遊戯王 振り子使いの少年と連鎖使いの少女   作:DICHI

53 / 76
何かこの回だけ書きたいことをすっと書けました。
こんな調子が続いたら楽でいいんですけどね〜。


第50話 対面

遊輝  side

 

 

「それではご案内いたします。少し時間がかかりますがご辛抱ください」

 

そう言って秘書のアンが車椅子のブレーキレバーを一つずつ、丁寧に外していく。いよいよ桜を狙っている組織のトップと面会が始まる。分かっているが何か緊張してくる。

 

昨日はご飯を食べた後、そのまますぐに寝た。あまりにもやる事がなさ過ぎる上に、今の俺はできない事が多すぎる。トイレにすら自分一人でいけず、コールボタンを押さないといけない。連絡手段も失くし、武器も取り上げられた以上、この部屋で治療に努めるしか無いのだが、この部屋には娯楽と呼ばれるものはない。せめて本の一冊くらい置いてくれても良いじゃないかと思う。

 

とまぁ、今からトップと会いに行くが、当たり前だが今の俺は普通に歩くことは出来ない。そのため、車椅子に乗って移動する。ベッドから秘書一人で車椅子に移乗してもらう。後ろは秘書様がレバーを持ち、周りには秘書の部下が固める。

 

「・・・・・・なぁ」

 

「何でしょうか?」

 

「これ、必要あるのか?」

 

そう言って俺はジャランと音がなる両手をあげる。ベッドから車椅子に移動した際、足を動かさないようにフットレスにベルト、さらに今の俺は下半身の筋肉が無いに等しいから腰にベルトを巻いて、落ちないようにされている。動けない脚のベルト、百歩譲って腰のベルトまではまだ良い。ここまではまだ分かる。だが・・・・

 

「この手錠は絶対にいらないだろ」

 

「貴方が社長に何をするのか分かりませんので拘束させていただきました」

 

「こんな状態で出来るわけねぇだろ。今の俺は赤子ですら負けるぞ」

 

「貴方は何しでかすか分かりませんので」

 

「(これ、俺の意見を聞き入れない感じだな・・・・)」

 

秘書の感じを見て、俺はもう何も言わないでおこうと思った。こんな何も出来ない状態でお前らトップにグーパンチするか、してもすぐボロ負けにされちまう。

そんな事を思いつつ、エレベーターに乗って下に移動、1階まで降りて正面玄関の方に向かう。

 

「?何だ?ここにいないのか?」

 

「ここは我が社の病院であると共に研修施設件実験施設です。社長は本社ビルにございますのでそちらまで車で移動します」

 

「さいですか、それはそれは結構な繁盛ですね。癌の特効薬と偽り、国に武器を売りつけていくら儲けたんだ?」

 

「貴方は口が軽いですね。情報通りです」

 

「はっ、お前らみたいな悪事を繰り返す奴らの噂なんかすぐに広めても問題無いだろ」

 

「揉み消すのにどれだけの時間とお金が必要かわかってないですね」

 

「知っちゃこっちゃ、寒〜〜!!!!!」

 

正面玄関から出た途端、冷気が俺の身体に襲い、身を震わせる。そう言えば今の俺、肌着と薄い病院着しか着ていなかった・・・・・・鳥肌が・・・

 

「ああ、これは失礼。おい」

 

「はっ」

 

後ろの秘書が横にいる男の部下に目線を送る。男は一瞬この場から離れたがすぐに毛布とコートを持ってきた。俺の上半身を前のめりに倒し、コートを上からかぶせ、足元は毛布をかける。

 

「これで幾分かはマシかと」

 

「さ、さっきよりマシだけどさ・・・・ってかここ寒いな!?何処だここ!?ネオドミノシティより寒いぞ!!」

 

「それはお教えできかねます。では、あちらの車に乗りましょう」

 

そう言って目の前あったハイエースの一番後ろの扉が開く。そこから板が自動で伸びて降りてくる。俺はそこからハイエースに乗り、ブレーキをかけて、タイヤはベルトでしっかりと固定する。

 

「では行きましょう」

 

車椅子の固定を終えた秘書とその部下はハイエースの座席に乗り込む。秘書が助手席に座り、女性の方が運転席につく。そのままエンジンがかけられて車が動き出す。ものの5分ほどで病院らしき建物か大きなビルの前に車が止まる。

