遊輝 side
「xが3だからこれを代入してyは・・・・」
「yは-2、だからグラフはこうなる」
「・・・・何で分かるんだ?」
「何回も見てたらやり方覚える」
「お前、一回しか見てないだろ」
家で数学の宿題をしていると横で見ていた桜が答えを言う。こいつ、勉学的にはなかなかに天才でこうやって高校レベルの問題も平気で答える。
「それよりお兄ちゃん、デッキ調整手伝って」
「お前一人で出来るだろ?」
「お兄ちゃんのアドバイスが欲しい。この辺を入れるかどうか」
「このへんって・・・・ああ、ドローカードで悩んでいるのか?まぁ入れ得ではあるけど、あんまりいれすぎるとなぁ」
「だからアドバイス」
「だからって・・・まぁゴードンは俺だったら2だな、3枚目は物理的に打てないし、何が何でもなら3枚目もありだけど、あと成金は3枚」
「それ以外」
「それ以外って・・・なんかドローカードって言っても閃刀姫に合うのは無いぞ」
いや、正確にはあるにはあるが、あれ所謂オリカ且つ価値が高いから俺も複数枚持ってないしなぁ・・・
「なんか欲しかったら自分でパック買うとかしろよ」
「・・・・お小遣い」
「絶対食べ歩きばっかするからダメ」
中間テスト以来、桜はお小遣いを請求するようになった。しかし我が家の家計は厳しく、しかもこいつにお金を渡すと100%食べる事にしか使わない未来しか見えない。そんな無駄使いをさせるわけには行かない。
「う〜ん、やっと終わった。まだ晩飯作らなくてもいいしギターの練習でもするか」
「・・・・・楽しい?」
「えっ?」
「楽しい?ギター」
「まぁ・・・・弾けたら楽しいぞ。弾けるまでが大変だけど」
「ん、そうなんだ」
そう言って桜は部屋の奥へ行ってしまった。なんだ?ギターに興味あるのか?そんな風には思えないんだけどな・・・・とりあえず練習するか。ギターをアンプに繋げて・・・・
「それと、今日の約束忘れないで」
「・・・・・・忘れてませんよ」
ギターの練習を始めようとしたら桜がひょいっと顔を出して口にする。一週間前のことを毎日言わないでもらえるかな・・・・
♪♪〜〜♪♪〜〜
「チューナーチューナー・・・・」
音程を合わせるためにスマフォアプリのチューナーを開き、ギターに繋げる。音を鳴らしてチューニングする。
♪♪〜〜〜〜
「・・・・これでよし。じゃあ練習」
ピンポーン
「?なんだ?」
練習しようとしたところで家のベルが鳴った。アンプを繋げたままのギターを壁に立てかけて俺は玄関に向かい、ドアスコープを見る。
「は〜い」
「・・・・・ここにいるのは分かっているぞ」
「!?」
ドアスコープの先から見えたのは見覚えのあるペンダント、そしてトロアがいた。俺はそっとキーロックをして2人分の靴を持って桜の方に行く。
「おい桜・・・」
「どうしたのお兄ちゃん?」
「窓から逃げるぞ」
「えっ?」
「あいつが来た・・・・」
「!?」
あの野郎、一体どうやって俺の居所を掴んだ・・・いや、そんなのは後だ。とりあえずここから逃げないと、とりあえずセキュリティだ。適当に荷物をカバンに入れて桜の方を見る。桜の方も準備を整えたみたいだ。
「行くぞ桜」
「うん」
窓を開けて下を見る。下は誰もいない。まず俺1人、柵を飛び越えてジャンプする。地面に着いたところで上にいる桜がロープを垂らし、それを俺は持って近くの柵に結ぶ。
「良いぞ桜、降りてこい」
「・・・・・・」
桜はロープを握りしめ、柵を乗り越えスルスルと降りていく。桜が降りたところで俺は桜の手を握りしめてDホイールのところまで行く。桜に予備のヘルメットを渡し、Dホイールのエンジンを掛ける。
「大丈夫か?」
「・・・・いつでも」
「行くぞ!」
桜がしがみついているのを確認して俺はアクセルをフルスロットルに回して駐車場から飛び出る。
「飛ばすぞ!!」
ブオオオンという爆音とともにDホイールを飛ばし、アパートの駐車場から飛び出る。チラッと入り口の方を見てたらあいつもこっちの存在に気づいた。
「とりあえずセキュリティの所だ!そこからは中で匿ってもらう!あいつも気づいたから急ぐぞ!」
「うん・・・・」
桜がより強くぎゅっと俺の身体を締め付ける。とりあえずあいつも追ってくるはずだ。少し巻いてからセキュリティに行こう。あの目は何しでかすか分からない目だった。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
ブオオオン!!!!!
