こちら、椴法華鎮守府日常譚   作:汐ノ爾

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その4:終

 羽黒が去りすることが無くなった提督は、持ってきた本を日よけ代わりにして昼寝をしている。半寝半起きの状態、頭上に何か近づく気配を感じて目を覚まし本をどける。

「…ん?」

「ココデ ナニヲシテイル?」

「…白だ」

 何がとは言わない、何かすごい殺意の波動とともに顔を踏んづけられる。

「あ、ワンコさんこんにちは」

「オオ キテイタノカ デ コノヘンタイハダレダ?」

 顔をぐりぐり踏みつけたまま、足蹴にしている提督がなんであるか羽黒に問う。

「あぁすいません、この人うちの鎮守府の新しい提督さんです」

「そういうことです」

「フム ナルホド タダノヘンシツシャダトオモッタゾ」

 納得したようで踏みつけていた足をどける。

「ごめんなさい、驚かせちゃって」

「マア イイ」

「提督さん、こちら港湾棲姫さん。この島の…管理人さん?」

「左様でしたか。ども、椴法華の新しい提督です」

 提督も立ち上がり挨拶をする。上背があり提督と視線がほぼ同じで、深海棲艦らしくとても美しい白い肌と長い髪。大きい胸、吸い込まれそうな蒼い瞳、夏だからなのか白いワンピース(水着?)と白い日傘を差し全身オール白。「トーン貼り忘れました?」といってしまいそうな白さをしている。周りをなにかシャーシャーと、提督を威嚇している小さい生き物がいるが、それは二の次。

「すごーく強いんですよ。下手なことしたら沈められちゃいますよ?」

「気を付けます…」

 既にその「下手なこと」をしているためすごい視線で睨まれている。羽黒がいなかったら沈んでいたかもしれない。

「トコロデ ハグロ チョットキキタイコトガアルノダガ」

「はい、なんでしょう?」

 羽黒を手招きして島の奥へといってしまう二人。挨拶しただけで提督のことはどうでもいいらしい。パ〇ツ覗いたのに。

 

 10分ほど経過しただろうか、島の奥から戻ってくる二人。

「何度も確認したんだけど、おかしいなぁ」

「ツギニクルトキデモイイ イソイデイルワケジャナイカラ」

「ん、なんかあったのか?」

 大事ではないようだが多少トラブルがあったような感じを受けたので、羽黒に問いかける。

「あ、提督。いえ、特に何がってわけじゃないんです。気になさらないでください」

「?」

 誤魔化している感じがプンプンする。上司として放っておくわけにもいかないがデリケートな問題な気もするので深く突っ込めない。そのまま提督の前を通り過ぎていく二人。

「提督、一緒に海で遊びませんか?」

「遊ぼうぜ、ていとくー」

 今度は海で遊んでいた白露型の駆逐艦、五月雨と涼風が提督を誘いに来る。

「お、そうだな。せっかく来たのに何もしないのももったいないし、よぉし」

「パパがんばっちゃうぞー」といわんばかりに張り切りだし、上着を脱ぎ上半身裸になる。さすがに下は脱ぐわけにもいかず、裾をまくり上げる。すると、どこにあったのかわからないが提督からなにか黒い布切れのようなものが一枚、ハラリと地面に落ちる。

「提督、何か落ちましたよ」

「ん、なんだろ?」

 提督の背後に落ちたものに気づいた五月雨に促され、その落ちたものに目を移す。そしてそれをひょいと拾い上げる。

「なにこれ?」

「提督、それって…」

「ん、涼風何か知ってる?」

 怪訝そうな目で提督の手の中のものを見る涼風。彼女にはそれが何かすでに分かっているようである。

「…ん? これは」

「あーっ!」

 涼風たちの後ろから羽黒が叫び声をあげる。その視線は一様に提督の手の上のものに向けられている。

「あぁ、これ羽黒の? って…アレ?」

「そ、それは…、ワンコさんに頼まれていた…」

「…随分薄手の布ですね、透けてるし…」

 お分かりであろう、提督の手の上には女性ものの下着が握りしめられている。ことの顛末はこうである。

 

鎮守府を出発→室内で転げる→荷物に突っ込む→崩れる→頭に下着が降りかかる→振り払う→奇跡的にベルトに引っかかる→海に入ろうと上着を脱ぐ→ハラリと落ちる→イマココ

 

 

 じりじりと提督の前から下がっていく五月雨と涼風。それもそうだろう、上半身裸の男があろうことか女性ものの下着を握りしめていようものなら、そりゃ変態でしかない。距離もおく。

「キサマ… ソウイウシュミダッタノカ」

 羽黒の横で奇麗な蒼い瞳を業火の如く赤く光らせ、何か後ろに「オラオラ」いうもの出せるんじゃないかというオーラを身にまとった港湾棲姫。取り巻きの小さいのが今にもとびかかってきそうな状態。

「あ、ワンコさんのでしたか。失礼しました…。にしても随分大胆なものをお履きになるんですね、今は白いのに」

プツン、という音が聞こえた気がした、その場にいた全員が。

「ココデシズメテヤルワッ!!!」

 遠く鎮守府の港からも高く上る火柱が見えたと、戻ってから聞いた。そしてその夏一杯、提督はこの島を出禁となった。

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