iPadとスマートキーボードが欲しいな・・・・
桜 side
あの元旦の日から数日が経ち、今日からアカデミアの3学期が始まる。
お兄ちゃんはあの後、集中治療室に入り宣言通り足の細胞の活性化を抑える治療から始めた。シークレットシグナーの能力を逆手に使い、回復力を極限まで抑えて細胞の活性化を抑える。机上の空論でしかない、前代未聞の治療法でもしものことを備え、面会謝絶。基本的にお兄ちゃんも寝たきりの状態が続く。昨日、お姉ちゃんが状況を聞きに行ったら、才能の活性化は抑えられているみたいだ。
そして元旦の次の日、お兄ちゃんのバンドグループの会社が会見をして、当面の間の活動休止を発表した。会見には会社の社長とレミのお父さん、リーダーであるレミだけが上がり、お兄ちゃんの無事と活動休止理由だけを述べた。今まで公表しなかった理由は「誘拐されて所在地が分からず、何があるか分からないため」とした。大体合っているため、それ以上の追求は無し、そもそも有名グループとは言え、未成年を誘拐した事件なので批判の対象は犯人グループ9割、管理をしていなかった会社側1割くらいの感じになっている。
全てが無事と言うわけではない。お兄ちゃんや軽音部は代償を支払ったけど、皆のおかげで何もない日常へ戻ることができた。
「おはよう」
「・・・・おはよう」
「お、おはようございます」
教室につき、すでにいた絢と祈が挨拶してきたので私も挨拶する。席に着いて鞄を机の上に置く。
「私とは明けましておめでとうだけど・・・・お兄さん大丈夫?」
「・・・・大丈夫。あれくらいの怪我なら簡単に治して帰ってくる」
「何か凄い大怪我って言っていたけど・・・・」
「大丈夫」
「ひ、氷川さん・・・・」
「・・・そうね。これ以上は貴方にも心配をかけてしまうわ。ごめんなさい」
「ん、大丈夫」
「おはようございます」
「おはよう」
「お、おはようございます。恭輔さん、翔吾さん」
「うんしょ、お前大丈夫だったか」
「大丈夫」
「は〜い皆さーん!!席ついてください!!出席取りますよ」
教室に加藤先生が入ったので皆席に着く。そのまま出席を取り始めた。
「・・・・はい、皆さんいますね。ではこのまま講堂へ移動します。始業式を始めます」
「うへぇ・・・・また校長の長い話かよ」
「今年1発目ですから気合入ってそうですね」
出席を確認してそのまま始業式を行うため全員で講堂に向かう。ぞろぞろと動き、生徒からは面倒くさいの声が聞こえる。私としても校長先生の話を無駄に聞くより何かを食べている方がずっと有意義に感じる。
ゆっくりと団体で動いて、講堂につきいつもの決まった席に座る。そのまま全学年が講堂に入って教頭先生がマイクを持つ。
『えぇ、では始業式を始めます。まず初めに校長先生からのお話です』
『皆さん、あけましておめでとうございます。こうしてみなさんが無事にアカデミアに来てくれたことを嬉しく思います。さて、新年が始まって早々ですが先日、悲惨なニュースが入ってきました。皆さんも・・・・・・・』
「ああ、また校長の長い話が始まった・・・・」
「ってか誘拐されたって確か軽音部の・・・」
「そう言えば先月の中旬から見かけないって・・・・」
「確か意識を失う重傷だって・・・・」
ヒソヒソ話が聞こえてくる。みんな、お兄ちゃんのことを言っているだろう。お兄ちゃんは良い意味でも悪い意味でも目立ちすぎる。おまけにあんな事件があったんだ、どうしても噂が広がってしまう。
「・・・・・・・・・・・」
「さ、桜さん・・・僕から先生に言いましょうか?」
「・・・大丈夫、すぐに収まる」
『・・・・・・・以上で私のお話は終わります』
『ありがとうございました。続いて生徒指導部の柳先生からです』
『おはよう、早速だがそこら辺でヒソヒソ話をしていた奴!!人が喋っているときに他の話をするな!!!たるんでるぞ!!』
「・・・・・ねっ」
「・・・・度胸ありますね」
『ったく、早速だが君たちの冬休みの活動は・・・・・』
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
『えぇ、それでは始業式を終了します』
「やっと終わった〜」
「翔吾さん、あんまり声出すと・・・・」
『そこ!!たるんでるぞ!!』