「着いた!」
「遊輝!!大丈夫か!?」
何とかセキュリティまで着いてDホイールを止める。Dホイールで走らせている間に牛尾さんに連絡、牛尾さんもすぐに対応してくれて町中のあちらこちらにセキュリティのDホイールを見かける。
「牛尾さん!えぇなんとか」
「今セキュリティのDホイール部隊が犯人を探しているわ」
「・・・・・・いや、どうやら俺が相手しなくちゃいけないみたいだ」
何かの気配を感じて俺は身体を振り向く。そこに奴の姿が見えた。
「しつけぇなぁ・・・いい加減にしてくれ」
「俺は何としてもそいつを連れ戻さないといけない」
あいつの表情を見ると凄い切羽詰まった表情をしている。なるほど・・・大方、上に次失敗したら罰が下るんだな。それであんなに目を真っ赤にさせて。
「悪いが殺人兵器を作る組織なんかに桜を渡すつもりはない」
「だったらここで貴様を倒す!」
トロアの奴がデュエルディスクを構えて起動させる。それを見て俺もタブレットを左腕の腕輪につけてデュエルディスクとして起動させる。
「デュエル‼︎」 「デュエル‼︎」
遊輝 LP 4000 トロア LP 4000
「先行は私だ!サイバー・ドラゴン・コアを召喚!」
サイバー・ドラゴン・コア 攻500
「サイバー・ドラゴン・コアの効果!デッキから『サイバー』または『サイバネティック』魔法・罠カードを手札に加える!俺はエマージェンシー・サイバーを手札に加えて、発動!デッキから『サイバー・ドラゴン』モンスター1体を手札に加える!サイバー・ドラゴン・ネクステアを加えて、手札のサイバー・ドラゴンを捨て、サイバー・ドラゴン・ネクステアを特殊召喚!」
サイバー・ドラゴン・ネクステア 守100
「サイバー・ドラゴン・ネクステアの効果!特殊召喚成功時、墓地の攻撃力または守備力が2100の機械族モンスターを特殊召喚する!サイバー・ドラゴンを特殊召喚!」
サイバー・ドラゴン 攻2100
「現れろ!絶望へ続くサーキット!」
「アローヘッド確認!召喚条件はサイバー・ドラゴンを含む機械族モンスター2体!私はサイバー・ドラゴン扱いのサイバー・ドラゴン・ネクステアとサイバー・ドラゴン・コアをリンクマーカーにセット!サーキットコンバイン!リンク召喚!リンク2、サイバー・ドラゴン・ズィーガー!」
サイバー・ドラゴン・ズィーガー 攻2100
「カードを1枚伏せてターンエンド!」
トロワ 手札 2枚 LP 4000
ーー▲ーー ー
ーー○ーー
○ ー
ーーーーー
ーーーーー ー
遊輝 手札 5枚 LP 4000
「俺のターン!ドロー!」
遊輝 手札 6枚
「お前相手に無駄な時間を過ごすつもりはない!速攻で決める!レフト・Pゾーンにスケール5の慧眼の魔術師を、ライト・Pゾーンにスケール2の賤竜の魔術師をセッティング!」
Pゾーンに天空から青い光が指され、慧眼の魔術師と賤竜の魔術師が舞い降りてきた。
「慧眼の魔術師の効果!もう片方のPゾーンに『魔術師』または『EM』カードがある場合、自身を破壊して別の『魔術師』ペンデュラムモンスターをセットする!虹彩の魔術師をセッティング!」
慧眼の魔術師が破壊され、その代わりに虹彩の魔術師がPゾーンにセッティングされた。
「手札のクロノグラフ・マジシャンの効果!自分フィールドのカードが破壊された場合、手札のこのカードを特殊召喚する!その後、手札のモンスターを特殊召喚する!EM ペンデュラム・マジシャンを特殊召喚!」
クロノグラフ・マジシャン 攻2000
EM ペンデュラム・マジシャン 攻1500
「ペンデュラム・マジシャンの効果!自分フィールドのカードを2枚まで破壊することでデッキからペンデュラム・マジシャン以外の『EM』モンスターをデッキから手札に加える!虹彩の魔術師を破壊してEM ドクロバット・ジョーカーを手札に加える!」
クロノグラフ・マジシャンの効果で特殊召喚したペンデュラム・マジシャンが手にしている振り子を振り回し、Pゾーンの虹彩の魔術師を破壊、戻ってきた振り子に1枚のカードが手にして、それが俺の手札に加えられた。
「さらに破壊されて虹彩の魔術師の効果!デッキから『ペンデュラムグラフ』魔法・罠を手札に加える!デッキから星霜のペンデュラムグラフを手札に加える!」
破壊された虹彩の魔術師の跡から1枚のカードが出てきて、それが俺の手札に加えられる。