 

「着きました。ただいまより降ろしいたします」

 

テキパキと秘書の部下たちが動き、固定されたベルトは外されていく。そのまま後ろ向きで降りて、ビルの中に入っていく。中は人が多く、意外と活気があった。部下の一人は建物の中に入ってすぐにコートと毛布を回収していった。

 

「・・・・人多いんだな」

 

「研究施設として、多くの優秀な人材を育てるのが我々の役目ですから」

 

「そのまま普通の研究だけで終わらせてくれたらこんな事にならずにすんだけどな」

 

「貴方は口が軽すぎですね」

 

「自覚してますよ」

 

そう言いながら正面のフロアを抜けてエレベーターフロアへと行く。3基あるエレベーターのうち真ん中のエレベーターが来て乗り込み、秘書がボタンを隠すようにしてボタンを押す。

 

「(社長室に行くのに細工が必要か・・・)」

 

上に登るのも一苦労だな、そう思っていたらエレベーターが動き上へ上へ登っていく。十数秒経って、エレベーターが止まる。

 

「それでは、ご案内いたします」

 

エレベーターの扉が開いたそこはごく普通のオフィスだった。フロアの大きさあたりの扉の数が異様に少ないから一部屋一部屋辺りはかなり大きいだろうな。そして一番向こう側の扉まで移動して、周りの部下たちが壁の前で一斉に直立不動に立つ。

 

「お前たちはここで待て」

 

「「「はっ!!」」」

 

「では行きましょうか」

 

車椅子のブレーキがかけられ、先に秘書が扉を叩き、中に入る。

 

「失礼いたします。社長、遠藤遊輝様をお連れしました」

 

「入ってくれ」

 

「かしこまりました」

 

扉は全開で開き、ストッパーで止められる。秘書はブレーキを解除してそのままレバーを持ち、社長室に入る。俺の予想通りの大きな部屋で黒い光沢の壁には本棚に本や資料が並べられている。窓ガラスは普通のサイズで光は入っているが、薄暗い印象だ。目の前にソファとテーブルが並べ、その奥にビジネスデスクがあり、そこに男が座っていた。男の隣にはドゥが立っている。

 

「アン、ご苦労。すまないが彼の隣で待っていてくれ。彼は今、自力で移動が出来ないから君が頼りだ」

 

「かしこまりました」

 

「テメェの隣の奴が銃なんか使わなければこんな事にならなかったんだよ」

 

「・・・・噂通りの口の悪さですね。まぁ確かに、どんな手段を使っても良いとは言いましたが死にかけの状態で持ってこいとは一言も言いませんでしたよね?」

 

「ごめんね。そうじゃないと捉えられなかったもんだから」

 

「本来ならDMWを捕まえなかったことも相待って契約違反だが、無事に生きているし多めに見てやろう。その代わり、任務は続行するよう」

 

「分かっているわ」

 

「(こいつら・・・・やっぱ桜のこと諦めてねぇな)」

 

分かっていたけどやっぱりそう簡単にはならねぇか。本当なら「桜に手を出すんじゃねぇ!!」って言いたいところだけど、こんな身体じゃ何言っても負け犬の遠吠えにしかならない。

 

「ドゥ、君はここから離れてくれ。しばらくしたらまたDMWを連れ戻すように」

 

「分かったわ」

 

ドゥは社長から離れ、俺の横を通り、この部屋から出ていく。

 

「さて、こうやって対面で会うのは始めましてだね遠藤君、君のことは調べさせてもらったがなかなかに興味深い人物だ」

 

「・・・・・その前にあんた、自分の名前くらい名乗ったらどうだ?このままだと一生あんたとしか呼ばんぞ」

 

「おっと失礼、そうだったな」

 

椅子から立ち上がった社長は両手を後ろで組み、ゆっくりと俺の前に近づく。そして右手を差し出してきた。

 

「私はこのアムールという会社の代表取締役社長を務めているゼロ・アンクルだ。よろしく」

 

「悪いけど親しくするつもりはない。桜を狙っている以上、俺はお前たちのことを敵としてしか見ない。そもそもこの状態じゃ握手できん」

 

そう言って俺は手錠を見せつける。それを見た社長は「その通りだな」と一言言って俺の元から離れていった。

 

