遊戯王 振り子使いの少年と連鎖使いの少女   作:DICHI

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ガルパのイベント走ってました。
明日までですが明日は仕事なので実質今日までです。

カエルスプライト楽しすぎる。ただ使われたら嫌われるデッキだけど。

実はこっそり短編を書いていました。
頑張ればGW中に投稿できるかもしれません。短編はこの小説と全く関係ない、それどころか遊戯王とは関係ない官能小説です。


第72話 お人形生活 遊輝編

遊輝 side

 

 

「ここが私の家よ。結構広いでしょ?」

 

「・・・まぁ、そうだな」

 

半ば強制的に連れてこられたリーの家は広かった。場所は上海でも一等地の上、マンション上層階、しかも角部屋ときた。俺と桜が住んでいるトップスのあの家と比べたら流石に小さいが、それでも一人で暮らしていると考えるなら結構な豪邸だ。

 

「ってかカーテンしていないけど大丈夫か?俺がここにいることがバレたら色々とまずいだろ?」

 

「何のためにお金をかけてこのマンションを買ったと思っているの?ここのセキュリティは最強よ。この窓ガラスはマジックガラス加工をしているわ。こっちからはこの素晴らしい景色を独り占めできるけど向こうからは曇ったガラスにしか見えないわ。でも今日はもうカーテンを閉めましょう」

 

リーがそう言いながらスマフォのスイッチを押す。カーテンは自動で動いて窓ガラスはカーテンに閉じられる。マジックガラス加工・・・・確か一方からは普通のガラスだけど反対側から見れば中が見えない技術だったな。

 

「さ、まずはご飯を食べましょう。今日は貴方がここに来るから豪華なご馳走をお願いしているわ」

 

「・・・・・・」

 

車椅子のハンドルをリーが持ち、大きなリビングの入り口付近から移動、4人掛けのテーブルに移る。そこには手作りの料理が数種類並べられていた。

 

「・・・・まさかシェフを雇っているのか?」

 

「そんなことないでしょ。今日は家政婦に頼んだだけだわ。普段はちょっとした物を作って一人で済ましているけど流石お客をもてなすんだから今日くらいは見栄を張るわ」

 

リーは車椅子をテーブルに停めてブレーキをかけ、壁側にあるワインセラーからボトルのワインを1本とワイングラスを2つ取り出して俺と反対側の椅子に座る。

 

「この白ワイン美味しいわよ。キリッとした辛さがあるけど後味はスッキリしているわ。今日はこれを一緒に飲みましょう」

 

リーはボトルのコルクを抜き、2つのワイングラスに白ワインを注いでいく。一つは自分の手元に、一つは俺の手元に置く。

 

「・・・・俺、酒は苦手なんだけど。ってかそれ以前に飲めない年齢だが」

 

「ここは私の家。つまり王様は私よ。王様のもてなしを受けないの?」

 

「・・・・・・・・」

 

「それに、その言い草だと過去に飲んだことがあるみたいね。それじゃ、乾杯」

 

何を言っても通じない。俺はワイングラスを持ち、リーのワイングラスとコツンと音を鳴らす。リーは豪快にワインを飲んでいく。俺はグラスを傾けて少しだけ飲む。ワインの味はよく分からないが確かに辛口で後味はスッキリしている。

 

「遠慮せずに料理を食べて。身体を治すのに栄養のあるものは大事よ」

 

「・・・・にしても量が多すぎだろ」

 

「中国は大皿料理でお客にもてなすときは必ず食べられないくらいの料理を出すのよ。心配しなくても残った料理は明日以降のおかずや部下に配るわ。それ以前に貴方はもう少し食べるべきよ。明らかに痩せ型ね」

 

「大きなお世話だ」

 

なんだかんだ悪態をつきながらリーとお喋りして料理を食べていく。当然、全部を食べることは出来ないため、残すことになるが・・・・・

夕食を食べ終えた後はすぐにシャワーを浴びてリーから借りたパジャマを着る。リーがシャワーを浴びている間、俺はリビングにあるテレビをつけてニュースを見る。中国語で話しているので当然内容は頭に入ってこない。

