ギーシュとの決闘の最中、輝夜はルイズとの使い魔の縁を無理矢理切るためにルーンが刻まれている自分の腕を切り落とそうとしたがルイズの涙ながらの懇願に輝夜は少し考えた。そして………。
「わかったよ。やめるさ」
そう言って、輝夜は持っていた剣を地面に突き刺した。その言葉を聞いて、ルイズは嬉しそうに顔を上げたが輝夜の姿を見た瞬間、再び顔を青ざめた。なぜなら………。
「お、おい……。あいつの腕……
周りの生徒の1人がそう言った。そう、輝夜の左腕からドクドクと血が流れているのだった。その血は手を伝って、地面に落ちていった。しかも、その部分はちょうど、剣の刃が当たっていたところだった。そして、剣にも決して少なくない量の血痕が付いていた。
「チッ。中途半端に
輝夜の言葉にこの状況を見ている者たち全員が息をのんだ。輝夜はあの時に既に自分の腕を半分ほど切っていたのだ。その事実に改めて全員が輝夜は本気で自分の腕を切ろうとしたことを知った。そして、それほど、輝夜が貴族の使い魔になりたくないということも。
(傷口を塞がなくてはな)
そんな周りの反応を余所に輝夜はそんなことを考えていた。今、輝夜の腕から血がドクドクと流れていた。このままでは出血多量で輝夜は死ぬかもしれない。そして、輝夜はチラリとタバサのほうを見た。
(そんなに気になるなら、お望み通り見せてやるよ)
輝夜は先程の授業の爆発のときからタバサに見られていることに気づいていたのだ。そして、観察されている理由も輝夜には見当がついていた。
「なぁ。当たり前のことを言うが、貴族も平民も同じ人間だぞ?」
急に言い出した輝夜の言葉に周りにいる者たちは戸惑った。そんな中、輝夜に声をかけたのは輝夜の決闘の相手、ギーシュだった。
「な、何を言っているんだ……?確かにその通りだが……」
「これから俺が見せるのはその人間が使える力だ」
『貴族は平民と違って、魔法を使える』と言おうとギーシュだったがそれを輝夜は遮った。そして、輝夜は自分の懐からリングを右手で取り出した。
「!?」
「タバサ……?」
それを見て、タバサが珍しく目を見開いて驚いていた。それに気づいたキュルケは不思議そうにタバサを見ていた。そして、輝夜は左腕を切っているためか、器用に右手1つで右手の中指にリングをはめた。周りは輝夜がリングを取り出したところから驚きと懐疑の雰囲気が出た。前者は平民がリングを持っていることに後者はリングを取り出して、だからどうしたというものだろう。しかし、輝夜はそんな周りの視線を無視して、自分の右手を胸の高さまで上げた。すると……
ボオゥッ!!!
『!?』
輝夜のリングから膨大な漆黒の炎が噴き出した。それを見て、全員が驚いていた。そして、輝夜が淡々とその炎の正体を答えた。
「人間の生命エネルギーを己の覚悟を糧にして炎へと具現化して生まれる力。“死ぬ気の炎”。そして、種類ある炎の中で俺が使える炎、“闇夜”の炎だ」
「死ぬ気の炎……闇夜の炎………」
輝夜の言葉を聞いたルイズが小さく呟いた。周りも魔法とは違う自分たちの知らない力に驚いていた。
「………」
ジュウゥゥ
輝夜は周りの反応に特に興味を示さず、黙って、傷口に炎を当てて、焼いて塞いだ。そんな輝夜の行動に周りは再び驚いていたがやはり興味を示さず輝夜は傷口を塞ぎ終えると先程、地面に突き刺した剣を掴んで引っこ抜いた。
ボオウッ!!!
「!?剣が燃えただと!?」
すると、ギーシュの言うとおり、剣の刃が闇夜の炎で包まれた。それを見て、この決闘を始めてからもう何度目かわからない驚愕だった。
「これは死ぬ気の炎の一般的な使い方の1つだ。炎を纏わせた武器は例外なく性能が格段に上がる」
シュンッ!!