「現れろ!未来へ続くサーキット!」
俺の上空にリンクマーカーが現れて、その中にクロノグラフとペンデュラム・マジシャンがはいる。
「アローヘッド確認!召喚条件はペンデュラムモンスター2体!俺はクロノグラフ・マジシャンとペンデュラム・マジシャンをリンクマーカーにセット!サーキット・コンバイン!リンク召喚!リンク2、ヘビーメタルフォーゼ・エレクトラム」
ヘビーメタルフォーゼ・エレクトラム 攻1800 ↙︎ ↘︎
リンクマーカーの左斜め下と右斜め下が赤く光り、リンクマーカーからエレクトラムが飛び出してきた。
「エレクトラムの効果!リンク召喚成功時、デッキからペンデュラムモンスター1体をエクストラデッキに表側表示で置く!」
「リバースカードオープン!サイバネティック・オーバーフロー!墓地のサイバー・ドラゴン・ネクステアをゲームから除外してヘビーメタルフォーゼ・エレクトラムを破壊する!」
相手が発動したサイバネティック・オーバーフローにより、墓地のネクステアが除外され、エレクトラムがはかいされる。まぁ、予想通り。こいつ通すわけないしな。
「エレクトラムは破壊されたが効果は解決される!俺はアストログラフ ・マジシャンを選択!EM ドクロバット・ジョーカーを召喚!」
EM ドクロバット・ジョーカー 攻1800
「ドクロバット・ジョーカーの効果発動!召喚成功時、デッキから『魔術師』『EM』『オッドアイズ』のいずれかのモンスター1枚を手札に加える!俺は慧眼の魔術師を手札に加え、レフト・Pゾーンにスケール5の慧眼の魔術師をセッティング!永続魔法、星霜のペンデュラムグラフを発動して、慧眼の魔術師の効果!自身を破壊して今度は黒牙の魔術師をセッティング!」
再びPゾーンに現れた慧眼の魔術師、すぐに破壊され代わりに黒牙の魔術師がPゾーンにセットされた。
「星霜のペンデュラムグラフの効果!自分フィールドの『魔術師』ペンデュラムカードが離れた場合、デッキから『魔術師』ペンデュラムモンスター1体を手札に加える!調弦の魔術師を手札に加える!そして賤竜の魔術師のペンデュラム効果!もう片方のPゾーンに『魔術師』ペンデュラムカードがある場合、EXデッキの表側の『魔術師』または『オッドアイズ』カードを手札に戻す!俺は虹彩の魔術師を選択!」
Pゾーンの賤竜の魔術師が杖を振り、EXデッキにいた虹彩の魔術師が手札に戻った。
「これでLv3から7までのモンスターが同時に召喚可能!揺れろ、魂のペンデュラム!天空に描け、光のアーク!ペンデュラム召喚!現れろ!俺のモンスターたち!」
黒牙の魔術師と賤竜の魔術師の間に大きな振り子が現れて、円を描くように振り始める。その描かれた円の中から3つの光が飛び出してきた。
「エクストラデッキからクロノグラフ・マジシャン!手札から調弦の魔術師と黒牙の魔術師!」
調弦の魔術師 守0
黒牙の魔術師 攻1700
「調弦の魔術師の効果発動!手札からペンデュラム召喚に成功した場合、デッキから『魔術師』ペンデュラムモンスターを守備表示で特殊召喚する!デッキから白翼の魔術師を特殊召喚!」
白翼の魔術師 守1400
「現れろ!未来へ続くサーキット!」
「召喚条件はチューナー1体を含むモンスター2体!俺は白翼の魔術師とクロノグラフ・マジシャンをリンクマーカーにセット!サーキットコンバイン!リンク召喚!リンク2、水晶機巧ーハリファイバー!」
水晶機巧ーハリファイバー 攻1500
「ハリファイバーの効果!特殊召喚成功時、デッキからレベル3以下のチューナーモンスターを効果を無効にして守備表示で特殊召喚する!EM オッドアイズ・シンクロンを特殊召喚!」
EM オッドアイズ・シンクロン 守200
「まだまだ!EM オッドアイズ・シンクロンとEM ドクロバット・ジョーカーで融合!覇王につく四龍の1体よ!融合の力を得て、全てを食い尽くせ!融合召喚!覇王眷竜スターヴ・ヴェノム!」
覇王眷竜スターヴ・ヴェノム 攻2800
「スターヴ・ヴェノムの効果!自分フィールドまたは自分・相手の墓地のモンスター1体の名前と効果をコピーして、このターン俺のモンスターは貫通能力を得る!墓地のエレクトラムを選択!エレクトラムを選択!」
『ギャアアアアア!!!』