 

「(・・・・あいつら、今頃どうしているかな?)」

 

ニュースを見ながら俺は日本に残っているレミ達のことを考える。あいつらに迷惑をかけないようこっそりとネオドミノシティを脱出しようとしていたが、そんな考えはお見通しと言わんばかりに俺に手紙を渡してくれた。みんな今の騒動のことを気にせず楽しんで来いと書いていた。

 

「(・・・・そういえばレミの様子がおかしいってアリアが言っていたな)」

 

ネオドミノシティを離れる直前、アリアがそんなことを言っていた。その前の様子は何ともない感じだったけど・・・・・

 

「(・・・・ダイヤがこんなこと言っていたな。『フェザーが妙なことを聞いてきた』だっけ・・・)」

 

「お待たせ。テレビなんかつけても意味ないでしょ」

 

「・・・・暇つぶしにはちょうどいいだろ」

 

色々頭の中で巡らせているとリーがシャワーを終えて俺の隣に立つ。髪をバスタオルで拭いてテレビを見ている。

 

「・・・・ふ〜ん、どうやら貴方のことを報道している見たいよ。日本から忽然といなくなって騒動になっているみたいだわ」

 

「・・・・・・・・」

 

「まさかその張本人がここにいるとは誰も思わないでしょうね〜」

 

リーはそう言いながら俺の頭を優しく撫でる。ここに来る前から思ったがリーはやたらと俺の体を触ってくる。アリアや桜も撫でられるが俺はその二人以上に撫でられる。

 

「それじゃ今日はもう寝ましょうね、お人形ちゃん」

 

リーはリモコンを持ちテレビの電源を落とす。俺の車椅子のハンドルを手にしてリビングから離れる。廊下を抜け寝室に案内される。キングサイズのベッドに豪華なベッドカーテンが取り付けられ、まさに王様が寝るベッドだ。車椅子をベッドの横につけ、掛け布団を半分捲る。リーの介助で車椅子からベッドへ移動、足を乗せられた後は腕と上半身、わずかばかりに動く下半身の力をうまいこと利用して端の方から中央付近、枕元まで移動する。リーは車椅子をベッドから離れたところまで動かし、俺のあとを追うようにベッドに入った。そして、掛け布団をかけてそのまま俺をぎゅっと抱きしめた。

 

「ふふふ・・・・捕まえたわ。こうやって抱きしめて寝ると抱き心地が本当に良いわね」

 

「・・・・うるせぇ」

 

「貴方、今までに抱き心地がいいって何回も言われてない?本当にお人形を抱いているみたいだわ。男性なのに髪の毛は腰まで長く女性が羨むほどサラサラ。それ以外の体毛は一切無い・・・・・女性として完璧な身体付きねえ」

 

「人のコンプレックスをズバズバ言うな。結構気にしているんだぞ」

 

「でも貴方はそうせざるを得ないんでしょ?なんてったってわざわざ女装してまでモデル活動をしているんだから」

 

「・・・・・・・・・・」

 

「ふふ・・・・遂に顔が歪んだわ。動揺しているわね」

 

とんでもない爆弾発言をして俺は驚いた顔をしてしまった。こいつ、本当に調べるところまで調べてやがる。

 

「簡単だったわ。貴方と同じ発音の名前と顔つき、身体つきを調査したら一発よ。あんな才能があるなんて貴方はマルチな才能の持ち主ね」

 

「・・・・・嬉しくねえよ」

 

「顔を背けても意味がないわよ。こっち向きなさい」

 

「ちょっ!?どこ触ってやがる!?』

 

プイッと顔を背けたがリー下半身の股間、俺の息子の部分をギュッと握られて慌てて顔を向ける。

 

「本当に男なのか確かめているのよ。確かに息子がいるわね。生物学上男だわ」

 

「うるせえ!!」

 

「どうせ人形になるんだからこのまま夜のお世話もしてあげましょうか?」

 

「大きなお世話だ!!」

 

俺の下半身を弄りながらリーは不敵な笑みを浮かべる。くそ、脚が動いたら蹴り上げて逃げていたのに。リーは反対の手を俺の顔に近づけてゆっくりと撫でる。

 