「このようにな」
輝夜が死ぬ気の炎について説明して、一旦区切ると、自分の脚力でギーシュのワルキューレの目の前に移動して、炎を纏わせた剣を振るった。
ドカンッ!!!!
『なっ!!?』
剣とワルキューレが接触した途端、ワルキューレは炎に包まれて、一瞬で灰塵と化した。しかも、燃えたのは、ワルキューレだけではなく、輝夜が持っている剣の刃も燃え尽きて、柄だけの状態になったのだ。そのことにより全員が驚いていた。……そう全員、使用した本人である輝夜ですら、周りには気づかれない程だが少し目を見開いて驚いていた。
(……妙だ。死ぬ気の炎の出力が勝手に上がっただと?)
輝夜としてはワルキューレを斬って燃やす程度のつもりだったのだが、まさか炎がワルキューレを包み込むほど燃えて、一瞬で灰になるとは思わなかったのだ。さらに剣の刃を燃やし尽くすつもりなど一切無かったのだ。
(おまけにさっき、腕を切ろうとしたときもそうだったが、剣を掴んだら心無しか、体が軽く感じた。それと、剣を掴んだとき、この左手のルーンが光った気がするのだが……)
周りが騒いでいる中、輝夜は左手のルーンを見て、そんなこと考えた。しかし、それもすぐに止めて、頭を横に振った。
「(いや、そのことは後で考えよう。とりあえず、今は……)この決闘にけりをつけるか」
輝夜はそう考えると、柄だけになった剣をその場に捨てて、ギーシュのほうを向いた。
「ッ!?ワ、ワルキューレ!!」
輝夜にそう言われて、ギーシュは慌てて、薔薇の造花を振るって新しいワルキューレを7体も生み出した。しかも、今度は全てのゴーレムが剣や槍などの武器を持ち、完全に武装していた。輝夜の死ぬ気の炎を見て、ギーシュは輝夜を完全に警戒したのだ。
「あぁ、そうだ。忘れていた」
しかし、そんな緊迫した状況にもかかわらず、呑気にそう言って、自分の指にはめていた
「き、君、いったい、どういうつもりだい……?君の言う死ぬ気の炎というものはそのリングを使う必要があるのじゃないのか……?」
そして、その中の1人であるギーシュが訝しげに尋ねた。
「あ?別に俺がこの力を見せたのは、お前と戦うためじゃなくて、平民をなめるんじゃないっていう忠告のためだ。お前程度に勝つのに、死ぬ気の炎も武器も本当は必要ない」
それを淡々と輝夜は返した。それを聞いて、ギーシュは怒りで顔を真っ赤にした。先程までかわしてばかりだった男が自分のワルキューレを一瞬で灰と化した死ぬ気の炎を使わないどころか、武器も必要ないと言いきったのだ。これにギーシュのプライドが傷つき、ルイズも『何しているのよ!?』という感じで青ざめた。
「行け!!ワルキューレ!!」
そして、ギーシュは怒りのまま、輝夜に一斉にワルキューレを襲わせた。もう、それは当たれば、一溜まり無いものだ。
ドカッ!!ドカッ!!ドカンッ!!!