「げっ!?」
「・・・・馬鹿だ」
始業式が終わり、腕を伸ばす翔吾。その姿を見た男性の先生が注意して翔吾が慌てて手を引っ込める。みんながゾロゾロと教室に戻っていく。私も教室に戻ろうとすると加藤先生に捕まった。
「すみません桜さん、校長室に行ってもらいますか?」
「?何で?」
「あなたのお兄さんの事でお話があるとのことで」
「ん、分かった」
加藤先生に言われたので仕方ない。私は教室から校長室へ向かう。講堂から職員室を通り、校長室の前に立つ。
「失礼します」
「どうぞ。突然すみません」
「ん、大丈夫」
校長先生に案内されて、ソファに座る。校長先生も対面のソファに座る。
「まずは遊輝さんが見つかってホッとしました。無事とは言えない状況なのは聞いていますが、命あってのものです」
「ん」
「さすがにこれだけの事をしましたから遊輝さんや軽音部の皆さんには暫く大人しくしてもらうように一言添えておきました。そこは桜さんもお願いします。マスコミに聞かれても答えないようにお願いします」
「分かってる」
「それと申し訳ありませんが遊輝さんの状況を教えてくれませんか?セキュリティからは復学しても暫く車椅子登校だと」
「・・・・お兄ちゃん、両足を銃で撃たれた。でも命に別状はない。ただ、治療に失敗したら足が切断って」
「なるほど・・・すみません、余計な事を聞きました」
「ん、大丈夫」
「それで桜さんは今どこに?」
「お姉ちゃんの家」
「お姉さん?」
「あっ、茜の家」
「栗城さんですか・・・分かりました。では遊輝君への連絡事項などは金曜日にまとめて渡しますので」
「ん、分かった」
「ではこれで大丈夫です」
校長先生との話を終えて、私はソファから立ち上がり、ドアの前に立つ。
「失礼しました」
しっかりと一礼をしてから校長室から出た。
「・・・・・ふぅ、何事も問題なく終われば宜しいですが、今回ばかりは肝を冷やしましたね。これで全て終わり・・・・なんでしょうか」
校長室から出て、自分の教室に戻る。扉を開くと、ホームルーム中で喋っている加藤先生がいた。
「あっ、桜さん、終わりましたか?」
「ん、大丈夫」
「では桜さんも宿題の提出お願いします」
「ん、ちょっと待って」
加藤先生に言われて自分の机に戻り、鞄の中を見る。冬休みの宿題は・・・・・
「・・・あった、はい」
「はい、確かに。これで全員分ね。じゃあ次に連絡事項よ。明日から授業が始まるからちゃんとお弁当とか持って来てね」
「・・・・お弁当」
「それじゃ今日は解散」
ホームルームが終わり、クラスのみんなが立ち上がる。「終わった」とか「どこ寄って帰る」など、色々な声が聞こえてくる。隣に座っている氷川さんも荷物をまとめて鞄を背負い立ち上がる。
「桜さん、今日はどうしますか?」
「・・・・お弁当、どうしよう」
「お弁当?」
「私・・・・・普段お兄ちゃんに任せっぱなし、料理は出来るけど・・・・」
「?食堂を使った事が無いのですか?」
「食堂?」
「多分桜さん、食堂に行った事ないですよ」
氷川さんと話していると恭輔と祈がやって来て私のフォローをしてくれた。食堂があるなんて知らなかった。
「さ、桜さん、普段はお弁当ですし、遊輝さんからお金を貰ってないので」
「あっ・・・ごめんなさい」
「ん、でも明日からお弁当どうしよう」
「アリアさんは?料理は出来ますよ?」
「お姉ちゃん、暫く忙しくなるからそんな事してる余裕ないと思う。もうすぐ関西コレクションって言っていたし」
「あっ・・・・私もすみれさんの所に行かないと。すみません、先抜けます」
お兄ちゃんの事件で忘れていたけど、お姉ちゃん達は3月に大きなイベントがあって、今そのイベントに向けて忙しいみたい。祈も思い出したみたい。
「弱りましたね・・・・・僕もお弁当は一人分が限度ですし。桜さん今お金は?」
「ない。お兄ちゃんから欲しい時に貰っていたから」
「う〜ん・・・・・でもアリアさんぐらいしかお金を貸してもらえる相手はいないでしょ。そのくらいのお金なら後で師匠も払いますでしょうし」
「ん、お姉ちゃんに相談する」
「桜さん、この後は?」
「職員室に行ってお兄ちゃんの手紙をもらって来る。お兄ちゃんの所に行って一応、渡しておく」
「じゃあ僕も行きますよ。一人より安全でしょ」
「助かる」