「色々調べていると分かることはいっぱいあるわ。人の性格なんかも把握できる。貴方は何でも一人で解決する癖があるわよね。あまり人に頼らずほぼほぼ一人で解決してしまうでしょ?」

 

「・・・・・まあ、一人で解決するのは否定出来ないな」

 

この前の桜の件もそうだし、アリアの件も大概一人でなんとかしようと思っていた。結局、みんなにバレて仲間と一緒に解決することがほとんどだ。思えば一人で解決しようとするのは前世からだったな。

 

「でもそう言う人って心の底では結構甘えんぼうだったりするの」

 

「・・・・俺、一応一人っ子だぞ。しかも小さい頃から家事を手伝っていたし、それに今は一人暮らしで桜を養うこともしているんだぞ。甘えて欲しいなんて思ってないぞ」

 

「そこよ。貴方、今まで人に褒められたり甘えたりしたことないんじゃ無い?その行動も誰かに褒められたかったからじゃない」

 

「・・・褒められたかった、か・・・・・・」

 

リーに言われて俺は考えてしまう。前世で一人っ子で親がそこそこお金があったから、割と不自由ない生活を送れていた。段々と薄れていく前世の記憶、今では両親の名前や顔ですら忘れてしまっているが色々とさせて貰ったから両親には感謝はしている。そんな俺が唯一、不満だったのは両親と接する機会があまりにも無さすぎた。両親は共働きで朝から晩まで働く仕事人間。休日も常に電話が鳴り、パソコンと向き合っていた。母親があまり家事が得意じゃなくゴミが貯まる、料理が不味いなどもあって気づいたら俺は家の家事を全てやっていた。小学生になった頃には機械類の使い方も覚えて、家の家事全てをやっていた。最初はただ義務的なことだと思っていた。だけど・・・・

 

「(褒められたかったから、か・・・・・俺もアリアみたいに誰かに依存したかったのかな)」

 

今考えたら俺が剣道で活躍してもテストで良い点とってもそこに両親は居なかった。周りから褒められたことがあっても何故か嬉しい感情はあまり湧かなかったが、今なら分かる気がする。

 

「今までは何でも自分で解決していたけど今は誰かに頼らないといけない。むしろ一人で何か出来たら褒められる立場なのよ」

 

「・・・・・・・」

 

「貴方はね、何も出来ないお人形なのよ。明日からは何をするのも私に頼らないといけない、甘えないといけないのよ。そして何か出来るたびに褒められるの。そうなるとどうなるかしら?」

 

「・・・・・わかんねえ」

 

「フフ・・・・貴方は誰かに依存しないと生活出来ないお人形になるのよ。もう自分では何も出来ない、本当のお人形よ」

 

そう言ってリーは俺の顔を自分自身の胸に押し付けた。アキさんほどでは無いけどそこそこ大きな胸が俺を包み込む。

 

「明日から貴方は生まれ変わるのよ。何もするのにも人に頼らないと生きていけない、甘えん坊の女の子になるの」

 

「・・・・せめて男のままにして欲しいんだが」

 

「ほら、そういう所。もう何も考えなくていいのよ。私に全てを委ねなさい」

 

「・・・・じゃあいいか。胸から離れたい。息苦しくて仕方ない」

 

「素直じゃ無いわね。ここは素直になっているのに」

 

「ちょっ!?俺の下半身を触るな!!」

 

「フフフ・・・・でも、貴方はこうやって誰かに抱きつかれないと寝れないんでしょ?聞いたわよ。その首輪から貴方のこと、一人で寝れないんでしょ?」

 

「・・・・・・・・」

 

俺は今、精神的に可笑しくなっていて、寝る時悪夢を見る。ただ、その悪夢を見ない唯一の方法が誰かと一緒に寝ることだった。ネオドミノシティを旅立ち、この上海の地に降り立った初めての夜、アリアと桜と一緒に寝た俺は全くうなされることはなかった。悪夢になりかけたところで何か分からない暖かい光に包まれて悪夢を見ずに済んでいる。