『!?』
しかし、それは輝夜のような相手じゃなければの話だった。輝夜は一瞬でワルキューレたちの懐に潜り込み、蹴りとパンチで7体のワルキューレたちを吹き飛ばして、破壊したのだ。それを見て、全員、先程まで避けるだけの行動をしていたはずの輝夜の動きに驚いていた。すると、ワルキューレたちを吹き飛ばした輝夜が静かに言った。
「……ヴァリエールが言っていた。『平民はメイジには絶対、勝てない』とな。おそらく、魔法が使えるかどうかの問題だろうけど……」
そう言うと、1度区切って、周りを見渡して、もう1度、だけど今度は周りを圧倒させるような口調で言った。
「お前らの信じるその常識がどれほど脆いものか、教えてやるよ」
その後も決闘は続いたが、終始、輝夜の圧倒だった。ギーシュは次々にワルキューレを錬成するが、輝夜はそのワルキューレたちの関節を破壊して、戦闘不能にしたのだ。ワルキューレの体は青銅に包まれているため頑丈だが、生物の構造上、身体を動かすために関節の部分はどうしても脆くなってしまうのだ。そのために輝夜は関節技や蹴りなどを用いて、相手の四肢の関節の破壊をしたり、首を狙って、頭を飛ばしたりした。
(別にこの人形共をさっきみたいに直接、破壊することもできなくはないが、さすがにジャバウォックじゃあるまいし、かなりの数の人形を連続で破壊するのは俺の身体が壊れるな)
また1体、ワルキューレの関節を破壊して、戦闘不能にした輝夜はそんなことを考えて、ギーシュの方に視線を向けた。ギーシュの顔は焦りで満ち溢れていた。輝夜は今までの攻防で死ぬ気の炎もワルキューレたちの持っていた武器を奪って戦うといったこともしていない。正真正銘、己の体術のみで戦っているのだ。そして、ギーシュも周りのほとんどの生徒たち、これによって、全員が嫌でも理解した。
輝夜が回避ばかりしていたときは手を抜いていたことをそして、今も本気じゃないことを。
「ッ!!ワ、ワルキューレ!!!」
そんな現実を認めたくないと言わんばかりにギーシュは再び、薔薇の造花を振って、6体のワルキューレを生み出した。それにより、ギーシュの薔薇の造花の花弁が完全に無くなった。
(あの花弁から人形を生み出していたことから考えると、もう人形を生み出せない。こちらとしても、そろそろ、けりをつけたかったからちょうどいいな)
輝夜がそう考えていると、ワルキューレたちは1体だけ残して、それ以外は輝夜の周りを取り囲むようにして、移動した。
(1体は護衛用に取ったか。焦っている割りには一応、考えているみたいだな。……だが、それでも素人に毛が生えた程度だな。豪の人形の操作技術と比べれば月とすっぽんだな。……まぁ、戦いの訓練を受けたことの無い学校の生徒にそれを求めるのは酷な話か)
輝夜は周りを取り囲まれたにも関わらず、冷静にそう分析していた。すると、輝夜の背後にいたワルキューレの1体が槍を持って輝夜に襲いかかった。
「………」
しかし、それをわかっていたかのように輝夜は振り返らないまま、横にずれてかわして、今、襲いかかってきたワルキューレの背中を軽く蹴った。蹴られたワルキューレは勢いをつけられて、別のワルキューレとぶつかって倒れた。その時に持っていた槍をワルキューレに突き刺してしまった。それとは別に他のワルキューレが片手剣を振りかぶって、輝夜に襲いかかったが片手剣を持っている腕を掴み、一本背負いの要領で倒れた2体のワルキューレに叩き付けた。
バキンッ!!!
ワルキューレは青銅でできているため、重量も堅さもそれなりにあるため、叩き付けたワルキューレも叩き付けられたワルキューレも罅が入って壊れた。すると、今度は輝夜の両側からワルキューレ2体が剣を持って襲いかかってきた。
「………」
ドカンッ!!!
それに対して、輝夜はぎりぎりのところで後ろに下がってかわした。そして、2体のワルキューレが剣を振り下ろしたところを確認した後に輝夜は片手でそれぞれのワルキューレの頭を掴み、頭突きさせるようにワルキューレの頭同士をぶつけた。それにより、このワルキューレたちの頭にも罅が入り、動かなくなったのだ。
「………」
「ヒッ!?ワ、ワルキューレ!!!」
5体のワルキューレを簡単に戦闘不能にして、輝夜は残りの1体のワルキューレに護られているギーシュのほうに視線を向けて、ギーシュの方へ足を進めた。それに対して、ギーシュは小さく悲鳴を上げて自分を護っていた最後のワルキューレを輝夜に襲わせた。
ドカンッ!!!