結局、恭輔と一緒に職員室に向かうことにした。職員室に入り、お兄ちゃんの担任の先生から書類を受け取り、病院へと向かう。
「アカデミアも賑やか」
「確かにそうですね。今日からまた普通の生活が始まりますから」
「・・・・・そう、普通の生活が戻る」
「おい、ちょっと待てもらおうか」
職員室から出てしばらく歩いたところで後ろから男の声が聞こえて来た。そっちの方に振り向くと男子生徒一人がこっちを見ていた。
「・・・・・普通の生活が戻らない」
「ア、アハハ・・・・(汗)」
「お前だろ?あのSECRETのギターの妹ってやつ」
「・・・・そうだけど」
「お前の兄ちゃんちょっと調子乗っているんじゃないか?ニュースに乗ってちょっとした怪我で入院だなんて貧相な身体をしてな」
「ちょ、ちょっと・・・・」
「良い恭輔、相手にするだけ無駄」
「そうは問屋が卸さないんだよな〜」
かかとを返して相手を無視、お兄ちゃんの病院に向かおうとしたけど男子生徒はこっちの右肩を掴む。
「・・・・・何、何がしたいの?」
「お前を連れてちょっと兄ちゃんの所に挨拶に行こうかと、たんまり金があるんだろ?」
「別に良いけどお兄ちゃんには会えないよ。面会謝絶だから」
「ああ?だったら何で手紙やプリントを渡しに行くんだよ。本当は会えるんだろ?」
「無駄、手紙を関係者に渡すだけ」
「んな連れないこと言わねぇでさ。最近小遣いがなくてピンチなんだよ」
「アルバイトでもすればいいじゃない」
「桜さん、中等部はアルバイトしちゃダメですよ・・・・・」
「私の周りはやってる」
「つべこべ言わずに連れて行けよ!!」
「うるさい。追い返す」
いい加減鬱陶しいので私は肩にかけられた手を振り払い、デュエルディスクを起動させる。
「へへ・・・・ならやってやるよ」
男もデュエルディスクを起動して対峙する。
「デュエル‼︎」 「デュエル‼︎」
桜 LP 4000 男子生徒 LP 4000
「先行は私、魔法カード、増援。デッキからLv4以下の戦士属モンスターを手札に加える。閃刀姫ーレイを加える。さらに魔法カード、テラ・フォーミング。デッキからフィールド魔法、魔鐘洞を手札に加えて、魔法カード、成金ゴブリン。デッキから1枚ドローして、相手はライフを1000ポイント回復する」
男子生徒 LP 4000→5000
「魔法カード、閃刀起動ーエンゲージ。デッキから『閃刀』カードを加え、墓地に魔法カードが3枚以上ある場合、1枚ドローする。閃刀機関ーマルチロールを加えて1枚ドロー」
桜 手札 4枚→6枚
「永続魔法、閃刀機関マルチロールを発動。閃刀姫ーレイを召喚」
閃刀姫ーレイ 攻1500
「現れて、未来へ続くサーキット」
私のフィールドに現れた閃刀姫ーレイが上空に現れたリンクマーカーの中に飛び込む。
「アローヘッド確認、召喚条件は炎属性以外の『閃刀姫』モンスター1体。私は閃刀姫ーレイをリンクマーカーにセット、フォームチェンジ、リンク召喚、閃刀姫ーカガリ」
閃刀姫ーカガリ 攻1500 ↖︎
「閃刀姫ーカガリの効果。特殊召喚成功時、墓地から『閃刀』魔法カードを手札に戻す。閃刀機関ーエンゲージを加えて、発動。閃刀機ーウィドアンカーを手札に加えて、1枚ドロー」
桜 手札 4枚→6枚
「さらに閃刀姫ーカガリをリンクマーカーににセット。フォームチェンジ、閃刀姫ーシズク」
閃刀姫ーシズク 攻1500 ↗︎
「カードを3枚伏せてエンドフェイズ時、閃刀機関ーマルチロールの効果。このターン、発動した『閃刀』魔法カードの数だけ、墓地の閃刀魔法カードをセットする。閃刀起動ーエンゲージをセット。閃刀姫ーシズクの効果、特殊召喚したターンのエンドフェイズ、墓地に存在しない『閃刀』魔法カードを手札に加える。閃刀術式ージャミングウェーブを手札に加えて終了」
桜 手札 4枚 LP 4000 墓地魔法2
▲△▲▲▲ ー
ーーーーー
○ ー
ーーーーー
ーーーーー ー
男子生徒 手札 5枚 LP 5000
「俺のターン、ドロー!」
男子生徒 手札 6枚
「フィールド魔法、Kozmoーエメラルドポリスを発動!効果!手札の『Kozmo』モンスターを任意の枚数戻して、戻した枚数分、ドローする!手札のフォルミートとランドウォーカーを戻して2枚ドロー!Kozmoーダーク・ローズを召喚!」