試しに一人で昼寝をした時があったが、その時もうなされて桜が俺の手を握ると普通に寝るようになったと言ってきた。

 

「・・・・でも流石に今のままじゃ息苦しくて仕方ないんだけど」

 

「素直になりなさいって言ってるでしょ。今日はこのまま寝なさい」

 

「・・・・・分かったよ」

 

お酒を飲んだ影響か、酔いが回って頭が働かなくなっている俺は素直に寝ることにした。その時、リーに頭を撫でられて何故かリラックスしてしまった。

 

 

〜〜(翌日)〜〜

 

 

翌朝、目を覚めて朝の身支度を終えた俺はリーから渡された服に着替えた後、変装用のマスクとサングラスとニット帽を渡された。

 

「何で家にいてこんな格好をするんだよ」

 

「午後から出かけるからよ」

 

「でも午前中からやる事じゃないだろ」

 

「関係あるわ。もうすぐ人が来るのよ」

 

「何だよ、客か?だったら俺をこの部屋に閉じ込めておけば良いじゃねぇか」

 

「客じゃない『ピンポ〜ン』きたわ。貴方も来なさい」

 

リーが俺の車椅子のハンドルを手に取り玄関まで連れていかれる。扉を開けるとリーの直属の部下一人と紺色のジーパン、黒色のTシャツを着た白髭、白髪の年配の男がいた。男の手には大きなスーツケースがあり、大量の荷物を持ってここにやってきたことが分かる。

 

「いらっしゃい」

 

「好久不见《久しぶりです》」

 

「・・・・誰だ?医者か?」

 

「半分正解ね。だけど、今日は私が施術してもらうのよ」

 

「さっきから話が全く掴めないんだが」

 

俺は話についていくことが出来ず、リーの部下にハンドルを握られ、玄関に程近い部屋に入れられる。そこには医療用のベッドが中央に置いておる簡素な部屋だった。老人はスーツケースを横にして開ける。リーは上着を脱ぎ、服を投げ捨てた。その姿を見て俺は言葉を失った。

 

「・・・・・・・・・・」

 

「フフフ、凄いでしょ?私の自慢よ」

 

リーの背中、そこには竜が描かれていた。黒色で縁取りされ、緑色で鱗が塗られ魚で言うヒレの部分は赤く靡いていた。天高く登る龍、その圧倒的な迫力に俺は圧倒された。

 

「・・・・刺青、てことはそこの老人は」

 

「そう、彫り師。中国一の腕前で私が若い頃からお世話になっているわ。私がこの世界に入ってもう30年近くね」

 

「・・・・・・・」

 

「貴方の右腕にあるシークレットシグナーの紋章とは比べ物にならないでしょ」

 

「・・・ああ。生で見たのは初めてだが、本物はこんなに迫力があるんだな」

 

「刺青はね、ヨーロッパ圏のタトゥーとは訳が違うの。あっちはただただデザイン性で掘っているけど、刺青は掘られた人間の背中に魂を刻むのよ」

 

「魂・・・・」

 

そういってリーはベッドの上にうつ伏せになる。彫り師が皿に黒色のインクを垂らし、リーの真横に接近して背中にニードルみたいなものをあてる。

 

「ん・・・・刺青はその人の生き様を表すのよ。自分の生い立ちや将来の目標、そして生き様をね」

 

「生き様・・・」

 

「私の刺繍、綺麗で圧倒的だったでしょ?その通り、私はこの裏世界で全てを圧倒したわ。苦労した事もあったけど、それすらも己の力と脳をフル回転してこの地位に昇り詰めた。この竜はそんな私の生い立ちから生き様を示しているの。背中の下の方、少し小さい蛇が彫っているでしょ?」

 

「・・・ああ」

 

「これは私がこの世界に入った時に掘った蛇よ。組織の人間になって蛇を掘る時、この彫り師に出世払いで蛇を小さくしてもらったのよ。私が掘るのは竜と決めていたから」

 

「・・・・・・・」

 