ドクロバットとオッドアイズ・シンクロンの融合により出てきたスターヴ・ヴェノムは相手を威嚇するように大きな雄叫びをあげる。そのままスターヴ・ヴェノムの前に穴が開いて、墓地にいるエレクトラムの霊がスターム・ヴェノムに吸収された。
「エレクトラムをコピーしたスターヴ・ヴェノムの効果!自分フィールドのカード1枚を破壊して、EXデッキの表側表示のペンデュラムモンスターを手札に戻す!賤竜の魔術師を破壊してアストログラフ・マジシャンを選択!」
エレクトラムが賤竜の魔術師を破壊して、EXデッキのアストログラフ ・マジシャンのカードが生まれ、俺の手札に加えられた。
「スターヴ・ヴェノムの効果!チェーンで手札に加えたアストログラフ・マジシャンの効果!自分フィールドのカードが破壊された場合、手札のこのカードを特殊召喚する!」
アストログラフ・マジシャン 攻2500
破壊された賤竜の魔術師の跡から手札にいたアストログラフ・マジシャンが出てきた。
「アストログラフ・マジシャンはこの効果で特殊召喚した場合、このターンに破壊されたモンスター1体をデッキから手札に加える!慧眼の魔術師を選択して、手札に加える!エレクトラム の効果!Pゾーンのカードが破壊された時、1枚ドローする!」
遊輝 2枚→4枚
「まだだ!Lv4の黒牙の魔術師にLv4の調弦の魔術師をチューニング!」
☆4 + ☆4 = ☆8
「振り子の力を得て爆熱の心が燃える!この地で暴れ回れ!シンクロ召喚!爆竜剣士イグニスターP!」
爆竜剣士イグニスターP 攻2850
「虹彩の魔術師をレフト・Pゾーンにセッティングして、イグニスターPの効果!自分フィールドのカードを破壊して、フィールドのカードを選んでデッキに戻す!虹彩の魔術師を破壊して、サイバー・ドラゴン・ズィーガーをデッキに戻す!」
イグニスターPがPゾーンの虹彩の魔術師を破壊して、相手のズィーガーをデッキバウンスする。もう相手のトロアは唖然としている。
「破壊された虹彩の魔術師の効果!デッキから時空のペンデュラムグラフを手札に加える!」
「ば、馬鹿な・・・・こんな簡単に・・・」
「俺を舐めるな!これでも世界一のチャンプの肩書きを背負ってるんだよ!!バトルフェイズ!!アストログラフ・マジシャンでサイバー・ドラゴンに攻撃!」
アストログラフ・マジシャン 攻2500
サイバー・ドラゴン 攻2100
トロア LP 4000→3600
「ラスト!スターヴ・ヴェノム、イグニスターP、ハリファイバーでダイレクトアタック!」
トロア LP 3600→0
WIN 遊輝 LOS トロア
「そ、そんな・・・・わ、私が・・・・私が・・・・」
「悲観しているところ悪いがお前には病院襲撃の件でお縄についてもらう、お前ら!」
デュエルが終わり、負けたショックで膝まづき四つん這いになるトロアに牛尾さんが部下を支持してトロアを囲む。そのままトロアは手錠をかけられて御用となった。
「これで一先ずは安心ですね」
「だと良いんだけど・・・・・」
実際、トロアは捕まって情報を絞り出すことは出来るだろうが向こうは得体の知れない組織、おまけに家の場所でバレちゃったもんな。
「あ〜あ・・・・引っ越すしかないのか」
「なんだ?とうとう引っ越すのか?だったら引っ越し資金くらい今回の謝礼で出してやろう」
「呑気で良いですよね〜牛尾さん、こっちは今後しばらく安住の地を見つけられないかもしれないのに・・・・」
今回の件であいつらは俺の居場所を見つけた。つまり、何かしらの拍子でまた見つかるかもしれない。その度にコロコロ家を変えるなんて溜まったもんじゃない。
「どうしたもんか・・・・」
「遊輝さん、そこまでお悩みなら家はこちらで手配いたしましょうか?セキュリティ万全の空き家があります」
「へぇ、そんな所あるんだ。じゃあお願いするか」
狭霧さんがセキュリティ万全っていうくらいだらなぁ、どんなアパートなんだろうとこのとき思っていたが、後日、俺は果てしなく後悔した。
桜「圧勝」
遊輝「魔術師は先行で制圧、後攻で1ターン目に勝つデッキだから」
桜「それをさせないのが閃刀姫」
遊輝「そりゃそうだ。あれは相手をコントロールするデッキなんだから」
桜「サイバー使いは消えた。これでめでたしめでたし」
遊輝「まだ続くからな!?これで終わりだったらクソ漫画と一緒だからな!?」
桜「・・・・次回、『引っ越しとデリバリー』」
遊輝「おいなんだ今の間!?次回もよろしく」