「さて、何処から話したものか・・・まずは会社の経緯からでも「そんなどうでも良いこと聞きたくもない。何で桜を狙っているかだけ聞きたい」・・・・・全く、扱いが難しいですね」

 

「お前らみたいな奴らと付き合うならこれくらいの関係でいい」

 

「ハァ・・・まあ貴方の境遇は察していますから、多少半グレでも仕方ないと思っています。この世界に来て慣れない生活をずっとしてきたんですから」

 

「・・・・・そう言えば俺の素性も調べていたんだったな」

 

「えぇ、簡単にハッキングさせてもらいましたよ。アーククレイドル事件の時はセキュリティがガタガタでしたから」

 

アーククレイドル事件・・・・あの時か。確かにあの時はセキュリティウンヌンじゃなくて皆逃げなきゃ行けなかったからな、まさかその時にハッキングされるとは。そう言えばリンク召喚の情報もあの時だったな、それをハッキングしたということは・・・・

 

「・・・リンクモンスターはコピーカードか、すげぇ犯罪集団だな」

 

「ほぅ、そんな事も分かったのか」

 

「今のハッキングで分かった。まだデータに載せた頃のはずだから試作品すら作っていない。となると、データハッキングからのコピーカードくらいの製造しか思い浮かばなかっただけだ」

 

「さすが、WRGP初代チャンピオンチームのリーダーはブレインとしても働くようですね」

 

「一応褒め言葉として受け取っておく」

 

しかしハッキングで俺の転生した情報まで仕入れたとなるとかなり心臓部の方までか・・・まさか俺も知らないようなネオドミノシティの情報まで握ってないだろな?

 

「さて、貴方が第一に知りたいDMWのお話から致しましょうか。我が社は医薬会社として名を馳せています。が、なかなか医薬品だけで会社が成り立つのは難しいご時世ですので、我が社もマルチに分野を広げているのです」

 

「その一つが殺人兵器の開発かよ」

 

「そう思ってくれて結構。我が社の医薬部門は世界一を誇る。故に毒ガスやら毒物を作ることもたやすい。本来なら裏社会の人間に売るのが通例だが、とある国から高値で買いたいという話があってね。そこから色々な国と商売している」

 

「毒物の開発だけでそんな儲かるのかよ、どれだけ国は戦争したいんだ・・・」

 

「勘違いしないでほしいが何も戦争目的で買っている国だけではない。実験目的、暗殺目的など多様な理由がある。しかし主な理由は戦争ですから、一概に君の意見を否定することは出来ないですね」

 

淡々と話す社長、その一言一言は確かに会社の売り上げを上げるためにやっている敏腕社長のように思えるが、殺人兵器を作ったりセキュリティのデータにハッキングしたりしている。ここで聞いただけでもかなり危ない奴だろう。

 

「で、それがどうした、俺は桜を狙っている理由と聞いているんだが?」

 

「感の良い君なら薄々感付いているんじゃないか?」

 

「・・・・・・・おいまさか」

 

「我が社の新たな兵器開発として兵士を作ることが決まった。ただの兵士じゃない、人間の脳内にICチップを埋め込み、こちらの奴隷のように都合よく行く兵士だ」

 

「・・・・・・・・・」

 

「そして私はサイコデュエリストに目が入った。かつてアルカディアムーブメントが研究し、サイコデュエリストを兵士として戦場に送り出そうとした計画、だが、私はサイコデュエリストだけでは事足りない。幼く、親も知らない孤児を兵士として育て、国に売りつけるのだ」

 

「テメェ・・・・・」

 

「DMW・・・・・・略さないで言うとDuelist of Murder Weapon、『デュエリストによる殺人兵器』の略だ」

 

「テメェ・・・・・人を何だと思ってやがる」

 

この野郎の言葉を聞くたびに怒りが込み上げてくる。自然と右手に力が入り、握り拳になる。こいつ・・・・人を兵器として扱うだと?