彫り師が黙々とリーの背中の刺青を入れ直している間、リーは自分自身の背中の刺青のことをずっと語っていた。それだけ背中の刺青に誇りとプライドがあり、自分自身と鏡合わせなんだと思う。

 

「ウン・・・・你,能力掉下来了?稍微地痛《貴方、腕落ちた?少し痛いわよ》」

 

「我也是年龄。现在找到技术高的家伙,正教导《私ももう歳ですよ。今弟子を見つけて修行中です》」

 

「的确《なるほど》・・・・本当はね、貴方達3人にも刺青を彫って貰わないと困るのよ」

 

「・・・・・・」

 

「私の人形になったとは言え、組織に加盟したんだからその掟は守ってもらわないといけない。でも、あなた達3人、特に貴方は立場上ダメなんでしょ?」

 

「・・・・そんな事もう気にしていない。俺は確かにバンドのメンバーだが、こんな事になったんだ。ほぼほぼ、脱退したに等しい状態だ」

 

「フフ・・・じゃあいつか彫っても良いわけね?」

 

「・・・流石に魂を入れるとなると話が変わってくる。そこまで重たい話になると覚悟を決めないといけない」

 

「あなたならそう言って逃げると思ったわ。まぁ良いわ。お人形の綺麗な身体に傷をつけたくないという私の気持ちは本当だから」

 

「それに」

 

「それに?」

 

「刺青彫ったら温泉入れねぇし」

 

「・・・・あなた、仮にもシークレットシグナーで右腕に紋章があるのでしょ?そもそも温泉に入れないでしょ?」

 

「刺青なんか彫ったら温泉地の宿泊施設にも行けねぇじゃねぇか」

 

「どうでも良いじゃない」

 

「结束了《終わりました》」

 

「谢谢。ハンファ、请迎接《ありがとう。ハンファ、お出迎えお願い》」

 

「是」

 

どうやら終わったらしい。彫り師が道具を片付け始める。リーはベッドから立ち上がり、白いYシャツを着る。彫り師はリーの部下と一緒にこの家から退出。リーは俺の車椅子のハンドルを持ち、玄関にあるサングラスと麦わら帽子を身につける。

 

「それじゃ、出掛けましょうか。今日は美味しいものを食べて可愛い服を買いに行くわよ、優姫ちゃん」

 

「・・・・その言い方、こんな所で聞く事になるなんて思わなかったなぁ」

 

玄関を出て、そのまま近くにあるエレベーターから直接地下の駐車場に直行、様々な車が並ぶ中、一際目立つ赤い高級車に横に並び、リーは鍵のボタンを押す。そのまま助手席の扉が開き、俺はリーの介助で助手席に乗せられる。車椅子は折り畳み、後部座席に乗せられた。

 

「お待たせ、まずはショッピングモールに行くわよ」

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

車に揺られること30分、大きなショッピングモールに着いた。休日なのか多くの人で溢れ返っている。リーはそんな人混みをかき分けるように俺の車椅子を動かし、女性服のブランド店に入った。これだけ混み合っているのに、このブランド店の中はそこまで人がいない。その中にいる人たちも金持ちの雰囲気を醸し出している。一人の店員がこちらに気づき、早足で駆け寄った。

 

「欢迎光临《いらっしゃいませ》」

 

「想要适合这个女儿的衣服10位分《この娘に似合う服を10着くらい欲しいわ》」

 

「明白了。请稍等《分かりました。少々お待ちください》」

 

相変わらず分からない中国語で会話をされ、俺一人だけ置いてけぼりされている気分だ。店員は外にいたもう一人の店員と何か話し、一緒に中に入っていた。

 

「・・・何話したんだ?」

 

「貴方に似合う服を探してちょうだいって頼んだのよ。それなりの数を頼んだからしばらく時間かかってしまうわ。その間にこっちでも服を選びましょう。ほら、こんな服とか似合うんじゃない?」

 

そう言ってリーは目の前にある純白の襟付きワンピースを手に取り俺に見せつけて来た。半袖で袖の縁にはフリルがあり、襟からは金色に見える少し長いネックレスみたいなものが取り付けられていた。

 