Kozmoーダーク・ローズ 攻1900→1700
「バトルフェイズ!Kozmoーダーク・ローズで閃刀姫ーシズクを攻撃!」
Kozmoーダークローズ 攻1700
閃刀姫ーシズク 攻1500
桜 LP 4000→3800
「墓地の閃刀姫ーレイの効果。自分フィールドの『閃刀姫』リンクモンスターがフィールドから離れた場合、墓地から特殊召喚する」
「関係ねぇ!ダークローズの効果!このカードをゲームから除外して、手札からLv5以上の『Kozmo』モンスターを特殊召喚する!Kozmoーダークシミターを特殊召喚!」
Kozmoーダークシミター 攻3000
Kozmoーダークローズがゲームから除外され、巨大戦艦をイメージするKozmoーダークシミターがフィールドに特殊召喚される。
「ダークシミターの効果!特殊召喚に成功した場合、相手フィールドのモンスター1体を破壊する!」
「閃刀姫ーレイの効果。このカードをリリースしてEXデッキから『閃刀姫』リンクモンスターを特殊召喚する。フォームチェンジ、閃刀姫ーカイナ」
閃刀姫ーカイナ 攻1500 ↘︎
「閃刀姫ーカイナの効果発動。特殊召喚成功時、相手フィールドのモンスター1体を対象にとり、次の相手ターン終了時まで攻撃できない。対象はKozmoーダークシミター」
閃刀姫ーレイをリリースして特殊召喚した閃刀姫ーカイナは自身の銃をKozmoーダークシミターに照準を合わせる。銃を放ち、そこから網が放たれて、Kozmoーダークシミターの動きをとらえる。
「チッ!メインフェイズ2、カードを1枚伏せてターンエンド!」
桜 手札 4枚 LP 4000 墓地魔法2
▲△▲▲▲ ー
ーーーーー
○ ー
ーーー○ー
ーー▲ーー ▽
男子生徒 手札 2枚 LP 5000
「私のターン、ドロー」
桜 手札 5枚
「閃刀機関ーマルチロールの効果。このカード以外の自分フィールドのカード1枚を墓地に送り、このターン、私が発動する魔法カードに対して相手は魔法・罠・モンスター効果を発動できない。対象はこの伏せカード」
閃刀機関ーマルチロールの効果で私はいらない伏せカード1枚を墓地に送る。
「リバースカードオープン。閃刀起動ーエンゲージ、デッキから閃刀機ーホーネットビットを加えて1枚ドロー」
桜 手札 6枚→7枚
「閃刀機関ーマルチロールの効果でセットしたカードはフィールドから離れた場合、ゲームから除外される。リバースカードオープン、速攻魔法、閃刀機ーウィドアンカー。Kozmoーダークシミターを対象にとり、そのモンスターの効果を無効、墓地に魔法カードが3枚以上ある場合、そのモンスターのコントロールをエンドフェイズまで奪う」
「チッ!ならチェーン『ビー!ビー!』なっ!?」
「閃刀機関ーマルチロールの効果でこのターン、相手は私の魔法カードに対してカード効果を発動できない」
「!?」
「それにチェーンで手札から速攻魔法、閃刀機ーホーネットビットを発動。閃刀姫トークンを、墓地に魔法カードが3枚以上あるため攻撃力1500にして特殊召喚」
閃刀姫トークン 攻1500
「Kozmoーダークシミターのコントロールを奪う」
閃刀起ーウィドアンカーを発動、ダークシミターに向かって発射され、ダークシミターがアンカーにぐるぐる巻きとなり、私の場に引きずられた。
「なっ・・・・」
「バトル、全てのモンスターでダイレクトアタック」
男子生徒 LP 5000→0
WIN 桜 LOS 男子生徒
「うっ・・・・ぐっ・・・・」
「終わった、さっさと消えて」
「くそ!!覚えてろ!!」
雑魚の悪役みたいな台詞を吐いて男子生徒は走って逃げていく。ものすごく格好悪い。
「全く・・・・無駄に労力を使った」
「何でしたのかね、あれ・・・・」
「もういい、さっさと行こう。お兄ちゃんにプリント渡さないと」
「そうですね」
もうあいつの事は忘れて病院に行くと恭輔に言い、玄関を目指す。
「(・・・・もう私に付き纏う奴はいなくなった。これからは普通の日常が送れる)」
桜「・・・・なんなったのあいつ」
恭輔「カツアゲでしょ」
桜「親にすねかじればいいのに」
恭輔「変なプライドが邪魔しているんじゃないですか?」
桜「知らない」
恭輔「次回、『リハビリ』。よろしくお願いします」