 

「DMWはただ兵士のように扱うだけじゃない。無限とも言われているデュエルモンスターズのパワーをサイコデュエリストのように遺憾なく発揮して世界中のあらゆる戦争の概念を覆す」

 

「テメェの思想とか聞きたくねぇ!!テメェには倫理とか命の大切さとかねぇのか!?人を金にする道具にしか見えないのか!?」

 

「何か勘違いしているな。私はただ孤児として生涯何も出来ずに困る子供達の親代わりとして育て、その子たちを兵士として戦場に駆け出そうとしているんだ。子が親孝行をするのは当然だろ?」

 

「テメェが言っているのは親孝行でも何でねぇ!!ただのうぐっ!?」

 

クズ野郎の言葉を言い返そうとした途端、再び心臓付近が痛み出す。ちきしょう・・・まだ血と栄養が足りねぇのかよ・・・・

 

「おや、これは行けませんね。アン」

 

「はっ」

 

隣の秘書が社長室の壁から大きめの機械を取り出してきた。それを車椅子の後ろに取り付けて、人工マスクを再び俺に被せる。

 

「スゥ・・・スゥ・・・・」

 

「心臓が安定していない時期です。無闇に大声を出さない方が良いです。酸欠になりやすいですし、筋肉が硬直してしまいます」

 

「スゥ・・・スゥ・・・・(クソッ・・・ムカつくがあいつの言う通りだ)」

 

足へのダメージが想像以上に大きくて心臓の負荷がまだ大きすぎる。それに血液が全然足りない。

 

「スゥ・・・スゥ・・・・」

 

「まぁそのまま聞いてくれたまえ。君の治療はしっかりと行う。君は不思議な存在だ、実験材料としても充分な逸材なんだ」

 

「スゥ・・・スゥ・・・・(んのやろう、人を何だと思ってやがる)」

 

「君は本当に不思議な存在だ。色々と調べさせてもらったが、シークレットシグナーとしての力か、通常の人間にはあり得ない力がある。そしてもう一つ、シークレットシグナーには関係ない、人間本来の能力、その値が尋常じゃない値を示した」

 

「スゥ・・・スゥ・・・・(すげぇな・・・霊力の存在も見つけたって言うのかよ)」

 

霊力って確か数値では現れない人間の潜在能力ってあの人が言っていたはずだが、それを発見するとは思わなかった。こいつら、犯罪をするだけじゃなくて研究設備も一流か。

 

「君は素晴らしい実験材料だが、それと同時に私のコマとしても充分な戦力だ」

 

「スゥ・・・・スゥ・・・・(何だと?)」

 

「君はチェスという物を知っているか?よく将棋と似ていると言われているが、全く違うものだ」

 

社長は俺の目の前からテーブルの前まで戻り、机の上に置いてあるチェスのコマを手にする。

 

「ポーンの昇格とか色々な特殊なルールがあるが、最大の違いはチェスは相手の奪ったコマを味方にする事はできない。つまり、相手の戦力を自らの戦力にすることはできないんだ」

 

「スゥ・・・・スゥ・・・・・」

 

「私はチェスが趣味でね、色々な戦略を考える時、チェスの作戦を用いることがある。だが、今回は発想の転換をしてね、この奪った相手の駒を将棋のようにこちらの駒として使おうと思っている」

 

「スゥ・・・スゥ・・・・つまり俺を仲間にするってか?」

 

「あんまり喋っちゃいかんぞ。まだ心臓への負荷が大きいからな。だが、そういう事だ」

 

「スゥ・・・・・スゥ・・・・」

 

「何だ?いつもの君なら反論する所だろ?」

 

「スゥ・・・スゥ・・・うるせぇ・・・まだ安定してねぇんだよ」

 

「ああ、そうだったな、私から言ったのに、これはすまなかった」

 

心臓を落ち着かせるためにこいつの言うことに反論はしなかったが、とりあえずこいつの目的は分かった。桜を殺人兵器としての利用、そしてその過程で俺を仲間に連れ込もうとしている訳か。

 

「スゥ・・・スゥ・・・・(ざけんなよ・・・そんな事させるか!)」

 

「しかし今の君の状態だと戦力としては考えられない。流石に私は重病人を兵士にしようとは考えていないから、まずはその怪我を完治してもらわないと。因みにこの計画にはもう一人、仲間にしたい人がいてね」

 

パチン!

