ゼロの闇夜~貴族嫌いの使い魔~   作:R0

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闇夜の疑問

「ここは……どこだ……?」

 

青年、光城輝夜が目を覚まして、周りを見て発した最初の言葉だった。

 

(俺はロヴィーノの爆発に巻き込まれて死んだはずだ……。それが、なぜ生きているんだ……?)

 

輝夜が疑問に感じていると、左手から熱さと痛みを感じることに気づき、自分の左手の甲を見た。

 

(なんだ、このタトゥーみたいなのは?)

 

そこには、輝夜にとって見覚えのない文字が彫られてあった。輝夜は今までオシャレに気を使ったことがないため、刺青やタトゥーなどはしたことがなかったのだ。

 

「あんた、誰よ?」

 

輝夜が左手の文字に目を向けていると、誰かに話しかけられた。輝夜は声がしたほうを向くと、そこにはルイズがいた。そして、同時に周りにルイズと同じ格好した生徒たちが周りにいることに気づいた。

 

(この珍妙な格好したガキや同じ格好をした連中は誰だ?)

 

輝夜はルイズと離れたところにいる生徒たちを3度目の疑問を感じた。

 

「ちょっと!!聞いているの!!」

 

輝夜が黙っていることに、痺れを切らしたのか、ルイズが叫んだ。

 

「……うるせぇな。人に名前を尋ねるときは、まずは自分からって、習わなかったのか?」

 

「なっ!?ご主人様に対してなんて口のきき方してるのよこのバカ使い魔!」

 

(ご主人様?使い魔?)

 

「さすがは平民ね。まずはその無礼な口のきき方から躾けないといけないみたいね」

 

(…………平民?平民を蔑む言い方、こいつまさか……)

 

「あんたには、ご主人様に対しての礼儀ってやつを叩き込んであげるから覚えときなさいよ!…でも、まぁいいわ。よく聞きなさい!私こそがアンタを召喚したご主人様!ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールよ!」

 

ルイズは無い胸を張って、輝夜にそう言った。

 

(召喚……?それが、俺が生き延びている理由か?)

 

「ふむ。それにしても、珍しいルーンだな」

 

輝夜が考え事していると、コルベールが輝夜の左手の文字を興味深そうに見ながら、スケッチをしていた。どうやら、記録しているみたいだ。やがて書き終えると、コルベールは未だにどよめきが上がっている周囲に向かって言った。

 

「さてと、じゃあ皆教室に戻るぞ」

 

 そう言うなや否や周囲の生徒たちは杖を取り出し、何か短く唱えるとふわりと宙に浮き、そのまま上へと飛んでいった。それを見て、輝夜は顔に変化は無いが、内心では驚いていた。『空を飛ぶ』これだけなら、別に輝夜は驚かなかった。もともといた場所でも、空を飛べる奴はいたからだ。輝夜が驚いたのは、別のところにあった。

 

(()()()()()()使()()()()()()()だと……!?)

 

輝夜の知る方法はどれも、死ぬ気の炎を使ったものだった。しかし、彼らが使った手段からは死ぬ気の炎の感じがしなかったのだ。だから、輝夜は驚いたのであった。

 

「ルイズ、お前は歩いてこいよ!」

 

「あいつ『フライ』はおろか、『レビテーション』さえまともにできないんだぜ!」

 

空中にいた生徒たちはルイズを馬鹿にしながら、どこかに飛んでいった。そして、残されたのは、輝夜とルイズの2人だけだった。

 

(……ミスったな。考え事をしすぎた。このガキ共は似たような格好していることから、おそらくどっかの学校の生徒。そして、あのコルベール(ハゲ)は教師だろう。詳しい話を聞くなら、あのハゲからが1番なんだが……仕方ない。このルイズ(ガキ)から聞くしかないか)

 

輝夜はそう考えると、ルイズのほうに向いた。

 

「おい。ルイズ・フラダンス・ブランド・ラブ・アリエール」

 

「誰よ、それ!!最初のルイズ以外、全然、違うじゃない!!私はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールよ!!」

 

輝夜が自分の名前を間違えたことに憤慨したルイズは、そう言った。

 

「……長ぇから、ヴァリエールって呼ぶ」

 

「ご主人様って呼びなさい!平民のくせに偉そうね」

 

「ここはいったいどこなんだ?」

 

ルイズの言葉を無視して、輝夜は目を覚ましてから、ずっと気になっていたことを聞いた。すると、ルイズは『こいつはいったい、何言っているんだ?』という顔した。そして、次にため息をつきながら言った。

 

「……ったく、いったいどこの田舎から来たのか知らないけど、説明してあげるわ。ここは、トリステインのトリステイン魔法学院よ」

 

「トリステイン……?聞いたことない名前だな」

 

輝夜が何気なく、そう呟くとルイズは信じられないように叫んだ。

 

「はぁっ!?トリステインを聞いたことないって、本当にどこの田舎者よ!!子供でも知っているわよ、そんなこと!!」

 

(って言われてもな。実際に地球でもベネスタンテ星でも、トリステインって名前の土地聞いたことないからな……)

 

輝夜は地球と自分の生まれ故郷であるベネスタンテ星の土地の名前をある程度、覚えていた。その輝夜の記憶の中には『トリステイン』という名前の土地は存在しなかった。

 

「ねぇ。そんなことより、あんたの名前は?」

 