「・・・・因みにだが、俺の意見は聞き入れてくれるのか?」

 

「聞き入れないわよ。昨日言ったでしょ?あなたは何も考えずに全てを受け入れれば良いのよ。ひたすら私に甘えたら良いわ。早速試着してみましょう」

 

「(じゃあ俺に聞く意味ないじゃないか・・・・・)」

 

リーは手にしたワンピースと近くにあったサンダルを手にして奥にある試着室に俺と一緒に向かう。一番奥の試着室は周りの試着室より一回り大きく車椅子でもそのまま入ることができた。

 

「じゃあ、今の服を脱いでこのワンピースに着替えましょうね優姫ちゃん」

 

「・・・・・わかったよ」

 

はあ〜とため息を一つ吐いて俺はまず上半身のシャツのボタンを外してシャツを脱ぐ。次にズボンに取り付けたベルトを外し、ズボンのボタンを外す。そのままズボンに手をかけ、身体を少し左側に体重をかけて右側をわずかに浮かし、ズボンをずらす。次に反対側に体重を移し、左側を浮かして反対側もずらす。こうすることで少しずつズボンを脱いでいき、膝近くまで来たところでリーがズボンを下ろし、俺の片足を上に上げて、ズボンを脱がした。

次にリーはワンピースを手に取り、背中側のチャックを開けて、先ほどとは逆に片足ずつワンピースを入れて、膝まで上げる。もう片足にも入れて、また片側の部分を浮かして少しずつワンピースを着ていく。お尻の部分まで着ることが出来たらあとは服を上げて両手を袖に通し、リーが背中のチャックを閉じた。リーは俺のニット帽とサングラス、マスクを全て外し、試着室にある鏡に俺を向ける。いかにも清楚なお嬢様な見た目になり、俺は両手を足の間に置き、モジモジして顔を赤くした。リーはそんな俺の頭を優しく撫でる。

 

「偉い偉い、一人で着替えることが出来るなんて」

 

「小学生じゃないんだぞ」

 

「フフフ・・・・本当、お似合いね。清楚なお嬢様のようだわ。首輪は奴隷の証で囚われの身、右腕の紋章は邪魔ね」

 

「うるせえ」

 

「ついでだからこのまま少し髪も整えて、伊達メガネをかけましょうか。そうすればマスクとかサングラスをしないで貴方の美しい姿が全ての人に見てもらえるわ」

 

「・・・・ここ服屋だろ?良いのかそんなことして」

 

「ここは私の下部組織が運営している店だわ。多少のことなら見逃してもらえるし、なんだったら特価で買うこともできるわ」

 

「・・・・・裏社会のトップに君臨する特典は凄いんだな」

 

そう思いながらリーは俺の髪を触りブラシで髪を整え始める。

 

「優姫ちゃんは見た目が優雅なお嬢様だからあえて何もアレンジせずに、このまま髪をストレートにした方が似合うわね。腰まで髪があるんだし、あとはこの辺にコサージュとかつければ良いわ。後でヘアアクセサリーも見に行きましょうね」

 

「・・・はいはい」

 

「ほら、少しファンデーションつけるわよ。そうしてこの伊達メガネをかけたら・・・フフフ、見た目から生まれ変わったみたいね」

 

簡単に化粧もされ、渡された伊達メガネをかけて鏡を見る。そこにいたのは少し恥じらった姿をした清楚な女の子だった。よくすみれさんやアリアに捕まって女装させられるけど、リーもリーでこういうことは得意なんだな。

 

「これなら街中を歩いても貴方だとバレないわよ」

 

「・・・恥ずかしくて嫌なんだけど」

 

「そんな事ないわ、優姫ちゃんは可愛いわ。きっとみんなから羨ましがれるわ。さあいくわよ。そろそろ店員が貴方に似合う服を持ってきてくれるわ」

 

試着室のカーテンを開けてリーは俺の車椅子を押し出す。中にいたお客さんらしき人はチラッとこっちを見た後、すぐに二度見をした。少し驚いた表情をした。一人の店員が何着か服を持ってきて座っている俺に服を合わせ確認している。

 