「…………へ?」
ギーシュは何が起きたのか一瞬、わからなかった。ただ、ワルキューレが輝夜に近づいたと思ったら、一瞬でワルキューレは体中に罅が入って、吹き飛ばされたのだ。輝夜がやったことは単純、ただ全力で殴り飛ばしただけだ。
シュンッ!!!
カチャッ!!!
「ッ!!?」
最後のワルキューレを1番あっさりと倒されたことに呆然としていたギーシュの隙をつき、ワルキューレが持っていた剣を拾いギーシュに近づき、切っ先をギーシュの顔に向けた。それに驚き、ギーシュは尻餅をついた。そして、それに合わせて、輝夜は剣の切っ先をギーシュの顔の前に移動させた。
「………何か、
『!!?』
「ちょっと!!?あんた、いきなり何、言っているの!!?」
輝夜のいきなりの信じられない言葉にルイズが叫んだ。それを聞いて、輝夜は剣の切っ先をギーシュに向けたまま、『何、言っているんだ、こいつ?』という目をしながら、言った。
「何って、この決闘に決着をつけるだけだ。勝者が生き、敗者が死ぬ。ただそれだけだ」
輝夜の言葉に生徒たちは信じられないという顔をしていた。しかし、それに追い打ちをかけるように輝夜は言った。
「そもそも、この決闘は
「なっ!?私はそんなこと言ってないわよ!!適当なこと言わないでよ!!」
輝夜の言葉にルイズは心外だと言わんばかりに叫んだが輝夜は首を振って淡々と言った。
「確かにそのようなことは言っていないが、適当なことを言ったつもりはない。お前は
「そ、それは………」
「もともと、この決闘は碌なルールなど決めていなかった。殺しがありか無しかすらな。それを
「ま、待ちたまえ!!ぼ、僕はこ――――」
「まさか、決闘を持ちかけてきた貴族様が見苦しく生き延びるために『降参する』とは言わないよな?」
「ッ!!?」
輝夜の屁理屈だと言われそうな言葉を聞いてギーシュは降参しようとしたが、それを輝夜は遮って、言外に『降参など許さない』と言われて、言葉を失った。
「………お前はたかが生徒だから期待していなかったが、お前は、いや、お前らは武器を持つ意味を知らなさすぎだ」
「武器を……持つ意味……?」
輝夜の言葉にどういうことだとギーシュだけでなく、周りの生徒たちが思った。
「今、俺が持っている武器もお前らの使う魔法、ついでに言えば俺の使う死ぬ気の炎も相手を殺す力を持っている。それを他の奴に向けるってことは、『自分はお前を殺す』って言っているようなものだ。それに対して相手は抵抗する。当然の話だな。誰だって死ぬのはごめんだ。そして………まぁ、これは人それぞれなところもあるが『殺られる前に殺れ』という考えを持つ奴もいる。要するに武器を相手に向けるってことは、逆に殺されても文句は言えないってことだ。俺はそのことを受け入れて、お前に武器を向けている」
「あ………あ……」
ギーシュはそんなこと、1度も考えたことが無かった。それは戦いと無縁だったこともあるが何より………
「『相手が平民だから負ける筈がない』とでも考えていたか?だとしたら、実にばかばかしい…。この世の強弱は年齢も性別も身分も種族も……そして、魔法の有無も関係ない。強いやつが強い。弱いやつが弱い。それが真実だ。魔法なんか使えなくても、やり方次第で相手を容易に上回れる」
「………」
言外に『お前の敗因は己の慢心だ』と言われてギーシュは再び、言葉を失った。
「………それで遺言は無いのか?無いなら、とっとと済まさせてもらうぞ」
『!?』
輝夜の言葉に全員がギョッとなった。特にギーシュは死という恐怖により、顔を青ざめて、言葉が出なかった。
「それじゃあな」
「ま、待ちなさ――――!!?」
周りの反応を気にせず、輝夜は剣を後ろに引いた。それを見て、ルイズが止めようとしたがそれを無視して、ギーシュに向けて、突きを入れた。