 

社長が指を鳴らすと、俺の目の前にスクリーンが天井からゆっくりと降りてくる。秘書が部屋の電気を消して、スクリーンに映像が映し出される。

 

「・・・・!?桜、アリア!?」

 

「こいつはリアルタイムの映像だ。ネオドミノシティの防犯カメラを一部ハッキングしている。現在進行形で君を探しているこの二人何だが、私はこの女性も仲間にしたいと考えている」

 

「何だと・・・・」

 

「今の君の状態だ、この様子を映し出せば直ぐにでも来るだろう」

 

「んやろう・・・・!!」

 

「とは言え・・・こちらもまだ2人を迎え入れる準備は終わっていない。なんせ肝心の施設が調整中でな」

 

「(調整中・・・・?)」

 

「それにドゥも警戒されている。1ヶ月近くは準備に時間がかかるだろう」

 

「(1ヶ月・・・・つまり俺のチャンスは1ヶ月しか無いって事か)」

 

「さて、君との話はここまでにしよう。私は仕事に戻らないといけないが君は大事な客人だ。この後のお昼ご飯に招待しようと思う」

 

「・・・・どうせ断れないんだろ、いまの俺、動けねぇし」

 

「話の飲み込みが早くて助かる。君とはまだまだ話がしたいからね。アン、彼を客人室に迎え入れてくれ。その間の世話は君に任せる」

 

「かしこまりました」

 

秘書は車椅子の後ろにつき、ブレーキレバーを一つずつ外していく。180度回転して、そのまま社長室から出る。

 

「すまないが予定変更になった。遠藤さんは隣の客室で待機してもらう。お前たちは自分たちの仕事に戻ってくれ」

 

「「「はっ!!!!」」」

 

秘書は自分の部下に命令を下す。部下の3人はすぐにエレベーターのほうに向かって乗り込んでいった。部下の様子を見ることもなく、秘書は車椅子を動かして一つ隣の扉の前に移動する。そのまま扉が開かれて部屋の中に入る。客室らしく豪華なソファや本棚、壁には大きな絵がかけられている。そして部屋の隅っこにベッドが置いている。

 

「ではこちらの部屋でしばらくの間、お待ちお願いします。とは言っても、先ほどのことがありますので安静にしてもらいます」

 

「(・・・・・・ダイヤ、聞こえるか?)」

 

『(はい、大丈夫です)』

 

秘書が車椅子をベッドに移動して、俺を移乗させる間に俺は脳内でダイヤを呼ぶ。その間に秘書は俺の手錠と人工マスクを外す。

 

「ではベッドに移ります。私の首に手を巻いてください」

 

「(あいつの目的が分かった。想像以上に脳味噌がイカれている奴だ)」

 

『(えぇ、人間を兵器にするとは思いもしませんでした)』

 

「(それと、猶予は1ヶ月だそうだ。急で悪いが1ヶ月以内で脱出かあいつらに伝える方法を早急にやってほしい。俺は足の治療に専念する)」

 

『(分かりました。くれぐれも無茶はしないようにお願いします)』

 

ダイヤとの会話が終わったタイミングで移乗が終わり、ベットに乗り移った。俺はそのまま身体を少し斜めに上倒してベッドに横がる。秘書は俺の足を片足ずつ持ち上げて、ベッドの上に乗せ、今度は片足ずつ足枷を付けていく。その後、ベッドの横脇から白いテーブルを出す。全ての動作が終わった後、俺は上半身を起こす。

 

「では遊輝さん、しばらくはこの部屋でゆっくりしてください。私はこの部屋で作業していますので、何か必要な時は申し付けてください」

 

「・・・・・ノートとペンをくれ」

 

「理由は?」

 

「そこにあるビジネス本や医療本はは読む気にならん。作詞しておく」

 

「ふむ・・・・良いでしょう。ただしこちらのタイミングで検閲させてもらいます」

 

「好きにしろ」

 

秘書は俺の注文通り、真っ新なノート1冊と高そうなボールペン1本、それと鉛筆と消しゴムを1セットをテーブルに置いてくれた。気を紛らわすため、俺はノートを開けて作詞をするフリをしながら、右足にシークレットシグナーの能力を少し解放する。

 

「(・・・・・全治6カ月から1年?俺の回復力舐めんなよ。こんな怪我回復して逃げ出してやる!)」




遊輝「クッソ腹が立つ・・・・」

ダイヤ「あの男、完全に会社の名誉のことしか頭にありませんでした」

遊輝「それで桜を道具?冗談じゃねぇ。何としてでも逃げ出す」

ダイヤ「こちらで対策を考えますから足の治療を」

遊輝「分かっている。次回、『見つけるため』。次回もよろしく」

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。