考え事していた輝夜にルイズが苛立たせながら、尋ねてきた。既にルイズの自己紹介は行われているため、自分もすべきだなと思い、輝夜は簡潔にルイズに名乗った。

 

「俺は光城輝夜だ」

 

「コウジョウ・テルヤ?変な名前ね」

 

「………」ムカッ

 

ルイズの言葉に輝夜は表情は変えなかったが、内心イラッと来た。輝夜は何気に自分の名前を気に入っているのだ。『光城輝夜』という名前は昔、輝夜にとって最も大切な人たちから命と心と共にもらったものだった。だからこそ、変な名前と言ったルイズのことを9割殺しにしようと一瞬、考えたが冷静でいなければならないと思い、必死に怒りを抑えた。

 

「それで、お前さっきから俺のことを平民って言っているが、もしかして、お前は………」

 

「何?そんなこともわからなかったの?そうよ、私は()()よ!!」

 

「…………そうか」

 

ルイズの言葉に輝夜はいつも以上に無機質な声を出して言った。

 

 

 

 

その後、輝夜はルイズの案内で彼女の部屋に移動した。その間に輝夜はルイズから自分が『サモンサーヴァント』というものから呼び出されて、ルイズの使い魔にならなければならないという話や魔法が使われているという話などを聞いた。魔法の話を聞いた際はまたしてもルイズから『そんなことも知らないの?』ということを言われた。また、地球やベネスタンテ星にある土地の名前を尋ねてみたところ、全て知らないと返された。

 

「…………月が2つあるな」

 

「何言っているのよ?そんなの当たり前でしょ」

 

ルイズの部屋の窓から外を見た輝夜がそう呟いた。窓から見た空には赤く光る月と青白く光る月の2つがあった。輝夜の知る常識では、当然月は1つだけだ。月が2つも浮かんでいたら、地球でもベネスタンテ星でも世界中、大騒ぎしていたことだろう。だが、ルイズの口振りからすると、月が2つ浮かんでいることは何もおかしい話ではないらしい。そんなルイズの言葉から輝夜はある仮説を立てた。

 

(ここは地球でもベネスタンテ星でもない………()()()()ということか………。さて、どうしたものか……)

 

トリステインという土地や魔法の存在を聞いたこと無いうえに、本来、誰もが知っている土地をルイズが知らなかったため輝夜はそう考える他無かった。普通に考えれば常識はずれだが、輝夜は常識など(そんなもの)とっくの昔に捨てているために案外、簡単に受け入れていた。ちなみに先程、召喚の話を聞いた際に元の場所に帰す魔法は無いのかと尋ねたが、そんなものは無いと返されたのだ。つまり、帰る手段も無いのだ。

 

「とりあえず、使い魔としての使命でも教えておくわね」

 

輝夜が考え事をしているのを余所にルイズは勝手に大きく、無い胸を張って説明し始めた。輝夜は1度考え事を止めて、耳を傾けた。

 

「まず、使い魔は主人の目となり、耳となる能力が与えられるのよ。何か感じない?」

 

「特に何とも」

 

ルイズの質問に輝夜は淡々と答えた。召喚の際の熱さ以来、体調に変化はないし、何かが見えるようになったり、聞こえるようになったわけでもない。

 

「じゃ…じゃあ次、使い魔は主人の望むものを見つけてくるのよ。例えば秘薬とか」

 

「秘薬?そんなもの知らない」

 

「威張るな!!」

 

その言葉に、期待するだけ損したと、ルイズは力無くガックリとうなだれた。

 

「もういいわ…。それで最後に使い魔はね、主人を守る存在でもあるのよ。これが一番大事!」

 

そのあと、でもねぇ……とルイズが呟き、輝夜をじっと見た。しばらく見ているとルイズはこう言った。

 

「でもそれも無理そうだから、アンタにできそうなことをやらせるわね。掃除、洗濯、その他雑用!」

 

(……何を基準にして決めたんだ、こいつは?)

 

ルイズの物言いに輝夜は呆れた感じでそう思った。自慢ではないが、輝夜は自分の実力には自信を持っている。それを使えない判断されて、怒りを通り越して、呆れる他なかったのだ。

 

(もう、なんでこんなヤツ召喚しちゃったのかな…)

 

一方でルイズも心の中でため息をついていた。ルイズとしては何かしらの動物が良かったのにそれが人間の平民だったという現実に落胆するしかなかったのだ。心の中でため息をつくとルイズは輝夜の目の前でいきなり制服を脱ぎ始めた。輝夜はその光景を見て、『いきなり何してるんだ、こいつ?』と思いながらも、静かに目を瞑り、後ろのほうを向いた。そんな輝夜に向かって、ルイズは服やら下着やら投げつけた。

 

「それ洗っておいてね。あっ、言っとくけどあんたは床よ」

 

そう言ってルイズはベットに潜り込むと、余程疲れたのか、そのままスヤスヤと寝息とたて始めた。

 

「…………」

 

ルイズが眠ったと感じた輝夜は静かに目を開けて、一瞬だけ、ルイズと彼女の服に視線を向けたが、すぐに目を反らし、扉のほうに歩いた。

 

「何か勘違いしているみたいだが……」

 

輝夜は扉を開けて、最後にもう1度、興味なさそうな目で寝ているルイズのほうを見た。

 

「俺は1度もお前の使い魔になることを認めていないぞ。貴族の犬になるなど、死んでもごめんだ」

 

輝夜は拒絶の言葉を発しながら、そのまま出ていった。

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