「キャーーーー!!!?」
ギーシュの身に起きることを想像して、女子生徒たちが両手で顔を押さえて、悲鳴を上げた。そうしていない者たちも目を逸らしたり、閉じたりしていた。
…………………………
…………………
…………
……
「…………え?」
誰が言ったのかわからない。ただ、今の光景を理解できないと言った感じで声が漏れた。その声に従って、他の者たちも輝夜とギーシュのほうを向いて、同じような反応をした。なぜなら、輝夜が突きを入れた剣は………
ギーシュの顔の
ギーシュの顔は青白いままで、何が起きたのか理解できていないという顔をしていたが、しっかり生きているようだった。
「………なんてな。冗談だ」
周りが混乱している中、輝夜はおどけた様子で剣を引いた。
「さすがに戦意を失っている奴を(理由もなしに)殺したりなんかしないさ」
引いた剣を適当に投げ捨てて、輝夜はあっけらかんとそう言った。何か不穏な言葉を隠しているが先程までの周りに恐怖を与えるような雰囲気は一切無かった。………けっして、他人に受け入れやすい雰囲気とは言い難いが……。それでも、ギーシュを殺そうという感じは一切無かった。
「とりあえず、俺はこれ以上、お前に何かする気はない。あと、さっきお前に対して言ったことは全部、本心だから撤回する気は無いが必要以上に怖がらせたみたいだな。
「……え?」
まさかの輝夜のいきなりの謝罪にギーシュは間抜けな声が出た。そして、他の者たちも同様だった。
「えっ?あっ。いや、……そもそも、この決闘は僕から申し込んだものだから………、別に構わないさ……」
いきなりのことに混乱しながらも先程、輝夜が言っていたことに対して何か思うところがあるのか、細々とそう言った。
「そうか。ってことは、この件に関してはもうお互いに後腐れなしということでいいか?」
「あ、あぁ……」
輝夜の問いに対して、ギーシュは弱々しく頷いた。
「そうか。……あぁ、それとヴァリエール」
「!?な、なによ……?」
すると、ギーシュとの何かしらの決着が付くと輝夜は今度はルイズに声をかけた。今のこの状況でいきなり声をかけられたルイズは驚きや混乱がありながらも何とか返事した。それを聞いた輝夜はごく普通にこう言った。
「お前の使い魔になってもいいぞ」
「…………………え?」
いきなりの輝夜の爆弾発言にルイズは何を言っているのかわからなかった。しかし、その内容もだんだんと理解できて………
「………えぇぇぇーーーーーー!!?」
思わず叫んでしまった。他の者たちも似たような反応だった。しかし、それは当然の反応だろう。輝夜は使い魔になりたくないがために自分の腕を切り落とそうとしたのだ。それが自分から使い魔になってもいいと言われたら、それは驚くだろう。そんなことは輝夜も承知だったのか、頭を掻きながら、言った。
「勘違いするなよ。別に俺はお前に忠誠を誓おうとは思っていない。これはお互いのための交換条件だ」
「交換……条件……?」
輝夜の言葉にルイズはわからないと言う風に返した。
「耳にした話だが、どうやら、使い魔の存在はお前ら生徒の在学に深く関わっているみたいだな」
「えぇ……。そうだけど……」
「あいにく、俺はこの地に召喚されて、右も左もわからないことになっている。だから、お前の使い魔になる代わりに豪華にしろとは言わないがせめて俺のまともな衣食住の保証を求める」
輝夜はルイズに対して、そう言った。まともな衣食住と言ったのは、パン2切れとスープだけという奴隷のような食事を回避させるために言ったのだ。
「だが、今も言ったが俺はお前に忠誠を誓う気は無いから俺は俺でいろいろと自由にさせてもらう。あぁ、安心しろ。お前の目と耳になることと薬草とかを見つけるのは無理だが、お前の身を守るという仕事はしっかりとやるつもりだし。お前の立場を堕とそうという気はない」