「这样的衣服觉得这个女性适合《この女性はこのような服がお似合いだと思います》」

 

「哼・・・・、不爱好这样的轻便的衣服。选更高雅的衣服《ふ〜ん・・・こんなスポーティな服は優姫ちゃんには似合わないわ。もっとお淑やかな服を選んで頂戴》」

 

「这样的衣服怎么样?《でしたらこういう服はどうでしょうか?》」

 

「啊,好。那么买那个。也给其他这种的系统《あら、良いじゃない。購入するわ。他の服も似たような系統を頂戴》

 

「明白了《かしこまりました》」

 

「(・・・・中国語全く分かんねぇがなんとなくこの二人が話しているのは想像できる)」

 

間違いなく俺を着せ替え人形としてしか見ていない。さっきから服を当てられては変えられることしかしていない。結局一時間近く待たされてリーは10着以上の服を購入、クレジットカードで支払い、一部の品物を除き、買ったものは今日リーの家に届くように手続きされた。

 

「じゃあ優姫ちゃん。次はヘアアクセサリーを見に行くわ」

 

グゥ〜

 

「あら、随分可愛い音が鳴るじゃ無い」

 

「・・・・死にたい」

 

お店を出てすぐ、お腹が鳴ってしまった。昨日そこそこ食べたのに朝飯を抜いてしまったことでお腹は正直だった。リーにも聞かれてしまい、顔を赤くしてしまう。

 

「先にお昼にする?お腹空いた?何が食べたい?」

 

「・・・・ご飯食べたい」

 

「ふふ、そうやって素直に答えたら良いのよ。良いわ。レストラン街に行きましょ」

 

また頭をリーに撫でられる。その度に何故か心が安らいでいく。結局服屋を出て、レストラン街に連れられてきた。その中にあったラーメン屋に入っていく。注文は全てリーに任せ、割と早めに来たラーメンが運ばれてくる。箸を手に取り食べようとした所でリーが俺の分のラーメンを取り上げてしまった。

 

「フフフ・・・このままじゃ食べにくいでしょ?はい。器に入れてあげるわ」

 

「・・・・子供じゃないぞ」

 

「ほら、零したりしたらダメだから紙エプロン付けましょうね」

 

リーは俺の分のラーメンを小皿に少し移し、その後店員から渡された紙エプロンを俺に付けた。そのまま俺の横に座り、小皿に移したラーメンの麺を箸で持ち上げて俺の口元まで持っていく。

 

「はい、食べましょうね」

 

「・・・・・・・」

 

ジト目で俺はリーを見たが何をしてもこちらの言い分は通らない、素直に口を開ける。リーは俺の口に麺を入れ、それを俺は噛み締める。

 

「どう?」

 

「・・・・美味しいのが腹立つ」

 

「フフフ、偉い偉い」

 

リーはまた俺の頭を撫でる。その後は普通にご飯を食べたが、仕切りにリーは俺の頭を撫でてくる。将来禿げないか心配になってきた。

 

「(・・・・でも、褒めてもらうってこんな感覚なんだな・・・)」

 

今までに感じたことのない感覚。前世で大体15〜16年、この世界に来て3年くらい、こんなにこそばしいけど嬉しい感覚は初めてだった。

 

「(・・・・・・親の温かさってこんな感覚だったんだな)」

 

「ふぅ〜、ご馳走様。優姫ちゃんは食べ終えた?」

 

「・・・・うん」

 

「じゃあ買い物の続きしましょうか」

 

ラーメンを食べ終えてリーがテーブルで会計を済ませる。そのままお店を出てショッピングモール内の散策を再開する。車椅子に座っている俺は今、リーから与えられた事しか出来ない。寧ろ、させて貰えない。

 

「(・・・・何でだろうなぁ。何でこんなにも心を許しているんだろうなぁ・・・ん?)」

 

そう思ってふと顔を向け、ある物が目に入った。

 

「(・・・・・・・クマのぬいぐるみ)」

 

「どうしたの優姫ちゃん?・・・ああ、あのぬいぐるみね」

 

