばかりにデルフは慌てて言った。それを聞いて、キュルケとタバサはデルフがまさかインテリジェンスソードだという事実に驚いていた。
「当然だ。ってか、お前を武器目的で使おうって思っていたなら、あの店でてめぇの試し斬りぐらいするさ」
「おぅ……。試し斬りをすることを考えていたとは、やっぱり、相棒は今まで店に来た口先だけの連中とは違うな。………って、違ぇよ!!じゃあ、相棒は何のために俺を買ったんだ!?」
輝夜の答えにデルフは一瞬、感心したがすぐに気を取り直して、改めて尋ねた。
「何のためって、お前長く生きているみたいだし、この世界についていろいろと知っていると思ったから、それについて教えてもらおうと思っていたんだ。………それをさっきから聞けば『知らない』や『忘れた』や『思い出せねぇ』とか要領の得ない言葉ばかりで俺の知りたいことを何1つ得られないとか………」
そう言って、輝夜は頭痛がすると言わんばかりに額に手を当てた。この話の冒頭で輝夜がため息をついていた理由がこれだ。元の世界に帰る手がかりを掴むためにデルフを購入したのに、肝心のデルフが何も知らなったのだ。しかも、武器屋の中で言っていた『使い手』という気になる言葉も『勘』と要領を得ない答えを言われて、さすがの輝夜も少し凹んだのだ。
「はっきり言って、買った意味が無い。これなら、そのまま、あの詐欺店主のお目付け役でもさせておけば良かった……」
「いやいや!?それは無いぜ!相棒!こちとら、ずっと飽き飽きしていて、やっとまともな奴に会えたって、歓喜してんだぜ!!」
「まとも?そいつが?」
デルフの言葉にルイズが首を傾げていた。彼女の脳裏にはギーシュとの決闘で輝夜が行ったことを思い出していた。おそらく、苦笑いしているキュルケと無表情だがタバサも同じことを考えているのだろう。そんな3人の考えていることに気づいていた輝夜だったが、特に気にもせず、デルフとの話を終わらせようと片手をひらつかせながら、言った。
「わかった、わかった。気が向いたら、使ってやるよ」
「本当か!?言ったな!?この耳でしっかり聞いたからな!!絶対に守れよ!!」
「ハイハイ。(どこに耳があるんだよ……)」
デルフの言葉に心の中でツッコミながら輝夜は適当に返した。すると、輝夜はおもむろに立ち上がって、デルフを鞘に直してから壁にかけて、扉のほうに向かった。
「ちょっと、どこ行くのよ?」
「腹へったから、厨房で何か食ってくる」
ルイズの問いに対して、輝夜は簡潔に答えた。それを聞いて、ルイズは顔をしかめたが何も言わなかった。これが輝夜ではなかったら、文句の1つや2つ出てくるが、輝夜の行動に制限を掛けたら、何をしでかすのか、わかったもんじゃない。だから、何も言わないのだ。すでに何回か勝手に厨房に行っているので、今更だというのも理由の1つである。だが、頭では理解しても、納得できるかは別の話のため、思わず顔をしかめたのだ。
「……あぁ、そうだ」
すると、何か思い出したと言わんばかりに足を止めた。そして、輝夜はそんなルイズと食事に誘おうとしていたキュルケに向かって、こう言った。
「いろいろと話が逸れたが、ヴァリエールもツェルプストーもあの店主に騙されていたから、お前らの見る目はどっちもどっちだな」
「「なっ!?」」
盛大な爆弾を残して、輝夜は興味を失せたかのように今度こそ部屋を出て行った。そして、これがこの後すぐの大きな騒動に巻き込まれることは誰もが思っていなかった。
「ふぅ……。食ったな」
輝夜はあれから、いつも通り、厨房に行ってマルトーの作った料理をシエスタは配膳してもらい、それを食べてきたのだ。その後は、少しシエスタたちと世間話をしてから輝夜は厨房を出たのだ。外に出ると辺りは暗くなっていた。そこで、輝夜はどうせ今、帰ってもルイズがうるさいから夜風に当たってから帰ろうかと考えた。
…………そんな時だった。
ドカーーーンッ!!!