要するに輝夜はルイズの使い魔になって、それの仕事をするのは構わないが輝夜は輝夜でルイズの困らない範囲で自由にさせてもらうということだった。
「どうする?俺に対して、いろいろと不安はあるだろうが、お互いの今後のためにもろくな忠誠を結べない主従関係よりも利害一致した協力者のほうが後腐れしないとおもうが?」
「…………わかったわ」
(!?……思ったよりもすぐに了承してくれたな……)
輝夜の言葉にルイズは少し考える素振りを見せたがすぐに輝夜の提案を受け入れた。それを聞いて、輝夜自身、今まで自分のしたことから考えて、もう少し悩むだろうと思っていたため内心驚いていた。実際、ルイズは輝夜に対して思うところがあった。ルイズが輝夜の毒舌に耐えられず、教室から出ていった後、頭が冷えたルイズが教室に戻ると輝夜は居らず、教室が片付いていたため、輝夜に対して申し訳なさもあったし、ギーシュとの決闘で輝夜怪我しないかという心配もあった。しかし、ほとんど自分の言うことを全く聞かず、いろいろと勝手なことをするので、確かに実力はあるが本当に自分の使い魔の仕事をしてくれるのか、不安だった。
そんなルイズが輝夜の提案をあっさりと了承した理由は輝夜が最初に言った『使い魔の存在が在学に関係する』という点だった。
もともと、使い魔の召喚はトリステイン魔法学院の2年生の進級に大事なことだった。ルイズ自身、既に輝夜の召喚と契約は終えているが、儀式から次の日に使い魔がいなくなったということになれば、ルイズの学院生活がどうなるのか、わからなかった。使い魔の面倒をろくにも見られないということで最悪、退学させられるかもしれない。そんなことになれば、ただでさえ魔法がうまく使えないことから家族からも良い目を見られていないのに、本当に失望されるかもしれない。そんなことはルイズにとって、最も避けたいことだった。だから、先程は腕の切断シーンなんか見たくなかったために『使い魔扱いしない』という発言をしたが、多少の身勝手は目を瞑るから本当は輝夜には使い魔としていてほしかったのだ。
「(……まぁ、いいか。)OK。言質は取ったし、目撃者も多数いる。お互いに文句無しでいいな?」
しかし、そんなことは露知らない輝夜はそう言った。
「…………いいけど。あんた、どこ向いて、言っているのよ?」
それに対して、ルイズは呆れたようにそう言った。なぜなら、輝夜の顔はルイズのほうではなく、
「……いや、何でもない」
ルイズの言葉を聞いて、輝夜は何でもないと顔を戻した。そして、輝夜の頭の中では、こんなことを考えていた。
(さて、これから、どうなることやら。とりあえず、今後の俺の立場とか、めんどくさいことになりそうだな……。だが、仕方ない……。いくら、
もともと、この学院から出て、適当に旅でもしながら元の世界に帰る方法を探すつもりだった輝夜があえて嫌いな貴族の使い魔という立場に居座ることにしたのは、元の世界で死ぬはずだった輝夜が召喚によって救ってくれたルイズに対する恩返しのつもりだった。いろいろと偶然や不本意なところはあるだろうが、それでも輝夜は恩知らずに落ちぶれたくなかったのだ。
(とりあえず、お互いにどうなるのか、わからないし。俺としてはお前の使い魔になる必要が無くなるまでの間だけのつもりだが、それまではちゃんと守ってやるよ。ご主人様)
輝夜は今後のことを考えながら、今度はルイズのほうを見て、そう思っていた。
こうして、いろいろと波乱万丈な決闘は終わりを迎えたのであった。
いろいろとあったが、何とか主従関係?を結んだルイズと輝夜!果たして、今後、どうなることやら!
…………今回の決闘の話、最初からこんな感じで滅茶苦茶な展開にするつもりで書いたのですが、果たしてどうなのでしょうか?