リーは俺の振り向いた方向にあるものを見て、車椅子を動かし俺が見た商品の目の前まで移動してくれる。リーはクマのぬいぐるみを手に取った。

 

「フフフ・・・・これ、欲しいの?」

 

「・・・・・・」

 

「ほら、試しに抱いてみなさい」

 

リーから俺にクマのぬいぐるみが手渡しで渡される。このクマのぬいぐるみは背丈が70cmある結構多きな品物で車椅子の座面に置くと俺の口が隠れるくらいまである。俺はそのクマのぬいぐるみをギュッと抱きしめた。

 

「(・・・・・ぬいぐるみってこんなに温もりあったんだ・・・)」

 

「そんなに抱きしめちゃって。そんなにそのぬいぐるみが欲しいんなら買ってあげるわよ」

 

「・・・・・」

 

「ほら優姫ちゃん。ちゃんと口に言わないと分からないわよ?」

 

「・・・欲しい」

 

「偉い偉い、ちゃんと言えたじゃない。じゃあこれも買いましょう」

 

「あっ・・・・・」

 

リーが会計のためにぬいぐるみを持つ。なんて事ない普通の動作、なのに何故か今の俺には取り上げられた気分になった。その様子を見たリーは微笑みながら俺の頭を撫でた。

 

「心配しなくてもすぐに優姫ちゃんに返すわよ」

 

リーは店員を呼びつけてその場で会計を済ませる。すぐにぬいぐるみの値札が切られ、俺に渡された。

 

「はい、これが欲しかったのでしょ?」

 

「・・・・うん」

 

店員から受け取ったぬいぐるみを俺は離さないように大事に抱きしめる。

 

「本当に可愛いわ・・・・お人形を育ててるみたいだわ」

 

「・・・・・」

 

「それじゃヘアアクセを探しにいきましょうか」

 

リーは再び俺の車椅子のハンドルを握り、ショッピングモール内を移動する。

 

 

 遊輝   side out

 

 

アリア  side 〜(1週間後)〜

 

 

「・・・・・・・」

 

「お、お兄ちゃん?」

 

「フフフ、どう?可愛いでしょ?私と生活をして遊輝の本当の性格が出たわ」

 

遊輝ちゃんがリーに連れられて一週間、約束の日に二人は帰ってきた。しかし、遊輝ちゃんのあまりの変貌ぶりに私も桜ちゃんも開いた口が塞がらなかった。

白い清楚なワンピースに花のコサージュ、上品な白くて膝まで隠れる靴下、何処からどう見てもお嬢様にしか見えない子が大きなクマのぬいぐるみを抱えて自信無さげな表情を浮かべている。

ここ最近は弱音を吐いていたけど、そこそこ強気で、見た目に反して漢としての根性と自信があった遊輝ちゃんの面影が全く見えない。ここにいる子は気弱で甘えたがり、そんな印象を与える女の子だ。

 

「可愛いでしょ優姫ちゃん。4日目くらいかな?ストレスと環境変化に耐えられず、少し風邪で寝込んだ時があったけど、その時もずっと私に甘えていたわ」

 

「(一体何をされたのよ・・・・)」

 

「じゃあ約束通り、遊輝は返すわ。優姫ちゃん、また2週間後ね」

 

「・・・・(コクコク)」

 

「次はアリア、貴方の番よ」

 

「・・・・分かったわ」

 

「・・・お姉ちゃん」

 

「心配しなくて良いわ桜ちゃん。私は大丈夫だから」

 

リーに言われて私は一歩前に踏み出す。桜ちゃんに心配されたけど、私は大丈夫。

 

「(何があっても・・・私は私、それだけは変わらないから)」




リー「優姫ちゃん可愛かったわ〜。あれは人気モデルになれるわ」

アリア「・・・・・・何したのよ?」

リー「別に何もしていないわ。私はただ、彼の本当の性格を引き出しただけよ」

アリア「本当の、性格、ね〜」

リー「ふふふ・・・・あなたはどっちかというとカッコいい部類ね」

アリア「(・・・何をしたいのよ、この女)」

リー「次回、『お人形生活  アリア編』。よろしくね」
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