「!?……なんだ?」
いきなり、爆発音が聞こえたのだ。それに輝夜は驚き、爆発音のしたほうへと走って向かった。
「!?何なんだ、あれは?」
輝夜が走った先には30メイルもある土でできた巨人、ゴーレムが塔の外壁を殴っていたのだ。辺りにドーーンッ、ドーーンッという轟音が鳴り響いていた。しかも、そのゴーレムの肩には人影が見えた。どうやら、その人物がゴーレムを操っているみたいだ。
「……あいつら」
ふと、視界の端にルイズたちを見つけた輝夜は、3人の元に駆け寄った。
「おい!お前ら!」
「テルヤ!?」
「ダーリ~ン♪来てくれたのね~♪」
輝夜の呼ぶ声が聞こえたルイズたちも輝夜の存在に気がついたみたいだ。さりげなく抱きつこうとして来たキュルケをヒョイッとかわしながら輝夜は尋ねた。
「おい。あれはいったい、何なんだ?何が起きたんだ?」
「私たちもわからないわよ!ただ……」
「ルイズの魔法が本塔に当たったと思ったら、いきなり、あのゴーレムが出てきて本塔を殴り付け始めたのよ」
「ちょっと!余計なことを言わないでよ!」
ルイズとキュルケの口喧嘩を尻目に輝夜は顎に手を当てて考え始めた。
「(さっきの爆発音は
「あそこには宝物庫がある」
輝夜の疑問にずっと黙っていたタバサが答えた。
「……そうか。ってことは、どう考えてもコソ泥の仕業だな」
「どこがコソ泥なのよ!!ゴーレムなんて派手なもの使っているじゃない!!……ってそうじゃないわよ!!天下の魔法学院に賊が現れたのよ!!見過ごす訳にはいかないわ!!」
輝夜の言葉にツッコミながらもルイズはゴーレムのほうを向いて、強い意志を持って、そう言った。そのゴーレムは既に本塔の外壁に穴を開けていた。
「………そうか。なら、お前らは急いで教師連中を呼んでこい。あのデカ土人形の相手は俺がしておく」
「ちょ、ちょっと、いきなり何言っているのよ!?そんなの認められるわけが―――――」
「悪いが口論している暇はない」
自分もゴーレムを止めるつもりだったのか、ルイズが輝夜の提案に反対しようとしたが、それを遮って、輝夜はリングと匣を取り出した。
「開匣」
そして、輝夜はすぐに匣にリングの炎を注いだ。すると、中から輝夜の武器である刃渡り20㎝の刃が付いている、銃身の側面には銀のドラゴンが彫られていて、まるで2振りの剣にも見える単発式拳銃の形状した漆黒の2丁拳銃剣、“ガンブレード”が出てきた。
「!?また、その小さい匣から何か出てきたわ!!でも、さっきのドラゴンとは違うわ!!」
「もしかして、それがダーリンの愛用の武器?」
「………」
それを見てルイズたちは三者三様に驚いていた。特にタバサは対象のものがそれよりも小さい匣から出てきたところを初めて見て、普段無表情なのが少し目を見開かせる程、驚いていた。しかし、輝夜はそれに取り合わず………
シュンッ!!!
「「「!!?」」」
その場から一瞬で消えた。それを見て、ルイズたちは再び驚愕していた。そして、肝心の輝夜は…………
シュンッ!!!
「時間を取るわけにいかないからな。威力は落ちるがこんな木偶の坊相手なら小型1つで十分だ」
闇夜の炎のショートワープの力でゴーレムの股下に移動していた。そして、すぐに終わらせるために片方のガンブレードの刃に闇夜の炎を纏わせた。
「“
ザシュッ!!!
そう言うと、輝夜は炎を纏わせたガンブレードを勢い良く真上に振るった。すると、巨大な闇夜の炎の斬撃が飛んで、ゴーレムの股下から頭頂にかけて、一刀両断したのだ。両断されたゴーレムはそれぞれ左右に倒れていった。だが、倒れる前に輝夜はゴーレムの体を伝って上って、本塔の外壁の開いた穴に入った。
「………」
輝夜はガンブレードを構えて、辺りを警戒していた。ギーシュのワルキューレから今のゴーレムを操っていた術者がいるだろうと警戒した。
「……チッ。入れ違いになったか……」
しかし、術者は見当たらなかった。どうやら、輝夜が本塔の中に入る前に既に外に出ていたみたいだ。
トンッ……
「……お前か、タバサ」
すると、誰かが入ってきた。輝夜は気配のしたほうへと向くと、そこにはタバサがいた。中に入るとタバサは少し首をキョロキョロと回して、辺り一帯を見渡すと、輝夜に声をかけた。
「…犯人いた?」
「いや。俺が入ったときには既に居なかった。おそらく、デカ土人形が崩れたときに紛れて逃げただろうな。ところで………」
輝夜が1度、区切ると壁のある部分を指した。
「一応、聞くが
輝夜が指差したほうをタバサが向いて、それをじっくり見ると、首を振って口を開いた。
「………違う」
「ハァ……。だろうな……」
タバサの答えに輝夜はため息をついた。輝夜の言う落書きとは、それは………
『破壊の杖、確かに領収いたしました。土くれのフーケ』
“土くれのフーケ”という盗賊の犯行声明だった。